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本編
凄すぎるよ主人公
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「もういいよっほっといて!」
寮の近くまで歩いてきたら、聞き覚えのある大きな声が聞こえてきた。
この声って。
「春君っ!」
「来ないで! 一人になりたいんだから、来たら嫌いになるからねっ!!」
声が近付いてきたから、雅と顔を合わせ植え込みの陰に隠れる。
生徒が日常的に通る道の側はベンチや東屋等が点在してるけれど、眺めが良いようにコニファーが植えられているし、それに合うように薔薇等も植えられている。
「なにかあったのかな」
息を潜めていると雅のスマホにメイドさんから連絡が入った。
「どうしたの」
木村君の様子を窺いながら、スマホの画面を見ている雅に小声で尋ねる。
「もーっ、なんで上手くいかないのかなっ!」
こんな大声で騒ぎながら歩く人なんて、この学園にいない。ついでに言えば今世でこういう人を初めて見る様な気がする。
「藤四郎はあんな小姓とイチャイチャイチャイチャしてるし、みやピーもいつの間にかあんなモブを小姓にしてたしっ!脅しメール効いてないじゃん!!」
すぐ近くを木村君は大声をあげながら歩いている、と思ったら誰かと電話中みたいだ。
「何笑ってんの。あんたが上手くやらないから悪いんじゃないか、ふざけんなよ変態がっ」
辺りに人がいないとはいえ、木村君は周囲を気にせず話しすぎなんじゃないだろうか。
「他に気に入ってた人だって急に皆で小姓連れになってるしっ!なんなの皆しておかしいでしょっ!」
誰と話してるんだろ。
分からないけれど、迫力がありすぎて怖い。
「あのモブは消すから、あんたちゃんと協力してよ。狙ってんなら無理矢理ヤればいいんだよ。あのヘタレ店員は失敗したけど、あんたは学園内にいるんだからさぁ」
ヘタレ店員? って、まさか。
「あんなモブ抱きたいなんて気持ち分かんないけどさ、弱々の世間知らずだよ、騙してぐちゃぐちゃにしてやればいいんだよ。ああいう奴大嫌い、大袈裟に湿布貼って馬鹿じゃないの?守ってもらえないと泣いちゃうんですぅとか、ブスの癖にふざけんなって。え?あぁ誰もいないから平気だって」
湿布貼ってって、僕のこと?
みやピーって、雅のこと?
「ムカついてんに決まってんでしょ!信ちゃん退学とかなんでだよっ!クジ当たったのに居なくなるとかありえないってば。ってちょっと切るなってばまだ話が。うわっ本当に切りやがった。ムカつくー!」
ガサッ。
何かが飛んできて足元近くに落ちた。
「あ、どこ飛んでっいったんだろ。まあ、いいか。もう消えた人だし。……あ、あの人三年の侯爵の人かな、もう少しで落とせそうなんだよね、何か考えなきゃ」
突然静かになったと思ったら、俯いて歩きだそうとして立ち止まってしまった。
「何してるんだろ?」
「しっ」
木村君がいるから僕達も動けない。
仕方ないから二人で隠れながら気配を殺して、ずっと木村君の様子を見ていた。
「っ、う」
五分位過ぎただろうか? そこまで時間経ってないかな?
でも、こういう時間は長く感じてしまう。
「う、ううっ」
突然木村君が声を出し始めた。
泣いてる? え、どうして? 今まで大声で、むしろ怒ってる感じだったのに?
「あれ、君は」
「あ、先輩っ」
「一人でどうした?もう暗くなるのに部屋に帰らないのか?」
木村君が電話していた時は近くにいなかったんだろうか、先輩と呼ばれた人は木村君に優しく声を掛けている。
「ひと、一人でいるのが辛くて」
「何かあった?」
「僕、同じクラスのある人に嫌われてて僕を賎しい平民の孤児って、陰口を」
「なんだって?」
うわ、この人騙されてる。
「仕方ないです。僕が平民なのも孤児なのも事実ですから、特待生になって学園に通える様になったけど、僕話は皆さんと違うから」
木村君はか細い声で、時々くすんと鼻を鳴らしながら話し続ける。
「そんな事ないだろ、ずっと勉強頑張ってきたから特待生になれたんだ。誇っていいよ」
「でも、僕は邪魔にされて、寮の食堂も行きにくくて」
「そうか、じゃあ何か食べに行こうか。美味しいもの食べたら気持ちも変わるだろうし」
「え、でも」
「勿論俺がご馳走するよ。俺は君の味方だから、ほら泣き止んで」
「ありがとうございます先輩、優しいんですね」
木村君はそっと近寄ると、相手の胸元に触れながらじいっと顔を見上げた。
「誰にでも優しいわけじゃないさ」
「じゃあ、ううん。僕帰ります」
「え、どうして」
「僕弱ってるから、優しくされたら期待したくなっちゃうし、話を聞いて貰えたから大丈夫です」
「食堂行きにくいんだろ?」
「一食抜くなんて慣れてるから、施設はそういうことあったし、平気です」
「……そんな酷いところにいたのか」
「酷くはなかったですけど、食事の量が少なくて皆お腹空かせてたから、つい僕」
「まさか自分は我慢して、他の子に?」
「自己満足なんですけどね、僕一人分じゃ皆はお腹一杯になれないし、でも小さな子がお腹すいてるとつい」
これじゃ騙される。
え、今僕達騙されてる瞬間見てるの?
寮の近くまで歩いてきたら、聞き覚えのある大きな声が聞こえてきた。
この声って。
「春君っ!」
「来ないで! 一人になりたいんだから、来たら嫌いになるからねっ!!」
声が近付いてきたから、雅と顔を合わせ植え込みの陰に隠れる。
生徒が日常的に通る道の側はベンチや東屋等が点在してるけれど、眺めが良いようにコニファーが植えられているし、それに合うように薔薇等も植えられている。
「なにかあったのかな」
息を潜めていると雅のスマホにメイドさんから連絡が入った。
「どうしたの」
木村君の様子を窺いながら、スマホの画面を見ている雅に小声で尋ねる。
「もーっ、なんで上手くいかないのかなっ!」
こんな大声で騒ぎながら歩く人なんて、この学園にいない。ついでに言えば今世でこういう人を初めて見る様な気がする。
「藤四郎はあんな小姓とイチャイチャイチャイチャしてるし、みやピーもいつの間にかあんなモブを小姓にしてたしっ!脅しメール効いてないじゃん!!」
すぐ近くを木村君は大声をあげながら歩いている、と思ったら誰かと電話中みたいだ。
「何笑ってんの。あんたが上手くやらないから悪いんじゃないか、ふざけんなよ変態がっ」
辺りに人がいないとはいえ、木村君は周囲を気にせず話しすぎなんじゃないだろうか。
「他に気に入ってた人だって急に皆で小姓連れになってるしっ!なんなの皆しておかしいでしょっ!」
誰と話してるんだろ。
分からないけれど、迫力がありすぎて怖い。
「あのモブは消すから、あんたちゃんと協力してよ。狙ってんなら無理矢理ヤればいいんだよ。あのヘタレ店員は失敗したけど、あんたは学園内にいるんだからさぁ」
ヘタレ店員? って、まさか。
「あんなモブ抱きたいなんて気持ち分かんないけどさ、弱々の世間知らずだよ、騙してぐちゃぐちゃにしてやればいいんだよ。ああいう奴大嫌い、大袈裟に湿布貼って馬鹿じゃないの?守ってもらえないと泣いちゃうんですぅとか、ブスの癖にふざけんなって。え?あぁ誰もいないから平気だって」
湿布貼ってって、僕のこと?
みやピーって、雅のこと?
「ムカついてんに決まってんでしょ!信ちゃん退学とかなんでだよっ!クジ当たったのに居なくなるとかありえないってば。ってちょっと切るなってばまだ話が。うわっ本当に切りやがった。ムカつくー!」
ガサッ。
何かが飛んできて足元近くに落ちた。
「あ、どこ飛んでっいったんだろ。まあ、いいか。もう消えた人だし。……あ、あの人三年の侯爵の人かな、もう少しで落とせそうなんだよね、何か考えなきゃ」
突然静かになったと思ったら、俯いて歩きだそうとして立ち止まってしまった。
「何してるんだろ?」
「しっ」
木村君がいるから僕達も動けない。
仕方ないから二人で隠れながら気配を殺して、ずっと木村君の様子を見ていた。
「っ、う」
五分位過ぎただろうか? そこまで時間経ってないかな?
でも、こういう時間は長く感じてしまう。
「う、ううっ」
突然木村君が声を出し始めた。
泣いてる? え、どうして? 今まで大声で、むしろ怒ってる感じだったのに?
「あれ、君は」
「あ、先輩っ」
「一人でどうした?もう暗くなるのに部屋に帰らないのか?」
木村君が電話していた時は近くにいなかったんだろうか、先輩と呼ばれた人は木村君に優しく声を掛けている。
「ひと、一人でいるのが辛くて」
「何かあった?」
「僕、同じクラスのある人に嫌われてて僕を賎しい平民の孤児って、陰口を」
「なんだって?」
うわ、この人騙されてる。
「仕方ないです。僕が平民なのも孤児なのも事実ですから、特待生になって学園に通える様になったけど、僕話は皆さんと違うから」
木村君はか細い声で、時々くすんと鼻を鳴らしながら話し続ける。
「そんな事ないだろ、ずっと勉強頑張ってきたから特待生になれたんだ。誇っていいよ」
「でも、僕は邪魔にされて、寮の食堂も行きにくくて」
「そうか、じゃあ何か食べに行こうか。美味しいもの食べたら気持ちも変わるだろうし」
「え、でも」
「勿論俺がご馳走するよ。俺は君の味方だから、ほら泣き止んで」
「ありがとうございます先輩、優しいんですね」
木村君はそっと近寄ると、相手の胸元に触れながらじいっと顔を見上げた。
「誰にでも優しいわけじゃないさ」
「じゃあ、ううん。僕帰ります」
「え、どうして」
「僕弱ってるから、優しくされたら期待したくなっちゃうし、話を聞いて貰えたから大丈夫です」
「食堂行きにくいんだろ?」
「一食抜くなんて慣れてるから、施設はそういうことあったし、平気です」
「……そんな酷いところにいたのか」
「酷くはなかったですけど、食事の量が少なくて皆お腹空かせてたから、つい僕」
「まさか自分は我慢して、他の子に?」
「自己満足なんですけどね、僕一人分じゃ皆はお腹一杯になれないし、でも小さな子がお腹すいてるとつい」
これじゃ騙される。
え、今僕達騙されてる瞬間見てるの?
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