【本編完結済】夫が亡くなって、私は義母になりました

木嶋うめ香

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番外編

ほのぼの日常編2 くもさんはともだち1(蜘蛛の呟き)

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「……くぅちゃん、もしも私の命が尽きてしまったら……あの人と子供を……わた、私の代わりに守って……ね」

 産気付いたダニエラは、不吉な願イを口にシタ。
 予定より半月以上早イ出産に、主が産婆を呼びに部屋を飛び出しテ、他の者タチも慌ただしく部屋を出て行っタカラ、ダニエラの側に蜘蛛シカいなかったノダ。

「ダニエラ、弱音を吐くナ。ダニエラが死ねば主が壊れテシマウ」
「ディーンの為に、いき、生きたいわ。……彼を一人にしたくない。でも私の中に力が……無いの」
 
 人の子供は簡単には生まれナイのだと、ダニエラの母親から聞いてイタ。
 ダニエラは、ずっと具合が悪かっタ。
 悪阻は子を授かってから三、四ヶ月位が一番酷ク、徐々にそれは治まっテ子は育ってイクらしい。
 勿論、子を腹で育てるというのハ大変な事だカラ、悪阻がある程度治まっタからと言って普通に動ける様にはナラナイらしい。腹は大きくなり、体に負担がカカル。体は疲れやすく少し動くだけでも大きな負担が体にカカルノダ。
 悪阻が軽い方だとしてもそうなるとイウノに、ダニエラの悪阻はずっとずっと酷い日が続いていた。 
 水すら吐いて、それデモ食べて、また吐いてシマウ。
 最近は歩くことすら出来なくナッタし、体は痩せ細り、腹ダケが目立つ様にナッテシマッタ。
 主が魔力を注いで、魔力をダニエラに注ぎ続けテ、それだけを力にしてダニエラは生きテイタ。

「くぅちゃん、ごめんなさい。大きなあなたに慣れる前に……私、いなくなっちゃう……わ」
「そんな謝り方サレテも嬉しくないゾ。謝るなら、生きロ、死なずに生きテダニエラの子供に蜘蛛は怖くないと教えるノガ、主の伴侶の役目だろウ」

 息をするのも辛そうナ、ダニエラの額に爪先でフレテ魔力を流す。
 魔物の魔力を人に流すのハ本来良くはナイが、今は少しでも力を、魔物の魔力デ体を癒スのだ。

「くぅちゃん、リボンごめんなさい」
「リボンヲもっと作ってくれるノダロう? ダニエラ、次は赤子の名前を入れてくれる約束ダ」

 主とダニエラが番になってカラ、ダニエラは何度も刺繍入りのリボンを作って蜘蛛にクレタ。
 リボンを付けた蜘蛛を可愛いと褒めナガラ、ダニエラは主の膝の上に座り二人の時間を過ゴスのが常ダッタ。
 ダニエラが喜ぶと主が喜ぶから、動きにくくテモ蜘蛛は屋敷の中ではリボンを常に付けてイタ。

「ディーン、どこなの、ディーン、そばにいて……赤ちゃんを、助けて……私とあなたの赤ちゃん……」

 蜘蛛の声が聞こえナイのか、ダニエラは主を探し始めタ。

「もうすぐクル。産婆を呼びに行ったダケだ。気を強くモテ」
「……ディーン、はぁ、うううっ!」

 また痛みが来のだろう、ダニエラは歯を食いしバリ体を丸めた。
 ダニエラに、痛みが来た瞬間、守り石の魔法陣と蜘蛛のまじないが発動したのが見えタ。
 間違い無イ。
 ダニエラの陣痛は、呪イによるものダ。
 こんなに早ク、産気づくノハおかしな話だったノダ。
 怒りデ、蜘蛛の体は色が変ワリ始メル。
 ダニエラが怖がらナイ様に、普段は綺麗な緑色にしてイタ。その色が本来の色に変ワリ始めル。

「ダニエラッ」

 部屋に入ってきた主は、年寄りの女ヲ連れてベッドに近付いて来た。
 産婆を驚かせナイ様に、賢く蜘蛛はベッドの天蓋へと登る。

 ダニエラの顔色ハ、土の色になっている。
 何度も守り石の魔法陣が、ダニエラに向い発動してイルのが見エル。
 そして、蜘蛛の呪いも。

『ディーン、蜘蛛は行く。ダニエラを守っていろ』

 主の返事を待たズ、産婆の視界に入らナイ様に、ベッドの天蓋から天井を這い部屋の外にデタ。

「父上殿捕まえたカ」
「ああ、今はニールが調べている」
「毒はキエタ、後は呪いダ。でも、何度も来ている」

 ダニエラの子を呪う、それをしている者がイル。
 怒りで蜘蛛の色は完全に元に戻っタ。
 リボンを汚さないヨウニ、しゅるりとほどいて空間収納に仕舞い込ム。
 ダニエラの真心のリボンを、人の血で汚すわけにはイカナイ。

「呪い?」
「守り石が発動シタ。蜘蛛の呪いも、ダニエラにかけられた呪いは術者に返っているハズだ」
「なんて事だ。あの女」
「王妃か、王妃が術者ナラ生きてはいまい」
「あの女にそんな力は無い」
「ソウカ、ニールのところに連れてイケ。その者が呪いの元を持っていル筈だ。それを壊せば呪いはトマルハズダ」

 連れていけと言えば、すぐに体を持上げられテ運ばれタ。
 運ばれナガラ会話が続ク。

「呪いを掛けるモノと呪いの元は別だト思ウ。呪いの元ハ屋敷の中から感じるが、もっともっと遠くに蜘蛛のまじないは呪いを返してイル」
「呪いを発動している者は王妃の近くに居るのかもしれない。王妃からの見舞いだと言われ、通すしかなかった。無理にでも断っていれば」

 悔やむ気配を感ジルタ。
 人は魔力の強さだけでは比べラレナイのは蜘蛛も知っていル。
 魔物の王は純粋な力がアルものだが、人の王はそれだけではナイのだ。

「蜘蛛を王宮に連れてイケ。ダニエラを害する者ハ主の敵だ。蜘蛛が始末スル」
「そうだな。今まではまだ王妃の存在が必要だった。あれでも守りの魔力は高かったから、国の防衛には必要だったから生かしておくしかなかったのだ」
「それは、ディーンが解決した筈ダ。国の周囲にある守りの壁の維持ニ周囲の魔素を使エル魔法陣を配置シタ。王宮で毎日王妃達が魔力を注がなくテモ済む様にナッタハズダ」

 守りの魔力でなければ王宮の魔法陣は守りの壁に魔力を送れナイ。
 昔の無能な魔法使いが作った魔法陣のせいで、守りの力を持つ王妃や他の者は優遇されてイルのだと、主から聞いてイタ。

「ああ、妻もそれで役目から外れられた」
「王家の血を引くオナゴしか、強い守りの魔力をそこに注げないトハおかしな話だ。魔法陣を作った者が狂っていたトシカ思えない」

 国を守る為、王家の人間ハ近親婚を繰り返シタらしい。
 血の濃さとか、蜘蛛にはどうでもイイ話だ。
 魔力の属性にこだわるのは、人ダケダ。

「ディーンが作った魔法陣が上手く発動しているのは十分確認が出来た。やっと王妃を処分出来る様になったというのに、すぐにそうしなかった私の失態だ」
「嘆くな、呪いを止めラレレば、ダニエラも子も助カル」

 走りながら父上殿は話し続ケタ。
 口を閉じたら、何かがダニエラの命を止メルとでも恐れている様に、蜘蛛は感じたが賢く黙ってイタ。

「呪いの元を壊シ、蜘蛛が手先を操ル」
「操る? どうやって」
「蜘蛛の分身を体にシコム。難しい術だから、そう何度も使えナイ。でも出来ると思ウ。主が命じレバ出来る」

 今は出来ナイ。
 主にそんな判断出来ナイだろう。

「……ダニエラの子がもうすぐウマレル。だけど、力が弱イ。急がナイトいけない」

 ダニエラの力が弱ってイルと、主の心が嘆き悲しンデいる。

「急ごう。ここだっ」

 階段を駆け下りて、父上殿は乱暴に扉を開イタ。

「ニール、その者が持っていた物はどこだ」
「ここです、変な人形がっ」
「公爵様、私は王妃殿下からダニエラ様の見舞いを言付かっただけですっ。何もしておりませんっ」

 髪を振り乱したオナゴが、床に倒れテいた。
 その側には、禍々しい気配の人形が一体。

「ニール様、その人形を破壊シロ。それが災いの元凶ダ」
「破壊していいんだな、こいつはこれを壊すとダニエラが死ぬとほざいていた」
「イイ。ダニエラには蜘蛛がまじないをシテイル。この人形の呪いは術者に返ル」

 人形を見て分かっタ。
 術者の力は蜘蛛より遥かにヨワイ。
 この程度なら、今すぐ呪いを何十倍にもして返セル。
 必要が無クとも、そうして返ス。

「分かった。では燃やす」
「いけません、これを壊せばダニエラ様の命が、命がぁあああっ」

 オナゴが叫ぶけれど、そんなのどうでもイイ。

「父上殿、主がナイテイル。早く戻らねば、ニール様、母上殿を連れて一緒に、その者はここに捨てて置けばイイ」
「分かった。急ぐぞニールっ!」

 主がナイテイル。
 ダニエラの命が尽きかけてイル、赤子の命も消えかけてイル。





「ダニエラッ。ディーン、ダニエラはっ」
「義父上、子が生まれました。でも泣き声を上げなくて、ダニエラも意識が」
「公爵閣下、ダニエラ様は何度も意識を失いながらお子を御産みになりました。陣痛の時間としてはかなり短いものの、大量の血を流したせいで意識を保っていられなかったのです」
「ダニエラ、ダニエラ」

 父上殿は、ダニエラの側に近寄り、デモ名前を呼ぶ以外何も出来なカッタ。
 ダニエラの胸に縋るヨウニ、赤子はうつ伏せにしてイテ。
 ダニエラの乳を、小さな口で吸っている様に見えタ。

『主、産婆を外に出せ。蜘蛛が力をツカウ』

「すまない、家族だけにして欲しい」
「か、畏まりました」

 産婆はそそくさと部屋を出てイッタ。
 入れ替わりに、ニール様と母上殿が入って来タ。

「皆、ダニエラの周りに集まってクレ」
「わ、分かった」
「ダニエラ、ダニエラ」
「ダニエラ、死ぬな、ダニエラッ」

 近づいて行く人々の手と、ダニエラと子の体を蜘蛛の糸で繋ぐ。

「ダニエラと子に力を移ス。ダニエラと子が生きていける力を注ぐつもりで、魔力をナガセ」
「分かった。私の魔力すべて注ぐ。ダニエラと子供を助けてくれ」
「私の力もだ。どうか娘達を助けてくれ」
「私の魔力などすべて捧げるわ。ダニエラを、娘と孫を助けて」
「私の魔力等、ここで使えぬならもういらぬ。蜘蛛、すべてダニエラと子にっ」

 強い願いと共ニ、四人の魔力を吸い上げてダニエラと赤子に注いだ。
 ダニエラ生キロ。子供よ、死ヌナ。
 主を生かす為に、生きろ、生きルンダ。

 思いと魔力は、蜘蛛の糸ヲ伝い、光となってダニエラと子の体に吸い込まれてイク。

 死ぬなダニエラ、生きろ子供よイキロ。


「くぅちゃん。ディーンをお願いね」


 声にならない声が、蜘蛛に届イタ。
 そんなの、認めナイ。
 ダニエラは、ずっと長く生きテ。
 主と共に、生きテ。
 いつか、蜘蛛の大きな体ももう怖くナイト笑ウンダ。
 ダニエラと主の子も、蜘蛛は怖くナイと蜘蛛の背に乗って遊ぶんダ。

 小さな蜘蛛の体には、ダニエラのリボンがツイテいる。
 大きな蜘蛛の体の上には、ダニエラの子が乗ってアソブ。
 そうスルンダ。
 そうナルンダ。

「ダニエラ死ぬな。約束だ、蜘蛛にリボンを作ってくれるト。約束したダロウ」
「お義母様、どうして。妹が産まれたら一緒に遊ぶ約束をしたよ」

 ふらふらと子供がベッドに近付イタ。
 主が嫌いな兄の子、ロニー。
 蜘蛛の嫌いな存在から、膨大な魔力を感じた。

「オマエ。魔力を寄越せ、ダニエラと子にお前の魔力をソソゲ」
「そうすれば助かるの? お義母様と妹は助かるの」
「助かる、だから寄越せ。例えおまえが死んでもダニエラと子をイカス」

 しゅるりと糸を伸ばした。お前の兄は主を蔑んだ、主を傷つられるのを見て笑っていた。
 こんな奴の魔力を使うノハ業腹だけれど、少しでも多く魔力を二人にソソギタイ。

「願え、生きろと。そして魔力をソソゲ」
「分かった。僕の魔力を全部使っていいよ。命だって使っていいよ。お義母様、僕の大切な妹に注ぐ。だから生きてっ」

 強い魔力が流れた、四人とそしてもう一人の魔力が光になって流れて、そして二人に注がれた。

「ダニエラ死ぬな。赤子よイキロ」

 蜘蛛の声は虚しく部屋に響いタ。
 ダニエラと子の目は、長い間開くコトは無かったノダ。

※※※※※※
シリアスで始まっていますが、ほのぼのに次回からなります。
今回の呪いは、屋敷内に呪いの元を持ち込めば対象者を呪える&毒状態になるというものでした。
術者が例え死んでも何度も何度も死に至る呪いを掛け続けられるというものです。
ディーンの腕輪とくぅちゃんのまじないのお陰で、産気づくのが早まる程度(ダニエラが死にかけてそうなった)で済んだのは守り石とまじないのお陰です。

相変わらずの誤字脱字病で申し訳ありません。
Gは、文字通りG注意勧告しようと思って、蜘蛛とGのダブル使役はさすがに書くのが無理と諦めたネタでした。
ちなみに、くぅちゃんの由来は蜘蛛だからです。
名前ではなくあくまで愛称なので、蜘蛛に近い呼び方になってます。
ダニエラに名づけのセンスは皆無です。
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