13 / 183
第一章 公爵令嬢曰く、「好奇心は台風の目に他ならない」
ブレイクタイムとはいかない
しおりを挟む
ごんっ!
なんか痛そうな音がした。
てか、額が痛い。
「ミリア、何をしているんだ?」
頭上でギーシャ王子の声がする。
私は床に勢いよくおでこをぶつけ、床に突っ伏していた。
「只今情報処理中ですので、暫くそのままでお待ちください」
そんな機械的な台詞を言って、思考を巡らす。が、相変わらず頭はあんま働いてくれない。
頑張って! 私の脳味噌! せめて摂取した糖分というお給料分は働いてー!
なんて訳の分からないことばかり考えてしまう。
ギーシャ王子の話を聞いて、芋づる式に私の過去の大失態まで思い出してしまい、脱力してしまった。
顔を上げるとギーシャ王子は律儀に微動だにせずに私の言葉を待っていた。
「役に立ったか?」
「ええ。まぁ・・・・・・ところで、ギーシャ王子は何故わざわざあの場でリンス嬢に婚約破棄を告げたのですか?」
「マリスがこういうことは早めに伝えておかないと拗れるからと」
あれはマリス嬢の差し金だったのか・・・・・・。
面倒なことをしてくれおって・・・・・・!
そのせいでこんなことになっているかと思うと疲労とか通り越して腹が立ってきた。
マリス嬢になんかバチあたんないかな? あ、でもマリス嬢もぶん投げられたんだっけ? なら少しは溜飲も下が──んないわ! 絶対下敷きになってた私の方がダメージでかいわ!
「周囲の反応は考えなかったのですか?」
「俺がやることに誰も興味はないだろう」
ここでもギーシャ王子のズレた思考が発動してた。
「な、成程。参考になりました。では、私は一度失礼します。多分、もう一回来ます・・・・・・」
あかん。想像以上にメンタルやられた。
昔は平気だったのに、久々だからか、役割のプレッシャーからか精神疲労が半端ない。
このまま話していても、拉致が明かないというか、余計とっ散らかりそう。
ぶっつけ本番が不味かった。リハーサルが必要だった。
ここは一度退いて、色々纏めてから出直そう。逃げる訳じゃないよ? 戦略的撤退だよ!
「ああ、またな」
私はふらふらと立ち上がり、覚束ない足取りで出口に向かう。
その時、乱雑に重ねてあった木箱に蹴躓いて、体が前に傾く。
ひっ!
このままじゃ木箱の角に頭ぶつける!
それに絶対雪崩が起こる!
踏ん張ろうとしたが、体に力が入らない。
わ────!!!
思わずぎゅっと目を瞑った時、背後からお腹を支えられ、後ろに引き戻された。
「は・・・・・・大丈夫か?」
「びっくりした~!」
振り替えるとギーシャ王子が私を支えてくれていた。逆の手ではぐらついた箱を押さえ、二次被害防止もばっちりだ。
慌てて動いたのだろう。さっきまでいた即席木箱ベッドの端に毛布が引っ掛かっている。
私は転ばずに済み、思わず素の声をあげてしまった。
「ギーシャ王子、ありがとうございます」
「いや、その格好じゃ通りにくいな。今、道を開ける」
そう言ってギーシャ王子は木箱や行李をいくつも重ねて持ち上げ、端に寄せた。やっぱ力がついてるんだな~。
うんうん、もうすぐ高等部だもんね~。
高等部という単語が頭に浮かび、私はふと思った。
このままだとギーシャ王子はどうなるんだろう?
もしかしたら、ギーシャ王子は高等部に進めないかもしれない。それも私の匙加減に掛かっているのだ。
今更ながらに自分が想像してた以上の重責を背負ってしまったと自覚する。
「よし。これで通れるだろう」
ギーシャ王子がぱんぱんと手を払って、体を退かすと、さっきよりより開けた道が出来ていた。
行きは大変、帰りは楽々。ありがたい。
「ありがとうございます。では、また」
「ああ」
ギーシャ王子が開けてくれた道を通って扉まで行き、ドアノブに手をかけると、ギーシャ王子に名前を呼ばれた。
「ミリア」
「はい?」
「久々に話せてよかった」
そう言って、ギーシャ王子は笑っていた。
「私もです」
中等部に上がってからは少し距離を置いていたのに、そう言って貰えて少し嬉しくなる。
私はギーシャ王子に笑みを返して物置部屋を後にした。
なんか、疲れてしまった。
色々と考えることがありすぎて、脳が休息を必要としている。
う~、なんでこんな考えなくちゃいけないの!?
私が潰れたことが一番の問題なら私べつにあんま怒ってないからそれでよくない!?
でも、そうはいかないのが実情だ。
婚約破棄自体は王家とシュナイザー家の問題だし。うぅん・・・・・・。
よし! 甘いものを食べよう!
疲れた時は甘いもの。これ鉄板。
王宮には官吏のために食堂が設備されている。頭を使う文官にも体力を使う武官にも糖分は必要だからか、そこは以外とデザートメニューが充実してるのだ。
何にしようかな~?
モモのタルト? チョコレートケーキ? あ、プリンアラモードもいいな。
うきうき気分で食堂へ向かおうとすると、突然背後から人が現れた。
「ミリア様」
「ぎゃっ!」
びくってした~。えっとこの人は服装的に王様の側近さん?
「何かようですか?」
「はい。ミリア様に取り急ぎご報告を」
「何でしょうか」
「午後より、マリス・リアルージュ様とリンス・シュナイザー様が登城されます。ミリア様は第二談話室で待つようとのこと」
「・・・・・・あー」
どうやら、午後の天気は嵐になりりそうである。
なんか痛そうな音がした。
てか、額が痛い。
「ミリア、何をしているんだ?」
頭上でギーシャ王子の声がする。
私は床に勢いよくおでこをぶつけ、床に突っ伏していた。
「只今情報処理中ですので、暫くそのままでお待ちください」
そんな機械的な台詞を言って、思考を巡らす。が、相変わらず頭はあんま働いてくれない。
頑張って! 私の脳味噌! せめて摂取した糖分というお給料分は働いてー!
なんて訳の分からないことばかり考えてしまう。
ギーシャ王子の話を聞いて、芋づる式に私の過去の大失態まで思い出してしまい、脱力してしまった。
顔を上げるとギーシャ王子は律儀に微動だにせずに私の言葉を待っていた。
「役に立ったか?」
「ええ。まぁ・・・・・・ところで、ギーシャ王子は何故わざわざあの場でリンス嬢に婚約破棄を告げたのですか?」
「マリスがこういうことは早めに伝えておかないと拗れるからと」
あれはマリス嬢の差し金だったのか・・・・・・。
面倒なことをしてくれおって・・・・・・!
そのせいでこんなことになっているかと思うと疲労とか通り越して腹が立ってきた。
マリス嬢になんかバチあたんないかな? あ、でもマリス嬢もぶん投げられたんだっけ? なら少しは溜飲も下が──んないわ! 絶対下敷きになってた私の方がダメージでかいわ!
「周囲の反応は考えなかったのですか?」
「俺がやることに誰も興味はないだろう」
ここでもギーシャ王子のズレた思考が発動してた。
「な、成程。参考になりました。では、私は一度失礼します。多分、もう一回来ます・・・・・・」
あかん。想像以上にメンタルやられた。
昔は平気だったのに、久々だからか、役割のプレッシャーからか精神疲労が半端ない。
このまま話していても、拉致が明かないというか、余計とっ散らかりそう。
ぶっつけ本番が不味かった。リハーサルが必要だった。
ここは一度退いて、色々纏めてから出直そう。逃げる訳じゃないよ? 戦略的撤退だよ!
「ああ、またな」
私はふらふらと立ち上がり、覚束ない足取りで出口に向かう。
その時、乱雑に重ねてあった木箱に蹴躓いて、体が前に傾く。
ひっ!
このままじゃ木箱の角に頭ぶつける!
それに絶対雪崩が起こる!
踏ん張ろうとしたが、体に力が入らない。
わ────!!!
思わずぎゅっと目を瞑った時、背後からお腹を支えられ、後ろに引き戻された。
「は・・・・・・大丈夫か?」
「びっくりした~!」
振り替えるとギーシャ王子が私を支えてくれていた。逆の手ではぐらついた箱を押さえ、二次被害防止もばっちりだ。
慌てて動いたのだろう。さっきまでいた即席木箱ベッドの端に毛布が引っ掛かっている。
私は転ばずに済み、思わず素の声をあげてしまった。
「ギーシャ王子、ありがとうございます」
「いや、その格好じゃ通りにくいな。今、道を開ける」
そう言ってギーシャ王子は木箱や行李をいくつも重ねて持ち上げ、端に寄せた。やっぱ力がついてるんだな~。
うんうん、もうすぐ高等部だもんね~。
高等部という単語が頭に浮かび、私はふと思った。
このままだとギーシャ王子はどうなるんだろう?
もしかしたら、ギーシャ王子は高等部に進めないかもしれない。それも私の匙加減に掛かっているのだ。
今更ながらに自分が想像してた以上の重責を背負ってしまったと自覚する。
「よし。これで通れるだろう」
ギーシャ王子がぱんぱんと手を払って、体を退かすと、さっきよりより開けた道が出来ていた。
行きは大変、帰りは楽々。ありがたい。
「ありがとうございます。では、また」
「ああ」
ギーシャ王子が開けてくれた道を通って扉まで行き、ドアノブに手をかけると、ギーシャ王子に名前を呼ばれた。
「ミリア」
「はい?」
「久々に話せてよかった」
そう言って、ギーシャ王子は笑っていた。
「私もです」
中等部に上がってからは少し距離を置いていたのに、そう言って貰えて少し嬉しくなる。
私はギーシャ王子に笑みを返して物置部屋を後にした。
なんか、疲れてしまった。
色々と考えることがありすぎて、脳が休息を必要としている。
う~、なんでこんな考えなくちゃいけないの!?
私が潰れたことが一番の問題なら私べつにあんま怒ってないからそれでよくない!?
でも、そうはいかないのが実情だ。
婚約破棄自体は王家とシュナイザー家の問題だし。うぅん・・・・・・。
よし! 甘いものを食べよう!
疲れた時は甘いもの。これ鉄板。
王宮には官吏のために食堂が設備されている。頭を使う文官にも体力を使う武官にも糖分は必要だからか、そこは以外とデザートメニューが充実してるのだ。
何にしようかな~?
モモのタルト? チョコレートケーキ? あ、プリンアラモードもいいな。
うきうき気分で食堂へ向かおうとすると、突然背後から人が現れた。
「ミリア様」
「ぎゃっ!」
びくってした~。えっとこの人は服装的に王様の側近さん?
「何かようですか?」
「はい。ミリア様に取り急ぎご報告を」
「何でしょうか」
「午後より、マリス・リアルージュ様とリンス・シュナイザー様が登城されます。ミリア様は第二談話室で待つようとのこと」
「・・・・・・あー」
どうやら、午後の天気は嵐になりりそうである。
10
あなたにおすすめの小説
婚約破棄された令嬢が記憶を消され、それを望んだ王子は後悔することになりました
kieiku
恋愛
「では、記憶消去の魔法を執行します」
王子に婚約破棄された公爵令嬢は、王子妃教育の知識を消し去るため、10歳以降の記憶を奪われることになった。そして記憶を失い、退行した令嬢の言葉が王子を後悔に突き落とす。
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
【完結】20年後の真実
ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。
マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。
それから20年。
マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。
そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。
おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。
全4話書き上げ済み。
王が気づいたのはあれから十年後
基本二度寝
恋愛
王太子は妃の肩を抱き、反対の手には息子の手を握る。
妃はまだ小さい娘を抱えて、夫に寄り添っていた。
仲睦まじいその王族家族の姿は、国民にも評判がよかった。
側室を取ることもなく、子に恵まれた王家。
王太子は妃を優しく見つめ、妃も王太子を愛しく見つめ返す。
王太子は今日、父から王の座を譲り受けた。
新たな国王の誕生だった。
婚約者に毒を飲まされた私から【毒を分解しました】と聞こえてきました。え?
こん
恋愛
成人パーティーに参加した私は言われのない罪で婚約者に問い詰められ、遂には毒殺をしようとしたと疑われる。
「あくまでシラを切るつもりだな。だが、これもお前がこれを飲めばわかる話だ。これを飲め!」
そう言って婚約者は毒の入ったグラスを渡す。渡された私は躊躇なくグラスを一気に煽る。味は普通だ。しかし、飲んでから30秒経ったあたりで苦しくなり初め、もう無理かも知れないと思った時だった。
【毒を検知しました】
「え?」
私から感情のない声がし、しまいには毒を分解してしまった。私が驚いている所に友達の魔法使いが駆けつける。
※なろう様で掲載した作品を少し変えたものです
婚約者の心の声が聞こえるようになったが手遅れだった
神々廻
恋愛
《めんどー、何その嫌そうな顔。うっざ》
「殿下、ご機嫌麗しゅうございます」
婚約者の声が聞こえるようになったら.........婚約者に罵倒されてた.....怖い。
全3話完結
魅了魔法…?それで相思相愛ならいいんじゃないんですか。
iBuKi
恋愛
サフィリーン・ル・オルペウスである私がこの世界に誕生した瞬間から決まっていた既定路線。
クロード・レイ・インフェリア、大国インフェリア皇国の第一皇子といずれ婚約が結ばれること。
皇妃で将来の皇后でなんて、めっちゃくちゃ荷が重い。
こういう幼い頃に結ばれた物語にありがちなトラブル……ありそう。
私のこと気に入らないとか……ありそう?
ところが、完璧な皇子様に婚約者に決定した瞬間から溺愛され続け、蜂蜜漬けにされていたけれど――
絆されていたのに。
ミイラ取りはミイラなの? 気付いたら、皇子の隣には子爵令嬢が居て。
――魅了魔法ですか…。
国家転覆とか、王権強奪とか、大変な事は絡んでないんですよね?
いろいろ探ってましたけど、どうなったのでしょう。
――考えることに、何だか疲れちゃったサフィリーン。
第一皇子とその方が相思相愛なら、魅了でも何でもいいんじゃないんですか?
サクッと婚約解消のち、私はしばらく領地で静養しておきますね。
✂----------------------------
不定期更新です。
他サイトさまでも投稿しています。
10/09 あらすじを書き直し、付け足し?しました。
【完結】貴方をお慕いしておりました。婚約を解消してください。
暮田呉子
恋愛
公爵家の次男であるエルドは、伯爵家の次女リアーナと婚約していた。
リアーナは何かとエルドを苛立たせ、ある日「二度と顔を見せるな」と言ってしまった。
その翌日、二人の婚約は解消されることになった。
急な展開に困惑したエルドはリアーナに会おうとするが……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる