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番外編
おまけ 兄の寵愛弟の思惑34 (デルロイ視点)
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「実力試験がすべて合格点になる程優秀であれば、私が校内で話し掛けてもおかしくはありませんか?」
今日のことで彼に迷惑を掛けてしまった自覚はある。
良くも悪くも私は目立つし、私の近くにいたいと思うものは一人や二人ではない。
私は兄上に何かあった時の予備でしかないが結婚で他国と縁を結ぶ予定は無く、卒業後は兄上の片腕として働くと決まっている。
私自身に興味があるというより、兄上に近付ける可能性があるから私に近づく、そういう思惑の者は多いだろう。
だが、彼は違う。
私と話をしても嬉しそうな素振りは全くなく、それどころか戸惑っている様子だった。
他国からの留学生である彼にとって、この国の王子と親しくなるのは嬉しいことでは無いのかもしれない。
だが、私はもっと彼と話がしたかった。
「そうだな」
「彼は自分の能力を高めるために留学してきたのに、私が父上のお体を何とかしたいと思うあまり彼を巻き込んでしまったのは申し訳ないと思っています」
本当なら、これから先彼と関わりを持たない方がいい。
兄上や父上が認めても、私の周囲が彼に何かするかもしれないけれど、そこを上手く回避できる策があれば彼と友達になれるかもしれない。
「ですが、父上のお体を良くするために彼の薬師としての能力が必要だと思うのです。だから私は彼と親しくなりたいのてす」
言い訳の様に口にするけれど、父上のことが心配なのも本心だ。
父上の専任の治癒師ではどうにもならない、夢の中でおじい様から聞いた話が本当だとしたら父上は病気ではなく魔力を魔法陣に過剰に吸われ続けているのが原因。
それは治癒師ではどうにも出来ないだろう。
でも、彼は私の話だけで魔力不足の可能性を思いつき魔力譲渡による治療を教えてくれた。
彼ならば、おじい様ですら解決出来なかった守りの魔法陣について助言をしてくれるかもしれない。
「薬師と契約し魔力回復薬を作らせる。それで十分だ」
「私が彼と親しくなってはいけませんか」
父上のことを抜きにしても、私は彼と親しくなりたい。
だが兄上は私がそう望むのは嫌な様に見える。それはなぜだろう。
「デルロイ、私はデルロイが日々を健やかに過ごしてくれるならそれで十分だ。考えねばならないことも、辛い思いもすべて私が行う。それでは駄目なのか?」
兄上は私が悩み考えることも嫌なのか。
私は一人の人間で、兄上の愛玩動物ではないというのに私自身で考え行動するのは兄上にとって受け入れられないことなのか。
「兄上の役に立ちたい。そう思うことは罪でしょうか」
兄上が私の行動を制限しようとするのは、私への愛ゆえだと思う。
だけれど、私にはその気持ちが重すぎる。
「デルロイの気持ちは嬉しい。だがな、お前が傷つくこおが恐ろしいのだ。倒れたお前を見たときの私がどれだけ衝撃を受けたか、デルロイは想像出来るか?」
「……それは、申し訳なかったと思っています。でも、彼は悪くありません。私が考えなしだったのです」
兄上は私が傷付くことを嫌う。
私は手を誰かに手を引いて貰わなければ満足に前に進めない幼子ではないというのに、兄上の前にいる私は歩き始めた幼児のままなのかもしれない。
「兄上、私は頼りないのかもしれません。でも私もそろそろ大人にならないといけないのです。いつまでも兄上に守られているばかりではいけないと思うのです」
トニエの事を抜きにしても、私は将来兄上の片腕として生きていくと決めている。
弟のウーゴは、魔法師団に入ると父上に宣言しているけれど、私は魔法や剣を極めようとは考えていない。
「ウーゴの様に魔法師団に入るなんて言いません。私は兄上の側にいます。兄上の側近となって兄上の役に立てるようになりたいのです。その為にも自分で考え自分で答えを導き出せる様にならなければならないのです」
自分で考え決断し、その結果傷付いてもそれは自分が決めた事だ。
私は今まで決断らしい決断をしてこなかった、させてもらえなかった。
「兄上は、国の為に自分の幸せを諦めてしまった。エマニュエラを妻にするなんて、自ら不幸を選ぶようなものだというのに」
ずっと疑問だった。兄上はどうしてエマニュエラを選んだのだろう。
彼女を見張る為、彼女の魔法の力が誰よりも強いから、そう兄上は言ったけれどそれだけでは理由が弱い様な気がしていた。
「不幸を選んだわけではない」
「エマニュエラが守りの魔法陣に王妃として登録されているからですか」
兄上は知っていたのかもしれない。
最初から知っていて、だから選ぶしかなかったのかもしれない。
「デルロイ、何が言いたいのだ」
「夢を見たのです。先程私はシード神の園とこの世の境い目にいて、そこでおじい様とお会いしたのです」
あれは夢だったけれど、でも夢ではなかった。
多分私は本当に境い目にいて、そこでおじい様と会っていたのだ。
今日のことで彼に迷惑を掛けてしまった自覚はある。
良くも悪くも私は目立つし、私の近くにいたいと思うものは一人や二人ではない。
私は兄上に何かあった時の予備でしかないが結婚で他国と縁を結ぶ予定は無く、卒業後は兄上の片腕として働くと決まっている。
私自身に興味があるというより、兄上に近付ける可能性があるから私に近づく、そういう思惑の者は多いだろう。
だが、彼は違う。
私と話をしても嬉しそうな素振りは全くなく、それどころか戸惑っている様子だった。
他国からの留学生である彼にとって、この国の王子と親しくなるのは嬉しいことでは無いのかもしれない。
だが、私はもっと彼と話がしたかった。
「そうだな」
「彼は自分の能力を高めるために留学してきたのに、私が父上のお体を何とかしたいと思うあまり彼を巻き込んでしまったのは申し訳ないと思っています」
本当なら、これから先彼と関わりを持たない方がいい。
兄上や父上が認めても、私の周囲が彼に何かするかもしれないけれど、そこを上手く回避できる策があれば彼と友達になれるかもしれない。
「ですが、父上のお体を良くするために彼の薬師としての能力が必要だと思うのです。だから私は彼と親しくなりたいのてす」
言い訳の様に口にするけれど、父上のことが心配なのも本心だ。
父上の専任の治癒師ではどうにもならない、夢の中でおじい様から聞いた話が本当だとしたら父上は病気ではなく魔力を魔法陣に過剰に吸われ続けているのが原因。
それは治癒師ではどうにも出来ないだろう。
でも、彼は私の話だけで魔力不足の可能性を思いつき魔力譲渡による治療を教えてくれた。
彼ならば、おじい様ですら解決出来なかった守りの魔法陣について助言をしてくれるかもしれない。
「薬師と契約し魔力回復薬を作らせる。それで十分だ」
「私が彼と親しくなってはいけませんか」
父上のことを抜きにしても、私は彼と親しくなりたい。
だが兄上は私がそう望むのは嫌な様に見える。それはなぜだろう。
「デルロイ、私はデルロイが日々を健やかに過ごしてくれるならそれで十分だ。考えねばならないことも、辛い思いもすべて私が行う。それでは駄目なのか?」
兄上は私が悩み考えることも嫌なのか。
私は一人の人間で、兄上の愛玩動物ではないというのに私自身で考え行動するのは兄上にとって受け入れられないことなのか。
「兄上の役に立ちたい。そう思うことは罪でしょうか」
兄上が私の行動を制限しようとするのは、私への愛ゆえだと思う。
だけれど、私にはその気持ちが重すぎる。
「デルロイの気持ちは嬉しい。だがな、お前が傷つくこおが恐ろしいのだ。倒れたお前を見たときの私がどれだけ衝撃を受けたか、デルロイは想像出来るか?」
「……それは、申し訳なかったと思っています。でも、彼は悪くありません。私が考えなしだったのです」
兄上は私が傷付くことを嫌う。
私は手を誰かに手を引いて貰わなければ満足に前に進めない幼子ではないというのに、兄上の前にいる私は歩き始めた幼児のままなのかもしれない。
「兄上、私は頼りないのかもしれません。でも私もそろそろ大人にならないといけないのです。いつまでも兄上に守られているばかりではいけないと思うのです」
トニエの事を抜きにしても、私は将来兄上の片腕として生きていくと決めている。
弟のウーゴは、魔法師団に入ると父上に宣言しているけれど、私は魔法や剣を極めようとは考えていない。
「ウーゴの様に魔法師団に入るなんて言いません。私は兄上の側にいます。兄上の側近となって兄上の役に立てるようになりたいのです。その為にも自分で考え自分で答えを導き出せる様にならなければならないのです」
自分で考え決断し、その結果傷付いてもそれは自分が決めた事だ。
私は今まで決断らしい決断をしてこなかった、させてもらえなかった。
「兄上は、国の為に自分の幸せを諦めてしまった。エマニュエラを妻にするなんて、自ら不幸を選ぶようなものだというのに」
ずっと疑問だった。兄上はどうしてエマニュエラを選んだのだろう。
彼女を見張る為、彼女の魔法の力が誰よりも強いから、そう兄上は言ったけれどそれだけでは理由が弱い様な気がしていた。
「不幸を選んだわけではない」
「エマニュエラが守りの魔法陣に王妃として登録されているからですか」
兄上は知っていたのかもしれない。
最初から知っていて、だから選ぶしかなかったのかもしれない。
「デルロイ、何が言いたいのだ」
「夢を見たのです。先程私はシード神の園とこの世の境い目にいて、そこでおじい様とお会いしたのです」
あれは夢だったけれど、でも夢ではなかった。
多分私は本当に境い目にいて、そこでおじい様と会っていたのだ。
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