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番外編
ほのぼの日常編1 再婚を祝う人々14(ダニエラ視点)
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私は絶対にあなたを見捨てない。
どこに地雷が潜んでいるのか分からない、何が正しくて何が間違いなのか分からない綱渡り。
間違いを選択してしまったら、たった一回の間違いだけで私は縄から落ちて真っ逆さまに地面に叩きつけられてしまう。
そんな危険が潜んでいたとしても、いつかその選択の重みに耐えきれなくなったとしても。
私に愛して欲しいと願うあなたを、私の愛を信じ切れずでも信じたいと願うあなたを。
私は絶対に見捨てたりしない。
私はあなたの子を生んで、育てるの。
あなたが私を愛するから、私はあなたの子供をあなたと共に守りたいの。
だって、それが二人の、私達の幸せだと思うから。
あなたが私を愛するから、私は同じだけの愛をあなたに返す。
あなたが私を愛してくれるから、私はその愛から生まれた子供を守る。
あなたと子供を守るの、それが私の愛の証だから。
「あなたを愛し守るわ、ディーン」
声にして、ハッと気が付きました。
今私は何を言ったのだろうと。
「ダニエラ、私の愛は生涯あなただけのものです」
ぎゅうと体を抱き込まれて、これは現実だと気がつきました。
でも私、どうしてディーンに抱きしめられているのでしょうか。
「ダニエラ、おまえ」
お兄様の声に現実に引き戻されました。
現実? 私、どうしたのでしょうか。
「ダニエラ、おまえ気分はどうだ」
「お兄様、私どうしたのでしょうか」
ディーンに抱きしめられながら、ぐるりと視線を周囲に巡らせました。
ここはお兄様の部屋の様です。
お兄様が親しい者を招く為の部屋、ただの知り合い程度ならこの部屋には通されません。
そういう場合は、玄関近くの部屋を使います。
ウィンストン公爵家ではその辺りが徹底されていて、ただの知り合い程度から家族同然の付き合いの方までもてなす部屋がいくつもあるのです。
この部屋は、お兄様が最も信頼している人のみ入る事が許されている部屋です。
「おまえはディーンの使役獣の姿に驚いて気を失った、覚えていないのか」
「使役獣……。蜘蛛さん! ごめんなさいディーン、私蜘蛛さんがあんなに大きいと思わなかったものだから、驚いてしまったの」
お兄様の言葉に正気に返り、慌てて弁解します。
私は、絶対にしてはいけない事をしてしまったのです。
ゲームで私と娘を断罪する大魔女郎蜘蛛、その蜘蛛を前に意識を失うなんてとんでもない失態を私は犯してしまったのです。
「いいんです、ダニエラ。普通の令嬢なら当然の反応だと団長に教えられたから知っています。急に姿を見せた蜘蛛が悪いのですから気にしないで下さい」
私を見つめるディーンの目は、私の恐怖の対象である光を無くした瞳とは違う様に見えます。
けれど、とても悲しんでいる様に見えるのです。
「ディーン、違うのよ。聞いて。私、最初に見た姿が本当の姿だと思っていたの。だから急に大きくなって体の色も変わったから驚いただけなの。だってあんなに大きな姿になるなんて思わなかったのですもの」
「無理しないで下さい、ダニエラ」
「無理じゃないけれど、驚いたのは本当よ。だって大きさを変えられるなんて信じられないもの。あれは本当に同じ蜘蛛さんなの?」
気を失ったのは大失態です。
だから私は全力で、この失態を挽回しなければいけませんん。
蜘蛛との信頼を築けなければ、私と娘の未来は悲劇一択になるのですから。
「ええ、どちらも同じです。本当はもっと大きな姿ですが調度品を傷つけない様に気遣いあの大きさになったのでしょう」
「本当はもっと大きいのね、蜘蛛さんは気遣ってくれていたのね」
「はい。本当の大きさはあれの五倍はあるでしょう」
五倍と聞いて私の意識はまた失いかけましたが、意地で意識を保ちます。
ここは正念場です、これからミスは一切許されません。
「驚いてしまって申し訳なかったわ」
ほうっと息を吐いて、少しでも冷静になろうと努力しながらディーンの様子を窺います。
「ディーン、私魔物について詳しくないの。魔物は簡単に自分の体の大きさを変えたり出来るものなの?」
「いいえ、私が知る限り私の蜘蛛達だけが出来る様です」
ディーンは悲しそうな顔で私を見つめながら、それでも律儀に答えてくれます。
ディーンの蜘蛛を見て気を失った私に対し、彼はきっと失望している事でしょう。
なにせ私は一番してはいけないところで、気を失ってしまったのですから。
「そうなのね。私大きさや色を変えられると知らなかったから、驚いてしまったの」
「蜘蛛は恐ろしいですよね」
「恐ろしいかどうか分からないわ。だって私は蜘蛛さんを良く知らないもの。でも少し話をしただけだけど、きっと仲良くなれると思うの。だから驚いて気を失ってしまって本当に申し訳ないと思っているわ。私、蜘蛛さんを悲しませてしまったのではないかしら」
小さな蜘蛛との会話の中で、不快になる要素はありませんでした。
魔物である蜘蛛、彼? 彼女? あの口ぶりからすると彼女でしょうか。その彼女が発する言葉には知性を感じましたし、ディーンを主といいながら、言葉の中にはディーンを心配している様な気配も感じられました。
「悲しんではいなイ。驚かせてしまっテ悪かったと思っていル」
姿は見えませんが、蜘蛛さんの声が聞こえて来て私は視線を動かしました。
「ディーン、蜘蛛さんはどこにいるのかしら」
あの大きな蜘蛛の姿は、どこにも見えません。
でも、あの薄い緑色の蜘蛛の姿も見えないのです。
「今はあなたの視界に入らない場所に」
「まあ、そんな気遣いは止めさせてディーン」
「ですが、あなたを怖がらせたくないのです」
しょんぼりとしているディーンの目や態度に、ヤンデレの姿は見えません。
ただひたすらに悲しんで、後悔している。そんな表情をしています。
「怖く無いわ、私は驚いただけよ。ねえ、ディーンあなただって私が急に大きくなったら驚くでしょう?」
「ダニエラが大きくなるのですか」
「ええ、急に大きくなるの。それこそこの屋敷よりも大きく。驚くでしょう?」
人は所詮人なので、急に巨大化したりはしませんが、上手い例えを見つけられず私は苦し紛れにそう言うとディーンはやっと少しだけ微笑んでくれました。
「それは確かに驚いてしまいます。でも大きなダニエラもきっと素敵だと思います」
「ふふ、ありがとう。でもね、急に大きくなるのよ。本当は大きいのだと知らずにいたのに、急に大きく姿も色も変わるの。私が驚いた理由はそれなのよ。だって大きさも色も違うのに同じものだと思わないわ。大きいから怖いとかじゃないの、急に現れたから驚いてしまったのよ。だって私、大きな動物なんて馬しか見たことがないのですもの」
箱入りのダニエラを舐めないで欲しいものです。
ダニエラが今まで生きて来て触れたことがある動物は馬だけです。
その馬だって、乗馬の練習や馬車で移動するからこそ知っているだけで、そうでなければダニエラが動物と接触する機会など皆無だったでしょう。
まして魔物なんて論外です。
「馬だけ? 鶏や豚や牛をウィンストン公爵家では飼育していると聞いていますが」
「私がそれを見る機会があったと思う? 自慢じゃないけれど、虫に触れたことなんて皆無よ。魔物は名前を知っている程度よ」
私は箱入りです、何重にも重なった箱の中で守られて育った超が付くほどの箱入りなのです。
子供の頃、泥遊びやかけっこすらした経験すらありませんし、勿論虫に触ったこともありません。
蝿一匹でも私の周囲からいなくなるように、使用人達が徹底して駆除していたのですから当然です。
「本当に虫に触れたことが無いのですか、団長の予想は正しかったのですね」
「叔父様が何を言ったか知らないけれど、私はお父様とお兄様に守られて育ったの。だからそのつもりでいてくれなければ困るわ。私、体力が無いからすぐに倒れるし体調を崩すわ。昨日だって久し振りに王宮に伺ったせいか熱を出してしまったのよ。私はほんの少し動揺しただけでも気を失ってしまうの。そう見えないかもしれないけれど、私繊細なんですからね」
「ダニエラが繊細なのは分かっています」
激しい動揺の末に気を失ったのだと思われると問題なので、かなり大袈裟に言えばディーンはそれを素直に信じてしまった様です。
「なんと人のオナゴは繊細なものよ」
「蜘蛛さん、ごめんなさい。あなたを嫌悪した故では無いと信じてくれるかしら。だから姿を見せて頂戴」
「急に姿を変えたのはこちらだからノ。悪いのはコチラの方だから今回は水に流ソウ。主、こちらは気にしない」
蜘蛛さんは大人な対応で、私の失態を許してくれながらディーンの背中から肩に移動してきました。
蜘蛛の目が私を見ていますが、背水の陣とばかりに後が無い私は視線を合わせてにっこりと笑います。
大丈夫、この大きさなら平気です。
ええ、怖いけれど気を失ったりしません。
見た目が怖いだけです、この子は私の失態を許してくれる優しい子なのですから。
「許してくれて嬉しいわ、蜘蛛さん。あなたと仲良くしたい気持ちは本当よ。だって私あなたの作った糸で作ったドレスが大好きでずっと着てきたのよ。それを作ってくれるあなたを嫌悪する筈がないでしょう?」
前世の世界で、絹を生む元が蚕だと正しく連想する人がどれだけいたか分かりません。
実際私は大魔糸から作ったドレスを着てもその元が大魔女郎蜘蛛だとは考えていませんが、今はそれを全面に押し出して言い訳します。
「糸、そうか。あの糸で作ったドレスが好きカ」
「ええ、とても着心地が良いし、手触りも素敵だもの大好きよ。羽を纏っているかの様に軽いし色も綺麗。私お花畑を纏った様なドレスが欲しいと思っていたのだけれど、そういうドレスも作って貰える様になったし、透ける様に薄い布を重ねたドレスも大好きよ」
年を重ねる事に大魔糸で作ったドレスは素晴らしい出来になって行きました。
前世であれば当たり前にあった色々な模様をプリントした布、それがいつの間にか出来る様になった時は心の底から驚いたものです。
「そうかそうか、絵を布に描く魔法は主と共に苦労して作ったものダ。伴侶殿の為の努力が認められタのならこれ以上の喜びはナイだろう」
「ディーンと蜘蛛さんが作ったものなの?」
そんな話知りませんでした。
※※※※※※※
ダニエラ頑張っています。
最近一話が長くなりすぎてしまって、すみません。
どこに地雷が潜んでいるのか分からない、何が正しくて何が間違いなのか分からない綱渡り。
間違いを選択してしまったら、たった一回の間違いだけで私は縄から落ちて真っ逆さまに地面に叩きつけられてしまう。
そんな危険が潜んでいたとしても、いつかその選択の重みに耐えきれなくなったとしても。
私に愛して欲しいと願うあなたを、私の愛を信じ切れずでも信じたいと願うあなたを。
私は絶対に見捨てたりしない。
私はあなたの子を生んで、育てるの。
あなたが私を愛するから、私はあなたの子供をあなたと共に守りたいの。
だって、それが二人の、私達の幸せだと思うから。
あなたが私を愛するから、私は同じだけの愛をあなたに返す。
あなたが私を愛してくれるから、私はその愛から生まれた子供を守る。
あなたと子供を守るの、それが私の愛の証だから。
「あなたを愛し守るわ、ディーン」
声にして、ハッと気が付きました。
今私は何を言ったのだろうと。
「ダニエラ、私の愛は生涯あなただけのものです」
ぎゅうと体を抱き込まれて、これは現実だと気がつきました。
でも私、どうしてディーンに抱きしめられているのでしょうか。
「ダニエラ、おまえ」
お兄様の声に現実に引き戻されました。
現実? 私、どうしたのでしょうか。
「ダニエラ、おまえ気分はどうだ」
「お兄様、私どうしたのでしょうか」
ディーンに抱きしめられながら、ぐるりと視線を周囲に巡らせました。
ここはお兄様の部屋の様です。
お兄様が親しい者を招く為の部屋、ただの知り合い程度ならこの部屋には通されません。
そういう場合は、玄関近くの部屋を使います。
ウィンストン公爵家ではその辺りが徹底されていて、ただの知り合い程度から家族同然の付き合いの方までもてなす部屋がいくつもあるのです。
この部屋は、お兄様が最も信頼している人のみ入る事が許されている部屋です。
「おまえはディーンの使役獣の姿に驚いて気を失った、覚えていないのか」
「使役獣……。蜘蛛さん! ごめんなさいディーン、私蜘蛛さんがあんなに大きいと思わなかったものだから、驚いてしまったの」
お兄様の言葉に正気に返り、慌てて弁解します。
私は、絶対にしてはいけない事をしてしまったのです。
ゲームで私と娘を断罪する大魔女郎蜘蛛、その蜘蛛を前に意識を失うなんてとんでもない失態を私は犯してしまったのです。
「いいんです、ダニエラ。普通の令嬢なら当然の反応だと団長に教えられたから知っています。急に姿を見せた蜘蛛が悪いのですから気にしないで下さい」
私を見つめるディーンの目は、私の恐怖の対象である光を無くした瞳とは違う様に見えます。
けれど、とても悲しんでいる様に見えるのです。
「ディーン、違うのよ。聞いて。私、最初に見た姿が本当の姿だと思っていたの。だから急に大きくなって体の色も変わったから驚いただけなの。だってあんなに大きな姿になるなんて思わなかったのですもの」
「無理しないで下さい、ダニエラ」
「無理じゃないけれど、驚いたのは本当よ。だって大きさを変えられるなんて信じられないもの。あれは本当に同じ蜘蛛さんなの?」
気を失ったのは大失態です。
だから私は全力で、この失態を挽回しなければいけませんん。
蜘蛛との信頼を築けなければ、私と娘の未来は悲劇一択になるのですから。
「ええ、どちらも同じです。本当はもっと大きな姿ですが調度品を傷つけない様に気遣いあの大きさになったのでしょう」
「本当はもっと大きいのね、蜘蛛さんは気遣ってくれていたのね」
「はい。本当の大きさはあれの五倍はあるでしょう」
五倍と聞いて私の意識はまた失いかけましたが、意地で意識を保ちます。
ここは正念場です、これからミスは一切許されません。
「驚いてしまって申し訳なかったわ」
ほうっと息を吐いて、少しでも冷静になろうと努力しながらディーンの様子を窺います。
「ディーン、私魔物について詳しくないの。魔物は簡単に自分の体の大きさを変えたり出来るものなの?」
「いいえ、私が知る限り私の蜘蛛達だけが出来る様です」
ディーンは悲しそうな顔で私を見つめながら、それでも律儀に答えてくれます。
ディーンの蜘蛛を見て気を失った私に対し、彼はきっと失望している事でしょう。
なにせ私は一番してはいけないところで、気を失ってしまったのですから。
「そうなのね。私大きさや色を変えられると知らなかったから、驚いてしまったの」
「蜘蛛は恐ろしいですよね」
「恐ろしいかどうか分からないわ。だって私は蜘蛛さんを良く知らないもの。でも少し話をしただけだけど、きっと仲良くなれると思うの。だから驚いて気を失ってしまって本当に申し訳ないと思っているわ。私、蜘蛛さんを悲しませてしまったのではないかしら」
小さな蜘蛛との会話の中で、不快になる要素はありませんでした。
魔物である蜘蛛、彼? 彼女? あの口ぶりからすると彼女でしょうか。その彼女が発する言葉には知性を感じましたし、ディーンを主といいながら、言葉の中にはディーンを心配している様な気配も感じられました。
「悲しんではいなイ。驚かせてしまっテ悪かったと思っていル」
姿は見えませんが、蜘蛛さんの声が聞こえて来て私は視線を動かしました。
「ディーン、蜘蛛さんはどこにいるのかしら」
あの大きな蜘蛛の姿は、どこにも見えません。
でも、あの薄い緑色の蜘蛛の姿も見えないのです。
「今はあなたの視界に入らない場所に」
「まあ、そんな気遣いは止めさせてディーン」
「ですが、あなたを怖がらせたくないのです」
しょんぼりとしているディーンの目や態度に、ヤンデレの姿は見えません。
ただひたすらに悲しんで、後悔している。そんな表情をしています。
「怖く無いわ、私は驚いただけよ。ねえ、ディーンあなただって私が急に大きくなったら驚くでしょう?」
「ダニエラが大きくなるのですか」
「ええ、急に大きくなるの。それこそこの屋敷よりも大きく。驚くでしょう?」
人は所詮人なので、急に巨大化したりはしませんが、上手い例えを見つけられず私は苦し紛れにそう言うとディーンはやっと少しだけ微笑んでくれました。
「それは確かに驚いてしまいます。でも大きなダニエラもきっと素敵だと思います」
「ふふ、ありがとう。でもね、急に大きくなるのよ。本当は大きいのだと知らずにいたのに、急に大きく姿も色も変わるの。私が驚いた理由はそれなのよ。だって大きさも色も違うのに同じものだと思わないわ。大きいから怖いとかじゃないの、急に現れたから驚いてしまったのよ。だって私、大きな動物なんて馬しか見たことがないのですもの」
箱入りのダニエラを舐めないで欲しいものです。
ダニエラが今まで生きて来て触れたことがある動物は馬だけです。
その馬だって、乗馬の練習や馬車で移動するからこそ知っているだけで、そうでなければダニエラが動物と接触する機会など皆無だったでしょう。
まして魔物なんて論外です。
「馬だけ? 鶏や豚や牛をウィンストン公爵家では飼育していると聞いていますが」
「私がそれを見る機会があったと思う? 自慢じゃないけれど、虫に触れたことなんて皆無よ。魔物は名前を知っている程度よ」
私は箱入りです、何重にも重なった箱の中で守られて育った超が付くほどの箱入りなのです。
子供の頃、泥遊びやかけっこすらした経験すらありませんし、勿論虫に触ったこともありません。
蝿一匹でも私の周囲からいなくなるように、使用人達が徹底して駆除していたのですから当然です。
「本当に虫に触れたことが無いのですか、団長の予想は正しかったのですね」
「叔父様が何を言ったか知らないけれど、私はお父様とお兄様に守られて育ったの。だからそのつもりでいてくれなければ困るわ。私、体力が無いからすぐに倒れるし体調を崩すわ。昨日だって久し振りに王宮に伺ったせいか熱を出してしまったのよ。私はほんの少し動揺しただけでも気を失ってしまうの。そう見えないかもしれないけれど、私繊細なんですからね」
「ダニエラが繊細なのは分かっています」
激しい動揺の末に気を失ったのだと思われると問題なので、かなり大袈裟に言えばディーンはそれを素直に信じてしまった様です。
「なんと人のオナゴは繊細なものよ」
「蜘蛛さん、ごめんなさい。あなたを嫌悪した故では無いと信じてくれるかしら。だから姿を見せて頂戴」
「急に姿を変えたのはこちらだからノ。悪いのはコチラの方だから今回は水に流ソウ。主、こちらは気にしない」
蜘蛛さんは大人な対応で、私の失態を許してくれながらディーンの背中から肩に移動してきました。
蜘蛛の目が私を見ていますが、背水の陣とばかりに後が無い私は視線を合わせてにっこりと笑います。
大丈夫、この大きさなら平気です。
ええ、怖いけれど気を失ったりしません。
見た目が怖いだけです、この子は私の失態を許してくれる優しい子なのですから。
「許してくれて嬉しいわ、蜘蛛さん。あなたと仲良くしたい気持ちは本当よ。だって私あなたの作った糸で作ったドレスが大好きでずっと着てきたのよ。それを作ってくれるあなたを嫌悪する筈がないでしょう?」
前世の世界で、絹を生む元が蚕だと正しく連想する人がどれだけいたか分かりません。
実際私は大魔糸から作ったドレスを着てもその元が大魔女郎蜘蛛だとは考えていませんが、今はそれを全面に押し出して言い訳します。
「糸、そうか。あの糸で作ったドレスが好きカ」
「ええ、とても着心地が良いし、手触りも素敵だもの大好きよ。羽を纏っているかの様に軽いし色も綺麗。私お花畑を纏った様なドレスが欲しいと思っていたのだけれど、そういうドレスも作って貰える様になったし、透ける様に薄い布を重ねたドレスも大好きよ」
年を重ねる事に大魔糸で作ったドレスは素晴らしい出来になって行きました。
前世であれば当たり前にあった色々な模様をプリントした布、それがいつの間にか出来る様になった時は心の底から驚いたものです。
「そうかそうか、絵を布に描く魔法は主と共に苦労して作ったものダ。伴侶殿の為の努力が認められタのならこれ以上の喜びはナイだろう」
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