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第二話 前世、そして現在
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そう、あたしは極々平凡な一般家庭の長女だった。
両親がいて、妹がいる四人家族。
家族仲は別に悪くなかったけど、四者四様にオタク気質の趣味人で妹が高校生になった頃にはそれぞれバラバラの生活スタイルになることもざらにあった。
アウトドア系の趣味をしていた両親は、共働きなこともあって、あたしたち姉妹が家事をそつなくこなせるようになった頃から家を開けることが多くなった。
逆に、あたしと妹はインドア派で趣味も読書やゲームといったジャンルが趣味だった。
妹は恋愛シミュレーションゲームやアイドル育成ゲーム、少女漫画、恋愛小説とかが好きで、あたしはファンタジーやアドベンチャー系のゲームとか、少年漫画や冒険小説が好きで同じ本やゲームでも好みが違った。
それでも姉妹仲はいい方で、よく自分のお気に入りを布教したり、推しの燃えを語り合ったり、ゲーム攻略の相談をしたものだ。
まぁ、そんな感じで好きなものを吸収してすくすく育ち、大学生になって就職氷河期の中、何とか内定を貰うことが出来た。
が、しかし。なんとその会社はとんだブラックだったのだ。
サビ残休日出勤当たり前、安月給なのに時には備品を社員の自腹で買わせたり、明らかに無理のある納期の仕事を押しつけられ、出来なかったら罵倒の嵐。コンプラが問われる時代にセクハラ、パワハラ、モラハラ、アルハラのオンパレード。
もっとしっかり確認しておけば! と、あれほど悔やんだこともない。
そんなとんでもブラック企業だったため、入社して二年で倒産してしまった。
元々転職を考えていたものの、なかなか新しい就職先は決まらず、なけなしの貯金を切り崩して実家に身を寄せてた時、思わぬ出会いがあった。
いつまでも決まらない就職先にやきもきして、やけ酒をして管を巻いていた居酒屋で、たまたま隣に座っていた年齢不詳(マジで十代から四十代くらいに見えた)の男性に愚痴を聞いてもらい、自分の店で働かないかと誘われた。
その人は帳さんといって、中古のゲームや漫画などの買取・販売をしている中古店の店長さんだった。
あたしは地獄で仏とはまさにこのこと! と、秒で了承し、その店が実家からは距離があることもあり、ひとまずの仮住まいとして近くて家賃格安の二回建て築47年のオンボロアパートを借りることにし、引っ越し代の節約のため、妹と店長に手伝ってもらって軽トラを借りて自力で引っ越し作業を始めた。
が、その際、ゲームのハードやら何やら重たいものを運んで階段を上がっていた時だ。
あたしは階段の途中でバランスを崩し、段ボールを抱えたまま後ろへと倒れて──
「それで打ち所が悪くて死んだ、と・・・・・・うわー!!! 何やってんの、あたし!? てゆーか、妹と店長ごめんなさーい!!!」
前世の死因を思い出したあたしはその場で頭を抱えて、恐らく色々迷惑をかけたであろう妹と店長に懺悔した。
とは言え、いつまでも落ち込んでもいられない。
前世では死んだのが問題だけど、今は生き返ってしまったことが問題だった。最悪のタイミングで。
「どう足掻こうと犯罪者コースまっしぐら・・・・・・お先真っ暗・・・・・・どーすんの・・・・・・それに──」
両手の平をベッドに沈めて落ち込む。
本当にどうなっているのか分からない。
だって、シナリオ通りならクローザはあそこで死んで退場するはずなのに生きているのだから。
──そう、あたしはこの世界をクローザになる前から知っていた。
間違いない。
あたしは誰に聞かせるわけでもなく、ぼやくように呟いた。
「──それに、ここ乙女ゲームの世界なんだよなぁ」
両親がいて、妹がいる四人家族。
家族仲は別に悪くなかったけど、四者四様にオタク気質の趣味人で妹が高校生になった頃にはそれぞれバラバラの生活スタイルになることもざらにあった。
アウトドア系の趣味をしていた両親は、共働きなこともあって、あたしたち姉妹が家事をそつなくこなせるようになった頃から家を開けることが多くなった。
逆に、あたしと妹はインドア派で趣味も読書やゲームといったジャンルが趣味だった。
妹は恋愛シミュレーションゲームやアイドル育成ゲーム、少女漫画、恋愛小説とかが好きで、あたしはファンタジーやアドベンチャー系のゲームとか、少年漫画や冒険小説が好きで同じ本やゲームでも好みが違った。
それでも姉妹仲はいい方で、よく自分のお気に入りを布教したり、推しの燃えを語り合ったり、ゲーム攻略の相談をしたものだ。
まぁ、そんな感じで好きなものを吸収してすくすく育ち、大学生になって就職氷河期の中、何とか内定を貰うことが出来た。
が、しかし。なんとその会社はとんだブラックだったのだ。
サビ残休日出勤当たり前、安月給なのに時には備品を社員の自腹で買わせたり、明らかに無理のある納期の仕事を押しつけられ、出来なかったら罵倒の嵐。コンプラが問われる時代にセクハラ、パワハラ、モラハラ、アルハラのオンパレード。
もっとしっかり確認しておけば! と、あれほど悔やんだこともない。
そんなとんでもブラック企業だったため、入社して二年で倒産してしまった。
元々転職を考えていたものの、なかなか新しい就職先は決まらず、なけなしの貯金を切り崩して実家に身を寄せてた時、思わぬ出会いがあった。
いつまでも決まらない就職先にやきもきして、やけ酒をして管を巻いていた居酒屋で、たまたま隣に座っていた年齢不詳(マジで十代から四十代くらいに見えた)の男性に愚痴を聞いてもらい、自分の店で働かないかと誘われた。
その人は帳さんといって、中古のゲームや漫画などの買取・販売をしている中古店の店長さんだった。
あたしは地獄で仏とはまさにこのこと! と、秒で了承し、その店が実家からは距離があることもあり、ひとまずの仮住まいとして近くて家賃格安の二回建て築47年のオンボロアパートを借りることにし、引っ越し代の節約のため、妹と店長に手伝ってもらって軽トラを借りて自力で引っ越し作業を始めた。
が、その際、ゲームのハードやら何やら重たいものを運んで階段を上がっていた時だ。
あたしは階段の途中でバランスを崩し、段ボールを抱えたまま後ろへと倒れて──
「それで打ち所が悪くて死んだ、と・・・・・・うわー!!! 何やってんの、あたし!? てゆーか、妹と店長ごめんなさーい!!!」
前世の死因を思い出したあたしはその場で頭を抱えて、恐らく色々迷惑をかけたであろう妹と店長に懺悔した。
とは言え、いつまでも落ち込んでもいられない。
前世では死んだのが問題だけど、今は生き返ってしまったことが問題だった。最悪のタイミングで。
「どう足掻こうと犯罪者コースまっしぐら・・・・・・お先真っ暗・・・・・・どーすんの・・・・・・それに──」
両手の平をベッドに沈めて落ち込む。
本当にどうなっているのか分からない。
だって、シナリオ通りならクローザはあそこで死んで退場するはずなのに生きているのだから。
──そう、あたしはこの世界をクローザになる前から知っていた。
間違いない。
あたしは誰に聞かせるわけでもなく、ぼやくように呟いた。
「──それに、ここ乙女ゲームの世界なんだよなぁ」
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