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セドリックの告白2 (キム先生視点)
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「前置きはこの位で、キム先生この魔法陣を見て下さい」
セドリック様が一度魔導書を受け取り、ページをめくって私の前に置く。
偉大な魔法使いが残した魔導書、恐れ多い気持ちで魔法陣を見つめその内容を読み解き、魔法陣の下の説明書きを読み目を見開く。
「こ、これはセドリック様」
「僕が今こうしていられる理由、そしてミルフィーヌが目を覚まさない理由。この魔導書に描かれている魔法陣の魔法を発動したとしたら全て説明出来ると思いませんか?」
悲しそうにそう言うセドリック様は、健康そのものの子供に見える。
初めて会った時には想像も出来ない程、今のセドリック様は健康だ。
ほんの少し長く外にいただけで熱を出し、ほんの少し無理をしただけで寝込んでいた彼は、今や毎日長時間庭を散歩出来るだけの体力がある。
しっかりと食事し十分な睡眠をとり、少しでも多く力を蓄えようとでもいるかのように、それが義務であるかの様に彼はそうしている。そうできる様になったのだ。
急に、そう、ミルフィ様が最後に魔法を使ったあの日から。
「申し訳ありません、もう一度魔法陣を見せて頂いても」
じっくりと魔法陣を見つめ、うっかり魔力を魔法陣に与え魔法を覚えてしまう事が無いように気を付けながら魔法陣を読み解き、その下に書かれた説明文をもう一度読む。読みながらセドリック様とミルフィ様の状況を考える。
信じたくない理解したくないと思いながら、でも繰り返し読めば読むほどこの魔法以外ではあり得ない事だと納得するしかなかった。
「ガスパール先生の体調確認の魔法で診て頂いた結果は、ミルフィーヌの生命力が落ちている。でしたね?」
「ええ、そうです。体調確認の魔法では現在の生命力しか分かりませんが、ガスパール先生の診察結果にはそう出ていました」
初めてセドリック様とミルフィ様の能力についての詳細検査を行った時、セドリック様の生命力は『生命力最小、現在の生命力最弱』だった。そしてミルフィ様は『生命力大、現在の生命力中』だった。
生命力として出るのは、その体が持つ生命力の器の大きさだ。
セドリック様の生命力の器は最小で、検査した当時の生命力は検査で出る値の一番小さな最弱だった。
子供なら、成長していく段階で器が育つ可能性はあるとはいえ、最小の器が大になるなんてあり得ない話だ。
どれだけ努力して体を治療し続けたとしても、せいぜい望めるのは小になれれば立派な方だろう。
だが、今のセドリック様ならもしかすると、もっと良い結果が出るかもしれない。
「キム先生、僕とミルフィーヌにもう一度あの検査を受けさせてもらえませんか」
「検査、そうですね。すぐ用意致します。一旦部屋に戻ります」
「はい」
魔導書をセドリック様へ返すと、私は足早に部屋を出る。
頭の中は、先程見た魔法陣がぐるぐると渦巻いていた。
「なんてことだ。あんな魔法が存在するなんて、それをミルフィ様が使ったかもしれないなんて」
ぶつぶつと呟きながら走っていると言っても良い速度で人気の無い廊下を進む。
魔導書を作ったディーン・ネルツが『使用してはならぬ魔法』と書いた通り、あの魔法陣に描かれていた魔法は決して使ってはいけない恐ろしい魔法だった。
「まさか、そんなこと、まだミルフィ様は三歳だぞ。いくら治癒魔法を使いこなしていると言っても、まだたった三歳だ。それが、まさか、まさか!!」
私だって魔法使いとしての才能は幼いころから周囲に知られていたし、自分でも自覚していた。
そのせいで兄弟から疎まれて、家族仲は最悪になった。
私程度ですらそうだったのだ、貴族の家に生まれればある程度魔法が使える様に訓練するとはいえ、得意不得意はある。だがどんなに魔法が得意なものでも、三歳という低年齢の者で今のミルフィ様より魔法を使える者は皆無だろう。
ミルフィ様は、侯爵達が心配するほど治癒魔法の才能がある。
王家に知られたら、治癒魔法の能力欲しさに王子殿下との婚約の打診をされかねないほど優秀過ぎる。
「優秀だと、才能があると思っていたけれど、まさかここまでとは。でも、でもどうして」
セドリック様はあの魔導書は侯爵家の家宝だと言っていたけれど、同時にこれは秘密なのだとも言っていた。
だとすれば魔導書の存在を知っているのは、侯爵家の当主とその妻と跡継ぎ位のものだろう。
魔法というのは、上手く使えれば便利で頼りになるものだが、未熟な者が使えばこれほど恐ろしいものはない。
ましてやあの魔導書の中に描かれている魔法陣は、私が使えるどの魔法よりも余程貴重で恐ろしいものだ。
魔法陣を一つしか見ていないが、きっと他の魔法陣も驚くほどの威力があるのだと思う。
そんなものを幼いミルフィ様に侯爵が見せ、覚えさせるとは思えない。
「あの魔法陣の魔法を本当に使っていたとして、なぜミルフィ様が使えたんだ?」
その理由が分からなかった。
セドリック様が一度魔導書を受け取り、ページをめくって私の前に置く。
偉大な魔法使いが残した魔導書、恐れ多い気持ちで魔法陣を見つめその内容を読み解き、魔法陣の下の説明書きを読み目を見開く。
「こ、これはセドリック様」
「僕が今こうしていられる理由、そしてミルフィーヌが目を覚まさない理由。この魔導書に描かれている魔法陣の魔法を発動したとしたら全て説明出来ると思いませんか?」
悲しそうにそう言うセドリック様は、健康そのものの子供に見える。
初めて会った時には想像も出来ない程、今のセドリック様は健康だ。
ほんの少し長く外にいただけで熱を出し、ほんの少し無理をしただけで寝込んでいた彼は、今や毎日長時間庭を散歩出来るだけの体力がある。
しっかりと食事し十分な睡眠をとり、少しでも多く力を蓄えようとでもいるかのように、それが義務であるかの様に彼はそうしている。そうできる様になったのだ。
急に、そう、ミルフィ様が最後に魔法を使ったあの日から。
「申し訳ありません、もう一度魔法陣を見せて頂いても」
じっくりと魔法陣を見つめ、うっかり魔力を魔法陣に与え魔法を覚えてしまう事が無いように気を付けながら魔法陣を読み解き、その下に書かれた説明文をもう一度読む。読みながらセドリック様とミルフィ様の状況を考える。
信じたくない理解したくないと思いながら、でも繰り返し読めば読むほどこの魔法以外ではあり得ない事だと納得するしかなかった。
「ガスパール先生の体調確認の魔法で診て頂いた結果は、ミルフィーヌの生命力が落ちている。でしたね?」
「ええ、そうです。体調確認の魔法では現在の生命力しか分かりませんが、ガスパール先生の診察結果にはそう出ていました」
初めてセドリック様とミルフィ様の能力についての詳細検査を行った時、セドリック様の生命力は『生命力最小、現在の生命力最弱』だった。そしてミルフィ様は『生命力大、現在の生命力中』だった。
生命力として出るのは、その体が持つ生命力の器の大きさだ。
セドリック様の生命力の器は最小で、検査した当時の生命力は検査で出る値の一番小さな最弱だった。
子供なら、成長していく段階で器が育つ可能性はあるとはいえ、最小の器が大になるなんてあり得ない話だ。
どれだけ努力して体を治療し続けたとしても、せいぜい望めるのは小になれれば立派な方だろう。
だが、今のセドリック様ならもしかすると、もっと良い結果が出るかもしれない。
「キム先生、僕とミルフィーヌにもう一度あの検査を受けさせてもらえませんか」
「検査、そうですね。すぐ用意致します。一旦部屋に戻ります」
「はい」
魔導書をセドリック様へ返すと、私は足早に部屋を出る。
頭の中は、先程見た魔法陣がぐるぐると渦巻いていた。
「なんてことだ。あんな魔法が存在するなんて、それをミルフィ様が使ったかもしれないなんて」
ぶつぶつと呟きながら走っていると言っても良い速度で人気の無い廊下を進む。
魔導書を作ったディーン・ネルツが『使用してはならぬ魔法』と書いた通り、あの魔法陣に描かれていた魔法は決して使ってはいけない恐ろしい魔法だった。
「まさか、そんなこと、まだミルフィ様は三歳だぞ。いくら治癒魔法を使いこなしていると言っても、まだたった三歳だ。それが、まさか、まさか!!」
私だって魔法使いとしての才能は幼いころから周囲に知られていたし、自分でも自覚していた。
そのせいで兄弟から疎まれて、家族仲は最悪になった。
私程度ですらそうだったのだ、貴族の家に生まれればある程度魔法が使える様に訓練するとはいえ、得意不得意はある。だがどんなに魔法が得意なものでも、三歳という低年齢の者で今のミルフィ様より魔法を使える者は皆無だろう。
ミルフィ様は、侯爵達が心配するほど治癒魔法の才能がある。
王家に知られたら、治癒魔法の能力欲しさに王子殿下との婚約の打診をされかねないほど優秀過ぎる。
「優秀だと、才能があると思っていたけれど、まさかここまでとは。でも、でもどうして」
セドリック様はあの魔導書は侯爵家の家宝だと言っていたけれど、同時にこれは秘密なのだとも言っていた。
だとすれば魔導書の存在を知っているのは、侯爵家の当主とその妻と跡継ぎ位のものだろう。
魔法というのは、上手く使えれば便利で頼りになるものだが、未熟な者が使えばこれほど恐ろしいものはない。
ましてやあの魔導書の中に描かれている魔法陣は、私が使えるどの魔法よりも余程貴重で恐ろしいものだ。
魔法陣を一つしか見ていないが、きっと他の魔法陣も驚くほどの威力があるのだと思う。
そんなものを幼いミルフィ様に侯爵が見せ、覚えさせるとは思えない。
「あの魔法陣の魔法を本当に使っていたとして、なぜミルフィ様が使えたんだ?」
その理由が分からなかった。
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