修羅場を観察していたら巻き込まれました。

夢草 蝶

文字の大きさ
102 / 183
第一章 公爵令嬢曰く、「好奇心は台風の目に他ならない」

思い出したのは・・・・・・

しおりを挟む
「修羅場って・・・・・・?」
「まぁ、言ってしまえば三角関係なんだけど」
「わ~、嫌な予感がする~」
「笑みが乾いているわよ、ミリア」

 三角関係の修羅場なんて嫌な予感しかしない。
 ギーシャたちの場合は、色々不注意とか、カッとなっちゃったりとかあったけど、一晩経てマリス嬢とリンス嬢がクールダウンしてくれて話せたから割りとスムーズに進んだけど、こっちはどうだろう?
 というか、その三角関係の当事者って?

「絶対面倒くさそうだから訊きたくないけど、訊かなかったらパーティーで面倒起きそうだから訊くね。誰?」
「ラフィン伯爵」
「ラフィン? って、あのラフィン?」
「ええ」

 クロエが頷く。

「待って待って。ラフィン伯爵って──さっき同級生って言ってなかった?」

 ラフィン伯爵というのは知っている。
 フレイズ学園の経営にも関わっている家で、現当主のラフィン伯爵は理事会の役員を務めている。かなりの若作りで、学内にいると新任の先生から学生と間違えられる人だけど、立派な大人。確か、そろそろ三十歳だった筈──ラフィン家には今、学生の年頃の人はいなかったし。どういうことだろ?

「言ったわ。つまりね、ラフィン伯爵と女生徒二名の三角関係の末の修羅場なの」
「ええ────!!」
「ミリア、落ち着いて」

 びっくりし過ぎて叫んでしまった。
 目を白黒させている私をクロエが宥めてくれる。

「え? え? そりゃ、あの人外見十代だけど、立派な大人よ? しかも、理事会役員! それが女生徒とって──完全にスキャンダルじゃない!」

 何がどうしてそうなったの!?

「あ、いや婚約者とか? 貴族なら年の離れた婚約者なんてよくあるし──や、でも三角関係なのよね? 女生徒って誰!?」
「キャンリーチさんとクジカラさん。それから、ラフィン伯爵は今のところ独身で婚約者もいないわ」

 グミ・キャンリーチ嬢とネノ・クジカラ嬢か。
 グミ嬢は一年の時にクラスメイトだったから面識はあるけど、クジカラ嬢のことはほとんど知らないや。社交会とかで軽く挨拶とかはするけど。
 二人とも、タイプは違うけど、貴族令嬢としては模範生って感じの子たちだったと記憶している。そんな二人とラフィン伯爵が?

「二人とも、学園関係者と付き合うタイプには見えなかったけど。それに、ラフィン伯爵ってそんな真似する人だった?」
「私も人から訊いた話なんだけど、ラフィン伯爵家の前でその二人が激しい言い争いをしていたそうよ。それを伯爵が必死に宥めてたって。流石に殴り合いはしなかったみたいだけど」
「そりゃ、女の子は基本殴り合いはしないでしょ」

 あの二人は少し特殊だからね。
 でも、ラフィン伯爵が──ん? ラフィン伯爵?

「ねぇ、クロエ。今は三月よね?」
「何当たり前のこと言ってるの。卒業式を終えて、今は三月の春休み。私たちは中等部卒業したから宿題もないし、大いに羽を伸ばせるわね」
「中等部卒業の・・・・・・三月の春休み・・・・・・あ、あぁあ────!!!」
「ミリア、何度も大声上げると喉痛めるわよ。はい、飴あげる」

 クロエが可愛らしい包み紙のキャンディをくれた。

「わぁ、いちご味。ありがとう──って、喜んでる場合じゃない! あれだ! あれだ!」

 私はぶんぶん首を振って辺りを見渡した。いないいない! あ!

「いた──! リンス嬢!」
「わっ、びっくりした。何です?」

 偶然、別室から出てきたリンス嬢を見つけ、私は駆け寄ってリンス嬢を捕まえた。

「ヤバいんですよ! このままだとあの地獄が! そうだ、マリス嬢も!」
「は? 何の話──」
「クロエ! これ、ありがとう! 今度お礼するから何がいいか考えといて! 急用を思い出したから、悪いけど戻るね!」
「ええ。お役に立ててよかったわ。さっきの話、一応気をつけてね。それじゃあ」
「うん、ばいばーい。また明日ね」

 クロエに別れを告げると、私はリンス嬢の手を引いて大広間に戻り、そこを突っ切ってマリス嬢のいる小部屋に向かった。

「マリス嬢!」
「っ!? 何よ、急に」

 花瓶に花を生けていたマリス嬢が振り返る。手にはお姉様の薔薇を持っていたけど、花の話に花を咲かせてる場合でもなかった。
 何故なら、私たちは今、文字通り地獄の一町目に入るかどうかという選択肢を突きつけられているんだから。そして、これはギーシャには相談できないこと。だから私はマリス嬢とリンス嬢に向かって言い放った。

「エマージェンシー! 緊急転生者会議を行います!」
しおりを挟む
感想 104

あなたにおすすめの小説

婚約破棄された令嬢が記憶を消され、それを望んだ王子は後悔することになりました

kieiku
恋愛
「では、記憶消去の魔法を執行します」 王子に婚約破棄された公爵令嬢は、王子妃教育の知識を消し去るため、10歳以降の記憶を奪われることになった。そして記憶を失い、退行した令嬢の言葉が王子を後悔に突き落とす。

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

【完結】20年後の真実

ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。 マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。 それから20年。 マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。 そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。 おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。 全4話書き上げ済み。

王が気づいたのはあれから十年後

基本二度寝
恋愛
王太子は妃の肩を抱き、反対の手には息子の手を握る。 妃はまだ小さい娘を抱えて、夫に寄り添っていた。 仲睦まじいその王族家族の姿は、国民にも評判がよかった。 側室を取ることもなく、子に恵まれた王家。 王太子は妃を優しく見つめ、妃も王太子を愛しく見つめ返す。 王太子は今日、父から王の座を譲り受けた。 新たな国王の誕生だった。

婚約者に毒を飲まされた私から【毒を分解しました】と聞こえてきました。え?

こん
恋愛
成人パーティーに参加した私は言われのない罪で婚約者に問い詰められ、遂には毒殺をしようとしたと疑われる。 「あくまでシラを切るつもりだな。だが、これもお前がこれを飲めばわかる話だ。これを飲め!」 そう言って婚約者は毒の入ったグラスを渡す。渡された私は躊躇なくグラスを一気に煽る。味は普通だ。しかし、飲んでから30秒経ったあたりで苦しくなり初め、もう無理かも知れないと思った時だった。 【毒を検知しました】 「え?」 私から感情のない声がし、しまいには毒を分解してしまった。私が驚いている所に友達の魔法使いが駆けつける。 ※なろう様で掲載した作品を少し変えたものです

婚約者の心の声が聞こえるようになったが手遅れだった

神々廻
恋愛
《めんどー、何その嫌そうな顔。うっざ》 「殿下、ご機嫌麗しゅうございます」 婚約者の声が聞こえるようになったら.........婚約者に罵倒されてた.....怖い。 全3話完結

魅了魔法…?それで相思相愛ならいいんじゃないんですか。

iBuKi
恋愛
サフィリーン・ル・オルペウスである私がこの世界に誕生した瞬間から決まっていた既定路線。 クロード・レイ・インフェリア、大国インフェリア皇国の第一皇子といずれ婚約が結ばれること。 皇妃で将来の皇后でなんて、めっちゃくちゃ荷が重い。 こういう幼い頃に結ばれた物語にありがちなトラブル……ありそう。 私のこと気に入らないとか……ありそう? ところが、完璧な皇子様に婚約者に決定した瞬間から溺愛され続け、蜂蜜漬けにされていたけれど―― 絆されていたのに。 ミイラ取りはミイラなの? 気付いたら、皇子の隣には子爵令嬢が居て。 ――魅了魔法ですか…。 国家転覆とか、王権強奪とか、大変な事は絡んでないんですよね? いろいろ探ってましたけど、どうなったのでしょう。 ――考えることに、何だか疲れちゃったサフィリーン。 第一皇子とその方が相思相愛なら、魅了でも何でもいいんじゃないんですか? サクッと婚約解消のち、私はしばらく領地で静養しておきますね。 ✂---------------------------- 不定期更新です。 他サイトさまでも投稿しています。 10/09 あらすじを書き直し、付け足し?しました。

【完結】貴方をお慕いしておりました。婚約を解消してください。

暮田呉子
恋愛
公爵家の次男であるエルドは、伯爵家の次女リアーナと婚約していた。 リアーナは何かとエルドを苛立たせ、ある日「二度と顔を見せるな」と言ってしまった。 その翌日、二人の婚約は解消されることになった。 急な展開に困惑したエルドはリアーナに会おうとするが……。

処理中です...