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本編
一目惚れとか言うらしい
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「読んでいいのか」
「出来るなら読んでほしくないけど、僕に呆れないって約束してくれるなら、大丈夫」
心配なのって、それだけだから。
僕は机の上に置いていた狼雅を抱きしめて、ふわふわな体で顔を隠す。
「どうした?」
雅が僕の頭を撫でながら聞いてくる。
「目の前で読まれるの恥ずかしい、直視できない」
雅が僕の頭を撫でるのを気持ちよくて、うっとりしながらも顔は上げない。
雅があれ読んで呆れてたり、引いてたりしてるの見たらきっと死にたくなる。
真面目な顔で読まれても恥ずかしい。
「恥ずかしいだけなんだな、嫌ではないな」
「うん」
一番最初だけで、結構僕変な奴決定されちゃうかもしれないなあ。
。
入学式の後、気分が悪くなった僕を山城様という方が助けて頂きました。
沢山の人がいる場所に緊張して、具合が悪くなる様な不甲斐ない僕に優しくて声を掛け、ペットボトル(自動販売機という物から買えると教えて下さいました)入りの温かい紅茶を手渡して下さるなんて、本当に親切な方だと思います。
それに、とても素敵な方でした。
笑顔がとても素敵ですし、お声も素敵です。
山城様のお声をずっと聞いていられたら、幸せだろうなと図々しくも思ってしまいました。
「初めて親しくお話しした人が山城様だったことは、幸せなことだと思います。初めて?」
雅は、酷い。
声に出して読むなんて。
恥ずかしくて顔を上げられない僕の顔を、雅は意地悪く覗きこむ。
「ね、教えて。俺がハルと初めて会話したって、どういうこと?」
「僕は屋敷から殆んど出ずに育ったの。それでたまに外出したとしても僕は父様や兄様にくっついているだけで、誰かと直接会話した経験すら無かったんだ」
今、前世の記憶がある僕には異常としか思えない育ち方だと思う。
箱入りに育ててしまったと、父様が後悔していたけれど。
それでも限度があると思う。
「自動販売機はここに来て初めて見たし、コンビニで買い物とかしたのも、雅が入学式の後一緒に行ってくれたのが初めて。親しく話したのも雅が初めてなのっ!」
世間知らずを極めすぎだと、言いながら再認識して自棄になって叫ぶ。
「俺の声、素敵だと思ったんだ?」
狼雅を抱きしめながら自棄になってる僕を抱っこして、雅が椅子に腰掛ける。
「俺の声、好き?」
「い、意地悪だ」
「何が」
「声に出して読むなんて、意地悪だ。恥ずかしいって言ったのに」
「ごめん」
抱きしめながら雅が僕の頭に頬を擦り付ける。
時々、耳の辺りに雅の熱を感じてドキドキする。
ドア一枚隔てたリビングで、和歌子さん達が引っ越し作業してるというのに、僕達なにやってるんだろ。
「読んでる途中、ハルの耳が赤くなってくから可愛くて」
「雅っ」
「ハルに素敵って思って貰えてたんだな。嬉しいよ」
頼むから僕の好きな低音の声で、耳元で囁かないで。
「俺は、可愛いなって思ってたよ。ペットボトル渡した時、一瞬ハルが微笑んでくれたんだ。あの笑顔が可愛くて、やっぱり好きだなって再認識したんだ」
「再認識?」
「ハル覚えてないだろうけど、受験の日に俺はハルを見掛けて、その時ハルに一目惚れしたんだよ」
え、受験の日?
思わず顔を上げ雅を見つめる。
思っていた以上に距離が近くて、ドキッとしながら聞いてみる。
「一目惚れ?」
「そう。一目惚れ。ハルと一瞬だけ目があって、何故かハルがあの時笑ったんだ、それに見惚れて忘れられなかった」
これ、雅ルートのセリフだ。
全然前後のセリフも場所も違うけど、ゲームでは「教室に入ってきたお前を見た瞬間好きになってたんだ、お前と一瞬だけ目があって、何故かお前が笑ったんだ。それに見惚れて忘れられなかった」そう言うんだ。
でも、どうしてそれを僕に?
「ハル?」
「雅、好きだよ」
「ハル、うん。俺も好きだ」
怖いよ。なんで、こんな偶然が起きるの。
「雅、ずっと一緒にいてね。僕の旦那様、ずっと……」
震えながらのお願いは、雅の唇に塞がれ最後まで言えなかった。
「出来るなら読んでほしくないけど、僕に呆れないって約束してくれるなら、大丈夫」
心配なのって、それだけだから。
僕は机の上に置いていた狼雅を抱きしめて、ふわふわな体で顔を隠す。
「どうした?」
雅が僕の頭を撫でながら聞いてくる。
「目の前で読まれるの恥ずかしい、直視できない」
雅が僕の頭を撫でるのを気持ちよくて、うっとりしながらも顔は上げない。
雅があれ読んで呆れてたり、引いてたりしてるの見たらきっと死にたくなる。
真面目な顔で読まれても恥ずかしい。
「恥ずかしいだけなんだな、嫌ではないな」
「うん」
一番最初だけで、結構僕変な奴決定されちゃうかもしれないなあ。
。
入学式の後、気分が悪くなった僕を山城様という方が助けて頂きました。
沢山の人がいる場所に緊張して、具合が悪くなる様な不甲斐ない僕に優しくて声を掛け、ペットボトル(自動販売機という物から買えると教えて下さいました)入りの温かい紅茶を手渡して下さるなんて、本当に親切な方だと思います。
それに、とても素敵な方でした。
笑顔がとても素敵ですし、お声も素敵です。
山城様のお声をずっと聞いていられたら、幸せだろうなと図々しくも思ってしまいました。
「初めて親しくお話しした人が山城様だったことは、幸せなことだと思います。初めて?」
雅は、酷い。
声に出して読むなんて。
恥ずかしくて顔を上げられない僕の顔を、雅は意地悪く覗きこむ。
「ね、教えて。俺がハルと初めて会話したって、どういうこと?」
「僕は屋敷から殆んど出ずに育ったの。それでたまに外出したとしても僕は父様や兄様にくっついているだけで、誰かと直接会話した経験すら無かったんだ」
今、前世の記憶がある僕には異常としか思えない育ち方だと思う。
箱入りに育ててしまったと、父様が後悔していたけれど。
それでも限度があると思う。
「自動販売機はここに来て初めて見たし、コンビニで買い物とかしたのも、雅が入学式の後一緒に行ってくれたのが初めて。親しく話したのも雅が初めてなのっ!」
世間知らずを極めすぎだと、言いながら再認識して自棄になって叫ぶ。
「俺の声、素敵だと思ったんだ?」
狼雅を抱きしめながら自棄になってる僕を抱っこして、雅が椅子に腰掛ける。
「俺の声、好き?」
「い、意地悪だ」
「何が」
「声に出して読むなんて、意地悪だ。恥ずかしいって言ったのに」
「ごめん」
抱きしめながら雅が僕の頭に頬を擦り付ける。
時々、耳の辺りに雅の熱を感じてドキドキする。
ドア一枚隔てたリビングで、和歌子さん達が引っ越し作業してるというのに、僕達なにやってるんだろ。
「読んでる途中、ハルの耳が赤くなってくから可愛くて」
「雅っ」
「ハルに素敵って思って貰えてたんだな。嬉しいよ」
頼むから僕の好きな低音の声で、耳元で囁かないで。
「俺は、可愛いなって思ってたよ。ペットボトル渡した時、一瞬ハルが微笑んでくれたんだ。あの笑顔が可愛くて、やっぱり好きだなって再認識したんだ」
「再認識?」
「ハル覚えてないだろうけど、受験の日に俺はハルを見掛けて、その時ハルに一目惚れしたんだよ」
え、受験の日?
思わず顔を上げ雅を見つめる。
思っていた以上に距離が近くて、ドキッとしながら聞いてみる。
「一目惚れ?」
「そう。一目惚れ。ハルと一瞬だけ目があって、何故かハルがあの時笑ったんだ、それに見惚れて忘れられなかった」
これ、雅ルートのセリフだ。
全然前後のセリフも場所も違うけど、ゲームでは「教室に入ってきたお前を見た瞬間好きになってたんだ、お前と一瞬だけ目があって、何故かお前が笑ったんだ。それに見惚れて忘れられなかった」そう言うんだ。
でも、どうしてそれを僕に?
「ハル?」
「雅、好きだよ」
「ハル、うん。俺も好きだ」
怖いよ。なんで、こんな偶然が起きるの。
「雅、ずっと一緒にいてね。僕の旦那様、ずっと……」
震えながらのお願いは、雅の唇に塞がれ最後まで言えなかった。
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