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第一章 公爵令嬢曰く、「好奇心は台風の目に他ならない」
『祝愛のマナ』
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『祝愛のマナ』
前世で大ヒットしていた女性向け恋愛シュミレーションゲーム。所謂、乙女ゲーム。
一作目が飛ぶように売れ、その後毎年のように続編やファンディスクやアナザーストーリーなどが続々と発売され、映像ならアニメ化、映画化。書籍ならノベライズ、コミカライズ、四コマ漫画等々。様々なメディアミックスがなされた。
無印の発売から十年経っても衰えることのないロングヒットの超人気ゲームだ。
私が『祝愛のマナ』を知ったのは発売されてから大分後の事になる。
元々、ファンタジーものが大好きでファンタジー要素のあるものはハイファンタジーでもローファンタジーでも妖怪奇譚でもなんでもござれ。
主に小説やライトノベル、アニメやドラマ等の媒体を利用しており、ゲーム系は難しそうだし、お金がかかりそうだからあまり触れては来なかった。
けど、ある日。
日々の疲れの癒しにと猫動画を見ようと思った時に私は出会ってしまった。
たまたま動画前の広告映像が『祝愛のマナ』だったのだ。確か、アプリへの移植PVだった気がする。
普段なら広告は五秒でスキップするけど、出だしの魔法のエフェクトと効果音が素晴らしいのとナレーションをしてた声優さんの声が凄く好みの声だったので、飛ばさずに見てみることにした。
出てきたのはたくさんのイケメン。
クラシックとアニソンを混ぜたような優雅で楽しげな主題歌と共に紹介されるキャラクター。
エキゾチックでファンタジー感溢れる背景。
とても綺麗なスチルと声優さんから語られるあらすじ。
ゲームの内容は特別な『白の魔力』を持つヒロインが魔力の発覚と共に魔法の学べるフレイズ学園に転入し、そこで個性豊かな男性達と出会い、交流を深めながら巻き起こる様々な事件を解決したり、恋愛をしたりするというものだった。
あまり恋愛要素に興味はなかったが、あんなファンタスティックな映像を見せられたらうっかり事前受付をしてしまっても、課金をしてしまってもしょうがない。
友達の抑制がなかったら危うく重課金のヘビーユーザーになってしまってたくらい私は『祝愛のマナ』にどっぷりハマっていた。
始めてからとにかく関連商品を集めまくり、空いてる時間も使えるお金も『祝愛のマナ』に費やした。そのことに関しては今でも後悔はない。
それくらい『祝愛のマナ』が大好きだった。
『祝愛のマナ』に囲まれて人生エンジョイしていた私はある日突然、不慮の事故で亡くなった。その件に関してはもう気持ちの整理はついているので割愛。
人間、死ぬと冷静になるみたいで死んだ時はあー、死んだなーくらいの認識だった。
でも、死んだら私はミリア・メイアーツという少女になっていた。前世の記憶を思い出した時は驚いたけど、それ以上にこの世界が『祝愛のマナ』の世界にそっくりなことの方がびっくり案件だった。
何せ、攻略対象が従弟なものだからそのことはすぐに把握出来たが、大分パニックになった。
最終的には前世のネット小説で読んだ異世界転生かー、で終わった。
実際に転生しちゃってるし、今のミリア・メイアーツとして生きてきた人生は幸せなものだったので普通に受け入れることが出来た。
だが、同時にヤバいとも思った。
なんせ、ここは現実だ。ゲームでは見えなかったもの。知り得なかったことが事実という真実を帯びて目の前に横たわっている。
とは言え、ミリア・メイアーツはゲームには登場しない。名前も出てこない。
キャラクターとしての役割を持たないし、もしあったとしても私は私らしくしか生きられない。
だからゲームには特に関わらず、もしそういうことがあったらちょっと観察してみたいなくらいの気持ちでいたが、一つだけそうはいかなかった。
ギーシャ王子だ。
こればかりは放っておく訳にはいかなかった。
従姉弟という関係であり、赤ん坊の頃から知っているギーシャ王子に関しては他人事にする訳にはいかない。
ギーシャ王子がああなるまでずっと見てきたのだ。
何故、ああなったのか。その全ては知らないし、ギーシャ王子にもお父様にも王様にも教えては貰えなかった。
けど、一緒にいる時間が長ければ情も沸く。
私は私なりにギーシャ王子に寄り添おうと思ったけど、失敗した。
初等部の最終学年の頃。私は自分がしたたった一つの行為によって精神的に不安定になってしまい、ギーシャ王子から距離を置いてしまった。必要であれば話もしたし、表面的にはあまり変わってなかっただろうけど、心の在り方は変わってしまった。
でも、その間にギーシャ王子はギルハード様が騎士になったり、リンス嬢が婚約したりと周りに人がいたので安心していた。
ゲームで悪役令嬢だったリンス嬢の存在が気がかりだったけど、その頃はヒロインもいなかったし、リンス嬢は大人しかったから特に気に止めてなかった。
そして、三年になりマリス嬢が現れた。
私はヒロインだー。と興味津々で観察していた。
まさか転生者とは思ってなかったから彼女が攻略対象達と一緒のところを見かけてもまぁ、ある程度はゲームと似た展開になるんだなと思っていた。
少しギーシャ王子と距離が近いなと思い始めた頃はリンス嬢の反応が気になってたけど、ゲームではその頃から少しずつマリス嬢の持ち物がなくなったりという嫌がらせが行われ、高等部に上がるにつれてエスカレートし、リンス嬢の仕業と発覚。婚約破棄になるという流れだったけど、そういう素振りもなかったし、マリス嬢も普通にしてたから大丈夫だと思っていた。
実際は転生者同士の水面下での攻防があったようだけど。
私は正直、ギーシャ王子が選んだのがリンス嬢だろうが、マリス嬢だろうが、どうでもよかった。
ギーシャ王子はその特殊な立場上、どう転んでもある程度大切にされるだろうと私は傍観に徹した。
流石に中等部での婚約破棄は予想外だったけど、あの時は感覚が麻痺してたのかもしれない。
文字通り修羅場が飛んできて、巻き込まれて、当事者になって、久々にギーシャ王子と二人で話して、色んなことを考えなくてはいけなくなった。
被害者として、公爵令嬢として、ミリア・メイアーツ一個人として。
その為には一つ、二人に確かめなくてはならないことがある。
前世で大ヒットしていた女性向け恋愛シュミレーションゲーム。所謂、乙女ゲーム。
一作目が飛ぶように売れ、その後毎年のように続編やファンディスクやアナザーストーリーなどが続々と発売され、映像ならアニメ化、映画化。書籍ならノベライズ、コミカライズ、四コマ漫画等々。様々なメディアミックスがなされた。
無印の発売から十年経っても衰えることのないロングヒットの超人気ゲームだ。
私が『祝愛のマナ』を知ったのは発売されてから大分後の事になる。
元々、ファンタジーものが大好きでファンタジー要素のあるものはハイファンタジーでもローファンタジーでも妖怪奇譚でもなんでもござれ。
主に小説やライトノベル、アニメやドラマ等の媒体を利用しており、ゲーム系は難しそうだし、お金がかかりそうだからあまり触れては来なかった。
けど、ある日。
日々の疲れの癒しにと猫動画を見ようと思った時に私は出会ってしまった。
たまたま動画前の広告映像が『祝愛のマナ』だったのだ。確か、アプリへの移植PVだった気がする。
普段なら広告は五秒でスキップするけど、出だしの魔法のエフェクトと効果音が素晴らしいのとナレーションをしてた声優さんの声が凄く好みの声だったので、飛ばさずに見てみることにした。
出てきたのはたくさんのイケメン。
クラシックとアニソンを混ぜたような優雅で楽しげな主題歌と共に紹介されるキャラクター。
エキゾチックでファンタジー感溢れる背景。
とても綺麗なスチルと声優さんから語られるあらすじ。
ゲームの内容は特別な『白の魔力』を持つヒロインが魔力の発覚と共に魔法の学べるフレイズ学園に転入し、そこで個性豊かな男性達と出会い、交流を深めながら巻き起こる様々な事件を解決したり、恋愛をしたりするというものだった。
あまり恋愛要素に興味はなかったが、あんなファンタスティックな映像を見せられたらうっかり事前受付をしてしまっても、課金をしてしまってもしょうがない。
友達の抑制がなかったら危うく重課金のヘビーユーザーになってしまってたくらい私は『祝愛のマナ』にどっぷりハマっていた。
始めてからとにかく関連商品を集めまくり、空いてる時間も使えるお金も『祝愛のマナ』に費やした。そのことに関しては今でも後悔はない。
それくらい『祝愛のマナ』が大好きだった。
『祝愛のマナ』に囲まれて人生エンジョイしていた私はある日突然、不慮の事故で亡くなった。その件に関してはもう気持ちの整理はついているので割愛。
人間、死ぬと冷静になるみたいで死んだ時はあー、死んだなーくらいの認識だった。
でも、死んだら私はミリア・メイアーツという少女になっていた。前世の記憶を思い出した時は驚いたけど、それ以上にこの世界が『祝愛のマナ』の世界にそっくりなことの方がびっくり案件だった。
何せ、攻略対象が従弟なものだからそのことはすぐに把握出来たが、大分パニックになった。
最終的には前世のネット小説で読んだ異世界転生かー、で終わった。
実際に転生しちゃってるし、今のミリア・メイアーツとして生きてきた人生は幸せなものだったので普通に受け入れることが出来た。
だが、同時にヤバいとも思った。
なんせ、ここは現実だ。ゲームでは見えなかったもの。知り得なかったことが事実という真実を帯びて目の前に横たわっている。
とは言え、ミリア・メイアーツはゲームには登場しない。名前も出てこない。
キャラクターとしての役割を持たないし、もしあったとしても私は私らしくしか生きられない。
だからゲームには特に関わらず、もしそういうことがあったらちょっと観察してみたいなくらいの気持ちでいたが、一つだけそうはいかなかった。
ギーシャ王子だ。
こればかりは放っておく訳にはいかなかった。
従姉弟という関係であり、赤ん坊の頃から知っているギーシャ王子に関しては他人事にする訳にはいかない。
ギーシャ王子がああなるまでずっと見てきたのだ。
何故、ああなったのか。その全ては知らないし、ギーシャ王子にもお父様にも王様にも教えては貰えなかった。
けど、一緒にいる時間が長ければ情も沸く。
私は私なりにギーシャ王子に寄り添おうと思ったけど、失敗した。
初等部の最終学年の頃。私は自分がしたたった一つの行為によって精神的に不安定になってしまい、ギーシャ王子から距離を置いてしまった。必要であれば話もしたし、表面的にはあまり変わってなかっただろうけど、心の在り方は変わってしまった。
でも、その間にギーシャ王子はギルハード様が騎士になったり、リンス嬢が婚約したりと周りに人がいたので安心していた。
ゲームで悪役令嬢だったリンス嬢の存在が気がかりだったけど、その頃はヒロインもいなかったし、リンス嬢は大人しかったから特に気に止めてなかった。
そして、三年になりマリス嬢が現れた。
私はヒロインだー。と興味津々で観察していた。
まさか転生者とは思ってなかったから彼女が攻略対象達と一緒のところを見かけてもまぁ、ある程度はゲームと似た展開になるんだなと思っていた。
少しギーシャ王子と距離が近いなと思い始めた頃はリンス嬢の反応が気になってたけど、ゲームではその頃から少しずつマリス嬢の持ち物がなくなったりという嫌がらせが行われ、高等部に上がるにつれてエスカレートし、リンス嬢の仕業と発覚。婚約破棄になるという流れだったけど、そういう素振りもなかったし、マリス嬢も普通にしてたから大丈夫だと思っていた。
実際は転生者同士の水面下での攻防があったようだけど。
私は正直、ギーシャ王子が選んだのがリンス嬢だろうが、マリス嬢だろうが、どうでもよかった。
ギーシャ王子はその特殊な立場上、どう転んでもある程度大切にされるだろうと私は傍観に徹した。
流石に中等部での婚約破棄は予想外だったけど、あの時は感覚が麻痺してたのかもしれない。
文字通り修羅場が飛んできて、巻き込まれて、当事者になって、久々にギーシャ王子と二人で話して、色んなことを考えなくてはいけなくなった。
被害者として、公爵令嬢として、ミリア・メイアーツ一個人として。
その為には一つ、二人に確かめなくてはならないことがある。
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