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第一章 公爵令嬢曰く、「好奇心は台風の目に他ならない」
謝罪
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さて、パーティーを始めましょう。
ざわめく会場に一歩踏み出す。
手にした魔法拡声器を口元に近づけ、
「皆様、ご歓談中失礼致します。今回司会進行を務めさせて頂きます。ミリア・メイアーツでございます。本日はお忙しい中、この卒業パーティーにお集まり頂き誠にありがとうございます」
皆の視線が壇上の私へ集まる。
マリス嬢に散々言われたけど、私とて公爵令嬢。最低限のTPOくらいは弁えている。
ちゃんと貴族令嬢に相応しい笑顔を張りつけて、会釈をし会場を見渡す。
──何故かデフォルメしたアーモンド型の猫見たいな目で見られた。何で?
変なところでもあるのかと気になったが、今首を傾げる訳にもいかない。目だけをきょろきょろ動かして原因を探る。
そこでクロエが両手で耳を塞いでこちらにメッセージを送ってきた。
・・・・・・そーいや、さっき魔法拡声器でやらかしたんだった。
「先程は失礼致しました~。ご安心下さい、魔法拡声器はすぐに手放しますから。なので、早速ですが本題に入らせて頂きます。これより、ギーシャ王子、リンス嬢、マリス嬢からお話があります。お三方、ご登壇下さい」
私の呼び掛けに、控え室からギーシャ、リンス嬢、マリス嬢の順に三人が出てきて、今日のために設置した壇上に登る。
瞬間、三人に視線が集中し、ひそひそと微かな声がそこかしこに立つ。
「皆様、ご静粛に願います」
少し声を固くして、けど威圧感を与えないように場を静める。
不快感を表さず、別になんでもないように微笑み、卒業パーティーでの一件を私は気にしてないという印象を植えつける。
「では、ギーシャ王子。お願いします」
「ああ」
ギーシャに魔法拡声器を手渡す。
体温低めの、ひんやりとした指先が触れた。
ギーシャは普段通りのポーカーフェイス。というか、無表情。けどそれが普段通りだから気にする人はいない。
表情には出ないが、一瞬ギーシャの喉仏が大きく上下した。実際に多くの視線に晒され、また緊張がせりあがってきたのだろう。ちらりとギーシャと視線があった。
私は口角を上げ、目で頑張って! とエールを送る。それはちゃんと伝わったらしく、ギーシャは母親を見つけたちっちゃい子見たいな表情をしてからまた会場の生徒たちに向き合う。
それから息を吸い込んで、
「まずは今日のために時間を作ってくれたことに感謝を。そしてこのように卒業パーティーの日取りを改めて行うことになってしまい、申し訳ない」
ギーシャが深々と頭を下げる。きっちり90度の最敬礼。マリス嬢とリンス嬢もそれに倣う。
また一瞬、生徒たちがざわついた。当然だろう。王族の旋毛を見たことのある生徒なんている訳ない。
だが、ギーシャの真っ直ぐな瞳に皆が口を閉ざす。つくりものめいた整った顔立ち、神秘的な淡い紫の瞳。本人に自覚はないだろうが、ギーシャは自分の見せ方が上手い。
王族としての資質か、或いは無意識に身につけた処世術かは分からないけど。
例えば、本心を伝える時は相手の瞳を真っ直ぐ見る。悲しい時は目を閉じるとか、どんなに鋭い問い掛けにも目を泳がせないとか。相手を納得させる説得力とでもいうのだろうか?
もしくはカリスマ性とか?
正直、向こうの人とはあまりいい思い出がないから認めたくないけど、建国以来武力をかざして純粋な力のみでレイセン王国よりも長い歴史を誇るエーデルグラン帝国の血かもしれない。
あんな血と暴力のロールフィルムみたいな一族なのに、帝国王家の威信は揺るがない。むしろ、その在り方こそが我らの王に相応しいと帝国民は思っている。そう思わせられるだけのカリスマみたいなものを持っているのだろう。
そういえば、ギーシャの父であり、ギーシャ同様に帝国王女を母に持つ王様もそういうところあるからなぁ。
ギーシャよりも濃い紫の瞳を持つ人たちを思い出しながら、私はギーシャたちを見守る。
「今回、このような事態になってしまったのは一重に俺の視野の狭さと浅はかな行動のせいだ。弁明の余地もない。ただ、皆があの場で目にしたものが全てであり、そこには政治的思惑や後ろめたい企てがある訳ではことだけは心に留めてほしい」
感謝、謝罪、釘刺し。
順当な手順で進められるスピーチ。
必須事項や注意事項のアナウンスは終わった。
肝心なのはここから。
これはパーティーを始めるために必要な清算であって、謝罪会見とはちょっと違う。
ギーシャたちの話が終われば、すぐにパーティーを始めて空気を変える。質疑応答の時間は取らない。
祭好きな皆であれば、すぐにパーティーに夢中になるだろうけど、終わればまた疑問が出てくる可能性もある。ここでいかに、伏せるべきことを伏せて、納得のいく説明をして奉仕部の説明に持っていくかが肝となる。
ギーシャなら大丈夫だろうけど、むしろこっちがドキドキしてきた。
喉が渇く。ソフトドリンクがほしい。
──会場を見て笑ったギーシャは、どんな言葉を紡ぐのだろうか。
ざわめく会場に一歩踏み出す。
手にした魔法拡声器を口元に近づけ、
「皆様、ご歓談中失礼致します。今回司会進行を務めさせて頂きます。ミリア・メイアーツでございます。本日はお忙しい中、この卒業パーティーにお集まり頂き誠にありがとうございます」
皆の視線が壇上の私へ集まる。
マリス嬢に散々言われたけど、私とて公爵令嬢。最低限のTPOくらいは弁えている。
ちゃんと貴族令嬢に相応しい笑顔を張りつけて、会釈をし会場を見渡す。
──何故かデフォルメしたアーモンド型の猫見たいな目で見られた。何で?
変なところでもあるのかと気になったが、今首を傾げる訳にもいかない。目だけをきょろきょろ動かして原因を探る。
そこでクロエが両手で耳を塞いでこちらにメッセージを送ってきた。
・・・・・・そーいや、さっき魔法拡声器でやらかしたんだった。
「先程は失礼致しました~。ご安心下さい、魔法拡声器はすぐに手放しますから。なので、早速ですが本題に入らせて頂きます。これより、ギーシャ王子、リンス嬢、マリス嬢からお話があります。お三方、ご登壇下さい」
私の呼び掛けに、控え室からギーシャ、リンス嬢、マリス嬢の順に三人が出てきて、今日のために設置した壇上に登る。
瞬間、三人に視線が集中し、ひそひそと微かな声がそこかしこに立つ。
「皆様、ご静粛に願います」
少し声を固くして、けど威圧感を与えないように場を静める。
不快感を表さず、別になんでもないように微笑み、卒業パーティーでの一件を私は気にしてないという印象を植えつける。
「では、ギーシャ王子。お願いします」
「ああ」
ギーシャに魔法拡声器を手渡す。
体温低めの、ひんやりとした指先が触れた。
ギーシャは普段通りのポーカーフェイス。というか、無表情。けどそれが普段通りだから気にする人はいない。
表情には出ないが、一瞬ギーシャの喉仏が大きく上下した。実際に多くの視線に晒され、また緊張がせりあがってきたのだろう。ちらりとギーシャと視線があった。
私は口角を上げ、目で頑張って! とエールを送る。それはちゃんと伝わったらしく、ギーシャは母親を見つけたちっちゃい子見たいな表情をしてからまた会場の生徒たちに向き合う。
それから息を吸い込んで、
「まずは今日のために時間を作ってくれたことに感謝を。そしてこのように卒業パーティーの日取りを改めて行うことになってしまい、申し訳ない」
ギーシャが深々と頭を下げる。きっちり90度の最敬礼。マリス嬢とリンス嬢もそれに倣う。
また一瞬、生徒たちがざわついた。当然だろう。王族の旋毛を見たことのある生徒なんている訳ない。
だが、ギーシャの真っ直ぐな瞳に皆が口を閉ざす。つくりものめいた整った顔立ち、神秘的な淡い紫の瞳。本人に自覚はないだろうが、ギーシャは自分の見せ方が上手い。
王族としての資質か、或いは無意識に身につけた処世術かは分からないけど。
例えば、本心を伝える時は相手の瞳を真っ直ぐ見る。悲しい時は目を閉じるとか、どんなに鋭い問い掛けにも目を泳がせないとか。相手を納得させる説得力とでもいうのだろうか?
もしくはカリスマ性とか?
正直、向こうの人とはあまりいい思い出がないから認めたくないけど、建国以来武力をかざして純粋な力のみでレイセン王国よりも長い歴史を誇るエーデルグラン帝国の血かもしれない。
あんな血と暴力のロールフィルムみたいな一族なのに、帝国王家の威信は揺るがない。むしろ、その在り方こそが我らの王に相応しいと帝国民は思っている。そう思わせられるだけのカリスマみたいなものを持っているのだろう。
そういえば、ギーシャの父であり、ギーシャ同様に帝国王女を母に持つ王様もそういうところあるからなぁ。
ギーシャよりも濃い紫の瞳を持つ人たちを思い出しながら、私はギーシャたちを見守る。
「今回、このような事態になってしまったのは一重に俺の視野の狭さと浅はかな行動のせいだ。弁明の余地もない。ただ、皆があの場で目にしたものが全てであり、そこには政治的思惑や後ろめたい企てがある訳ではことだけは心に留めてほしい」
感謝、謝罪、釘刺し。
順当な手順で進められるスピーチ。
必須事項や注意事項のアナウンスは終わった。
肝心なのはここから。
これはパーティーを始めるために必要な清算であって、謝罪会見とはちょっと違う。
ギーシャたちの話が終われば、すぐにパーティーを始めて空気を変える。質疑応答の時間は取らない。
祭好きな皆であれば、すぐにパーティーに夢中になるだろうけど、終わればまた疑問が出てくる可能性もある。ここでいかに、伏せるべきことを伏せて、納得のいく説明をして奉仕部の説明に持っていくかが肝となる。
ギーシャなら大丈夫だろうけど、むしろこっちがドキドキしてきた。
喉が渇く。ソフトドリンクがほしい。
──会場を見て笑ったギーシャは、どんな言葉を紡ぐのだろうか。
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