34 / 223
ゲームの記憶
しおりを挟む
「私が産んだ設定の悪役令嬢、フルネームはルチアナ・ブレガ侯爵令嬢? だったわね。確かブレガ侯爵家の長女として生まれた筈。あの家お父様の派閥だったわね。ネルツ家より歴史が古く資産もある。けれど黒い噂もあった筈。今の当主はお父様よりも年上よね、嫡男は私と年齢の合いそうな方だったかしら」
名残惜しげにディーンが客室に戻った後、私は自室で湯を使い寝支度を整えメイナ達を下がらせてから一人机に向かっていました。
前世の記憶を思い出した後、落ち着く暇がなくメモを取れずにいましたが、覚えている限りのゲームの内容を書いておこうと思い立ちました。
ゲームの知識と今の私の知識を足せば、これから始まるであろうロニー世代の揉め事に対象出来る筈、ですがゲームで私と結婚する筈のブレガ侯爵家の男性が誰なのか、肝心なところがわかりません。
考えたくもありませんが、お父様より年上の男性に嫁がされたのでしょうか。
ゲームで不仲だった兄との関係を思うと、その可能性は否定できません。
「まあ、私は今の所ディーンと結婚しそうだからここは無視していいのかしら」
私がブレガ家に嫁いだのならともかく、相手がディーンなのだとしたら、ロニーが十七歳になった時にブレガ侯爵家に年頃の令嬢がいるかどうかを確認する程度でもいいのかもしれません。
それよりも、気になるのは年齢です。
「ロニーとルチアナは、確か一歳違いでゲームに登場していたわ、でも既にロニーは七歳よ。どうしてかしら」
私に前世の記憶があろうとなかろうと、夫が亡くならなければ私は実家に戻らず、ロニーに出会うこともありません。
夫が亡くなり、ロニーの悲劇が始まるのですからこれはゲームと同じ筈です。
悪役令嬢になる娘とロニーとの年齢差、すぐに相手を見つけて妊娠したとしても、それが最短で行えたとしてもロニーと一歳差なんて無理な話です。
「年をごまかした?」
慌ててお兄様から送られてきた、リチャードとロニーの戸籍の控えを調べました。
貴族の子としてロニーを育てるにあたってのネックになるのは、六歳の時の陛下への謁見です。
少し無理がありますが、お兄様は年を誤魔化して届けたのではないでしょうか。
「ロニーは今四歳?」
リチャードとロニーの母親の結婚が七年前の日付で記されており、ロニーの出生届は四年前と記されていました。
「二年後に謁見、それなら教育も間に合うかしら」
どちらかといえば小柄なロニーは、実年齢よりも幼く見えます。
それでも謁見の時に九歳になるのですから無理がある様に思いますが、その時は発育が良いと誤魔化せるかもしれません。
「そうやっても年齢差は最低四歳はあるけれど、ゲームではもっと年を誤魔化していたのかしら?」
確かにゲームのロニーは、大人っぽいキャラではありました。
ゲームの設定年齢が十七歳として、仮に年齢を五歳誤魔化していたとしたら二十二歳ですから大人っぽく見えて当然でしょう。
「ゲームの私がすぐに子供を産めるとは思えないから、もう少し誤魔化していたのかもしれないわね」
ゲームの舞台はロニーが通う学校なので仕方ないとはいえ、そんな無理矢理な設定を作るくらいならロニーを先生にでもすればいいのに。
ご都合主義な設定に頭痛を感じながら、私はメモを書き続けました。
「ええと、ロニーのエピソードは」
ヒロインと仲良くなると、ロニーは自分の過去をヒロインに語る場面が出て来ます。
幼い頃に両親が馬車の事故で亡くなったが父の葬儀には参列させて貰えず、母は父の執事だった男と二人だけで葬儀を行った。
父の妻という女性から、汚らしい平民がと罵られ、後々祖母にも同じ様に罵られた。
祖母が決めた家庭教師に虐められ、義父であるディーンにも冷たくされ続ける日々、リチャードに聞かされ私への恨みを募らせながら皆に復讐することだけを生きる理由にしていた。そうヒロインに語るのです。
「ヒロインが復讐しようと誰かを憎むより、私を愛してとかなんとか言ってエンディングに向かうんだったわね」
ロニーがヒロインを愛するのと、私達を憎むのは相手が違うのですから別問題だろうと思うのですが、ヒロインの中では同じこととして解決され、ヒロインを愛することで幸せになるという解決したのかどうか微妙な感じでハッピーエンドを迎えます。
「これでロニー攻略が失敗すると、ディーンルートになって、痛系エンドになるのよね」
前世では楽しんでいたゲームですが、当事者になるとちっとも楽しくないわ。
メモしていた内容を見ながら、私は深いため息をついたのでした。
名残惜しげにディーンが客室に戻った後、私は自室で湯を使い寝支度を整えメイナ達を下がらせてから一人机に向かっていました。
前世の記憶を思い出した後、落ち着く暇がなくメモを取れずにいましたが、覚えている限りのゲームの内容を書いておこうと思い立ちました。
ゲームの知識と今の私の知識を足せば、これから始まるであろうロニー世代の揉め事に対象出来る筈、ですがゲームで私と結婚する筈のブレガ侯爵家の男性が誰なのか、肝心なところがわかりません。
考えたくもありませんが、お父様より年上の男性に嫁がされたのでしょうか。
ゲームで不仲だった兄との関係を思うと、その可能性は否定できません。
「まあ、私は今の所ディーンと結婚しそうだからここは無視していいのかしら」
私がブレガ家に嫁いだのならともかく、相手がディーンなのだとしたら、ロニーが十七歳になった時にブレガ侯爵家に年頃の令嬢がいるかどうかを確認する程度でもいいのかもしれません。
それよりも、気になるのは年齢です。
「ロニーとルチアナは、確か一歳違いでゲームに登場していたわ、でも既にロニーは七歳よ。どうしてかしら」
私に前世の記憶があろうとなかろうと、夫が亡くならなければ私は実家に戻らず、ロニーに出会うこともありません。
夫が亡くなり、ロニーの悲劇が始まるのですからこれはゲームと同じ筈です。
悪役令嬢になる娘とロニーとの年齢差、すぐに相手を見つけて妊娠したとしても、それが最短で行えたとしてもロニーと一歳差なんて無理な話です。
「年をごまかした?」
慌ててお兄様から送られてきた、リチャードとロニーの戸籍の控えを調べました。
貴族の子としてロニーを育てるにあたってのネックになるのは、六歳の時の陛下への謁見です。
少し無理がありますが、お兄様は年を誤魔化して届けたのではないでしょうか。
「ロニーは今四歳?」
リチャードとロニーの母親の結婚が七年前の日付で記されており、ロニーの出生届は四年前と記されていました。
「二年後に謁見、それなら教育も間に合うかしら」
どちらかといえば小柄なロニーは、実年齢よりも幼く見えます。
それでも謁見の時に九歳になるのですから無理がある様に思いますが、その時は発育が良いと誤魔化せるかもしれません。
「そうやっても年齢差は最低四歳はあるけれど、ゲームではもっと年を誤魔化していたのかしら?」
確かにゲームのロニーは、大人っぽいキャラではありました。
ゲームの設定年齢が十七歳として、仮に年齢を五歳誤魔化していたとしたら二十二歳ですから大人っぽく見えて当然でしょう。
「ゲームの私がすぐに子供を産めるとは思えないから、もう少し誤魔化していたのかもしれないわね」
ゲームの舞台はロニーが通う学校なので仕方ないとはいえ、そんな無理矢理な設定を作るくらいならロニーを先生にでもすればいいのに。
ご都合主義な設定に頭痛を感じながら、私はメモを書き続けました。
「ええと、ロニーのエピソードは」
ヒロインと仲良くなると、ロニーは自分の過去をヒロインに語る場面が出て来ます。
幼い頃に両親が馬車の事故で亡くなったが父の葬儀には参列させて貰えず、母は父の執事だった男と二人だけで葬儀を行った。
父の妻という女性から、汚らしい平民がと罵られ、後々祖母にも同じ様に罵られた。
祖母が決めた家庭教師に虐められ、義父であるディーンにも冷たくされ続ける日々、リチャードに聞かされ私への恨みを募らせながら皆に復讐することだけを生きる理由にしていた。そうヒロインに語るのです。
「ヒロインが復讐しようと誰かを憎むより、私を愛してとかなんとか言ってエンディングに向かうんだったわね」
ロニーがヒロインを愛するのと、私達を憎むのは相手が違うのですから別問題だろうと思うのですが、ヒロインの中では同じこととして解決され、ヒロインを愛することで幸せになるという解決したのかどうか微妙な感じでハッピーエンドを迎えます。
「これでロニー攻略が失敗すると、ディーンルートになって、痛系エンドになるのよね」
前世では楽しんでいたゲームですが、当事者になるとちっとも楽しくないわ。
メモしていた内容を見ながら、私は深いため息をついたのでした。
応援ありがとうございます!
13
お気に入りに追加
2,622
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる