修羅場を観察していたら巻き込まれました。

夢草 蝶

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第一章 公爵令嬢曰く、「好奇心は台風の目に他ならない」

鳩の瞳

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 聖羽宮に辿り着くと、昨日と同じようにお父様の寝室へ向かった。
 扉の前に立つと、ノックしようと軽く握った手で叩こうとしたが、室内からお父様の声がして手を下ろした。
 つい、気になって聞き耳を立ててしまう。
 中からは微かにお父様の穏やかな声がする。

「そっか。ありがとう、じゃあ引き続きお願いするね。これは報酬の胡桃だよ」

 内容から相手にピンと来て、私はノックをした。

「どうぞ」

 入室許可を貰い、部屋に入る。

「失礼します。お父様」
「いらっしゃい、ミリア。町は楽しかった? って訊きたいところだけど、大変だったみたいだね」

 ああ、やっぱり。完全に把握されてるなぁ。
 窓の外に消えていった縞模様の尻尾を目で追い、お父様に歩み寄った。

「何か相談かな?」
「わざわざ訊くんですか? お父様、見てたんじゃないですか?」
「やだなぁ。は借りてないよ。ただ、町でミリアたちを見かけたっていう子から話を訊いただけ」
「鳩ですか?」
「そうだよ。気づいてたんだね。偉い偉い」

 よしよしとお父様に頭を撫でられる。親に頭を撫でられるって落ち着くなぁ。前世も今世も親に恵まれていると思う。前々世の私はどんな特を積んだんだろ? 前世があるんだから、きっと前々世もあるよね。
 と、脱線した。
 私はお父様に相談に来たんだった。あの闇魔法について。
 シーエンス家で鳩を見てから、お父様に相談することは決めてた。お父様も大体の事情は察しているだろう。鳩から訊いて。
 お父様の得意とする魔法は生き物と対話をする魔法だ。会話だけでなく、視覚や聴覚を共有することも出来る。寝込みがちなお父様の情報網だ。鳥や、さっきまで話していたリスなどはお父様の目となり、耳となる。この魔法を駆使してお父様はあらゆる情報を集め、トラブルを事前に察知し、王様と協力して火の粉が降りかかる前に対処してきたそうだ。
 だから、お父様なら闇魔法を操る者についての手掛かりを知っているかもしれない。知らなくても、お父様の魔法で捜査してもらえれば尻尾を掴めるだろう。

「秘匿の防壁、ここに成れ」

 私は呪文を唱え、室内を防音にしてからお父様に話を切り出した。
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