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第一章 公爵令嬢曰く、「好奇心は台風の目に他ならない」
縦ロール子爵
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「何者だ!」
ばんっと鋭い声を共に扉が開かれる。
入って来たのは二人の男性。後ろにいる痩せぎみの初老男性は初めましてだけど、扉を開けた人には見覚えがある。あの前衛的な髭は忘れようがない。
だって、カールしてるんだもの。しかも、ゼンマイみたいなやつじゃなくて、お姫様の縦ロール的なやつ。めっちゃさらさらなの。キューティクルなの。口の前に掛かってて、ご飯の時、どうしてるのかなーって下のお兄様に訊いたら、どうやら首の後ろで結んでいるらしいという答えを貰った。
その時、私とお兄様は同じことを思った。
──切ればいいのに。
と。
あの髭を見て、そんなエピソードが脳内で甦る。
そうだ。この人は──。
「あ、貴方は──レイセン王国が縦ロールの貴族令嬢率大陸最下位の原因! ロールタ・テロール子爵!」
ちなみに、この子爵は無印の初代『祝愛のマナ』にもちらっと登場していた。立ち絵はあったけど、ボイスはなかったし、アニメとかにも登場しなかったから声じゃ気づけなかった。
あのラブとシリアスを煮詰めたような『祝愛のマナ』でも数少ない意味不明なギャグ要素! なのに、インパクト抜群の髭で一部界隈ではずっと語り継がれていた、ある意味伝説の人物!
え!? この人が襲撃を指示した人? ゲームでどういう立ち位置の人だっけ? 髭のインパクトしか記憶にない!
「何の話だ!? ん? その金の髪に薔薇色の瞳──見覚えがある。メイアーツ家の次女、ミリア・メイアーツ嬢でしょうか」
「あ、はい」
テロール子爵は私がメイアーツの娘と察すると、態度を僅かに変えた。
私はついつい頷いてしまった。まぁ、金髪の人間は五万といるけど、王家の血筋を引く金髪の人は色合いに特徴があるし、メイアーツの人間は代々瞳が赤系だからなぁ。私の場合、お父様とお母様の血が丁度半々って感じだけど。
「ここで一体何を? 先程、貴女に似た女性の声を──いや、遠回しな言い方はやめましょう。イクス、何故結界を解いた?」
「えー? 別に解いてないけど? ちょーっと穴開けただけで」
「それでは結界の意味がなかろう!」
「お前という奴は・・・・・・一体何がしたいんだ?」
「人生を楽しみたい! それだけ!」
呆れる周囲なんてお構い無しにイクスは答えた。
・・・・・・あ、この人、ただの愉快犯だ。
そのことに気づいて、思わず脱力して壁に寄りかかった。何の策略も狙いもなく、単に興味本意で私に協力染みた真似をしてたのだ。変に勘繰って損した・・・・・・じゃない! 今はこの状況が問題だ!
「成程。どうやら、先程の会話を聞かれてしまったようですね」
「何のことでしょう? ──なんて言い訳は通用しませんよね?」
「残念ながら」
「では、お訊きします。何のためにあんなことを?」
お互いにやってたことがバレてる以上、下手な駆け引きは無意味だろう。元々、そういうの得意じゃないし。
私は単刀直入にテロール子爵に今回の目的を訊ねた。
テロール子爵は答える。
「決まっています。魔法の神聖を守るため。その担い手となるべき祝福を受けたマリス・リアルージュに自身の役目を再確認させ、更なる成長を遂げさせるためです!」
高らかに答えたテロール子爵の瞳はまるで、飴のようにとろりと溶け、うっとりとしていた。
その表情を見て、私はえも言われぬ怖気を感じた。
ばんっと鋭い声を共に扉が開かれる。
入って来たのは二人の男性。後ろにいる痩せぎみの初老男性は初めましてだけど、扉を開けた人には見覚えがある。あの前衛的な髭は忘れようがない。
だって、カールしてるんだもの。しかも、ゼンマイみたいなやつじゃなくて、お姫様の縦ロール的なやつ。めっちゃさらさらなの。キューティクルなの。口の前に掛かってて、ご飯の時、どうしてるのかなーって下のお兄様に訊いたら、どうやら首の後ろで結んでいるらしいという答えを貰った。
その時、私とお兄様は同じことを思った。
──切ればいいのに。
と。
あの髭を見て、そんなエピソードが脳内で甦る。
そうだ。この人は──。
「あ、貴方は──レイセン王国が縦ロールの貴族令嬢率大陸最下位の原因! ロールタ・テロール子爵!」
ちなみに、この子爵は無印の初代『祝愛のマナ』にもちらっと登場していた。立ち絵はあったけど、ボイスはなかったし、アニメとかにも登場しなかったから声じゃ気づけなかった。
あのラブとシリアスを煮詰めたような『祝愛のマナ』でも数少ない意味不明なギャグ要素! なのに、インパクト抜群の髭で一部界隈ではずっと語り継がれていた、ある意味伝説の人物!
え!? この人が襲撃を指示した人? ゲームでどういう立ち位置の人だっけ? 髭のインパクトしか記憶にない!
「何の話だ!? ん? その金の髪に薔薇色の瞳──見覚えがある。メイアーツ家の次女、ミリア・メイアーツ嬢でしょうか」
「あ、はい」
テロール子爵は私がメイアーツの娘と察すると、態度を僅かに変えた。
私はついつい頷いてしまった。まぁ、金髪の人間は五万といるけど、王家の血筋を引く金髪の人は色合いに特徴があるし、メイアーツの人間は代々瞳が赤系だからなぁ。私の場合、お父様とお母様の血が丁度半々って感じだけど。
「ここで一体何を? 先程、貴女に似た女性の声を──いや、遠回しな言い方はやめましょう。イクス、何故結界を解いた?」
「えー? 別に解いてないけど? ちょーっと穴開けただけで」
「それでは結界の意味がなかろう!」
「お前という奴は・・・・・・一体何がしたいんだ?」
「人生を楽しみたい! それだけ!」
呆れる周囲なんてお構い無しにイクスは答えた。
・・・・・・あ、この人、ただの愉快犯だ。
そのことに気づいて、思わず脱力して壁に寄りかかった。何の策略も狙いもなく、単に興味本意で私に協力染みた真似をしてたのだ。変に勘繰って損した・・・・・・じゃない! 今はこの状況が問題だ!
「成程。どうやら、先程の会話を聞かれてしまったようですね」
「何のことでしょう? ──なんて言い訳は通用しませんよね?」
「残念ながら」
「では、お訊きします。何のためにあんなことを?」
お互いにやってたことがバレてる以上、下手な駆け引きは無意味だろう。元々、そういうの得意じゃないし。
私は単刀直入にテロール子爵に今回の目的を訊ねた。
テロール子爵は答える。
「決まっています。魔法の神聖を守るため。その担い手となるべき祝福を受けたマリス・リアルージュに自身の役目を再確認させ、更なる成長を遂げさせるためです!」
高らかに答えたテロール子爵の瞳はまるで、飴のようにとろりと溶け、うっとりとしていた。
その表情を見て、私はえも言われぬ怖気を感じた。
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