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本編
懲りない主人公1
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「そ、そんなことないです。僕なんて」
寮に戻ると、入り口にあるソファースペースから声がした。
「雅」
「気にするな、行くぞ」
声の主につい顔が強張り歩みが止まりかけた僕の腕を引き、歩くように促す。
「うん」
雅と手を繋ぎ、後ろにはメイドさん達がいる。
何も問題なんておきるわけない、そう思った時だった。
「あっ」
「春君どうかした?」
「なんでも、僕、あの」
無言でカウンターの前を通り抜けようとしている僕達に向けて話している様な声が気になるけれど、雅は存在に気が付いていないように僕の手を引き歩く。
木村君の声を聞くだけで胃が痛くなる。
何だかこういうの嫌だけど、顔を見るのも本当は嫌だと思う。
「僕、クラスの人に嫌がらせされてて。それを先導してる人があそこに」
「え、山城様?」
「いいえ、その隣の方です」
木村君の発言にメイドさん達が殺気立つのを感じた。
木村君と話している人の声は聞いたことがない。
もしかしたら上級者かもしれない。
気にしていないのかエレベーターの方に歩いて行こうとする雅を、その上級者?が呼び止めた。
「山城様、ちょっといいかな?」
敬称は様としているものの、気安い感じで声を掛けてきたのは、今まで木村君と話していた人だ。
「何か?」
それに対して雅は、僕を背に隠して対応する。
警戒してる? なら、僕はそれに合った行動を取らないといけないよね。
「あー、うん。山城様の小姓について伺いたいのだけど」
「俺の小姓?」
「うん。伺いたい事が真実なら、山城様も知っていなければならない話だと思うけど」
「俺がハルのことで把握していない話などないが」
雅はあっさりとそう言い、雅の背中に隠れていた僕の腰を抱くと、ふふんとばかりに胸を張った。
「悪評もすべて把握していると?」
「俺の小姓について悪意のある噂を流している奴がいる。馬鹿らしくていちいち相手にしていないがな。大抵の人間はそれが嘘だと知っている」
「悪評は事実ではないと?すべて把握なんて可能かな?」
この人冷静だ。
何となくそう感じて、二人を見守る。
ネクタイの色を見ると三年生みたいだけど、名前は分からない。
木村君は僕を苦々しい顔で見ているけれど、それは気がつかない振りをする。
「俺はハルとほぼ一緒にいるし、側にいられない時は俺が選んだ供をつけている」
「なるほど」
「それでも聞きたいか」
小姓って旦那様の持ち物扱いなところがある。
だから小姓の失敗は、即旦那様の失敗になる。
逆に考えれば、小姓の行動に文句をいうのは旦那様に文句を言うのと同じらしいと、舞の側付きの陽子さんに言われた。
「苛めをしているというのは?聞いたことない?」
「虫も殺せない位に優しいハルが?」
「確かにそんな感じに見えるね」
木村君を名前で呼ぶ人で、ちゃんと会話が成り立ってるの珍しいな。
その横で木村君の顔はかなり怖い感じになってるけど口は挟んでこない。
「でも見た目だけってことはない?」
「見た目より優しすぎて困る位だな」
「じゃあ苛めは?」
「さっきも言ったが、ほぼ俺と一緒にいてそうでなければ俺の配下が側にいる。それで苛めなどどうやってす出来る?」
「山城様が一緒ではないなら、側付きがいても関係なさそうじゃない?」
「ふっ」
雅が相手を挑発するように笑う。
「ハルが苛めなどするわけがないが、仮に俺の配下が側にいても苛めをしていたのなら、俺の指示で動いていると思ってもらっていいぞ」
「つまり、山城家に害があるから排除に動いていると」
「本当に苛めをしているならだ。勿論、そんな事実はないし、俺に抗議をするならそれ相応の証拠を持ってきて貰うがな」
「そうだね、証拠は必要だね。どうかな、春君」
くるりと振り返り木村君に尋ねる。
この人、春君に盲信はしてないみたいだけど。どうなんだろ?
「ぼ、僕は本当に苛められてるんです。通りすがりに嫌みを言われたり物を壊されたり。だけどいつもこの人を庇う人がいて、やってないことにされてしまうんです」
「そうなの?」
「はい。谷崎様が僕に親しくしてくださっていて、それが面白くないと」
「山城様の小姓なのに?」
「谷崎様が、言い寄られて迷惑していると仰っていました」
「ありえないな。馬鹿馬鹿しい」
雅はすぐに否定して笑い飛ばす。
「で、ですが影で何度も誘惑されたと」
「小姓にしたのは最近だが、ハルとはずっと付き合っていたし、公にしていなかったから側付きは居なかったがその代わり影で護衛をつけていた」
「で、電話とか」
「通話記録はすべてチェックしている。勿論メールもトークアプリも送受信は日々チェックしている」
「え、そうなの?」
驚いて聞くと頷かれた。
知らなかった。でも雅に知られて困る人と連絡とってないから別に問題ないか。
それに多分僕に変な電話とか来てないか確認してくれてるんだよね。きっと木村君に何かされないかとか、心配してくれてるんだ。
「小姓には知らせてないなら誤魔化したりもしないよね
」
「で、でもこっそりと部屋に行っていたとか」
「勿論GPSで行動記録も取ってある。そんな事実もない」
「えっ」
「なんだ?嫌か?」
凄い、雅は何かあった時の為にそこまで考えてくれてたんだ。
「ううん、嬉しい。ありがとう雅、僕をいつも見守ってくれてるんだね」
僕が笑顔でお礼を言うと、先輩は呆れたような声をあげたんだ。
寮に戻ると、入り口にあるソファースペースから声がした。
「雅」
「気にするな、行くぞ」
声の主につい顔が強張り歩みが止まりかけた僕の腕を引き、歩くように促す。
「うん」
雅と手を繋ぎ、後ろにはメイドさん達がいる。
何も問題なんておきるわけない、そう思った時だった。
「あっ」
「春君どうかした?」
「なんでも、僕、あの」
無言でカウンターの前を通り抜けようとしている僕達に向けて話している様な声が気になるけれど、雅は存在に気が付いていないように僕の手を引き歩く。
木村君の声を聞くだけで胃が痛くなる。
何だかこういうの嫌だけど、顔を見るのも本当は嫌だと思う。
「僕、クラスの人に嫌がらせされてて。それを先導してる人があそこに」
「え、山城様?」
「いいえ、その隣の方です」
木村君の発言にメイドさん達が殺気立つのを感じた。
木村君と話している人の声は聞いたことがない。
もしかしたら上級者かもしれない。
気にしていないのかエレベーターの方に歩いて行こうとする雅を、その上級者?が呼び止めた。
「山城様、ちょっといいかな?」
敬称は様としているものの、気安い感じで声を掛けてきたのは、今まで木村君と話していた人だ。
「何か?」
それに対して雅は、僕を背に隠して対応する。
警戒してる? なら、僕はそれに合った行動を取らないといけないよね。
「あー、うん。山城様の小姓について伺いたいのだけど」
「俺の小姓?」
「うん。伺いたい事が真実なら、山城様も知っていなければならない話だと思うけど」
「俺がハルのことで把握していない話などないが」
雅はあっさりとそう言い、雅の背中に隠れていた僕の腰を抱くと、ふふんとばかりに胸を張った。
「悪評もすべて把握していると?」
「俺の小姓について悪意のある噂を流している奴がいる。馬鹿らしくていちいち相手にしていないがな。大抵の人間はそれが嘘だと知っている」
「悪評は事実ではないと?すべて把握なんて可能かな?」
この人冷静だ。
何となくそう感じて、二人を見守る。
ネクタイの色を見ると三年生みたいだけど、名前は分からない。
木村君は僕を苦々しい顔で見ているけれど、それは気がつかない振りをする。
「俺はハルとほぼ一緒にいるし、側にいられない時は俺が選んだ供をつけている」
「なるほど」
「それでも聞きたいか」
小姓って旦那様の持ち物扱いなところがある。
だから小姓の失敗は、即旦那様の失敗になる。
逆に考えれば、小姓の行動に文句をいうのは旦那様に文句を言うのと同じらしいと、舞の側付きの陽子さんに言われた。
「苛めをしているというのは?聞いたことない?」
「虫も殺せない位に優しいハルが?」
「確かにそんな感じに見えるね」
木村君を名前で呼ぶ人で、ちゃんと会話が成り立ってるの珍しいな。
その横で木村君の顔はかなり怖い感じになってるけど口は挟んでこない。
「でも見た目だけってことはない?」
「見た目より優しすぎて困る位だな」
「じゃあ苛めは?」
「さっきも言ったが、ほぼ俺と一緒にいてそうでなければ俺の配下が側にいる。それで苛めなどどうやってす出来る?」
「山城様が一緒ではないなら、側付きがいても関係なさそうじゃない?」
「ふっ」
雅が相手を挑発するように笑う。
「ハルが苛めなどするわけがないが、仮に俺の配下が側にいても苛めをしていたのなら、俺の指示で動いていると思ってもらっていいぞ」
「つまり、山城家に害があるから排除に動いていると」
「本当に苛めをしているならだ。勿論、そんな事実はないし、俺に抗議をするならそれ相応の証拠を持ってきて貰うがな」
「そうだね、証拠は必要だね。どうかな、春君」
くるりと振り返り木村君に尋ねる。
この人、春君に盲信はしてないみたいだけど。どうなんだろ?
「ぼ、僕は本当に苛められてるんです。通りすがりに嫌みを言われたり物を壊されたり。だけどいつもこの人を庇う人がいて、やってないことにされてしまうんです」
「そうなの?」
「はい。谷崎様が僕に親しくしてくださっていて、それが面白くないと」
「山城様の小姓なのに?」
「谷崎様が、言い寄られて迷惑していると仰っていました」
「ありえないな。馬鹿馬鹿しい」
雅はすぐに否定して笑い飛ばす。
「で、ですが影で何度も誘惑されたと」
「小姓にしたのは最近だが、ハルとはずっと付き合っていたし、公にしていなかったから側付きは居なかったがその代わり影で護衛をつけていた」
「で、電話とか」
「通話記録はすべてチェックしている。勿論メールもトークアプリも送受信は日々チェックしている」
「え、そうなの?」
驚いて聞くと頷かれた。
知らなかった。でも雅に知られて困る人と連絡とってないから別に問題ないか。
それに多分僕に変な電話とか来てないか確認してくれてるんだよね。きっと木村君に何かされないかとか、心配してくれてるんだ。
「小姓には知らせてないなら誤魔化したりもしないよね
」
「で、でもこっそりと部屋に行っていたとか」
「勿論GPSで行動記録も取ってある。そんな事実もない」
「えっ」
「なんだ?嫌か?」
凄い、雅は何かあった時の為にそこまで考えてくれてたんだ。
「ううん、嬉しい。ありがとう雅、僕をいつも見守ってくれてるんだね」
僕が笑顔でお礼を言うと、先輩は呆れたような声をあげたんだ。
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