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本編
なんで?
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「大林君そろそろ来るかな廊下に出て待っていようか。保険の先生戻ってくるかもしれないし」
雅にもっとくっついていたいけれどあの先生に会うのは出来るなら、この場所は避けたい。
あの先生、本当に嫌だ。診察とはいえあの触り方は気持ち悪すぎる。
「ハルはあいつ苦手っぽいね」
「得意な人がいるのか僕には疑問だよ。なんだか話し方嫌な感じしない? 僕だけ?」
触り方が嫌だなんて、雅には恥ずかしくて言えないけど太もも触った手の感触がなんだか残っている感じで気持ち悪かった。
ゲームでもあの先生はセクハラキャラだったしと考え始め、ここはゲームの設定でも僕達は現実を生きているんだからこういう考え方は止めようと決心した。
まあ、保険医の事はゲーム云々を抜きにしても苦手なんだけど。
「そうだな、少し距離が近い感じはする」
「だよね。あんなに近付いて話すのおかしいよね。雅が側にいてくれて本当に良かった。保健室も苦手だけど、あの先生はもっと苦手だよ」
「そうかじゃあ、今度からは他のの階の保健室に連れて行くから。学年は違うけれど診てくれるから」
「もう保健室のお世話にならないように気をつけます」
そういえばここ保健室が学年毎にあるんだっけ、さすが貴族向けの学校お金かけている。
「気をつけてくれるなら何よりだ。あいつが戻ってきて色々言われても嫌だろ廊下にでてまっているか? 立っているのが辛いならここにいるが」
「ううん、廊下の方がいい」
「分った。辛かったら抱っこしてやるから」
雅が笑いながら僕を立たせてくれて、僕は使っていた毛布を軽く畳むと簡易ベッドの上に置くと二人揃って廊下に出た。
「まだ姿が見えないな。少し待つか」
教室から一番近い保健室とはいっても、それなりに距離はあるからそんなにすぐには来られないのかもしれない。
「そうだね。教室行った方がいいかな」
「いや、あ、電話。悪い家からだ、中で話す」
「うん」
家からの電話、何だろう。
僕には聞かせたくない話なのかな。
「何かあったら遠慮せずにドア開けろよ」
「はぁい」
雅が心配しないように、笑顔を作ってひらひらと手を振る。
雅が保健室の中に入りドアが閉まった瞬間、鍵が閉まる様な機械音がした気がした。
「あれ?」
雅が自分で鍵を閉めたのかな、遠慮せずにドアを開けろと言っていたのに。
やっぱり僕に聞かれたらマズい話なのかな……。
ついつい後ろ向きな考え方をするのは、僕の悪い癖だ。
「黙ってると変な事考えちゃうな。よし大林君が来てないか見に行こう」
教室から来るなら東側の渡り廊下を使って来る筈、保健室から教室二つ分位先にある角を曲がればすぐ渡り廊下だ。あの角まで行こう。
「なんなんですか、あなたは。迷惑だと言っているではありませんかっ!」
この声大林君? 教室二つ分の距離をのんびりと歩いていたら聞き覚えのある声が響いた。
言い争う様な雰囲気、木村君? あともう一人は誰だろう。
「僕は山城様に直接頼まれています。あなたに手伝って頂く必要はありません」
「それなら脇田様だって」
「彼は日直だから先生が僕を手伝うよう指示をされました。つまり僕と彼は先生の公認で授業を抜けていますが、あなたは違いますよね」
丁寧だけど険のある声で大林君は木村君に告げる。
脇田様って、脇田匡君か。お助けキャラってこういう時も出てくるのか。
あ、ゲーム的な考え方しないようにしようとさっき決めたばかりなのに、もう戻っている。
「鈴森様が目を覚しているなら、一言お詫びしたいだけです。ですから僕に荷物を届けさせてください。お二人は教室に戻っていただけませんか」
「お詫びしたいのなら、なんて頷けるわけないでしょう。お二人の私物を信用出来ない方に預けるなんてとんでもない」
言うなあ大林君、大人しい印象だったけど。僕なんかよりよっぽどしっかりしてる気がする。
「山城様に頼まれた大林様ではなく今回の元凶であるあなたが一人で行っても、山城様の心証が悪くなるだけですよ」
あ、これ脇田君アドバイスだ。
ゲームの中で主人公が間違った行動をしようとすると、側にいる脇田君が一回だけ教えてくれるんだ。
「一人が駄目なら、僕が大林様と行きます。それならいいでしょ」
脇田君の折角のアドバイスも聞かず、木村君は強引に鞄を奪おうとする。
ど、どうしよう。
「僕があそこに行ったらまた大騒ぎになるよね。み、雅を呼んでこよう」
三人から見えない様に壁に隠れて様子を窺っていた僕は、足音を立てない様に保健室に戻った。
「どうしよう、やっぱり開かない」
保健室のドアは鍵が掛かっていて開かなかった。
このまま木村君が来てしまったらどうしようと悩んでいたら、後ろから声を掛けられた。
「先生お留守ですか?」
「え」
「スマホの備品を届けるようご依頼頂いたのですが」
見た事がある顔の男性だけど、誰だったか思い出せない。
首を傾げる僕に、彼は持っていた紙袋を掲げて見せてくれた。
あ、思い出したこの人携帯ショップの店員さんだ。
「先生はさっき用事で出たみたいです」
「そうですか、どうしようかな。事務室に行くべきかな」
きょろきょろと男性は辺りを見渡すけれど、人気はない。
保健室の右隣二部屋は具合が悪い人が寮ではなくこの部屋に滞在して、処置を受ける為の部屋で、左隣は保健室用の備品室と各教科担当の控え室となっているから授業中の今は無人に近いんだ。
「すぐ戻られるならここでお待ちした方が良いかもしれないですし、どうしたらいいでしょう」
「そうですね」
困ったな、なんでこの人僕にこんな近寄ってくるんだろう。
「覚えていらっしゃいませんか? スマホ、上手く使えていますか?」
ドアを背にして逃げられない僕は、近付いてくる男性から逃れられない。
「あの」
距離を取ろうと両腕を伸ばした途端、手首を掴まれた。
「脅えないで下さい。傷付いてしまいます」
「あのっ」
掴まれた手を払おうとしても力が強くて逃げられない、後ろ手にドアに手を掛けてもびくともしない。
「連絡頂けるのをお待ちしていたんですよ。ここで会えるなんて運命かもしれませんね」
「離してっ」
悲鳴を上げる僕の手を引き寄せ、男性は僕の指先を口に含んだ。
ひっと、声にならない声が僕の口から漏れる。
ぬるぬると舐められる感触が気持ち悪くて「いや」と叫ぼうとするのに、恐ろしさに声が出ない。
「千晴様っ!」
「鈴森様っ!」
遠くから僕を呼ぶ声がして、はっと気がつくと僕の体は解放されていた。
「今のは内緒ですよ。でないと、あなたは誰にも嫁げなくなる」
「おやおや、随分賑やかですね」
混乱する頭で、僕はずるりと床にしゃがみ込んだ。
駆け寄ってきたのは大林君と脇田君、そして木村春。
僕を見下ろしているのは、携帯ショップの店員といつの間にか側に立っていた保険医だ。
「山城様はどうされましたか」
「中に」
「ああ、では鍵を開けましょうね」
保険医は親切そうな顔で頷くとリモコンで解錠しドアを開いた。
「見物客が多すぎますね、残念」
「え」
どういう意味? 保険医の発言が理解出来ずにいる僕を余所に保険医は店員を保健室の中へと連れて行く。
入れ替わりに雅が出てきて、僕を助け起してくれた。
「雅」
「すまない。鍵が急に閉まってドアが開かなくて」
「え」
雅が締めたんじゃなかったのか。でもどうして。
「鈴森様、お声が聞こえましたが、何があったのですか」
「大丈夫。知らない人に声を掛けられて驚いただけ」
「そうでしたか、ご無事で良かった」
僕を心配する二人の背後に、一人不機嫌そうな顔をした木村君が立っていた。
「荷物ありがとう」
「いいえ。コートをどうぞ」
「うん」
まだ足に力が入らない。
舐められた指先が気持ち悪くて、吐きそうだった。
「鞄は俺に」
「畏まりました。山城様もコートをどうぞ」
僕にコートを着せてくれた大林君は、今度はコートを雅へと手渡し脇田君が二人の鞄を雅の方へと運ぶ。
「ち、イベント失敗」
少し離れて立っていた木村君の口から、確かに聞こえた。
イベント失敗。何が、何がイベントだって。
それよりも、木村君はイベントって言ったの?
雅にもっとくっついていたいけれどあの先生に会うのは出来るなら、この場所は避けたい。
あの先生、本当に嫌だ。診察とはいえあの触り方は気持ち悪すぎる。
「ハルはあいつ苦手っぽいね」
「得意な人がいるのか僕には疑問だよ。なんだか話し方嫌な感じしない? 僕だけ?」
触り方が嫌だなんて、雅には恥ずかしくて言えないけど太もも触った手の感触がなんだか残っている感じで気持ち悪かった。
ゲームでもあの先生はセクハラキャラだったしと考え始め、ここはゲームの設定でも僕達は現実を生きているんだからこういう考え方は止めようと決心した。
まあ、保険医の事はゲーム云々を抜きにしても苦手なんだけど。
「そうだな、少し距離が近い感じはする」
「だよね。あんなに近付いて話すのおかしいよね。雅が側にいてくれて本当に良かった。保健室も苦手だけど、あの先生はもっと苦手だよ」
「そうかじゃあ、今度からは他のの階の保健室に連れて行くから。学年は違うけれど診てくれるから」
「もう保健室のお世話にならないように気をつけます」
そういえばここ保健室が学年毎にあるんだっけ、さすが貴族向けの学校お金かけている。
「気をつけてくれるなら何よりだ。あいつが戻ってきて色々言われても嫌だろ廊下にでてまっているか? 立っているのが辛いならここにいるが」
「ううん、廊下の方がいい」
「分った。辛かったら抱っこしてやるから」
雅が笑いながら僕を立たせてくれて、僕は使っていた毛布を軽く畳むと簡易ベッドの上に置くと二人揃って廊下に出た。
「まだ姿が見えないな。少し待つか」
教室から一番近い保健室とはいっても、それなりに距離はあるからそんなにすぐには来られないのかもしれない。
「そうだね。教室行った方がいいかな」
「いや、あ、電話。悪い家からだ、中で話す」
「うん」
家からの電話、何だろう。
僕には聞かせたくない話なのかな。
「何かあったら遠慮せずにドア開けろよ」
「はぁい」
雅が心配しないように、笑顔を作ってひらひらと手を振る。
雅が保健室の中に入りドアが閉まった瞬間、鍵が閉まる様な機械音がした気がした。
「あれ?」
雅が自分で鍵を閉めたのかな、遠慮せずにドアを開けろと言っていたのに。
やっぱり僕に聞かれたらマズい話なのかな……。
ついつい後ろ向きな考え方をするのは、僕の悪い癖だ。
「黙ってると変な事考えちゃうな。よし大林君が来てないか見に行こう」
教室から来るなら東側の渡り廊下を使って来る筈、保健室から教室二つ分位先にある角を曲がればすぐ渡り廊下だ。あの角まで行こう。
「なんなんですか、あなたは。迷惑だと言っているではありませんかっ!」
この声大林君? 教室二つ分の距離をのんびりと歩いていたら聞き覚えのある声が響いた。
言い争う様な雰囲気、木村君? あともう一人は誰だろう。
「僕は山城様に直接頼まれています。あなたに手伝って頂く必要はありません」
「それなら脇田様だって」
「彼は日直だから先生が僕を手伝うよう指示をされました。つまり僕と彼は先生の公認で授業を抜けていますが、あなたは違いますよね」
丁寧だけど険のある声で大林君は木村君に告げる。
脇田様って、脇田匡君か。お助けキャラってこういう時も出てくるのか。
あ、ゲーム的な考え方しないようにしようとさっき決めたばかりなのに、もう戻っている。
「鈴森様が目を覚しているなら、一言お詫びしたいだけです。ですから僕に荷物を届けさせてください。お二人は教室に戻っていただけませんか」
「お詫びしたいのなら、なんて頷けるわけないでしょう。お二人の私物を信用出来ない方に預けるなんてとんでもない」
言うなあ大林君、大人しい印象だったけど。僕なんかよりよっぽどしっかりしてる気がする。
「山城様に頼まれた大林様ではなく今回の元凶であるあなたが一人で行っても、山城様の心証が悪くなるだけですよ」
あ、これ脇田君アドバイスだ。
ゲームの中で主人公が間違った行動をしようとすると、側にいる脇田君が一回だけ教えてくれるんだ。
「一人が駄目なら、僕が大林様と行きます。それならいいでしょ」
脇田君の折角のアドバイスも聞かず、木村君は強引に鞄を奪おうとする。
ど、どうしよう。
「僕があそこに行ったらまた大騒ぎになるよね。み、雅を呼んでこよう」
三人から見えない様に壁に隠れて様子を窺っていた僕は、足音を立てない様に保健室に戻った。
「どうしよう、やっぱり開かない」
保健室のドアは鍵が掛かっていて開かなかった。
このまま木村君が来てしまったらどうしようと悩んでいたら、後ろから声を掛けられた。
「先生お留守ですか?」
「え」
「スマホの備品を届けるようご依頼頂いたのですが」
見た事がある顔の男性だけど、誰だったか思い出せない。
首を傾げる僕に、彼は持っていた紙袋を掲げて見せてくれた。
あ、思い出したこの人携帯ショップの店員さんだ。
「先生はさっき用事で出たみたいです」
「そうですか、どうしようかな。事務室に行くべきかな」
きょろきょろと男性は辺りを見渡すけれど、人気はない。
保健室の右隣二部屋は具合が悪い人が寮ではなくこの部屋に滞在して、処置を受ける為の部屋で、左隣は保健室用の備品室と各教科担当の控え室となっているから授業中の今は無人に近いんだ。
「すぐ戻られるならここでお待ちした方が良いかもしれないですし、どうしたらいいでしょう」
「そうですね」
困ったな、なんでこの人僕にこんな近寄ってくるんだろう。
「覚えていらっしゃいませんか? スマホ、上手く使えていますか?」
ドアを背にして逃げられない僕は、近付いてくる男性から逃れられない。
「あの」
距離を取ろうと両腕を伸ばした途端、手首を掴まれた。
「脅えないで下さい。傷付いてしまいます」
「あのっ」
掴まれた手を払おうとしても力が強くて逃げられない、後ろ手にドアに手を掛けてもびくともしない。
「連絡頂けるのをお待ちしていたんですよ。ここで会えるなんて運命かもしれませんね」
「離してっ」
悲鳴を上げる僕の手を引き寄せ、男性は僕の指先を口に含んだ。
ひっと、声にならない声が僕の口から漏れる。
ぬるぬると舐められる感触が気持ち悪くて「いや」と叫ぼうとするのに、恐ろしさに声が出ない。
「千晴様っ!」
「鈴森様っ!」
遠くから僕を呼ぶ声がして、はっと気がつくと僕の体は解放されていた。
「今のは内緒ですよ。でないと、あなたは誰にも嫁げなくなる」
「おやおや、随分賑やかですね」
混乱する頭で、僕はずるりと床にしゃがみ込んだ。
駆け寄ってきたのは大林君と脇田君、そして木村春。
僕を見下ろしているのは、携帯ショップの店員といつの間にか側に立っていた保険医だ。
「山城様はどうされましたか」
「中に」
「ああ、では鍵を開けましょうね」
保険医は親切そうな顔で頷くとリモコンで解錠しドアを開いた。
「見物客が多すぎますね、残念」
「え」
どういう意味? 保険医の発言が理解出来ずにいる僕を余所に保険医は店員を保健室の中へと連れて行く。
入れ替わりに雅が出てきて、僕を助け起してくれた。
「雅」
「すまない。鍵が急に閉まってドアが開かなくて」
「え」
雅が締めたんじゃなかったのか。でもどうして。
「鈴森様、お声が聞こえましたが、何があったのですか」
「大丈夫。知らない人に声を掛けられて驚いただけ」
「そうでしたか、ご無事で良かった」
僕を心配する二人の背後に、一人不機嫌そうな顔をした木村君が立っていた。
「荷物ありがとう」
「いいえ。コートをどうぞ」
「うん」
まだ足に力が入らない。
舐められた指先が気持ち悪くて、吐きそうだった。
「鞄は俺に」
「畏まりました。山城様もコートをどうぞ」
僕にコートを着せてくれた大林君は、今度はコートを雅へと手渡し脇田君が二人の鞄を雅の方へと運ぶ。
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