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第一章 公爵令嬢曰く、「好奇心は台風の目に他ならない」

過程を省かなくても意味不明

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「このような形で拝謁が叶い、光栄に思います。ギーシャ殿下。私はパレンダル家次男、コク・パレンダルと申します」

 コクさんはギーシャの前で片膝をつく騎士の礼を取りながら、頭を下げた。

「ああ、東区の警邏隊を取り仕切っているパレンダル家の者か。面を上げてくれ。今の俺に礼は不要だ」
「はっ!」

 コクさんはギーシャの言葉に従い、顔を上げて立ち上がった。

「ミリアはどうして、パレンダルと一緒に帰って来たんだ? そもそも、どうして猫の爪に? 何か追加で購入したいものでもあったのか?」
「えっ!? いや、その~、実は」

 私はギーシャの質問にギクリとしたけど、これ以上誤魔化しても仕方ないと、猫の爪でレンタルした魔法道具の一部が壊れてしまったことを話した。
 いや、実際はイクスが原因だったんだけど、自分が壊したと思って、バレないようにこっそり直して貰おうとしていたわけだから、ちょっと話ずらかった。

「イクス・・・・・・あの野郎・・・・・・どこまで面倒掛ければ気が済むのよ」

 ひぇ!? マリス嬢からとんでもない黒いオーラが出ているのが見える。白の魔力の使い手なのに、黒いよ!
 どうやら、マリス嬢はイクスのことがよっぽど腹に据えかねているようだった。ギーシャが狙われたことが理由だろうけど、白の魔力と闇魔法。対照的な魔力を持つのも理由の一つかもしれない。
 ぼそりと聞こえたけど、女の子が野郎とか言っちゃダメだと思うよ?

「マリス? 何か言ったか?」
「いいえ。何も言ってませんわ。お気になさらず」

 おぉう。マリス嬢は今度は、ギーシャ相手に満面のスマイルを炸裂させている。これは恋する乙女ですわー。女って怖い。
 マリス嬢は流石体は乙女ゲームのヒロインのものと言ったところか、愛らしい顔立ちをしている。とは言え、多少の差分はあるようだ。
 ギーシャの前ではヒロインそっくりの顔だけど、それ以外の時──例えば私と話している時はまるで俯瞰したような目つきになる。全部どうでもいいと思っているような、そんな目。リンス嬢と話している時は吊り上げているけど。
 やっぱ、精神の影響だろうか。ギーシャといる時以外は表情がヒロインのマリスよりも大人びている。

「えーと、その・・・・・・ごめんなさい。急に出ていっちゃって」
「確かに少し驚いたが、魔法道具が壊れたのはミリアのせいではないだろう。そんなに落ち込むことはない。ただ、出来ればあまり一人で行動はしないで欲しい。心配になってしまうから」
「うん。ごめんね」

 少し眉を下げて言ったギーシャにもう一度謝った。
 どうしても一人で動いちゃう癖が抜けない。
 前世の影響かなぁ?
 もっと、公爵令嬢の自覚を持って、お母様やお姉様みたいに──ん? いや、あの二人も割りと単独行動多いぞ? え? ひょっとして血筋か?
 いやいや、二人はダイナミックでデンジャラスなところあるけど、私みたいにそそっかしくはない。
 じゃあ、単独行動は血筋でそそっかしいのは生まれつき? オー、ノー・・・・・・。

「ミリア、急にしゃがみこんでどうした? お腹でも痛いのか?」
「痛いのは頭かなぁ」

 血と性格の奇跡の残念コラボレーションに落ち込んでいると、リンス嬢が世間話のように私に訊ねた。

「ところで、結局どうして警邏隊の方と一緒に? 何かあったんですか?」
「え? えーと・・・・・・」

 私は頭の中を整理して、シーエンス家を出てからの一連の経緯を時系列順に並べて話した。

「猫の爪に向かう途中でエリックさんと会って、少し喫茶店で事情を説明してから猫の爪に行って、そしたら猫の爪がワカメに埋もれてて──」
「ん?」
「ワカメは何とかなったけど、ぬるぬるになったから温泉に入って──」
「え?」
「魔法道具の修理をして貰ってる間に、アリスさんやリリーちゃんとお喋りしてて、リリーちゃんが倒れてロイドさんがお部屋に運んで、その間にワカメテロって誤解したコクさん含む警邏隊の人が来て、ロイドさんがワカメ持って戻って来て」
「は?」
「ロイドさんがワカメ強盗犯に間違えられたけど、誤解は解けて、ロイドさんとコクさんと一緒にミソスープ作って、その間に修理が終わって、コクさんが送ってくれるって言うのでお言葉に甘えました! あ、これお土産に持たされたミソスープ! 魔法瓶だからまだ温かいですよ!」

「「「・・・・・・」」」

 私がミソスープの入った水筒を見せると、リンス嬢たちは三者三様の反応を見せた。
 ギーシャは興味深そうにミソスープの水筒を見つめ、リンス嬢は「何を言ってるんだ? こいつは」的な目で私を見て、マリス嬢は「温泉」の言葉に反応して目を爛々と輝かせている。

「あの、ごめんなさい。全く意味が分からないのだけど・・・・・・?」

 リンス嬢がおずおずと言う。

「ですから、ワカメに包まれて──」

 ん? 魔法道具直しに言ったのに、ワカメに襲われてミソスープ?

 私は当初の目的を思い出しながら、手元のミソスープを見た。

「魔法道具の修理を頼みに行って、ミソスープ作ってました・・・・・・?」

「「どうしてそうなるの」」

 またもや、マリス嬢とリンス嬢がキレイニハモった。
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