243 / 310
番外編
おまけ 兄の寵愛弟の思惑66 (ボナクララ視点)
しおりを挟む
「エマニュエラは王太子殿下の婚約者候補として王宮で教育を受けて来た。言葉は悪いが第二王子殿下の婚約者候補だったボナクララは一段階下の待遇をされていた筈、それでもエマニュエラは不服だったというのか?」
お父様は困惑した様子でお母様にたずねているけれど、お母様は困った様に頷くだけだ。
私達姉妹は二人共王子殿下の婚約者候補だったけれど、お父様が仰る通り王太子殿下の婚約者候補と第二王子殿下の婚約者候補では待遇は少々の差があった。
それは当然だ。未来の王になる王太子殿下と、臣下に下る予定の第二王子殿下ではそれぞれの王子宮の造りすら差があるのだから。それぞれの婚約者候補への待遇だってそれなりにならなければおかしい。
デルロイ様は王太子殿下から愛されているとはいえ、その線引きはしっかりされていたのだ。
「王太子殿下はエマニュエラに親切ですが、第二王子殿下はボナクララを大切にしている。王宮でエマニュエラとボナクララに使う予算や諸々に差をつけていたとしても、王子殿下二人の態度は露骨に違うのですからエマニュエラが不満に思ってもそこは仕方がないでしょう」
「王子殿下の態度」
「女性はそういうものに敏感ですから、その件に関してはエマニュエラは気の毒だと言えなくもないのかもしれませんわね。王太子殿下はエマニュエラを邪険に扱うことはありませんが、第二王子殿下がボナクララをとても大切にして下さっていますから」
お母様が私をちらりと見ながら言うから、顔が熱くなってきてしまう。
デルロイ様はいつもとても優しい、婚約者候補だった頃も正式に婚約者になった今もとても優しいけれど、それを家族に指摘されるのは何だかとても面映ゆい気がしてしまう。
「それは確かにそうですね。第二王子殿下は本当にボナクララを大切にしてくれています。二人が婚約披露の衣装を選ぶ時、二人の初々しくも仲睦まじい様子に女官達が感涙していたと王妃殿下から教えて頂きましたからね」
顔が赤くなっているだろう私を見ながらお兄様が揶揄うから、私の顔はもっと熱くなってしまう。
「そんな、私皆に笑われる様なことしておりませんっ」
「笑われていないぞ、お前と第二王子殿下の仲が良好だと女官達が喜んでいたと言っているだけだ」
「でしたら、感涙なんて大袈裟なこと……大袈裟じゃなかった?」
二人で王宮のお針子や女官達と一緒に衣装を選び、その時王妃殿下付の女官達は確かに目元にハンカチを当てながら「何て尊い」とか「仲睦まじい様子に胸が熱くなります」とか言っていた覚えがある。
まさか、あの言葉を彼女達はお義母様に伝えていたのだろうか。
「私はしたない事していたのかしら、お母様どうしたらいいの? 私恥ずかしくて王宮にもう……」
「落ち着きなさい。王妃様は女官達から報告を受けてとてもお喜びでしたよ。幼い頃からお前と第二王子殿下を皆で見守っていたのですから、二人の幸せそうな様子を喜びはしても笑うことはありませんよ」
お母様にそう言われて安心するものの、そうなるとお義母様はエマニュエラをどう思っているのか不安になった。
エマニュエラは結婚しても王妃殿下をお義母様とは呼ばないと断ったと言う。王妃殿下自ら義母と呼ぶようにと言って下さったというのに、それを断ったエマニュエラをお義母様は不満そうだった。
それに婚約披露を王太子殿下とデルロイ様お二人を同時に行うのも、多分エマニュエラは不満だとお義母様に言ったのだ。そうでなければ「あなたも別々が良かった?」なんてお義母様が私に聞く筈がない。
「どうした、ボナクララ」
「あの、エマニュエラからお母様やお兄様にお話ししてるか分からないのですが」
義母と呼んで良いとお義母様が許可を出したのをエマニュエラが断っていること、二組同時の婚約披露についてエマニュエラが不満を持っているかもしれないことを説明すると、三人はそろってため息を吐いた。
「不満、エマニュエラなら思っていても不思議はないでしょうね」
「なぜ、結婚しても呼び方は変えないなんて、礼儀知らずなことを」
「王妃殿下にそれだけの失礼を働くなら、お母様に格下発言をすることなんてなんとも思っていないのだろうな」
お母様がため息を吐き、お父様が頭を抱え、お兄様は呆れたとばかりに首を横に振った後で葡萄酒を飲み干した。
「婚約披露の主役が二組というのは、ボナクララも本当は嫌なのか?」
「いいえ、兄弟仲の良いお二人の王子殿下と双子の姉妹である私達が婚約するのですもの、むしろ同時に決まった婚約を別々に披露する方がおかしいのではないかと思います」
「そうだな。だが、エマニュエラは婚約披露は自分だけが主役になって当然と思っているということか。それにしても双子の姉妹、双子……」
すっかり食欲が失せてしまったのか、お父様は頭を抱えたまま黙り込んでしまった。
お父様は困惑した様子でお母様にたずねているけれど、お母様は困った様に頷くだけだ。
私達姉妹は二人共王子殿下の婚約者候補だったけれど、お父様が仰る通り王太子殿下の婚約者候補と第二王子殿下の婚約者候補では待遇は少々の差があった。
それは当然だ。未来の王になる王太子殿下と、臣下に下る予定の第二王子殿下ではそれぞれの王子宮の造りすら差があるのだから。それぞれの婚約者候補への待遇だってそれなりにならなければおかしい。
デルロイ様は王太子殿下から愛されているとはいえ、その線引きはしっかりされていたのだ。
「王太子殿下はエマニュエラに親切ですが、第二王子殿下はボナクララを大切にしている。王宮でエマニュエラとボナクララに使う予算や諸々に差をつけていたとしても、王子殿下二人の態度は露骨に違うのですからエマニュエラが不満に思ってもそこは仕方がないでしょう」
「王子殿下の態度」
「女性はそういうものに敏感ですから、その件に関してはエマニュエラは気の毒だと言えなくもないのかもしれませんわね。王太子殿下はエマニュエラを邪険に扱うことはありませんが、第二王子殿下がボナクララをとても大切にして下さっていますから」
お母様が私をちらりと見ながら言うから、顔が熱くなってきてしまう。
デルロイ様はいつもとても優しい、婚約者候補だった頃も正式に婚約者になった今もとても優しいけれど、それを家族に指摘されるのは何だかとても面映ゆい気がしてしまう。
「それは確かにそうですね。第二王子殿下は本当にボナクララを大切にしてくれています。二人が婚約披露の衣装を選ぶ時、二人の初々しくも仲睦まじい様子に女官達が感涙していたと王妃殿下から教えて頂きましたからね」
顔が赤くなっているだろう私を見ながらお兄様が揶揄うから、私の顔はもっと熱くなってしまう。
「そんな、私皆に笑われる様なことしておりませんっ」
「笑われていないぞ、お前と第二王子殿下の仲が良好だと女官達が喜んでいたと言っているだけだ」
「でしたら、感涙なんて大袈裟なこと……大袈裟じゃなかった?」
二人で王宮のお針子や女官達と一緒に衣装を選び、その時王妃殿下付の女官達は確かに目元にハンカチを当てながら「何て尊い」とか「仲睦まじい様子に胸が熱くなります」とか言っていた覚えがある。
まさか、あの言葉を彼女達はお義母様に伝えていたのだろうか。
「私はしたない事していたのかしら、お母様どうしたらいいの? 私恥ずかしくて王宮にもう……」
「落ち着きなさい。王妃様は女官達から報告を受けてとてもお喜びでしたよ。幼い頃からお前と第二王子殿下を皆で見守っていたのですから、二人の幸せそうな様子を喜びはしても笑うことはありませんよ」
お母様にそう言われて安心するものの、そうなるとお義母様はエマニュエラをどう思っているのか不安になった。
エマニュエラは結婚しても王妃殿下をお義母様とは呼ばないと断ったと言う。王妃殿下自ら義母と呼ぶようにと言って下さったというのに、それを断ったエマニュエラをお義母様は不満そうだった。
それに婚約披露を王太子殿下とデルロイ様お二人を同時に行うのも、多分エマニュエラは不満だとお義母様に言ったのだ。そうでなければ「あなたも別々が良かった?」なんてお義母様が私に聞く筈がない。
「どうした、ボナクララ」
「あの、エマニュエラからお母様やお兄様にお話ししてるか分からないのですが」
義母と呼んで良いとお義母様が許可を出したのをエマニュエラが断っていること、二組同時の婚約披露についてエマニュエラが不満を持っているかもしれないことを説明すると、三人はそろってため息を吐いた。
「不満、エマニュエラなら思っていても不思議はないでしょうね」
「なぜ、結婚しても呼び方は変えないなんて、礼儀知らずなことを」
「王妃殿下にそれだけの失礼を働くなら、お母様に格下発言をすることなんてなんとも思っていないのだろうな」
お母様がため息を吐き、お父様が頭を抱え、お兄様は呆れたとばかりに首を横に振った後で葡萄酒を飲み干した。
「婚約披露の主役が二組というのは、ボナクララも本当は嫌なのか?」
「いいえ、兄弟仲の良いお二人の王子殿下と双子の姉妹である私達が婚約するのですもの、むしろ同時に決まった婚約を別々に披露する方がおかしいのではないかと思います」
「そうだな。だが、エマニュエラは婚約披露は自分だけが主役になって当然と思っているということか。それにしても双子の姉妹、双子……」
すっかり食欲が失せてしまったのか、お父様は頭を抱えたまま黙り込んでしまった。
128
あなたにおすすめの小説
前世の記憶しかない元侯爵令嬢は、訳あり大公殿下のお気に入り。(注:期間限定)
miy
恋愛
(※長編なため、少しネタバレを含みます)
ある日目覚めたら、そこは見たことも聞いたこともない…異国でした。
ここは、どうやら転生後の人生。
私は大貴族の令嬢レティシア17歳…らしいのですが…全く記憶にございません。
有り難いことに言葉は理解できるし、読み書きも問題なし。
でも、見知らぬ世界で貴族生活?いやいや…私は平凡な日本人のようですよ?…無理です。
“前世の記憶”として目覚めた私は、現世の“レティシアの身体”で…静かな庶民生活を始める。
そんな私の前に、一人の貴族男性が現れた。
ちょっと?訳ありな彼が、私を…自分の『唯一の女性』であると誤解してしまったことから、庶民生活が一変してしまう。
高い身分の彼に関わってしまった私は、元いた国を飛び出して魔法の国で暮らすことになるのです。
大公殿下、大魔術師、聖女や神獣…等など…いろんな人との出会いを経て『レティシア』が自分らしく生きていく。
という、少々…長いお話です。
鈍感なレティシアが、大公殿下からの熱い眼差しに気付くのはいつなのでしょうか…?
※安定のご都合主義、独自の世界観です。お許し下さい。
※ストーリーの進度は遅めかと思われます。
※現在、不定期にて公開中です。よろしくお願い致します。
公開予定日を最新話に記載しておりますが、長期休載の場合はこちらでもお知らせをさせて頂きます。
※ド素人の書いた3作目です。まだまだ優しい目で見て頂けると嬉しいです。よろしくお願いします。
※初公開から2年が過ぎました。少しでも良い作品に、読みやすく…と、時間があれば順次手直し(改稿)をしていく予定でおります。(現在、146話辺りまで手直し作業中)
※章の区切りを変更致しました。(9/22更新)
オバサンが転生しましたが何も持ってないので何もできません!
みさちぃ
恋愛
50歳近くのおばさんが異世界転生した!
転生したら普通チートじゃない?何もありませんがっ!!
前世で苦しい思いをしたのでもう一人で生きて行こうかと思います。
とにかく目指すは自由気ままなスローライフ。
森で調合師して暮らすこと!
ひとまず読み漁った小説に沿って悪役令嬢から国外追放を目指しますが…
無理そうです……
更に隣で笑う幼なじみが気になります…
完結済みです。
なろう様にも掲載しています。
副題に*がついているものはアルファポリス様のみになります。
エピローグで完結です。
番外編になります。
※完結設定してしまい新しい話が追加できませんので、以後番外編載せる場合は別に設けるかなろう様のみになります。
転生したので前世の大切な人に会いに行きます!
本見りん
恋愛
魔法大国と呼ばれるレーベン王国。
家族の中でただ一人弱い治療魔法しか使えなかったセリーナ。ある出来事によりセリーナが王都から離れた領地で暮らす事が決まったその夜、国を揺るがす未曾有の大事件が起きた。
……その時、眠っていた魔法が覚醒し更に自分の前世を思い出し死んですぐに生まれ変わったと気付いたセリーナ。
自分は今の家族に必要とされていない。……それなら、前世の自分の大切な人達に会いに行こう。そうして『少年セリ』として旅に出た。そこで出会った、大切な仲間たち。
……しかし一年後祖国レーベン王国では、セリーナの生死についての議論がされる事態になっていたのである。
『小説家になろう』様にも投稿しています。
『誰もが秘密を持っている 〜『治療魔法』使いセリの事情 転生したので前世の大切な人に会いに行きます!〜』
でしたが、今回は大幅にお直しした改稿版となります。楽しんでいただければ幸いです。
魅了魔法…?それで相思相愛ならいいんじゃないんですか。
iBuKi
恋愛
サフィリーン・ル・オルペウスである私がこの世界に誕生した瞬間から決まっていた既定路線。
クロード・レイ・インフェリア、大国インフェリア皇国の第一皇子といずれ婚約が結ばれること。
皇妃で将来の皇后でなんて、めっちゃくちゃ荷が重い。
こういう幼い頃に結ばれた物語にありがちなトラブル……ありそう。
私のこと気に入らないとか……ありそう?
ところが、完璧な皇子様に婚約者に決定した瞬間から溺愛され続け、蜂蜜漬けにされていたけれど――
絆されていたのに。
ミイラ取りはミイラなの? 気付いたら、皇子の隣には子爵令嬢が居て。
――魅了魔法ですか…。
国家転覆とか、王権強奪とか、大変な事は絡んでないんですよね?
いろいろ探ってましたけど、どうなったのでしょう。
――考えることに、何だか疲れちゃったサフィリーン。
第一皇子とその方が相思相愛なら、魅了でも何でもいいんじゃないんですか?
サクッと婚約解消のち、私はしばらく領地で静養しておきますね。
✂----------------------------
不定期更新です。
他サイトさまでも投稿しています。
10/09 あらすじを書き直し、付け足し?しました。
村娘になった悪役令嬢
枝豆@敦騎
恋愛
父が連れてきた妹を名乗る少女に出会った時、公爵令嬢スザンナは自分の前世と妹がヒロインの乙女ゲームの存在を思い出す。
ゲームの知識を得たスザンナは自分が将来妹の殺害を企てる事や自分が父の実子でない事を知り、身分を捨て母の故郷で平民として暮らすことにした。
村娘になった少女が行き倒れを拾ったり、ヒロインに連れ戻されそうになったり、悪役として利用されそうになったりしながら最後には幸せになるお話です。
※他サイトにも掲載しています。(他サイトに投稿したものと異なっている部分があります)
アルファポリスのみ後日談投稿しております。
【完結】あなたの『番』は埋葬されました。
月白ヤトヒコ
恋愛
道を歩いていたら、いきなり見知らぬ男にぐいっと強く腕を掴まれました。
「ああ、漸く見付けた。愛しい俺の番」
なにやら、どこぞの物語のようなことをのたまっています。正気で言っているのでしょうか?
「はあ? 勘違いではありませんか? 気のせいとか」
そうでなければ――――
「違うっ!? 俺が番を間違うワケがない! 君から漂って来るいい匂いがその証拠だっ!」
男は、わたしの言葉を強く否定します。
「匂い、ですか……それこそ、勘違いでは? ほら、誰かからの移り香という可能性もあります」
否定はしたのですが、男はわたしのことを『番』だと言って聞きません。
「番という素晴らしい存在を感知できない憐れな種族。しかし、俺の番となったからには、そのような憐れさとは無縁だ。これから、たっぷり愛し合おう」
「お断りします」
この男の愛など、わたしは必要としていません。
そう断っても、彼は聞いてくれません。
だから――――実験を、してみることにしました。
一月後。もう一度彼と会うと、彼はわたしのことを『番』だとは認識していないようでした。
「貴様っ、俺の番であることを偽っていたのかっ!?」
そう怒声を上げる彼へ、わたしは告げました。
「あなたの『番』は埋葬されました」、と。
設定はふわっと。
死に戻ったら、私だけ幼児化していた件について
えくれあ
恋愛
セラフィーナは6歳の時に王太子となるアルバートとの婚約が決まって以降、ずっと王家のために身を粉にして努力を続けてきたつもりだった。
しかしながら、いつしか悪女と呼ばれるようになり、18歳の時にアルバートから婚約解消を告げられてしまう。
その後、死を迎えたはずのセラフィーナは、目を覚ますと2年前に戻っていた。だが、周囲の人間はセラフィーナが死ぬ2年前の姿と相違ないのに、セラフィーナだけは同じ年齢だったはずのアルバートより10歳も幼い6歳の姿だった。
死を迎える前と同じこともあれば、年齢が異なるが故に違うこともある。
戸惑いを覚えながらも、死んでしまったためにできなかったことを今度こそ、とセラフィーナは心に誓うのだった。
転生皇女はフライパンで生き延びる
渡里あずま
恋愛
平民の母から生まれた皇女・クララベル。
使用人として生きてきた彼女だったが、蛮族との戦に勝利した辺境伯・ウィラードに下賜されることになった。
……だが、クララベルは五歳の時に思い出していた。
自分は家族に恵まれずに死んだ日本人で、ここはウィラードを主人公にした小説の世界だと。
そして自分は、父である皇帝の差し金でウィラードの弱みを握る為に殺され、小説冒頭で死体として登場するのだと。
「大丈夫。何回も、シミュレーションしてきたわ……絶対に、生き残る。そして本当に、辺境伯に嫁ぐわよ!」
※※※
死にかけて、辛い前世と殺されることを思い出した主人公が、生き延びて幸せになろうとする話。
※重複投稿作品※
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる