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番外編
おまけ 兄の寵愛弟の思惑46 (デルロイ視点)
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「デルロイ様、とても嬉しそうですね」
「そうだね、トニエは私に新しい気付きをくれる。そのせいかもしれない」
マーニ先生の教官室を出て教室に向かい歩く間、ボナクララは私の隣を歩きながら「そうですね」と微笑む。
私達の前後には護衛達がいて、私の後ろにはレモとボナクララの侍女が一緒に歩いている。
私にとっては当たり前の景色だが、校内でこれだけの人数で歩いているのは私ぐらいのものだ。
殆どの生徒は護衛等ついていないし、令嬢でも一人でいる者もいる。
王族だから当然とはいえ、自分が一人で歩いている姿を想像出来ないのは正しいのかどうか分からない。
トニエに聞いたらなんと答えるだろう。呆れた様に鼻で笑うだろうか。
「ボナクララに苦労を掛けるが、頼りにしていいだろうか」
「私の魔力がお役に立てるなら、喜んで」
トニエが加工してくれた虹のユニコーンの魔石は、護衛のロイが兄上のところに届けるべく王宮に運んで行った。
トニエから買い取った魔力回復薬を飲んだ父上は、今朝はいつもより幾分顔色が良かったそうだが、それは元が悪すぎるからだと兄上は仰っていた。
魔石を携帯することで父上のお体が回復してくれればいいのだが、魔石が貯えている魔力がどの程度持つのかトニエでも予測できないというのは心配だ。
「日薬草の栽培についても、早めに考えないといけませんね」
「そうだな。一番適しているのは王家の森なんだが……あの場所にトニエが出入するのはかなり目立つだろう」
トニエが教えてくれた体力を回復する方法の一つ、日薬草を毎日食べるというのは簡単ではない。
魔素が多い場所で栽培しないといけないし、それを新鮮な状態で食べられる時間はとても短いからだ。
それはトニエ以外の信用がおけるもの、例えばマーニ先生が栽培を行ったとしてもそれは同じく目立つだろう。
「トニエ様が試験に受かり、授業免除になるしかありませんわね」
「そうだな。一般授業免除になり、上級薬学を学びその研究の為とするしかないだろう」
他国の留学生を王家の森に入れるようにするには、周囲の声を抑える必要がある。そのための理由が必要だった。
「元々トニエは授業を受ける気が無かったのだから、試験は全力で望むと言っていたのが救いか」
父上の健康に問題があるのは、ある程度の人間なら知っている事だが、それが魔力不足からくる過度な肉体疲労だと考えている者はいない。
父上専属の治癒師は、魔法契約で父上の診療で知ったことを外部に漏らせないから、周囲が知っているのはあまり体が丈夫ではない父上は体調を崩しやすいということだけだ。
それでも父上に対死皆が忠義を向けているし、兄上が王太子としていらっしゃるから臣下一同落ち着いているのだろう。
これが他国なら、王座を狙う者が出てもおかしくないのかもしれない。
我が国の貴族達が忠臣ばかりで良かったと、心から思うが、それでも父上の現状を気軽に広められるわけではない。
トニエにだって本来なら隠して当然の話だ。
昨日の事がなければ、彼をここまで巻き込むことは無かったのだが、私が考え無しだったばかりに彼に多大なる迷惑をかけている。
「それでも彼は他国の人間、いつまでも頼れるわけではございませんし、考えなければならないことが多いですね」
ボナクララの言う、考えなければいけないことの一番がエマニュエラだ。
まだボナクララに魔法陣とエマニュエラの関係は詳しく話せないが、これが問題そのもので彼女自身を魔法陣に王妃として正式登録しさえすれば、父上の魔力不足は多分解決する。
私達の誰もそれを良しとしなくても、そうしてしまえば良い。それしか道はない。
「デルロイ様?」
「……難題ばかりだな」
自分の考えに陥っていたのを誤魔化し、ため息を吐くとボナクララは「微力ですが私も一緒に考えます」と私の手に触れながら囁いた。
ボナクララの優しさに私は救われている、だが兄上には誰もいない。
夫婦になる相手に癒やされないどころか全く信用できないのだから、兄上がどれだけ辛い日々を送るのか想像もつかない。
それでも兄上は、国の為にエマニュエラを妻にすると決めてしまったのだ。
「そうだね、トニエは私に新しい気付きをくれる。そのせいかもしれない」
マーニ先生の教官室を出て教室に向かい歩く間、ボナクララは私の隣を歩きながら「そうですね」と微笑む。
私達の前後には護衛達がいて、私の後ろにはレモとボナクララの侍女が一緒に歩いている。
私にとっては当たり前の景色だが、校内でこれだけの人数で歩いているのは私ぐらいのものだ。
殆どの生徒は護衛等ついていないし、令嬢でも一人でいる者もいる。
王族だから当然とはいえ、自分が一人で歩いている姿を想像出来ないのは正しいのかどうか分からない。
トニエに聞いたらなんと答えるだろう。呆れた様に鼻で笑うだろうか。
「ボナクララに苦労を掛けるが、頼りにしていいだろうか」
「私の魔力がお役に立てるなら、喜んで」
トニエが加工してくれた虹のユニコーンの魔石は、護衛のロイが兄上のところに届けるべく王宮に運んで行った。
トニエから買い取った魔力回復薬を飲んだ父上は、今朝はいつもより幾分顔色が良かったそうだが、それは元が悪すぎるからだと兄上は仰っていた。
魔石を携帯することで父上のお体が回復してくれればいいのだが、魔石が貯えている魔力がどの程度持つのかトニエでも予測できないというのは心配だ。
「日薬草の栽培についても、早めに考えないといけませんね」
「そうだな。一番適しているのは王家の森なんだが……あの場所にトニエが出入するのはかなり目立つだろう」
トニエが教えてくれた体力を回復する方法の一つ、日薬草を毎日食べるというのは簡単ではない。
魔素が多い場所で栽培しないといけないし、それを新鮮な状態で食べられる時間はとても短いからだ。
それはトニエ以外の信用がおけるもの、例えばマーニ先生が栽培を行ったとしてもそれは同じく目立つだろう。
「トニエ様が試験に受かり、授業免除になるしかありませんわね」
「そうだな。一般授業免除になり、上級薬学を学びその研究の為とするしかないだろう」
他国の留学生を王家の森に入れるようにするには、周囲の声を抑える必要がある。そのための理由が必要だった。
「元々トニエは授業を受ける気が無かったのだから、試験は全力で望むと言っていたのが救いか」
父上の健康に問題があるのは、ある程度の人間なら知っている事だが、それが魔力不足からくる過度な肉体疲労だと考えている者はいない。
父上専属の治癒師は、魔法契約で父上の診療で知ったことを外部に漏らせないから、周囲が知っているのはあまり体が丈夫ではない父上は体調を崩しやすいということだけだ。
それでも父上に対死皆が忠義を向けているし、兄上が王太子としていらっしゃるから臣下一同落ち着いているのだろう。
これが他国なら、王座を狙う者が出てもおかしくないのかもしれない。
我が国の貴族達が忠臣ばかりで良かったと、心から思うが、それでも父上の現状を気軽に広められるわけではない。
トニエにだって本来なら隠して当然の話だ。
昨日の事がなければ、彼をここまで巻き込むことは無かったのだが、私が考え無しだったばかりに彼に多大なる迷惑をかけている。
「それでも彼は他国の人間、いつまでも頼れるわけではございませんし、考えなければならないことが多いですね」
ボナクララの言う、考えなければいけないことの一番がエマニュエラだ。
まだボナクララに魔法陣とエマニュエラの関係は詳しく話せないが、これが問題そのもので彼女自身を魔法陣に王妃として正式登録しさえすれば、父上の魔力不足は多分解決する。
私達の誰もそれを良しとしなくても、そうしてしまえば良い。それしか道はない。
「デルロイ様?」
「……難題ばかりだな」
自分の考えに陥っていたのを誤魔化し、ため息を吐くとボナクララは「微力ですが私も一緒に考えます」と私の手に触れながら囁いた。
ボナクララの優しさに私は救われている、だが兄上には誰もいない。
夫婦になる相手に癒やされないどころか全く信用できないのだから、兄上がどれだけ辛い日々を送るのか想像もつかない。
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