【完結済み】乙男な僕はモブらしく生きる

木嶋うめ香

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本編

懲りない主人公2

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「凄いな、束縛を見守りとは。素晴らしい調教だね」

 にこにこ笑顔で言うから、束縛?と首を傾げるけど、この人は木村君の本性とか知らないから、雅がなんで僕を守ろうとしてるのかも思い付かないのかと納得した。

「束縛を嫌だと思わないのかな?そう考える力もない?」
「名前も知らない方に決めつけられる方が嫌です。しかも事実確認もせずに本人に向かって失礼な事を言っている自覚もない恥知らずな方に」

 話は通じる方だけど、失礼なこと言ってるのは確かだ。
 今は周囲に誰もいないけれど、こんなの大勢の前で言われたら信じちゃう人だっているかもしれないじゃないか。

「恥知らずとは?」
「事実確認もせずに言い掛かりを付けてきたあなたのことですが、何か?質問という形でも、十分に失礼な話ですよね。礼儀を知らない方なんですね」
「責めるのは酷いです。僕の為に言ってくれただけなのに」

 一瞬で涙を流し始めたのは、木村君だ。

「礼儀を知らないとは思っていないけど」
「なら、ここに雅がいなかったとして、僕がやっていないと言って信じますか?」
「うーん。それはどうだろ、やってない証拠は?」
「なら、やられたという証拠は?どちらが正しいか、あなたが決めるんですか?それこそ証拠もないのに。最低ですね」

 冷静にならなきゃと思うのに、腹が立って仕方ない。
もっと言ってやろうと口を開き掛けたら、雅が笑いだした。

「ハルそれくらいにしてやれ」 
「だって、雅が馬鹿にされたんだよ。なんで笑ってるのっ」
「頑張って抗議しているハルが可愛いから、かな」

 なんで怒らないのか、そっちが不思議だ。
 でも、雅が気にしてないならいいのかな。

「もう」
「まあ、言い掛かりは面倒だから今後は遠慮して貰おうか。今回は可愛いハルに免じて家に抗議はしないでおいてやる」
「ありがとうございます」
「ハルへの接触はすべて俺が把握してる。ハルはそれにも、他の生徒にも苛めなど愚かな行いはしていない。これでいいな」
「はい」

 雅の言葉に簡単に頭を下げる。
 あれ? なんかおかしい?

「でもクラスの人達に嫌がらせされているのは事実なんです。山城様僕を助けてくれませんか?」
「何故俺が?」
「何故って」

 凄いなこの人、全然めげずに雅にすり寄ってくる。

「そもそも苛めの事実はないのにハルに冤罪を着せようとする。そんな奴を何故俺が助けなければならない?それに俺は前にお前に一切関わらないと以前言った筈だが」

 冷たい雅の声がフロアに響く。

「そんな、酷い。僕は本当に皆さんから嫌がらせをされているのに」
「川島にでも頼るんだな。時間の無駄だ、もう行く」
「え、雅?」

 手を引っ張られ僕は慌てて雅の後を追う。
 振り替えると、木村君を慰める先輩の姿が見えた。


※※※※※※※

 部屋に戻って夕食後、雅とコーヒーを飲んでいたら意外な人がやって来た。

「こんばんは」
「あなたは」
「お疲れ、大変だったようだな」

 メイドさんに案内されてリビングに入ってきたのは、寮の入り口で僕達に声を掛けてきた上級生だった。

「雅?」

 なんだろう、凄く気安い感じだ。

「あぁ、種明かしをすると彼には証拠固めにあれに近付いて貰っている」
「証拠?」
「あれが誰彼構わず声をかけ、腕時計等を買わせているという証拠だ」

 大林君が言っていた件だ。
 でも、あれは罪には問えないとも話してなかったっけ?
 でも、雅がこの人に指示していたならあの話し方は納得出来る。

「そうか、だから冷静だったんだね」
「冷静とは」
「木村君を名前で呼ぶ人達は、話が通じないんだよ。何だかおかしな位に自分の意見を押し通そうとしてると言うか、上手に説明出来ないけれど一方通行というか、でもさっきは違ったから、印象に残ってたんだ」

 何となく僕に対して冷たい感じがするけれど、僕が感じていた事を話すと、少し目を見張り「へえ」と呟いた。

「ぽやぽやしているだけかと思いましたが、見るべきところは見ているんですね」

 どういう意味? 失礼なんだけど。という視線を雅に向けると苦笑している。

「お前はどうしようもないな。いい加減認めろ。俺はハル以外は娶らない」
「守られるだけの軟弱な者等、山城家には必要ありませんが仕方ないですね」

 なんだろこの人。

「白井伯爵家長男の忠と申します。小姓様に改めてご挨拶申し上げます」
「しろいただし?って、雅のおばあ様のご実家の白井家?」
「なんだ知ってるのか、なら顔くらい覚えておけよ」

 ころりと態度を変えた白井さんは、ごちんと雅に拳骨を落とされたのだった。
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