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存在を認めないのは4
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「ダニエラ、あなたはこの屋敷に長く暮らしたことはありますか」
「いいえ。ピーターはあまり領地にいたがらなかったし王宮で仕事をしていたから、一年で半月程度ね」
元々私は公爵領よりも王都での暮らしの方が長く、結婚してからもそれは変わりませんでした。
お義父様もピーターと仲を深めるようにと言って、私達が離れて暮らすのは良しとしなかったので、私は安易にそれでいいと考えていました。
尤もお義父様の考えを無視する様に、ピーターは殆ど屋敷には帰って来なかったので意味はありませんでしたが、夫に気にかけて貰えない妻としてお義母様に嫌味を言われながら、惨めに領地で暮らすよりずっとマシだったと今は思っています。
「私は、とても幼い頃はこの屋敷で両親と兄と一緒に暮らしていました。私が生まれた頃はすでに父が家督を継いでいましたから、祖父母は同じ敷地内の別館に隠居していた為、こちらに暮らすのは家族のみだったのです」
「代替わりが早かったとは聞いていたけれど、随分早かったのね。理由を聞いても?」
代替わりが早くなる場合当主自身に何か問題があったとか、体調が悪い等が理由としては多いですが、お義父様達の場合は何だったのでしょうか。
当主自身に問題があり代替わりした家に、父が私を嫁がせる筈がありませんから体調が理由でしょうか。
「祖父が乗馬中の落馬が元で大怪我をして、長時間の執務が難しくなった為と聞いています。祖父が亡くなった理由は風邪からの肺炎でしたが、それも怪我で体が弱っていたからなのかもしれません」
「そう。治癒魔法で対処できない程の怪我だったのね」
治癒魔法は万能ではありません。
大きな怪我をしてピーターの様に命を落とすこともありますし、治癒魔法を掛けるのが遅ければ怪我が完治しても傷が残る場合もあります。
そもそも治癒魔法を使える者の能力に大きく左右されるのです。
「幸い歩行などは問題なく出来たそうですが、酷く疲れやすくなったらしく周囲が心配して代替わりを急いだのだそうです」
「そう」
「祖父から父に当主が代替わりしても領地経営は順調で、なんの問題もなく暮らしていました。私と母の確執以外は表面上問題は無かったのです」
「表面上?」
「両親は政略結婚でした。最初から不仲で、兄が生まれて以降それは余計に酷くなったそうです」
「どうして?」
ピーターが生まれて、不仲に拍車が掛かる理由が分かりません。
「幼い頃の兄は癇癪持ちで、何にでも当たる人でした。母が甘やかすだけ甘やかしていたからです」
「そうなの」
ピーターと暮らしていて頑固で不機嫌になりやすいとは思っても、酷い癇癪持ちだと感じたことはありませんが、私があまり彼と一緒にいなかったからなのでしょうか?
なにせ彼はあまり帰ってこなかったのです。
「大きくなって変わりました。学園に通うようになってからかもしれません」
「そう、学園に」
ならばピーターは彼女と出会って良い方に変わったのでしょうか、それならば侯爵達が結婚を反対したのは愚策と言えるのではないでしょうか。
貴族でなければ人ではないと言わんばかりのお義母様に育てられた彼が、平民の彼女と出会い考え方を変え彼女を愛したのですから。
「幼い頃の兄の行いを見て、父は母の教育が悪いせいだと決めつけました。兄の家庭教師を選んでいたのも日常兄を甘やかすのも母だったからという理由だそうです」
「お義父様は教育には携わっていなかったのかしら、普通は父親が家庭教師を決めるものなのでは?」
公爵家ではそうでした。
母は私の社交や装いについては口を出しましたが、基本父が決めた乳母や家庭教師に教育を任せていました。
母は屋敷内の使用人の管理や屋敷内の采配を振るだけで十分に忙しく、その他に社交があるのですから子供の教育に時間を取られる等出来なかったというのは建前で、基本使用人の管理は侍女頭(前世ではこの地位にいるのは家政婦とかハウスキーパーという名前だった様な記憶がありますが、この世界では侍女頭です)に殆ど任せていて、母は社交のみに時間を割いていた覚えがあります。
「私の方家庭教師は祖父と父が決めたと聞いています。兄が生まれた直後に祖父が怪我をしたそうですから、その頃の父は兄に関わる時間が無かったのでしょう」
「その結果、お義母様はピーターにべったりになり、甘やかすだけでまともな教育をせず愛玩動物化させたと」
何となくディーンが疎まれた経緯が見えてきたような気がしました。
「いいえ。ピーターはあまり領地にいたがらなかったし王宮で仕事をしていたから、一年で半月程度ね」
元々私は公爵領よりも王都での暮らしの方が長く、結婚してからもそれは変わりませんでした。
お義父様もピーターと仲を深めるようにと言って、私達が離れて暮らすのは良しとしなかったので、私は安易にそれでいいと考えていました。
尤もお義父様の考えを無視する様に、ピーターは殆ど屋敷には帰って来なかったので意味はありませんでしたが、夫に気にかけて貰えない妻としてお義母様に嫌味を言われながら、惨めに領地で暮らすよりずっとマシだったと今は思っています。
「私は、とても幼い頃はこの屋敷で両親と兄と一緒に暮らしていました。私が生まれた頃はすでに父が家督を継いでいましたから、祖父母は同じ敷地内の別館に隠居していた為、こちらに暮らすのは家族のみだったのです」
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代替わりが早くなる場合当主自身に何か問題があったとか、体調が悪い等が理由としては多いですが、お義父様達の場合は何だったのでしょうか。
当主自身に問題があり代替わりした家に、父が私を嫁がせる筈がありませんから体調が理由でしょうか。
「祖父が乗馬中の落馬が元で大怪我をして、長時間の執務が難しくなった為と聞いています。祖父が亡くなった理由は風邪からの肺炎でしたが、それも怪我で体が弱っていたからなのかもしれません」
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「表面上?」
「両親は政略結婚でした。最初から不仲で、兄が生まれて以降それは余計に酷くなったそうです」
「どうして?」
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「幼い頃の兄は癇癪持ちで、何にでも当たる人でした。母が甘やかすだけ甘やかしていたからです」
「そうなの」
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「お義父様は教育には携わっていなかったのかしら、普通は父親が家庭教師を決めるものなのでは?」
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