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第六話 恋人に向いていない人たち
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「よし決まり! じゃあ、これから三ヶ月は俺とキャシーも二人公認の恋人だから、遠慮なくイチャイチャ出来るね! という訳で、キャシー。場所を変えて遊ぼう!」
「やったー!」
話が纏まるや否や、ロッシーはハイテンションでキャサリンと共に旧準備室から風のように出ていった。
元々遠慮する気はないと言わんばかりの態度だっのに、これで箍を外されては堪らないと二人は扉の向こうに向かって叫んだ。
「おい!」
「一線は越えないでくださいよっ!」
「またやったらその時点で打つからな!」
注意の言葉に、開いた扉の端からひょっこりと後ろに傾いたロッシーが顔を見せ、片手で小さな丸を作った。
「オーケーオーケー! 期間中は健全な交際の範囲に留めておくよ。だから、二人もちゃんと健全な交際をするんだよ~」
「そんな不健全な真似するかっ! 貴様らではあるまいし!」
憤慨して言い返すアレックスを他所に、ロッシーは軽やかな足音を響かせて今度こそ去っていった。
旧準備室には、レティシアとアレックスが取り残される。
「「・・・・・・・・・・・・」」
気まずい沈黙が流れた。
つい、都合がいい話だと乗っかってしまったが、散々共に婚約者たちの浮気を共に説教してきた者同士。それがいきなり恋人になるというのは、天と地がいきなりひっくり返ったくらいに信じがたいことだった。
先に沈黙を破ったのは、レティシアだった。
「あー、えーと・・・・・・何か、三ヶ月恋人になりました。レティシア・ソルシェです。よろしくお願い致します」
「あ、ああ。アレックス・フローセルだ。よろしく頼む」
互いの名前などとうに知っているというのに、ぎこちなく自己紹介をし合って会釈礼をする姿はまるで、お見合いの初めての顔合わせの場面のようだ。
「まぁ、何だ。俺たちに有利な条件とはいえ、上手くロッシー・クレアランブルの遊びに乗せられた感が否めんな」
「完全に楽しんでる顔でしたからねぇ」
普通なら思いつかない、思いついてもやろうとはならないであろう婚約者の交換を提案してきたロッシーの楽しそうな顔を思い浮かべ、レティシアは大きなため息を吐いた。
「あれで侯爵家の跡取りとは──大丈夫なのか?」
ロッシーはあれで一応、クレアランブル侯爵家の次期当主である。
にも関わらず、享楽主義で自由奔放な振る舞いの絶えない彼が、将来まともな侯爵になれるのか。
アレックス自身も、公爵家の跡取り息子であるため、自分からしてみれば信じがたいことばかりするロッシーにクレアランブル侯爵家の未来を憂慮した。
「そこら辺はまぁ、大丈夫でしょう。確かにロッシー様は人としても貴族としてもアレですが、クレアランブル侯爵家の当主としては、これ以上ない適正ですから」
アレックスの疑問に、レティシアはそう返した。
それは婚約者をフォローする意図は全くなく、ただ事実を述べただけである。
すんとした表情のレティシアの横顔を見つめ、アレックスはクレアランブル侯爵家のある話を思い出し、何も言わずに納得した。
「で? どうします?」
「何がだ?」
「いえ、一応恋人として過ごすことになった訳ですから。それっぽいことしないとロッシー様たちが納得しないと思いますし。かといって、正直に申し上げますと、私恋人同士がどうやって過ごすかなんて全く知識がないんですよね」
「そうか。俺もだ」
「「・・・・・・」」
話を恋人の件に戻したものの、一向に進まない。
この状況は、例えるなら文学者二人が世界中の数学者が誰一人として解けていない定理を解いてみろと言われているようなものだった。つまり知識ゼロ。何から始めるべきかすら分かっていないのであった。
「よし、とりあえず解散しよう」
早々に話し合いは無意味と結論を出したアレックスが堂々と言った。
「何をしたらいいか分からない以上、どうしようもない。どうせキャサリンたちが何か言ってくるだろうし、それをこなせば問題ないだろう。別に恋人になったからといって、ずっと一緒にいなくてはいけない決まりもないしな」
「そうですね。そういえば、私お昼がまだでした」
「ああ。俺も今日は日直で次の授業の準備があったな」
昼休みにやることを残していた二人は、このまま解散する運びとなった。
「色々と突拍子がないですが、ロッシー様とキャサリン様にお説教を続けて早三ヶ月。これは好機です。お互い頑張りましょう」
「勿論だ。そもそもこの条件で負ける訳ないしな」
「では、また」
「ああ」
健闘を誓い合い、恋人という名の共同戦線を張ることになったレティシアとアレックスは、ここに来る時と変わらない態度で別れた。
廊下を歩いていたレティシアは、一度立ち止まり、後ろを振り返る。
自分とは真逆の方へ小さくなっていくアレックスの背中が見えた。
(大分おかしなことになりましたね──って、あれ? ひょっとして、私これから三ヶ月の間、今まで以上にアレックス様と一緒に行動することになるんじゃ──)
今更ながら、そんなことに気づいてレティシアは青褪めた。
そもそもレティシアは、アレックスのことは嫌いではないものの、苦手なのだ。
毎度キャサリンがロッシーとどこかへ姿を消すと、レティシアの元へ突撃してやりたくもない捜索・お説教に強引に連れていくものだから、この三ヶ月で大分胃を痛めてしまった。
そんなアレックスと、三ヶ月限定とはいえ、恋人同士に。
レティシアは段々キリキリと悲鳴を上げ出した腹部を制服の上から押さえた。
「うぅ! また胃が・・・・・・今日のお昼はお腹に優しいものにしましょう。食堂のメニューにお粥とかありましたっけ・・・・・・?」
レティシアはそう言いながら、よろよろしながら近道をするために中庭へと向かって行った。
「やったー!」
話が纏まるや否や、ロッシーはハイテンションでキャサリンと共に旧準備室から風のように出ていった。
元々遠慮する気はないと言わんばかりの態度だっのに、これで箍を外されては堪らないと二人は扉の向こうに向かって叫んだ。
「おい!」
「一線は越えないでくださいよっ!」
「またやったらその時点で打つからな!」
注意の言葉に、開いた扉の端からひょっこりと後ろに傾いたロッシーが顔を見せ、片手で小さな丸を作った。
「オーケーオーケー! 期間中は健全な交際の範囲に留めておくよ。だから、二人もちゃんと健全な交際をするんだよ~」
「そんな不健全な真似するかっ! 貴様らではあるまいし!」
憤慨して言い返すアレックスを他所に、ロッシーは軽やかな足音を響かせて今度こそ去っていった。
旧準備室には、レティシアとアレックスが取り残される。
「「・・・・・・・・・・・・」」
気まずい沈黙が流れた。
つい、都合がいい話だと乗っかってしまったが、散々共に婚約者たちの浮気を共に説教してきた者同士。それがいきなり恋人になるというのは、天と地がいきなりひっくり返ったくらいに信じがたいことだった。
先に沈黙を破ったのは、レティシアだった。
「あー、えーと・・・・・・何か、三ヶ月恋人になりました。レティシア・ソルシェです。よろしくお願い致します」
「あ、ああ。アレックス・フローセルだ。よろしく頼む」
互いの名前などとうに知っているというのに、ぎこちなく自己紹介をし合って会釈礼をする姿はまるで、お見合いの初めての顔合わせの場面のようだ。
「まぁ、何だ。俺たちに有利な条件とはいえ、上手くロッシー・クレアランブルの遊びに乗せられた感が否めんな」
「完全に楽しんでる顔でしたからねぇ」
普通なら思いつかない、思いついてもやろうとはならないであろう婚約者の交換を提案してきたロッシーの楽しそうな顔を思い浮かべ、レティシアは大きなため息を吐いた。
「あれで侯爵家の跡取りとは──大丈夫なのか?」
ロッシーはあれで一応、クレアランブル侯爵家の次期当主である。
にも関わらず、享楽主義で自由奔放な振る舞いの絶えない彼が、将来まともな侯爵になれるのか。
アレックス自身も、公爵家の跡取り息子であるため、自分からしてみれば信じがたいことばかりするロッシーにクレアランブル侯爵家の未来を憂慮した。
「そこら辺はまぁ、大丈夫でしょう。確かにロッシー様は人としても貴族としてもアレですが、クレアランブル侯爵家の当主としては、これ以上ない適正ですから」
アレックスの疑問に、レティシアはそう返した。
それは婚約者をフォローする意図は全くなく、ただ事実を述べただけである。
すんとした表情のレティシアの横顔を見つめ、アレックスはクレアランブル侯爵家のある話を思い出し、何も言わずに納得した。
「で? どうします?」
「何がだ?」
「いえ、一応恋人として過ごすことになった訳ですから。それっぽいことしないとロッシー様たちが納得しないと思いますし。かといって、正直に申し上げますと、私恋人同士がどうやって過ごすかなんて全く知識がないんですよね」
「そうか。俺もだ」
「「・・・・・・」」
話を恋人の件に戻したものの、一向に進まない。
この状況は、例えるなら文学者二人が世界中の数学者が誰一人として解けていない定理を解いてみろと言われているようなものだった。つまり知識ゼロ。何から始めるべきかすら分かっていないのであった。
「よし、とりあえず解散しよう」
早々に話し合いは無意味と結論を出したアレックスが堂々と言った。
「何をしたらいいか分からない以上、どうしようもない。どうせキャサリンたちが何か言ってくるだろうし、それをこなせば問題ないだろう。別に恋人になったからといって、ずっと一緒にいなくてはいけない決まりもないしな」
「そうですね。そういえば、私お昼がまだでした」
「ああ。俺も今日は日直で次の授業の準備があったな」
昼休みにやることを残していた二人は、このまま解散する運びとなった。
「色々と突拍子がないですが、ロッシー様とキャサリン様にお説教を続けて早三ヶ月。これは好機です。お互い頑張りましょう」
「勿論だ。そもそもこの条件で負ける訳ないしな」
「では、また」
「ああ」
健闘を誓い合い、恋人という名の共同戦線を張ることになったレティシアとアレックスは、ここに来る時と変わらない態度で別れた。
廊下を歩いていたレティシアは、一度立ち止まり、後ろを振り返る。
自分とは真逆の方へ小さくなっていくアレックスの背中が見えた。
(大分おかしなことになりましたね──って、あれ? ひょっとして、私これから三ヶ月の間、今まで以上にアレックス様と一緒に行動することになるんじゃ──)
今更ながら、そんなことに気づいてレティシアは青褪めた。
そもそもレティシアは、アレックスのことは嫌いではないものの、苦手なのだ。
毎度キャサリンがロッシーとどこかへ姿を消すと、レティシアの元へ突撃してやりたくもない捜索・お説教に強引に連れていくものだから、この三ヶ月で大分胃を痛めてしまった。
そんなアレックスと、三ヶ月限定とはいえ、恋人同士に。
レティシアは段々キリキリと悲鳴を上げ出した腹部を制服の上から押さえた。
「うぅ! また胃が・・・・・・今日のお昼はお腹に優しいものにしましょう。食堂のメニューにお粥とかありましたっけ・・・・・・?」
レティシアはそう言いながら、よろよろしながら近道をするために中庭へと向かって行った。
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