【完結済】後悔していると言われても、ねぇ。私はもう……。

木嶋うめ香

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未来はどこに

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「スクテラリアの死などどうでもいい。どうしてお前の父が魔神などと嘘を言うのだ」

 シオン殿下は、私の死よりも殿下は聞いたことすらない魔神が自分の父親の双子の弟の父親だという方が気になるようです。

『なかなか次の王は屑だな。長年の婚約者の死よりも気になるものがあるとは魔神である私すら呆れる』

 そう言いながら魔神は楽しそうにお兄様とシオン殿下のやり取りを見ています。
 シオン殿下はお父様の父親が気になり、スィートピーは自分が王宮に行ったきりになるというお兄様の言葉が気になりつつも、シオン殿下の勢いに押されて何も言えなくなっている様です。

『従妹になるのか、あれは』
『スィートピーはそうですね。ですがもうずっと妹でした。大切な可愛い妹でしたが、彼女は違っていたみたいですね』

 何が悪かったというのでしょうか。
 王宮に私だけが綺麗なドレスを着て通っていた事でしょうか。
 それとも、見た目だけはいいシオン殿下の婚約者に私がなっていたことでしょうか。
 それとも私が姉になってしまったばかりに、お父様とお母様の意識が私に向いていたと寂しく感じていたのでしょうか。
 確かに二人は私を大切に愛してくれました。
 でもそれは、お母様が自分の妹を愛していたからと、私があまりにも不憫だったからです。

 シオン殿下の一言で私はお兄様の本当の妹になる為、お父様とお母様の実子と変更し届けられました。
 お母様の実家は伯爵家でしたし、お母様の妹、私の実母の嫁ぎ先も伯爵家でした。
 公爵家の養女になれば問題ないと陛下は最初仰いましたが、実の両親がどちらも伯爵家なのは嫌だと幼いシオン殿下に我儘を言われて私はローダン公爵家の実子となったのです。
 つまり伯爵家の娘だった私は存在を消されてしまったのです。
 幼い私は、自分の両親が亡くなった事を幼いながらに理解していました。
 まだ従兄であったお兄様との婚約が決まるからその為の準備に神殿に行くからねと、両親は亡くなる日の朝私にそう言って屋敷を出て行ったのです。
 ですがいくら待っても二人は帰っては来ませんでした。

 両親が亡くなり、亡くなったお父様の弟が家を継ぐと決まりました。
 叔父様はお父様の代わりとして、私を育て二人の娘としてローダン家に嫁がせてあげるからねと約束してくれました。私が生まれてからずっと可愛がってくれていて、私を実の娘の様に愛してくれていたのです。
 まだ独身の叔父様は若く、二人の喪が明けてから婚約者と婚姻し家を継ぐ予定でした。
 現在の二人には男の子と女の子が一人ずついます。本来であれば私の父方の従兄弟ですが、ローダン家の娘である私には繋がりが無い事になっています。
 私の本当の家との交流を、陛下達は厭っていた為今はこっそりと叔父様と手紙のやり取りをする事しか出来ません。

 婚約するはずだった人をお兄様と呼ぶ不幸。
 自分の出自を偽り、伯母である人を実母と呼ぶ不幸。
 望まれた筈の婚約の筈が、私を望んだ本人であるシオン殿下に冷たくされまともにエスコートもされず、誕生日を祝われることもない、そんな人に嫁がなければならない不幸。

 王家の命令で、私の実の両親になってしまった二人は、嫁ぐ前も嫁いだ後も不幸にしかなれない私を気の毒に思い、優しくしてくれていたのです。

 お母様は真実をしりませんが、お父様は魔神の子です。
 私が王家に嫁いで、子を産んだ後どうなるかを魔神の子であるお父様はご存じです。
 不思議な話ですが、魔神の子達は生まれてすぐに自分が何の子であるか自覚するそうです。

 王家には男子は一人しか生まれません。

 王家の血を残す、国を守る。

 それが王家と魔神の契約だからです。
 魔神の力で陛下と王妃から男子が一人必ず生まれ、次の世継ぎが生まれるまではその男子の健康を魔神は維持出来る様にします。
 ですから王子は大きな病気や怪我は絶対にしません。
 王妃が男子を産まないという事もないのです。

 ただ、お父様の代。
 つまり前王妃様を魔神はとても気に入っていたのだそうです。
 ですから、魔神は自分の息子も産んで貰おうと前王妃が懐妊した直後に自分も前王妃と交わり、魔神の力で自分の子も同じ腹に宿させたのだそうです。

 前王妃は、魔神の行いに精神を狂わせたそうです。
 穏やかな表情や行動を魔神に維持させられた前王妃は、狂った心でお腹の子を育て二人の王子を産みました。

 当時の陛下は王妃を愛しながら魔神との契約通り、王妃とは会わずに最初の王子にのみ名前を付けました。
 弟として生まれた魔神を父に持つ子供の名を付けたのは、陛下でも狂った王妃でも無く魔神です。
 
 生まれた時から魔神が自分の父だと自覚し穏やかで賢かった弟王子は、王家の血を残すという王家と魔神の契約を守る為、臣下たちから次の王にと望まれながらも王座を望まず体が弱いという理由を付けて公爵家を興したのです。
 
 私達には優しいお父様ですが、陛下にはとても意地悪で、臣下たちには見えないところで陛下に嫌がらせをし続けていたようです。
 魔神は自分の物を、誰かに好き勝手されるのをとても嫌います。
 魔神の子であるお父様も同じで、自分が愛していた貴族令嬢であったお母様を側妃にしようとしていた自分の兄を憎んでいたのです。
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