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番外編
おまけ 兄の寵愛弟の思惑3 (デルロイ視点)
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「第二王子殿下、おはようございます」
学校に着き馬車を降りると、聞き慣れた女性の声が出迎えた。
「ボナクララ、おはよう。制服とても似合っているよ」
「ありがとうございます。第二王子殿下もとても良くお似合いです」
私に声を掛けてほしいのだろう、少し離れた場所に立つ人達には視線を向けずボナクララを見つめる。
私の従兄妹で婚約者候補のボナクララは、年齢は私より下だが今年から私とともに学校に通う。
卒業年齢が十五歳以上というきまりはあるけれど、入学年齢には実は制限がない。
学校は最低三年通うから、成人になる年の十八歳の辺りで卒業出来る様に大抵の者は十五から十六で学校に通い始めるが、学校に入るのは義務ではないので通わない者もいる。
「名前で呼んではくれないの」
「……王太子殿下がお許しになりません」
分かりやすく拗ねてみせる私に、ボナクララは囁くような声で答える。
婚約者候補として、私の住まいである王子宮にボナクララは良く足を運んでいる。
その時は互いの名前を呼び合っていたというのに、今更第二王子殿下と呼ばれるのは淋しい。
「兄上はボナクララのみに許しているんだから、さあ遠慮せずに呼んで」
まだ候補でしかないから気にしているのだと知っているけれど、学校内で私は自分のしたいことを我慢しないと決めていたから、可哀相だけれどボナクララにもそれに付き合って貰う。
それにボナクララを気にっている兄上は、彼女だけには私の名を呼ぶのを許している。
その理由は『デルロイが婚約者に望んでいる。それにふさわしい者だから』だそうだ。
「……デルロイ殿下」
「返事をしないよ」
「我儘仰らないでデルロイ……樣」
「うん、ありがとうボナクララ」
親しくても私の名を呼ぶものは、家族とボナクララ以外いない。
それは兄上が嫌がるから。なのだがその本当の理由は兄上の婚約者候補エマニュエラに私の名前を呼ばせたくないというものだった。
ボナクララと姉妹であるエマニュエラは、許可していないのに私と兄上を最初から名前で呼ぼうとした。
見目麗しく何をするにも優秀と言われている彼女だが、傲慢で我儘で私は最初から彼女が好きではなかった。
「お礼を言われる事ではございません」
「そうかな。君が私の名前を呼んでくれるのは、私にはお礼を言いたくなる程大切なことだよ」
顔を覗き込みそう告げると、私達を遠巻きにしている者達からどよめきが起きる。
うるさいからどこかに行ってくれないかな、なんて思いながら私は気にせずにボナクララを見つめながら微笑む。
「デルロイ様、そんな大げさです。それに恥ずかしいです」
白い肌を赤く染めて照れているボナクララはとても愛らしい。
ボナクララを見る度に、愛らしい、可愛いと思う。
似た顔でもエマニュエラには一度も思った事が無い。
二人は同じ誕生日だけれど、その実は違う。
二人は母親も異なるのだ。
エマニュエラの母親は、二人の父の妻ではない女性だったそうだ。
ボナクララは知らない真実、エマニュエラの母親は自分が望まれていないと知りながら、二人の父親である公爵に薬を盛りエマニュエラを授かった。
エマニュエラが生まれた時命を落としたが、ボナクララの母親は生まれた子に罪はないと後から生まれたボナクララと双子として生まれたと届けることにした。
それは私の両親も知る話だと兄上は私に教えてくれた。
ボナクララの両親は、二人を分け隔てることなく育て愛情も注いだ。
だけど母親の性格を受け継いでいるのか、エマニュエラの性格はお世辞にも褒めるところが無く、他者を見下し蔑む。いくら優秀でも、いくら美しくても私はどうしても彼女を好きにはなれなかった。
「どうかされましたか?」
「いいや、ボナクララは愛らしいなと思っていただけだよ」
「そ、そんな事。デルロイ様の方が綺麗で、素敵です」
視線を逸らそうとするから更に距離を縮めようとして、コホンという従者のわざとらしい咳に止められた。
「第二王子殿下、そろそろお時間になります。講堂に皆様向かわれていますよ」
「お前、意地悪じゃないか」
「ボナクララ様が困っておいでです。私は心を鬼にして申し上げております」
長く私に仕えているから彼は私に容赦がない。
しぶしぶ私はボナクララから離れて、でも彼女の手を掴む。
「これくらいはいい? ボナクララ。君が私の大切な人だと知らしめたいから」
まだ候補だけど、私の中ではもう彼女以外考えられない。
王家の者の結婚はある程度本人の希望に任せられている。それにボナクララは父上が許した私の婚約者候補だ。
「私にもデルロイ様は大切な方です」
「ありがとう」
細い指先をぎゅっと握ってから、適切な距離に見える様に手を繋ぎ直す。
今頃兄上はエマニュエラと会っている頃だろうか。
エマニュエラは兄上の希望で学校には通わずに、母上の宮に王太子妃教育を受けに今日から通う。
それは兄上がエマニュエラを愛しているから、ではなく、彼女を見張るためだった。
そう、兄上はエマニュエラを愛してはいない。だけど、自分の婚約者候補に彼女を選んだ。
私はボナクララと一緒にいられる幸せを感じているけれど、兄上はその幸せをこの国と私の為に捨てたのだ。
学校に着き馬車を降りると、聞き慣れた女性の声が出迎えた。
「ボナクララ、おはよう。制服とても似合っているよ」
「ありがとうございます。第二王子殿下もとても良くお似合いです」
私に声を掛けてほしいのだろう、少し離れた場所に立つ人達には視線を向けずボナクララを見つめる。
私の従兄妹で婚約者候補のボナクララは、年齢は私より下だが今年から私とともに学校に通う。
卒業年齢が十五歳以上というきまりはあるけれど、入学年齢には実は制限がない。
学校は最低三年通うから、成人になる年の十八歳の辺りで卒業出来る様に大抵の者は十五から十六で学校に通い始めるが、学校に入るのは義務ではないので通わない者もいる。
「名前で呼んではくれないの」
「……王太子殿下がお許しになりません」
分かりやすく拗ねてみせる私に、ボナクララは囁くような声で答える。
婚約者候補として、私の住まいである王子宮にボナクララは良く足を運んでいる。
その時は互いの名前を呼び合っていたというのに、今更第二王子殿下と呼ばれるのは淋しい。
「兄上はボナクララのみに許しているんだから、さあ遠慮せずに呼んで」
まだ候補でしかないから気にしているのだと知っているけれど、学校内で私は自分のしたいことを我慢しないと決めていたから、可哀相だけれどボナクララにもそれに付き合って貰う。
それにボナクララを気にっている兄上は、彼女だけには私の名を呼ぶのを許している。
その理由は『デルロイが婚約者に望んでいる。それにふさわしい者だから』だそうだ。
「……デルロイ殿下」
「返事をしないよ」
「我儘仰らないでデルロイ……樣」
「うん、ありがとうボナクララ」
親しくても私の名を呼ぶものは、家族とボナクララ以外いない。
それは兄上が嫌がるから。なのだがその本当の理由は兄上の婚約者候補エマニュエラに私の名前を呼ばせたくないというものだった。
ボナクララと姉妹であるエマニュエラは、許可していないのに私と兄上を最初から名前で呼ぼうとした。
見目麗しく何をするにも優秀と言われている彼女だが、傲慢で我儘で私は最初から彼女が好きではなかった。
「お礼を言われる事ではございません」
「そうかな。君が私の名前を呼んでくれるのは、私にはお礼を言いたくなる程大切なことだよ」
顔を覗き込みそう告げると、私達を遠巻きにしている者達からどよめきが起きる。
うるさいからどこかに行ってくれないかな、なんて思いながら私は気にせずにボナクララを見つめながら微笑む。
「デルロイ様、そんな大げさです。それに恥ずかしいです」
白い肌を赤く染めて照れているボナクララはとても愛らしい。
ボナクララを見る度に、愛らしい、可愛いと思う。
似た顔でもエマニュエラには一度も思った事が無い。
二人は同じ誕生日だけれど、その実は違う。
二人は母親も異なるのだ。
エマニュエラの母親は、二人の父の妻ではない女性だったそうだ。
ボナクララは知らない真実、エマニュエラの母親は自分が望まれていないと知りながら、二人の父親である公爵に薬を盛りエマニュエラを授かった。
エマニュエラが生まれた時命を落としたが、ボナクララの母親は生まれた子に罪はないと後から生まれたボナクララと双子として生まれたと届けることにした。
それは私の両親も知る話だと兄上は私に教えてくれた。
ボナクララの両親は、二人を分け隔てることなく育て愛情も注いだ。
だけど母親の性格を受け継いでいるのか、エマニュエラの性格はお世辞にも褒めるところが無く、他者を見下し蔑む。いくら優秀でも、いくら美しくても私はどうしても彼女を好きにはなれなかった。
「どうかされましたか?」
「いいや、ボナクララは愛らしいなと思っていただけだよ」
「そ、そんな事。デルロイ様の方が綺麗で、素敵です」
視線を逸らそうとするから更に距離を縮めようとして、コホンという従者のわざとらしい咳に止められた。
「第二王子殿下、そろそろお時間になります。講堂に皆様向かわれていますよ」
「お前、意地悪じゃないか」
「ボナクララ様が困っておいでです。私は心を鬼にして申し上げております」
長く私に仕えているから彼は私に容赦がない。
しぶしぶ私はボナクララから離れて、でも彼女の手を掴む。
「これくらいはいい? ボナクララ。君が私の大切な人だと知らしめたいから」
まだ候補だけど、私の中ではもう彼女以外考えられない。
王家の者の結婚はある程度本人の希望に任せられている。それにボナクララは父上が許した私の婚約者候補だ。
「私にもデルロイ様は大切な方です」
「ありがとう」
細い指先をぎゅっと握ってから、適切な距離に見える様に手を繋ぎ直す。
今頃兄上はエマニュエラと会っている頃だろうか。
エマニュエラは兄上の希望で学校には通わずに、母上の宮に王太子妃教育を受けに今日から通う。
それは兄上がエマニュエラを愛しているから、ではなく、彼女を見張るためだった。
そう、兄上はエマニュエラを愛してはいない。だけど、自分の婚約者候補に彼女を選んだ。
私はボナクララと一緒にいられる幸せを感じているけれど、兄上はその幸せをこの国と私の為に捨てたのだ。
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