【完結済み】乙男な僕はモブらしく生きる

木嶋うめ香

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本編

何かがおかしい

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「千晴様、お隣に座っても?」

 体育の時間、昨日の事があるから念のため見学にした方が良いと雅に言われた僕は、体育館の二階にあるギャラリー席の椅子に座ってぼんやり下を眺めていた。
 お供も勿論一緒にいる。座ってはくれないけれど。

「あれ、舞も見学?」
「はい、バスケットボールは危ないと藤四郎様が心配して下さいまして」
「そうなの?」
「ええ、多分藤四郎様のファンの方に何かされるのではと心配されているのかと」

 言いながら舞が見ているのは木村君がいる辺りだ。
そっか、木村君が何か仕掛けてくるかもしれないと心配してるんだ。

「確かに見学の方が安心かも。あ、舞も半分かける?」
「ありがとうございます」

 暖房は効いているけれど、過保護なメイドさんはふわふわな膝掛けを用意してくれていたから、隣に座った舞に近付き二人で膝掛けを使う。

「温かいです。ありがとうございます」

 舞と一緒に、陽子さんも頭を下げる。

「舞のお供には陽子さんがついてるんだね」
「はい。彼女は格闘技も得意な方なので、安心なんです」
「へえ、メイドさんて格闘技もできる人多いのかな」

 僕の後ろに立っている三人も格闘技が得意でお供としても護衛としても優秀らしい。

「どうなのでしょう?でも、千晴様はお供の方が増えたのですね」
「うん、昨日具合が悪くなっちゃったせいで心配だからって、雅昨日からちょっと過保護なんだよ」

 まあ、倒れた挙げ句泣いちゃったから情緒不安定なんだと思われてそうだけど。

「過保護、ですか」
「うん。朝食も食べる量が少なすぎるって言うし」
「それは、僕もよく言われます。小鳥の餌の方がまだ多いとか」
「あはは、佐々木様上手いこと言うね。あっ」

 笑いながら下を見ていたら、木村君が僕達の方向を指差しながら川島君に何かを訴えていると気が付いた。

「なんだろ」
「二人が僕を見ながら笑っていると言っていますね」

 首を傾げていたら、陽子さんがポソリと呟いた。

「え、聞こえたの陽子さん」
「顔が見えていますので、唇の動きで分かります」

 何それ凄すぎる。
 陽子さん一体何者なんだろ。

「僕達に言いがかりをつけたいのでしょう。森村様は実家に呼び戻されたそうですし。そのせいで機嫌が悪いのかもしれませんね」
「え、森村様が呼び戻されたの?」
「はい、藤四郎様が朝その様に言われていましたので確かです」

 昨日雅が佐々木様に話をしに行くと言ってたけど、その件だったのかな。

「昨日、山城様が撮られた動画は効果抜群だったと藤四郎様はとてもお喜びになっておいででした」
「動画?」
「ええ、千晴様は動画を撮っていたとき側にいらっしゃったのでは?」
「ええと、そう、そうだったかな?」

 動画ってなんだっけ、あれ?僕昨日何してた?
 雅はどうして佐々木様のところに行ったんだっけ?

「千晴様はお外で調子を崩されて、ご主人様が支えながらお帰りになりましたから、記憶が曖昧なのではありませんか?」
「きっとそうですわ」

 そうなのかな?
 確かに外は寒かったし、長く外にいたけど。
 あれ、確か木村君のことを二人で見てた?

「木村君の動画」
「ええ、そうです」
「木村、木村君が」

 動画?メール? あれ、僕何か忘れてる?

 ぐらりと世界が揺れる。

 大声をあげている木村君。
 二人で歩いていく後ろ姿。

 お仕置きと書かれた、あれはメール?

「千晴様、お顔の色が」
「大丈夫、少し頭痛がするだけ」

 チラチラと何かが見える様な錯覚。
 目を閉じちゃいけない。
 怖いものが見えそうだから、でも何が見えるの?

「千晴様、こちらをお飲みください」
「ありがとう」

 ハーブティの入った紙コップを手渡され、ゆっくりと飲む。

「山城様をお呼びした方がよろしいのではありませんか?」
「大丈夫、ごめんね心配掛けて」

 これじゃ雅が過保護でも文句言えないな。
 なんだか、僕昨日から変だ。

 忘れてる気がする。
 でも何を?
 分からないけれど、ハーブティーを飲んでいたら気持ちは落ち着いてきた。

「いい香りですね」
「うん、実家から送られてくるんだ」

 いつも飲んでるから、慣れている味。
 いつも? あれ、いつもだっけ。
 なんだかあやふやだ。
 ハーブティーの味は確かに慣れた味なのに。
 なんでこんなにおかしな気持ちになるの。

「木村君」

 こちらを見て何か言いながら睨んでいる。
 一人でいるのはどうして? 川島くんは?

「川島くんどうしたんだろ」
「木村君を置いて向こうに行ってしまいました」
「そうなの?」

 確かに離れた場所に一人で川島君が立っている 。
 昨日までと何かが違う。
 どうしたの? なにが起きてるの?

「舞なんだか恐い」

 無意識に僕は舞の手を掴んでいた。
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