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本編
頑張るしかないよね_その3
しおりを挟む「はああ。何これ僕もう死んじゃうの?」
デザートを食べ終えて食堂の人が食器を片付けた後も、雅は僕の部屋にいた。
大事なことなので、二度言います。
雅は食事が終わった後も、僕の部屋に居ました。
何の奇跡?
これってなんの奇跡ですか。
デザートが美味しすぎて、僕のテンションは上がった。
雅にも無理矢理一口お裾分けして、誰も居ないのをいいことに、ついでに雅が拒否しないのをいいことに勇気を振り絞って「雅も一口。あーん」をしてしまった。
僕が食べてたフォークで、雅にデザートを食べさせる。
雅はちょっと困った様な顔をしながら、態々僕の隣に移動してくれた後口を開いて僕の差し出したフォークからケーキを食べてくれたんだ。
ああ、神様ありがとうございます。
僕の心のカメラに、この瞬間の写真を撮した。
床に座る僕の隣に、雅は腰を下ろして口を開いた。
僕は心臓バクバクしながら、雅にデザートのケーキをフォークに取って食べさせた。
ここまでの流れを、僕は瞼を閉じるだけで思い出せる。
思いだしただけで、顔が赤くなるし心臓もバクバクしてしまう。
「甘いな」
「美味しいよ、ね?」
「悪くはないな」
雅の笑顔。この瞬間、僕一瞬心臓が止まったと思う。
フォーク、許されるならこのまま保存したかったけれど、流石に雅の目の前でそれは出来ない。
「美味しいよね」
いいのかな、雅が食べた後のフォークで僕も食べていいのかなっ。
心臓バクバクを超え、いっそ夢心地で僕はデザートを食べた後「雅もう一口食べる?」と聞いてみた。
「甘いからなあ」
「いらない?」
ちょっと困った様に言う雅に、僕はションボリとしながら、恋人でもないのに交互に食べるなんてしないよねと諦めテーブルにフォークを置いた。
すると、今度は雅がフォークを手にして「ハルは本当に俺の弟みたいだな。あいつも俺に同じ事をするんだよ。まあ、あれの場合は嫌いなものを食べさせようとするんだが」なんて言いながら、なんと僕にデザートを食べさせてくれた。
「ほら、口開けて」
「あの。自分で食べられるから」
「いいから」
何故かちょっと不機嫌な様子で、雅は僕にデザートを食べさせる。
自分は別のお皿に盛られていたフルーツを同じフォークで食べながら、雅は最後まで「ほら、口開けて」なんて言いながら僕にケーキを食べさせてくれたんだ。もうさ、ケーキが甘いのか違うものが甘いのかよく分からない時間が過ぎて、お腹一杯になってまったりと時間を過ごした後、消灯時間ギリギリに雅は帰って行ったのだった。
「もう、僕耐えられない」
なんなの、あれ。
雅は僕をどうしたいの。
「あれで僕を友達扱い? あれで、ねえ。あれで?」
僕の頭はパニックになってる。
だって、僕は雅を好きだし。雅の行動は誤解させる。ううん、僕が自分に都合が良い様に自己判断してるというなら、あれは友達じゃなく好きな子にする行為だよね。
でも弟扱いなんだろうなのが確実になってきたけど、何度も行動が似てるとか言いながら食べさせるんだもん。嬉しいけど、ちょっと泣きそうだった。
「もう駄目だよ。 無理無理無理っ」
決定、諦めるのなんて無理。
だって、雅が好きすぎる。弟扱いでもいいから、傍にいたいと思っちゃう。
「テスト中は、駄目だよね。さすがに迷惑になっちゃう」
カレンダーを見つめ、考える。
この世界では二月十一日はお休みじゃないから、この日は普通に学校。
テストが終わるのは二月十四日。つまりバレンタインディ。
「雅に告白してやる。絶対に、この日に告白してやるんだから。僕に優しくたこと後悔すればいいんだ」
テストが終わって、その後は春休みまでののんびり授業。
もし雅が最終的に主人公を選ぶにしても、雅は優しいから僕が告白したら小姓として手続きしてくれるかもしれない。
侯爵家の当主が小姓を何人持つかなんて決まっていないんだから、主人公と僕両方を小姓にする、そんな未来だってもしかしたら存在するのかもしれない。
「顔も知らない人に嫁ぐ位なら。雅の側に居られるだけの未来でもいい」
主人公を愛したら、雅は彼だけのものになる。
それでもいいから、僕は雅の側にいたい。
「告白したら迷惑になっちゃうかな」
心配と言えばそれだ。
本当に、雅が僕を何とも思っていない場合は、僕の告白は迷惑でしかない。告白して振られたら、僕は退学する。その時に雅は気まずい思いをするかもしれない。
「バレンタイン前に何か雅に変化があったら諦める。そうじゃなきゃ告白する。雅に小姓にして欲しいってお願いする。どんな事でもするから雅の側にいさせて欲しいってお願いするんだ」
頷いて欲しい。雅に、僕が側に居て欲しいって言って欲しい。
「可能性、あるのかなあ」
不安に思いながら、スマホにケースを取り付けた。
雅とお揃いみたいな、僕のスマホ。
でも、ケースを付けたらお揃いかどうか分らない。
「告白して、駄目なら僕は退学する。それでいいよね。雅、せめて僕を君の側に居させて」
スマホを両手で握りしめながら、僕は一週間後の僕の未来を、神様に祈るのだった。
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