~死霊術師と死神騎士~

みずもCOLD

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城塞都市の怪異

~1~

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東西を長く続く城壁に挟まれた農耕地帯。
東の城壁の向こうには、古い造りながらも威容を誇る城がそびえ、西の城壁には、大河へ合流する支流から灌漑用水路に導き入れるための水門が幾つも見えていた。

野菜や果樹が育つ畑の畦道に、道に沿うように白く小さな花々が咲いている。
その前に一人の若い男が屈み込み、一輪ずつ丁寧に摘み取っていた。

青年の服装は質素だが分厚い革と布を合わせたもので、鎧の下に着込む軍装を思わせるもの。
その出で立ちから、彼はこの地で働く農夫ではなく、城塞都市を警護する兵士のようだ。
ただ、腰に護身用の短剣を帯びている以外に武装はないので、今日は非番なのだろう。

「……これぐらいで、いいかな?」

汗ばむ額にかかった茶色い髪を払い上げ、一束にした白い草花を片手に青年は立ち上がった。
彼にはたった一人の家族として、少し年の離れた幼い妹がいる。しかし、彼女はここ数日、体調を崩していて、幾分活気を失っているのが、兄としては気になっていた。
花を贈って励ましてやろうと、彼は自分の家がある南地区の方へと歩き出す。
中天から西へ傾き始めた陽光が照らす農道を、妹の好きな花を手にして……。

―――

丘陵地帯と平野の境を、東西に流れる大河。
その緩やかな流れの南岸に、頑強な石レンガを積み上げた城壁に幾重にも囲まれた都市がある。

街の民の先祖たちは、かつて北の丘陵地帯に集落を構えて暮らしていた。
しかし、丘陵西部に残る森林より現れた蛮族の侵攻を受け、大河の向こう岸へと避難。
河の南側に位置する小高い丘の一つに、防衛のための城砦を築いたのがこの街の始まりであった。
やがて、その城砦を囲む街は大河を利用した交易によって栄え、中流域最大の都市へと成長を遂げる。
北西の蛮族や南の平野に興った大国の脅威に晒されるたびに、都市は拡大と築壁を繰り返してきた。
そうして形成された現在の姿こそが、積層城壁の城塞都市である。

街の繁栄を支え続けてきたその大河を、今、一艘の小舟が対岸より渡ってくる。

この世とあの世は三途の川という境を挟み、此岸・彼岸と例えられるが……。
死者が眠る遺跡の丘より、大河を越えて生者が住まう街へとやって来たその舟には、何となく不吉な匂いが漂っていた。
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