8 / 310
夫の勘違い
しおりを挟む
「旦那様は二人の結婚は政だと、若様の妻が王族の血を受け継いだお子を生むことが何より大事なのだから、一日も早くめでたい知らせを聞かせて欲しい。確かにそう仰っていました。ですが、若様は……」
呆れることにリチャードは、お義父様の言葉を無視してピーターの気持ちに沿って動いていた様です。
当然のことながらお義父様は私とピーターの結婚を正しく政略と理解していた様です。
それは当たり前です、お義父様は私とピーターの間に生まれた女の子を現在の王太子の息子の婚約者にしたいと考えて、私を息子の妻にと願い出たのですから。
私の従兄であるこの国の第一王子で王太子の彼は、すでに妻帯していて子供も生まれています。
現状彼の子供は女の子だけです。この国では女の子は爵位を継げず当然王位も継げません、ですから王太子妃はこれから何としてでも男児を産まなくてはならず、まだ生まれていない男児の婚約者の座をお義父様はだけでは無く高位貴族達の殆どが狙っています。
何せ王太子の息子は未来の王になるかもしれない存在ですし、その妻は王妃です。
王妃の両親は、次の王の祖父母、野心がある家なら望まない筈がありません。
私にはまだ子が授かっていませんが、幸いなことに王家に生まれたのは女児のみ、王子の婚約者が年上というのは今までありませんから、これから男児が生まれその後に私が女児を産むのが理想といえば理想です。
王妃の親、それはお義父だけではなく私の父の望みでもあります。そうでなければ私を侯爵家の嫁に等してはいないでしょう。
父の代辺りまでは、公爵家と王家の血筋での結婚が多く縁付いており私の両親も従兄弟同士ですが、昨今では血が近すぎると言い出す者がおり王太子の結婚相手の血筋を離そうという風潮があります。
それを見越した父は、私をこの家に嫁がせました。
私を父の従兄弟の血筋である公爵家ではなくネルツ侯爵家に嫁がせたのは、数代前に王家から王女がネルツ家に嫁いでいる家柄である事と、父の従兄弟ではない事が理由です。
ピーターは真面目でも凡庸で王太子殿下の側近候補にすら選ばれませんでしたし、勤務した場所も侯爵家の嫡男が腰掛にするにも首を傾げたくなるような部署でした。
ピーターの長所はそんな部署でも真面目に勤務し、侯爵家の嫡男という立場にも関わらず誰にでも人当たりがいい人だったというところです。
頑固で癇癪持ちなところはありましたが、そこは職場では上手く隠していたのでしょう。
特別褒められるところは無くても、真面目それが職場での彼の評価だと聞いています。
けれど、政治の中枢に入り込みたいお義父様には、それが不満だった様です。
社交界で夫の噂を聞く度に、侯爵家などではなくもっと格下の家に生まれていたのなら彼は幸せに生きていけたのかもしれないと考えました。
真面目なだけが取り柄の、頑固で癇癪持ちで目立った能力もなければ野心も無い男だと私は思い込んでいました。
だからこそ、私に対して恐ろしい行為を行っていたのは驚きでした。
「あの人が何を言ったの」
「奥様が自分に一目惚れして、どうしても結婚したいと陛下に我儘を言ったために、自分は愛する人と無理矢理別れさせられたのだと」
「十歳違うのよ、あの頃私は社交界にすら出ていなかった子供よ、王宮に仕える騎士なら見掛けることも辛うじてあったのかもしれないわね。でも彼は文官で、私の従兄弟(第一王子)の側近候補ですら無かったわ」
馬鹿馬鹿しくて話になりません。
「そもそも私はその頃、留学準備の為の勉強に忙しくて誰かに懸想する暇なんてありはしなかったわ。結婚させられたせいでその留学も取りやめになって、私にとって一つもいいことが無い結婚生活の最後にこんな馬鹿馬鹿しい話を聞くとはね」
呆然とするリチャードに吐き捨てる様に言えば、足音も立てずにタオが新しいお茶を入れそっと焼き菓子が盛られた皿を私の前に置きました。
「奥様」
「ありがとう、タオ。人ってあまりにも怒りの感情が湧きすぎるとかえって冷静になるのかしらね」
「怒りの相手が亡くなっているのですから仕方ございませんね。奥様は兎も角大旦那様は冷静になられるかわかりかねますが」
「そうね。事故で死なずとも偽の署名などして立派な書類偽造をし、且つ私の体を害したと知れば父が彼の命を刈り取ってくれたでしょうに、残念ねぇ」
床に蹲り震えているリチャードには、そんな想像もつかなかったのでしょうか?
自分の本当の主であるお義父様の言葉を忘れてピーターの指示に従うくらいですから、私の父が誰なのか忘れてしまっていたのでしょうね。
「リチャード、あなたお義母様が平民で孤児の女性を受け入れると思ったの? あなたのご主人様は誰なのか忘れたのかしら、あなたのご主人様は侯爵ではないの? あなたがするべきことは、ピーターの手助けではなく彼を諌め、お義父様にそれを伝えることではないかしら。それとも可愛い若様の愛を実らせて上げたかった? 愚かね」
本当に愚かだと思います。
今回の馬車の事故がなくても、ピーターの策略を知れば父は本当に彼の命を刈り取ったでしょう。
それを考えることも出来ないなんて、だから彼は凡庸だというのです。
「それは」
「お義父様もお義母様も、父や私以上に血統主義だというのに、彼らを先に納得させずに二人を領地に連れて行っても命を取られて終わりでしょうに。婚姻届など認める筈がないわ。例え私が本当に子の出来ぬ体になっていたとしても離縁など認める筈がないのよ」
リチャードにこんなに親切に説明してあげる義理はありませんが、自分の中の感情を整理する意味もあり私は丁寧に話して聞かせました。
けれど愚かな執事は、私の言葉をただ震えて聞くだけだったのです。
呆れることにリチャードは、お義父様の言葉を無視してピーターの気持ちに沿って動いていた様です。
当然のことながらお義父様は私とピーターの結婚を正しく政略と理解していた様です。
それは当たり前です、お義父様は私とピーターの間に生まれた女の子を現在の王太子の息子の婚約者にしたいと考えて、私を息子の妻にと願い出たのですから。
私の従兄であるこの国の第一王子で王太子の彼は、すでに妻帯していて子供も生まれています。
現状彼の子供は女の子だけです。この国では女の子は爵位を継げず当然王位も継げません、ですから王太子妃はこれから何としてでも男児を産まなくてはならず、まだ生まれていない男児の婚約者の座をお義父様はだけでは無く高位貴族達の殆どが狙っています。
何せ王太子の息子は未来の王になるかもしれない存在ですし、その妻は王妃です。
王妃の両親は、次の王の祖父母、野心がある家なら望まない筈がありません。
私にはまだ子が授かっていませんが、幸いなことに王家に生まれたのは女児のみ、王子の婚約者が年上というのは今までありませんから、これから男児が生まれその後に私が女児を産むのが理想といえば理想です。
王妃の親、それはお義父だけではなく私の父の望みでもあります。そうでなければ私を侯爵家の嫁に等してはいないでしょう。
父の代辺りまでは、公爵家と王家の血筋での結婚が多く縁付いており私の両親も従兄弟同士ですが、昨今では血が近すぎると言い出す者がおり王太子の結婚相手の血筋を離そうという風潮があります。
それを見越した父は、私をこの家に嫁がせました。
私を父の従兄弟の血筋である公爵家ではなくネルツ侯爵家に嫁がせたのは、数代前に王家から王女がネルツ家に嫁いでいる家柄である事と、父の従兄弟ではない事が理由です。
ピーターは真面目でも凡庸で王太子殿下の側近候補にすら選ばれませんでしたし、勤務した場所も侯爵家の嫡男が腰掛にするにも首を傾げたくなるような部署でした。
ピーターの長所はそんな部署でも真面目に勤務し、侯爵家の嫡男という立場にも関わらず誰にでも人当たりがいい人だったというところです。
頑固で癇癪持ちなところはありましたが、そこは職場では上手く隠していたのでしょう。
特別褒められるところは無くても、真面目それが職場での彼の評価だと聞いています。
けれど、政治の中枢に入り込みたいお義父様には、それが不満だった様です。
社交界で夫の噂を聞く度に、侯爵家などではなくもっと格下の家に生まれていたのなら彼は幸せに生きていけたのかもしれないと考えました。
真面目なだけが取り柄の、頑固で癇癪持ちで目立った能力もなければ野心も無い男だと私は思い込んでいました。
だからこそ、私に対して恐ろしい行為を行っていたのは驚きでした。
「あの人が何を言ったの」
「奥様が自分に一目惚れして、どうしても結婚したいと陛下に我儘を言ったために、自分は愛する人と無理矢理別れさせられたのだと」
「十歳違うのよ、あの頃私は社交界にすら出ていなかった子供よ、王宮に仕える騎士なら見掛けることも辛うじてあったのかもしれないわね。でも彼は文官で、私の従兄弟(第一王子)の側近候補ですら無かったわ」
馬鹿馬鹿しくて話になりません。
「そもそも私はその頃、留学準備の為の勉強に忙しくて誰かに懸想する暇なんてありはしなかったわ。結婚させられたせいでその留学も取りやめになって、私にとって一つもいいことが無い結婚生活の最後にこんな馬鹿馬鹿しい話を聞くとはね」
呆然とするリチャードに吐き捨てる様に言えば、足音も立てずにタオが新しいお茶を入れそっと焼き菓子が盛られた皿を私の前に置きました。
「奥様」
「ありがとう、タオ。人ってあまりにも怒りの感情が湧きすぎるとかえって冷静になるのかしらね」
「怒りの相手が亡くなっているのですから仕方ございませんね。奥様は兎も角大旦那様は冷静になられるかわかりかねますが」
「そうね。事故で死なずとも偽の署名などして立派な書類偽造をし、且つ私の体を害したと知れば父が彼の命を刈り取ってくれたでしょうに、残念ねぇ」
床に蹲り震えているリチャードには、そんな想像もつかなかったのでしょうか?
自分の本当の主であるお義父様の言葉を忘れてピーターの指示に従うくらいですから、私の父が誰なのか忘れてしまっていたのでしょうね。
「リチャード、あなたお義母様が平民で孤児の女性を受け入れると思ったの? あなたのご主人様は誰なのか忘れたのかしら、あなたのご主人様は侯爵ではないの? あなたがするべきことは、ピーターの手助けではなく彼を諌め、お義父様にそれを伝えることではないかしら。それとも可愛い若様の愛を実らせて上げたかった? 愚かね」
本当に愚かだと思います。
今回の馬車の事故がなくても、ピーターの策略を知れば父は本当に彼の命を刈り取ったでしょう。
それを考えることも出来ないなんて、だから彼は凡庸だというのです。
「それは」
「お義父様もお義母様も、父や私以上に血統主義だというのに、彼らを先に納得させずに二人を領地に連れて行っても命を取られて終わりでしょうに。婚姻届など認める筈がないわ。例え私が本当に子の出来ぬ体になっていたとしても離縁など認める筈がないのよ」
リチャードにこんなに親切に説明してあげる義理はありませんが、自分の中の感情を整理する意味もあり私は丁寧に話して聞かせました。
けれど愚かな執事は、私の言葉をただ震えて聞くだけだったのです。
203
あなたにおすすめの小説
前世の記憶しかない元侯爵令嬢は、訳あり大公殿下のお気に入り。(注:期間限定)
miy
恋愛
(※長編なため、少しネタバレを含みます)
ある日目覚めたら、そこは見たことも聞いたこともない…異国でした。
ここは、どうやら転生後の人生。
私は大貴族の令嬢レティシア17歳…らしいのですが…全く記憶にございません。
有り難いことに言葉は理解できるし、読み書きも問題なし。
でも、見知らぬ世界で貴族生活?いやいや…私は平凡な日本人のようですよ?…無理です。
“前世の記憶”として目覚めた私は、現世の“レティシアの身体”で…静かな庶民生活を始める。
そんな私の前に、一人の貴族男性が現れた。
ちょっと?訳ありな彼が、私を…自分の『唯一の女性』であると誤解してしまったことから、庶民生活が一変してしまう。
高い身分の彼に関わってしまった私は、元いた国を飛び出して魔法の国で暮らすことになるのです。
大公殿下、大魔術師、聖女や神獣…等など…いろんな人との出会いを経て『レティシア』が自分らしく生きていく。
という、少々…長いお話です。
鈍感なレティシアが、大公殿下からの熱い眼差しに気付くのはいつなのでしょうか…?
※安定のご都合主義、独自の世界観です。お許し下さい。
※ストーリーの進度は遅めかと思われます。
※現在、不定期にて公開中です。よろしくお願い致します。
公開予定日を最新話に記載しておりますが、長期休載の場合はこちらでもお知らせをさせて頂きます。
※ド素人の書いた3作目です。まだまだ優しい目で見て頂けると嬉しいです。よろしくお願いします。
※初公開から2年が過ぎました。少しでも良い作品に、読みやすく…と、時間があれば順次手直し(改稿)をしていく予定でおります。(現在、146話辺りまで手直し作業中)
※章の区切りを変更致しました。(9/22更新)
オバサンが転生しましたが何も持ってないので何もできません!
みさちぃ
恋愛
50歳近くのおばさんが異世界転生した!
転生したら普通チートじゃない?何もありませんがっ!!
前世で苦しい思いをしたのでもう一人で生きて行こうかと思います。
とにかく目指すは自由気ままなスローライフ。
森で調合師して暮らすこと!
ひとまず読み漁った小説に沿って悪役令嬢から国外追放を目指しますが…
無理そうです……
更に隣で笑う幼なじみが気になります…
完結済みです。
なろう様にも掲載しています。
副題に*がついているものはアルファポリス様のみになります。
エピローグで完結です。
番外編になります。
※完結設定してしまい新しい話が追加できませんので、以後番外編載せる場合は別に設けるかなろう様のみになります。
転生したので前世の大切な人に会いに行きます!
本見りん
恋愛
魔法大国と呼ばれるレーベン王国。
家族の中でただ一人弱い治療魔法しか使えなかったセリーナ。ある出来事によりセリーナが王都から離れた領地で暮らす事が決まったその夜、国を揺るがす未曾有の大事件が起きた。
……その時、眠っていた魔法が覚醒し更に自分の前世を思い出し死んですぐに生まれ変わったと気付いたセリーナ。
自分は今の家族に必要とされていない。……それなら、前世の自分の大切な人達に会いに行こう。そうして『少年セリ』として旅に出た。そこで出会った、大切な仲間たち。
……しかし一年後祖国レーベン王国では、セリーナの生死についての議論がされる事態になっていたのである。
『小説家になろう』様にも投稿しています。
『誰もが秘密を持っている 〜『治療魔法』使いセリの事情 転生したので前世の大切な人に会いに行きます!〜』
でしたが、今回は大幅にお直しした改稿版となります。楽しんでいただければ幸いです。
魅了魔法…?それで相思相愛ならいいんじゃないんですか。
iBuKi
恋愛
サフィリーン・ル・オルペウスである私がこの世界に誕生した瞬間から決まっていた既定路線。
クロード・レイ・インフェリア、大国インフェリア皇国の第一皇子といずれ婚約が結ばれること。
皇妃で将来の皇后でなんて、めっちゃくちゃ荷が重い。
こういう幼い頃に結ばれた物語にありがちなトラブル……ありそう。
私のこと気に入らないとか……ありそう?
ところが、完璧な皇子様に婚約者に決定した瞬間から溺愛され続け、蜂蜜漬けにされていたけれど――
絆されていたのに。
ミイラ取りはミイラなの? 気付いたら、皇子の隣には子爵令嬢が居て。
――魅了魔法ですか…。
国家転覆とか、王権強奪とか、大変な事は絡んでないんですよね?
いろいろ探ってましたけど、どうなったのでしょう。
――考えることに、何だか疲れちゃったサフィリーン。
第一皇子とその方が相思相愛なら、魅了でも何でもいいんじゃないんですか?
サクッと婚約解消のち、私はしばらく領地で静養しておきますね。
✂----------------------------
不定期更新です。
他サイトさまでも投稿しています。
10/09 あらすじを書き直し、付け足し?しました。
村娘になった悪役令嬢
枝豆@敦騎
恋愛
父が連れてきた妹を名乗る少女に出会った時、公爵令嬢スザンナは自分の前世と妹がヒロインの乙女ゲームの存在を思い出す。
ゲームの知識を得たスザンナは自分が将来妹の殺害を企てる事や自分が父の実子でない事を知り、身分を捨て母の故郷で平民として暮らすことにした。
村娘になった少女が行き倒れを拾ったり、ヒロインに連れ戻されそうになったり、悪役として利用されそうになったりしながら最後には幸せになるお話です。
※他サイトにも掲載しています。(他サイトに投稿したものと異なっている部分があります)
アルファポリスのみ後日談投稿しております。
【完結】あなたの『番』は埋葬されました。
月白ヤトヒコ
恋愛
道を歩いていたら、いきなり見知らぬ男にぐいっと強く腕を掴まれました。
「ああ、漸く見付けた。愛しい俺の番」
なにやら、どこぞの物語のようなことをのたまっています。正気で言っているのでしょうか?
「はあ? 勘違いではありませんか? 気のせいとか」
そうでなければ――――
「違うっ!? 俺が番を間違うワケがない! 君から漂って来るいい匂いがその証拠だっ!」
男は、わたしの言葉を強く否定します。
「匂い、ですか……それこそ、勘違いでは? ほら、誰かからの移り香という可能性もあります」
否定はしたのですが、男はわたしのことを『番』だと言って聞きません。
「番という素晴らしい存在を感知できない憐れな種族。しかし、俺の番となったからには、そのような憐れさとは無縁だ。これから、たっぷり愛し合おう」
「お断りします」
この男の愛など、わたしは必要としていません。
そう断っても、彼は聞いてくれません。
だから――――実験を、してみることにしました。
一月後。もう一度彼と会うと、彼はわたしのことを『番』だとは認識していないようでした。
「貴様っ、俺の番であることを偽っていたのかっ!?」
そう怒声を上げる彼へ、わたしは告げました。
「あなたの『番』は埋葬されました」、と。
設定はふわっと。
死に戻ったら、私だけ幼児化していた件について
えくれあ
恋愛
セラフィーナは6歳の時に王太子となるアルバートとの婚約が決まって以降、ずっと王家のために身を粉にして努力を続けてきたつもりだった。
しかしながら、いつしか悪女と呼ばれるようになり、18歳の時にアルバートから婚約解消を告げられてしまう。
その後、死を迎えたはずのセラフィーナは、目を覚ますと2年前に戻っていた。だが、周囲の人間はセラフィーナが死ぬ2年前の姿と相違ないのに、セラフィーナだけは同じ年齢だったはずのアルバートより10歳も幼い6歳の姿だった。
死を迎える前と同じこともあれば、年齢が異なるが故に違うこともある。
戸惑いを覚えながらも、死んでしまったためにできなかったことを今度こそ、とセラフィーナは心に誓うのだった。
転生皇女はフライパンで生き延びる
渡里あずま
恋愛
平民の母から生まれた皇女・クララベル。
使用人として生きてきた彼女だったが、蛮族との戦に勝利した辺境伯・ウィラードに下賜されることになった。
……だが、クララベルは五歳の時に思い出していた。
自分は家族に恵まれずに死んだ日本人で、ここはウィラードを主人公にした小説の世界だと。
そして自分は、父である皇帝の差し金でウィラードの弱みを握る為に殺され、小説冒頭で死体として登場するのだと。
「大丈夫。何回も、シミュレーションしてきたわ……絶対に、生き残る。そして本当に、辺境伯に嫁ぐわよ!」
※※※
死にかけて、辛い前世と殺されることを思い出した主人公が、生き延びて幸せになろうとする話。
※重複投稿作品※
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる