【本編完結済】夫が亡くなって、私は義母になりました

木嶋うめ香

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番外編

おまけ 兄の寵愛弟の思惑66 (ボナクララ視点)

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「エマニュエラは王太子殿下の婚約者候補として王宮で教育を受けて来た。言葉は悪いが第二王子殿下の婚約者候補だったボナクララは一段階下の待遇をされていた筈、それでもエマニュエラは不服だったというのか?」

 お父様は困惑した様子でお母様にたずねているけれど、お母様は困った様に頷くだけだ。
 私達姉妹は二人共王子殿下の婚約者候補だったけれど、お父様が仰る通り王太子殿下の婚約者候補と第二王子殿下の婚約者候補では待遇は少々の差があった。
 それは当然だ。未来の王になる王太子殿下と、臣下に下る予定の第二王子殿下ではそれぞれの王子宮の造りすら差があるのだから。それぞれの婚約者候補への待遇だってそれなりにならなければおかしい。
 デルロイ様は王太子殿下から愛されているとはいえ、その線引きはしっかりされていたのだ。

「王太子殿下はエマニュエラに親切ですが、第二王子殿下はボナクララを大切にしている。王宮でエマニュエラとボナクララに使う予算や諸々に差をつけていたとしても、王子殿下二人の態度は露骨に違うのですからエマニュエラが不満に思ってもそこは仕方がないでしょう」
「王子殿下の態度」
「女性はそういうものに敏感ですから、その件に関してはエマニュエラは気の毒だと言えなくもないのかもしれませんわね。王太子殿下はエマニュエラを邪険に扱うことはありませんが、第二王子殿下がボナクララをとても大切にして下さっていますから」

 お母様が私をちらりと見ながら言うから、顔が熱くなってきてしまう。
 デルロイ様はいつもとても優しい、婚約者候補だった頃も正式に婚約者になった今もとても優しいけれど、それを家族に指摘されるのは何だかとても面映ゆい気がしてしまう。

「それは確かにそうですね。第二王子殿下は本当にボナクララを大切にしてくれています。二人が婚約披露の衣装を選ぶ時、二人の初々しくも仲睦まじい様子に女官達が感涙していたと王妃殿下から教えて頂きましたからね」

 顔が赤くなっているだろう私を見ながらお兄様が揶揄うから、私の顔はもっと熱くなってしまう。

「そんな、私皆に笑われる様なことしておりませんっ」
「笑われていないぞ、お前と第二王子殿下の仲が良好だと女官達が喜んでいたと言っているだけだ」
「でしたら、感涙なんて大袈裟なこと……大袈裟じゃなかった?」

 二人で王宮のお針子や女官達と一緒に衣装を選び、その時王妃殿下付の女官達は確かに目元にハンカチを当てながら「何て尊い」とか「仲睦まじい様子に胸が熱くなります」とか言っていた覚えがある。
 まさか、あの言葉を彼女達はお義母様に伝えていたのだろうか。

「私はしたない事していたのかしら、お母様どうしたらいいの? 私恥ずかしくて王宮にもう……」
「落ち着きなさい。王妃様は女官達から報告を受けてとてもお喜びでしたよ。幼い頃からお前と第二王子殿下を皆で見守っていたのですから、二人の幸せそうな様子を喜びはしても笑うことはありませんよ」

 お母様にそう言われて安心するものの、そうなるとお義母様はエマニュエラをどう思っているのか不安になった。
 エマニュエラは結婚しても王妃殿下をお義母様とは呼ばないと断ったと言う。王妃殿下自ら義母と呼ぶようにと言って下さったというのに、それを断ったエマニュエラをお義母様は不満そうだった。
 それに婚約披露を王太子殿下とデルロイ様お二人を同時に行うのも、多分エマニュエラは不満だとお義母様に言ったのだ。そうでなければ「あなたも別々が良かった?」なんてお義母様が私に聞く筈がない。

「どうした、ボナクララ」
「あの、エマニュエラからお母様やお兄様にお話ししてるか分からないのですが」

 義母と呼んで良いとお義母様が許可を出したのをエマニュエラが断っていること、二組同時の婚約披露についてエマニュエラが不満を持っているかもしれないことを説明すると、三人はそろってため息を吐いた。

「不満、エマニュエラなら思っていても不思議はないでしょうね」
「なぜ、結婚しても呼び方は変えないなんて、礼儀知らずなことを」
「王妃殿下にそれだけの失礼を働くなら、お母様に格下発言をすることなんてなんとも思っていないのだろうな」

 お母様がため息を吐き、お父様が頭を抱え、お兄様は呆れたとばかりに首を横に振った後で葡萄酒を飲み干した。

「婚約披露の主役が二組というのは、ボナクララも本当は嫌なのか?」
「いいえ、兄弟仲の良いお二人の王子殿下と双子の姉妹である私達が婚約するのですもの、むしろ同時に決まった婚約を別々に披露する方がおかしいのではないかと思います」
「そうだな。だが、エマニュエラは婚約披露は自分だけが主役になって当然と思っているということか。それにしても双子の姉妹、双子……」

 すっかり食欲が失せてしまったのか、お父様は頭を抱えたまま黙り込んでしまった。
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