14 / 51
お父様の惚気
しおりを挟む
「ジョーシー、お前も成人しているのだから、もう少し考えて行動しなさい」
緊張して外に出るとカレンの姿もディアス兄様の姿も無く、お父様の従僕に案内されるままに馬車に乗れば、乗っていたのはお父様でした。
「はい、申し訳ありません」
「まあ、お前がしっかりしているからとカレンを任せっきりにした私達も悪いのだが」
「いいえ、お父様達の信頼を裏切ってしまったのですから、悪いのは私です」
カレンがお母様にお願いして馬車に乗る組み合わせを変えたのでしょうか。
お父様にそう尋ねるのは簡単ですが、答えを聞く勇気が出ません。
「そう意固地になるな。今回の場合皆が悪かった。お前もカレンも私達も」
「はい」
頷いても納得しているわけではありません。
順位をつけるなら、私が一番悪いのですから。
「年頃の娘にこんなことを言っても見当違いだとは思うがな、お前だって十分可愛いんだぞ。カレンとは可愛いの方向が違うだけだ」
「お父様」
「薔薇は華やかだが、あれを見て元気になれると思う人間は少ないだろ? ヒマワリは明るく元気な気持ちになるが、繊細な場に合うかと言えば微妙だ。じゃあ百合はどうだ? 清らかで繊細だがホッと安らぎを与えるのは別の花ではないか?」
「それは……はい」
「与える印象は違うが、どれも綺麗な花であることは変わらないだろう。そして、薔薇を好き、ヒマワリが好き、百合が好きと人それぞれ好みが違うだろう。人だって同じだ」
花と人は違うと思います。
お父様が私を慰めたいと話してくれているのは分かりますが。
「惚気になるが、お前の母親は私の顔が好きなのだよ」
「え」
「あの人は、あの見た目で隣国の王女で、偉大な魔法使いで、結婚前は物凄く人気があってね彼女が成人する誕生日の祝の日求婚者が列をなしたという話が今でも残っているんだよ」
子供二人が成人年齢になろうとしているのに、未だ妖精姫の名を持っている程の美貌の持ち主であるお母様が隣国でそんなに人気があったとは知りませんでした。
「あの国は例え王族でも女性本人が望まない限り、成人前に婚約しないから、皆が成人となる日を待ち望んでいたのだ。凄いだろう?」
「はい」
そんな話を聞かされたら、不甲斐なさに顔が俯いてきてしまいます。
私だってお母様の娘だというのに、私は成人過ぎても一人の求婚者も現れません。なんて情けない話なのでしょう。
「でもお母様はお父様を望んだ?」
お父様も美形ではありますが、整った顔立ちよりも凛々しさとか厳しさとかが目立ちます。年若い令嬢が好む顔立ちではないと思いますが、お父様の若い頃はどうだったのでしょう。
「私は外交官の付き添いという名目の護衛で彼の国に行き、交流の一つとして魔法使い同士の模擬戦を行ったんだよ。その時の相手が彼女だった」
「お母様と闘ったのですか」
「そうだ。彼女はとても強い上に容赦が無くてね辛うじて引き分けにしたが、実は危なく負けるところだったんだよ」
「そうだったのですか」
それが馴れ初め? 確かお母様が一目惚れしたのたと聞いていたのだけれど。
「それで、試合後の挨拶をしようと近づいたら、成人祝いの夜会に招待するから私に求婚して欲しいと言われたんだ。闘っている顔に惚れたと言ってな」
「そ、そうですか」
両親の仲はとてもいいのですが、その始まりが模擬戦で一目惚れが、自分と闘っている顔にとか、なんというか……お母様らしいお話しだとか言えません。
「お父様は味方となればこれ程頼りになる方はいないでしょうから、お母様の気持ちは分かります」
「そうだろう」
でも、私はお父様に似ていると言われているのですが、今の話のどの辺りに可愛いと思える要素があるのでしょうか。
「ちなみに私は当時この国では全く人気が無かった。夜会で令嬢の視線を集めるのは弟の方だったな」
「そうなのですか?」
弟というのは、ディアス兄様のお父様の事です。
顔立ちは兄弟だけあってお父様と似ているとおもいますが、何故お父様は人気がなかったのでしょう?
「あいつは私と同じ強面だが、何故か明るい印象があるだろう。心根が優しいということもあったのだろうな」
「そうでしたか」
何だかお父様似の私もやはり異性から人気がない未来しかない気がしてきてしまいましたが、好かれたいのはたった一人なのだけれど、やはり無理なのでしょうね。
お父様のお話を聞きながら私は諦めのため息をつくのでした。
緊張して外に出るとカレンの姿もディアス兄様の姿も無く、お父様の従僕に案内されるままに馬車に乗れば、乗っていたのはお父様でした。
「はい、申し訳ありません」
「まあ、お前がしっかりしているからとカレンを任せっきりにした私達も悪いのだが」
「いいえ、お父様達の信頼を裏切ってしまったのですから、悪いのは私です」
カレンがお母様にお願いして馬車に乗る組み合わせを変えたのでしょうか。
お父様にそう尋ねるのは簡単ですが、答えを聞く勇気が出ません。
「そう意固地になるな。今回の場合皆が悪かった。お前もカレンも私達も」
「はい」
頷いても納得しているわけではありません。
順位をつけるなら、私が一番悪いのですから。
「年頃の娘にこんなことを言っても見当違いだとは思うがな、お前だって十分可愛いんだぞ。カレンとは可愛いの方向が違うだけだ」
「お父様」
「薔薇は華やかだが、あれを見て元気になれると思う人間は少ないだろ? ヒマワリは明るく元気な気持ちになるが、繊細な場に合うかと言えば微妙だ。じゃあ百合はどうだ? 清らかで繊細だがホッと安らぎを与えるのは別の花ではないか?」
「それは……はい」
「与える印象は違うが、どれも綺麗な花であることは変わらないだろう。そして、薔薇を好き、ヒマワリが好き、百合が好きと人それぞれ好みが違うだろう。人だって同じだ」
花と人は違うと思います。
お父様が私を慰めたいと話してくれているのは分かりますが。
「惚気になるが、お前の母親は私の顔が好きなのだよ」
「え」
「あの人は、あの見た目で隣国の王女で、偉大な魔法使いで、結婚前は物凄く人気があってね彼女が成人する誕生日の祝の日求婚者が列をなしたという話が今でも残っているんだよ」
子供二人が成人年齢になろうとしているのに、未だ妖精姫の名を持っている程の美貌の持ち主であるお母様が隣国でそんなに人気があったとは知りませんでした。
「あの国は例え王族でも女性本人が望まない限り、成人前に婚約しないから、皆が成人となる日を待ち望んでいたのだ。凄いだろう?」
「はい」
そんな話を聞かされたら、不甲斐なさに顔が俯いてきてしまいます。
私だってお母様の娘だというのに、私は成人過ぎても一人の求婚者も現れません。なんて情けない話なのでしょう。
「でもお母様はお父様を望んだ?」
お父様も美形ではありますが、整った顔立ちよりも凛々しさとか厳しさとかが目立ちます。年若い令嬢が好む顔立ちではないと思いますが、お父様の若い頃はどうだったのでしょう。
「私は外交官の付き添いという名目の護衛で彼の国に行き、交流の一つとして魔法使い同士の模擬戦を行ったんだよ。その時の相手が彼女だった」
「お母様と闘ったのですか」
「そうだ。彼女はとても強い上に容赦が無くてね辛うじて引き分けにしたが、実は危なく負けるところだったんだよ」
「そうだったのですか」
それが馴れ初め? 確かお母様が一目惚れしたのたと聞いていたのだけれど。
「それで、試合後の挨拶をしようと近づいたら、成人祝いの夜会に招待するから私に求婚して欲しいと言われたんだ。闘っている顔に惚れたと言ってな」
「そ、そうですか」
両親の仲はとてもいいのですが、その始まりが模擬戦で一目惚れが、自分と闘っている顔にとか、なんというか……お母様らしいお話しだとか言えません。
「お父様は味方となればこれ程頼りになる方はいないでしょうから、お母様の気持ちは分かります」
「そうだろう」
でも、私はお父様に似ていると言われているのですが、今の話のどの辺りに可愛いと思える要素があるのでしょうか。
「ちなみに私は当時この国では全く人気が無かった。夜会で令嬢の視線を集めるのは弟の方だったな」
「そうなのですか?」
弟というのは、ディアス兄様のお父様の事です。
顔立ちは兄弟だけあってお父様と似ているとおもいますが、何故お父様は人気がなかったのでしょう?
「あいつは私と同じ強面だが、何故か明るい印象があるだろう。心根が優しいということもあったのだろうな」
「そうでしたか」
何だかお父様似の私もやはり異性から人気がない未来しかない気がしてきてしまいましたが、好かれたいのはたった一人なのだけれど、やはり無理なのでしょうね。
お父様のお話を聞きながら私は諦めのため息をつくのでした。
5
あなたにおすすめの小説
【短編】花婿殿に姻族でサプライズしようと隠れていたら「愛することはない」って聞いたんだが。可愛い妹はあげません!
月野槐樹
ファンタジー
妹の結婚式前にサプライズをしようと姻族みんなで隠れていたら、
花婿殿が、「君を愛することはない!」と宣言してしまった。
姻族全員大騒ぎとなった
魔の森に捨てられた伯爵令嬢は、幸福になって復讐を果たす
三谷朱花
恋愛
ルーナ・メソフィスは、あの冷たく悲しい日のことを忘れはしない。
ルーナの信じてきた世界そのものが否定された日。
伯爵令嬢としての身分も、温かい我が家も奪われた。そして信じていた人たちも、それが幻想だったのだと知った。
そして、告げられた両親の死の真相。
家督を継ぐために父の異母弟である叔父が、両親の死に関わっていた。そして、メソフィス家の財産を独占するために、ルーナの存在を不要とした。
絶望しかなかった。
涙すら出なかった。人間は本当の絶望の前では涙がでないのだとルーナは初めて知った。
雪が積もる冷たい森の中で、この命が果ててしまった方がよほど幸福だとすら感じていた。
そもそも魔の森と呼ばれ恐れられている森だ。誰の助けも期待はできないし、ここに放置した人間たちは、見たこともない魔獣にルーナが食い殺されるのを期待していた。
ルーナは死を待つしか他になかった。
途切れそうになる意識の中で、ルーナは温かい温もりに包まれた夢を見ていた。
そして、ルーナがその温もりを感じた日。
ルーナ・メソフィス伯爵令嬢は亡くなったと公式に発表された。
婚約破棄? 私、この国の守護神ですが。
國樹田 樹
恋愛
王宮の舞踏会場にて婚約破棄を宣言された公爵令嬢・メリザンド=デラクロワ。
声高に断罪を叫ぶ王太子を前に、彼女は余裕の笑みを湛えていた。
愚かな男―――否、愚かな人間に、女神は鉄槌を下す。
古の盟約に縛られた一人の『女性』を巡る、悲恋と未来のお話。
よくある感じのざまぁ物語です。
ふんわり設定。ゆるーくお読みください。
【完結】転生の次は召喚ですか? 私は聖女なんかじゃありません。いい加減にして下さい!
金峯蓮華
恋愛
「聖女だ! 聖女様だ!」
「成功だ! 召喚は成功したぞ!」
聖女? 召喚? 何のことだ。私はスーパーで閉店時間の寸前に値引きした食料品を買おうとしていたのよ。
あっ、そうか、あの魔法陣……。
まさか私、召喚されたの?
突然、召喚され、見知らぬ世界に連れて行かれたようだ。
まったく。転生の次は召喚?
私には前世の記憶があった。どこかの国の公爵令嬢だった記憶だ。
また、同じような世界に来たとは。
聖女として召喚されたからには、何か仕事があるのだろう。さっさと済ませ早く元の世界に戻りたい。
こんな理不尽許してなるものか。
私は元の世界に帰るぞ!!
さて、愛梨は元の世界に戻れるのでしょうか?
作者独自のファンタジーの世界が舞台です。
緩いご都合主義なお話です。
誤字脱字多いです。
大きな気持ちで教えてもらえると助かります。
R15は保険です。
【完結】物置小屋の魔法使いの娘~父の再婚相手と義妹に家を追い出され、婚約者には捨てられた。でも、私は……
buchi
恋愛
大公爵家の父が再婚して新しくやって来たのは、義母と義妹。当たり前のようにダーナの部屋を取り上げ、義妹のマチルダのものに。そして社交界への出入りを禁止し、館の隣の物置小屋に移動するよう命じた。ダーナは亡くなった母の血を受け継いで魔法が使えた。これまでは使う必要がなかった。だけど、汚い小屋に閉じ込められた時は、使用人がいるので自粛していた魔法力を存分に使った。魔法力のことは、母と母と同じ国から嫁いできた王妃様だけが知る秘密だった。
みすぼらしい物置小屋はパラダイスに。だけど、ある晩、王太子殿下のフィルがダーナを心配になってやって来て……
筆頭婚約者候補は「一抜け」を叫んでさっさと逃げ出した
基本二度寝
恋愛
王太子には婚約者候補が二十名ほどいた。
その中でも筆頭にいたのは、顔よし頭良し、すべての条件を持っていた公爵家の令嬢。
王太子を立てることも忘れない彼女に、ひとつだけ不満があった。
側妃の条件は「子を産んだら離縁」でしたが、孤独な陛下を癒したら、執着されて離してくれません!
花瀬ゆらぎ
恋愛
「おまえには、国王陛下の側妃になってもらう」
婚約者と親友に裏切られ、傷心の伯爵令嬢イリア。
追い打ちをかけるように父から命じられたのは、若き国王フェイランの側妃になることだった。
しかし、王宮で待っていたのは、「世継ぎを産んだら離縁」という非情な条件。
夫となったフェイランは冷たく、侍女からは蔑まれ、王妃からは「用が済んだら去れ」と突き放される。
けれど、イリアは知ってしまう。 彼が兄の死と誤解に苦しみ、誰よりも孤独の中にいることを──。
「私は、陛下の幸せを願っております。だから……離縁してください」
フェイランを想い、身を引こうとしたイリア。
しかし、無関心だったはずの陛下が、イリアを強く抱きしめて……!?
「離縁する気か? 許さない。私の心を乱しておいて、逃げられると思うな」
凍てついた王の心を溶かしたのは、売られた側妃の純真な愛。
孤独な陛下に執着され、正妃へと昇り詰める逆転ラブロマンス!
※ 以下のタイトルにて、ベリーズカフェでも公開中。
【側妃の条件は「子を産んだら離縁」でしたが、陛下は私を離してくれません】
私の、虐げられていた親友の幸せな結婚
オレンジ方解石
ファンタジー
女学院に通う、女学生のイリス。
彼女は、親友のシュゼットがいつも妹に持ち物や見せ場を奪われることに怒りつつも、何もできずに悔しい思いをしていた。
だがある日、シュゼットは名門公爵令息に見初められ、婚約する。
「もう、シュゼットが妹や両親に利用されることはない」
安堵したイリスだが、親友の言葉に違和感が残り…………。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる