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本編
東屋で
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「冷たいだろ。お湯が出ないとは思わなかった。すまない」
東屋に連れて行かれ、近くに設置してある水道で手を洗った僕は、雅の膝の上に座り両手を雅の手に包まれていた。
大事な事だからもう一度言います。
雅の膝の上に座って、両手を雅の手に包まれています。
なんだこれ、どういう羞恥プレイなの。
顔が赤くなるのを止められない。
さっき店員のあの人に言われた事とか、主人公の木村春の発言を考えないといけないのに、そんなの無理な状況だよこれ。
「お湯が出る方が変でしょ。こんな屋外の水道で」
「でも、そのせいでハルの手がこんなに冷たい」
雅は不満そうだけど、屋外の殆ど利用する人間がいない水道でお湯が使えないのが不満とかどうなんだろう。
でも、これが上級貴族の感覚なのかもしれない。
そもそもこの東屋、暖房が付いてる。
屋外にある、おしゃれな屋根に柱とベンチがあるだけの東屋、そんなの寒くて当たり前と思っていた僕は貴族の学校を舐めていた。
人感センサーで暖房は起動する仕組みらしく、東屋に足を踏み入れた途端温風が漂い始めた時はぎょっとした。
しかも、床からも温度を感じる。なんと床暖房で、ベンチの下からも温風が出てる。
今まで滅茶苦茶寒かったのに肌寒さ皆無になって、どれだけ光熱費掛かってるんだと気が遠くなった。
そう言えば、夏の頃は前世の記憶がなかったから気にもしなかったけれど、ここ物凄く涼しかった。
暖房だけじゃなく冷房も完備してるんだ。
東屋って学園の敷地内のあちこちにあるんだけど、全部こんなに立派なんだろうか。
こんな設備が当たり前なら、そりゃ屋外の水道でもお湯が出ると思うのかもしれない。
「雅が温めてくれるから、僕はお湯が出なくて良かったって思ってるよ」
あの店員さんに指先を舐められた気持ち悪感触は、冷水で洗っても無くならなかったけれど、雅が両手を包み込み息を吹きかけ温めてくれたら霧散した。
「雅とこうしてるの、授業出ないでこんなことしてるの。凄く贅沢してる気持ちだよ、こんなのいけないのかもだけど、嬉しいな」
小姓にして欲しいと言ってしまったのだから、もうどれだけ甘えても一緒だろうと素直に気持ちを吐露すれば雅はなぜか呻って、下を向いてしまった。
「迷惑、だった?」
素直に気持ちを言っていいと、僕は思っていたけれど迷惑だっただろうか。
不安になって問うと、雅は笑って「いいや」と答えてくれた。
「ハルが可愛すぎて」
「な、何言ってるの。前々から思ってたけど雅の感覚ちょっとおかしいよ」
木村君も舞も大林君も、美人だ。
三人ともタイプが違うけど、あんな美人達がいるのになんで雅は僕を選んでくれたのか悩むレベルだ。
「そうか?」
「そうだよ。舞とか木村君とかみたいな人を可愛いっていうんだよ」
言ってて落ち込む、僕の顔って素朴なんだよなあ。
舞なんて、元々儚げ綺麗系美人だったのに、最近少し強気系も入ってきて向かうところ的無しな感じだし。
主要キャラじゃないから仕方ないけど、もう少し何とかならなかったのかと思う。
「好みじゃないな」
「美人とか可愛いとか」
「客観的に見た感想はそうでも、俺がこうして傍にいたいのはハルだけだし、可愛いと言いたいのもハルだけだ」
「み、雅」
誉め殺しって言うんだろうか、雅の躊躇ない言葉にどんどん顔が赤くなっていく。
何これ、何かの罰ゲーム?
こんな恥ずかしいこと、なんでサラッと言っちゃうの?
なんだか恥ずかしすぎて、前世の感覚で言えば『砂吐きそう』な感じだ。
「なんで急に手を洗おうとしたんだ?」
「え」
「保健室から出ただけで、何か触れたか?」
雅の問いにぎくりと体を震わせる。
そして思い出す、嫁げなくなるの言葉。
言ったら駄目なのかもしれない、でも雅は笑って否定してくれるかもしれない。
木村春のことは話せないから、片方だけでも雅に話してしまいたい。
「あの、指を」
何て言えばいいんだろ。
「さっき、雅が保健室の中に居たとき、携帯ショップの人が来て、僕の手を掴んで……口に」
「はっ?」
雅の低い声に僕は話しちゃいけなかったのだと悟ったけれど、もう遅かった。
「僕抵抗したんだよ、でもドアを背にして逃げられなくて、それに怖くて、怖くて」
気持ち悪かった、なぜあんなことされたのか分からない。
でも、雅が傍にいてくれたら大丈夫だと安心して、でも、雅の反応に不安で震えている。
「ハル」
「もう雅の傍にいられない?」
内緒は、雅にもそうしなきゃいけなかったのかな。
「そんなわけない」
「だって、内緒にしないと誰にも嫁げなくなるって」
「あいつに言われたのか?はあっ!」
声を荒げる雅に僕は怖くなって涙が出てしまう。
こんな時泣くのは駄目だと思うのに、僕が馬鹿だから雅を怒らせたんだと、涙が止まらなくなる。
「ご、ごめんなさい」
「ハル、泣くな。怒ってないから、怒ってるのはハルにじゃなく、自分にだ。怖がらせてごめん」
東屋に連れて行かれ、近くに設置してある水道で手を洗った僕は、雅の膝の上に座り両手を雅の手に包まれていた。
大事な事だからもう一度言います。
雅の膝の上に座って、両手を雅の手に包まれています。
なんだこれ、どういう羞恥プレイなの。
顔が赤くなるのを止められない。
さっき店員のあの人に言われた事とか、主人公の木村春の発言を考えないといけないのに、そんなの無理な状況だよこれ。
「お湯が出る方が変でしょ。こんな屋外の水道で」
「でも、そのせいでハルの手がこんなに冷たい」
雅は不満そうだけど、屋外の殆ど利用する人間がいない水道でお湯が使えないのが不満とかどうなんだろう。
でも、これが上級貴族の感覚なのかもしれない。
そもそもこの東屋、暖房が付いてる。
屋外にある、おしゃれな屋根に柱とベンチがあるだけの東屋、そんなの寒くて当たり前と思っていた僕は貴族の学校を舐めていた。
人感センサーで暖房は起動する仕組みらしく、東屋に足を踏み入れた途端温風が漂い始めた時はぎょっとした。
しかも、床からも温度を感じる。なんと床暖房で、ベンチの下からも温風が出てる。
今まで滅茶苦茶寒かったのに肌寒さ皆無になって、どれだけ光熱費掛かってるんだと気が遠くなった。
そう言えば、夏の頃は前世の記憶がなかったから気にもしなかったけれど、ここ物凄く涼しかった。
暖房だけじゃなく冷房も完備してるんだ。
東屋って学園の敷地内のあちこちにあるんだけど、全部こんなに立派なんだろうか。
こんな設備が当たり前なら、そりゃ屋外の水道でもお湯が出ると思うのかもしれない。
「雅が温めてくれるから、僕はお湯が出なくて良かったって思ってるよ」
あの店員さんに指先を舐められた気持ち悪感触は、冷水で洗っても無くならなかったけれど、雅が両手を包み込み息を吹きかけ温めてくれたら霧散した。
「雅とこうしてるの、授業出ないでこんなことしてるの。凄く贅沢してる気持ちだよ、こんなのいけないのかもだけど、嬉しいな」
小姓にして欲しいと言ってしまったのだから、もうどれだけ甘えても一緒だろうと素直に気持ちを吐露すれば雅はなぜか呻って、下を向いてしまった。
「迷惑、だった?」
素直に気持ちを言っていいと、僕は思っていたけれど迷惑だっただろうか。
不安になって問うと、雅は笑って「いいや」と答えてくれた。
「ハルが可愛すぎて」
「な、何言ってるの。前々から思ってたけど雅の感覚ちょっとおかしいよ」
木村君も舞も大林君も、美人だ。
三人ともタイプが違うけど、あんな美人達がいるのになんで雅は僕を選んでくれたのか悩むレベルだ。
「そうか?」
「そうだよ。舞とか木村君とかみたいな人を可愛いっていうんだよ」
言ってて落ち込む、僕の顔って素朴なんだよなあ。
舞なんて、元々儚げ綺麗系美人だったのに、最近少し強気系も入ってきて向かうところ的無しな感じだし。
主要キャラじゃないから仕方ないけど、もう少し何とかならなかったのかと思う。
「好みじゃないな」
「美人とか可愛いとか」
「客観的に見た感想はそうでも、俺がこうして傍にいたいのはハルだけだし、可愛いと言いたいのもハルだけだ」
「み、雅」
誉め殺しって言うんだろうか、雅の躊躇ない言葉にどんどん顔が赤くなっていく。
何これ、何かの罰ゲーム?
こんな恥ずかしいこと、なんでサラッと言っちゃうの?
なんだか恥ずかしすぎて、前世の感覚で言えば『砂吐きそう』な感じだ。
「なんで急に手を洗おうとしたんだ?」
「え」
「保健室から出ただけで、何か触れたか?」
雅の問いにぎくりと体を震わせる。
そして思い出す、嫁げなくなるの言葉。
言ったら駄目なのかもしれない、でも雅は笑って否定してくれるかもしれない。
木村春のことは話せないから、片方だけでも雅に話してしまいたい。
「あの、指を」
何て言えばいいんだろ。
「さっき、雅が保健室の中に居たとき、携帯ショップの人が来て、僕の手を掴んで……口に」
「はっ?」
雅の低い声に僕は話しちゃいけなかったのだと悟ったけれど、もう遅かった。
「僕抵抗したんだよ、でもドアを背にして逃げられなくて、それに怖くて、怖くて」
気持ち悪かった、なぜあんなことされたのか分からない。
でも、雅が傍にいてくれたら大丈夫だと安心して、でも、雅の反応に不安で震えている。
「ハル」
「もう雅の傍にいられない?」
内緒は、雅にもそうしなきゃいけなかったのかな。
「そんなわけない」
「だって、内緒にしないと誰にも嫁げなくなるって」
「あいつに言われたのか?はあっ!」
声を荒げる雅に僕は怖くなって涙が出てしまう。
こんな時泣くのは駄目だと思うのに、僕が馬鹿だから雅を怒らせたんだと、涙が止まらなくなる。
「ご、ごめんなさい」
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