【完結済み】乙男な僕はモブらしく生きる

木嶋うめ香

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本編

困った主人公

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「なんか凄かったね」
「あぁ、あの自信には呆れるな」

 放課後雅と手を繋ぎ帰りながら寮までの道を歩いていたら、木村君が追いかけてきたんだ。
 散々文句というか雅に目を覚ませと訴えていた彼は、川島君と森村様に無理矢理連れていかれるまで騒ぎまくっていた。
 雅が何を言っても話が通じない。
 一方的に話続ける姿は怖かった。

「何をどうしたらハルを捨ててあれを好きになるって?」
「僕が相応しくないって……」

 雅は呆れているけれど、それはゲームでは正しいラストだ。
 雅ルートで攻略が上手くいけば、雅と主人公はハッピーエンドになる。

「好きになるとか言うの嫌だ」

 繋いでいた手につい力を込めてしまう。

「ハル?」
「言ったら本当になっちゃうかも、だから駄目だよ言わないで。例えばなしでも僕以外を好きって言ったら駄目」

 僕のために頑張ってくれている雅に、こんな我が儘言ったら呆れられると思うのに、不安で止められない。
 今の状況が、僕と木村君両方に前世の記憶がある故のバグみたいなものだったらという不安が、時々嵐みたいに僕の心の中を乱していくんだ。

「ハル」
「はい」
「どれだけ好きにさせるつもりなんだ?」

 雅は立ち止まると繋いだ手を顔の前まで持ち上げて、僕の指先に口付ける。
 思わず引こうとした手を掴まれて、手を繋いだまま歩きだした。

「一緒の部屋に帰るのが幸せだと思っているのは、俺だけか?」
「僕もだよ、朝も昼も夜もずっと一緒に居られて幸せ」
「じゃあ、不安になるな。俺が好きなのはハルだけだ」
「うん、分かってる。ごめんね雅不安になっちゃって」
「本当だ。お詫びしてもらわないとな」

 くくっと笑いながら雅が僕の顔を覗きこむ。
 歩きながらそんな風にして転んだりしないのかな、僕じゃないからしないか。

「お詫び?」
「そ、何してもらおうかな」
「僕何でもするよ。雅が言うことなんでもする」

 こくこくと何度も頷いてそう答えたら、雅が低い呻き声をあげて立ち止まった。

「雅?」
「ハル、そう言うことは他の奴には絶対に言っちゃ駄目だ」
「え、うん。雅以外には言わないけど」

 なんで? 僕が疑問に感じたと気がついたんだろう。
 大きなため息をついた後、疲れた様に僕の頭をポンポンと叩いた。

「なぁに?」
「いや、可愛いから困るなってね」
「からかってる?」

 なんか笑われてる気配を感じて振り向けば、後ろを歩いてたメイドさん達が急に真顔になった気がした。

「お前達先に帰っていろ」
「畏まりました、もし先程の方が待ち伏せしている様であればご連絡致します」
「分かった」

 雅が頷くとメイドさん達が一礼して、去っていく。
 僕達の荷物は彼女達が運んでいるんだけど、いいのかな。

「ゆっくり帰ろう」
「うん」

 走っていったわけじゃないのに、彼女達の姿はもう、見えない。
 木村君達の姿もない、というか他の人が誰も歩いていないのは下校時間からだいぶ過ぎてるからだろうか。

「 ねえ雅、森村様ってあんな話し方するのは前からなの?」
「どういう意味だ?」
「僕話したことないから見かけた時の印象だけなんだけど、もっと大人しい人なのかと思ってたから」

 さっき木村君を連れていこうとしていた森村様は、何かおかしな感じだった。

「大人しい?」
「うん、もの静かというか、そういう印象だったから。驚いちゃったし何だか怖かった」
「あぁ、一見おとなしそうに見えるからな」
「本当は違う?」

 ゲームでの動物イメージはうさぎだし、大声をあげる様なキャラじゃなかったのは確かだ。

「苛烈な性格をしているな、それだけでなく今は余裕もない様だな。以前はもっと良識があった」
「そうなんだ。谷崎様も怖かったけど何だか川島君と森村様も怖くて。川島君も以前と違う感じがするよ」

 抵抗する木村君を、川島君と二人で引きずる様に歩いていく姿は怖かった。
 あれ、連れていくというより捕縛するって表現が正しいんじゃないかな。

「二人とも木村君に出会って変わっちゃったのかな」
「そうかもしれないな」

 それが木村君と僕のためにに前世の記憶があるせいだとしたら、これからもっと影響がでるんだろうか。
 僕はどうしたらいいんだろう。
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