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第一章 公爵令嬢曰く、「好奇心は台風の目に他ならない」

闇より来る

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「では、ここには警備を配置して、こちらは監視魔法具で」
「はい。こちらは感知機能魔法具で問題ないかと。館内の見取図はありますか?」
「でしたら、こちらに」

 ・・・・・・暇だ。
 ギルハード様とリンス嬢が警備について話し合っているのを眺めながら、私は出そうになった欠伸を噛み殺した。
 リンス嬢に頼まれ、二人の話し合いに同席しているものの、警備の知識なんて皆無の私に出来ることなんてないから完全に蚊帳の外だ。
 マリス嬢は会場を見て飾り付けについて考えてるし、ギーシャも設営の手伝いに行ってしまったから話し相手すらいない。あ、そうだ。

「お話中すみません。リンス嬢、ラウルは今どこに?」
「ラウル様だったら、仕事で不在よ」
「・・・・・・そうですか」

 あー、ラウルもいないのかー。本当に手持ち無沙汰だ。なんだかサボってるようで気が引けるなぁ。
 何か座ってても出来ることはないかなぁと考え、思い出した。
 そうだ。猫の爪から借りてきた魔法具の説明書でも読もうっと。

「ちょっとだけ外しますね」

 そう告げ、私は足早に魔法具の説明書を取りに行こうとした。

「ギーシャ、あの魔法具運び込んじゃった?」
「猫の爪のか? だったらまだ馬車の中だぞ」
「ありがとー」

 私はすたこらさっさと場所に向かい、中から説明書だけを取り出した。

「あったあった。とりあえず、これ読んでよーっと」

 やることが見つかり、るんるん気分で戻ろうとした時、子爵家の屋根に白い鳩が留まっているのが見えた。あれって──。
 鳩を見つめながらこの後の予定を一つ追加しながら中に戻る。
 ギルハード様とリンス嬢は見取図とにらめっこしながら話し合っていた。

「戻りましたー」
「お帰りなさい」

 私は椅子に座ると、説明書を開いてそれを読み込んだ。ふむふむ。
 私が説明書を読み込んでいると、突然、背後でマリス嬢が大声でギーシャを呼んだ。

「ギーシャ王子!」

 その声に振り向く前に、何故か風が吹き抜けた。室内なのに何故? 誰か窓でも開けた?

「って、あれ!? ギルハード様! リンス嬢! てゆーか、ギーシャ!」

 振り返ると、ギルハード様とリンス嬢が一直線にギーシャに向かっており、ギルハード様がギーシャの背後の何かを懐に持っていた短剣で切り落とし、リンス嬢も拳で何かを床に殴り付けた・・・・・・え?
 私はぎこちない動作でギーシャの足元を見ると、そこには太った蝙蝠のような物体が二つ転がっている。何あれ?
 呆然としていると、マリス嬢がそれに駆け寄り、手を翳し、唱えた。

「闇より生まれし者よ、白き光の中へ帰れ!」

 瞬間、謎の蝙蝠は白い光に包まれ、塵のように消えていった。マリス嬢が浄化したのだ。
 それを見て、遅ればせながらそれの正体に気づき、私は椅子を倒しながら立ち上がり叫んだ。

「闇魔法!」
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