神隠し令嬢は騎士様と幸せになりたいんです

珂里

文字の大きさ
18 / 73

盗賊さんに狙われました

しおりを挟む
結局、とーさまは夕飯にも帰って来なかった。
私は睡魔に勝てず寝てしまったんだけど、夜中に誰かの話し声で目が覚める。

「……では、あの時の盗賊にまだ仲間がいたの?」

「いや、盗賊自体は全員捕まえたんだ。
ただ、それとは別に窃盗を手助け……というか、侵入を手助けしていた奴がいたらしい。おそらく、そいつが今回の犯人だ。」

あ、とーさまとかーさまの声だ。とーさま帰って来たんだね。お仕事お疲れ様です!
私はベッドから起きてとーさまに「おかえりなさい」って言おうとしたんだけど、次のかーさまの一言で動けなくなってしまった。

「なんでそんな人がアヤナの事を調べているの?」

なんですと!?

「……わからない。私の部屋が主に荒らされていたのは、書類を保管していた机の引き出しなんだ。盗まれたのは書類数枚。その全てがアヤナを養子にする際に提出したアヤナの報告書だった。」

なんでー!?なんで私!?

「仲間を捕まえたあなたに報復する為とか?」

「それも考えたんだが、捕まえた盗賊達を聴取してみると、どうやら仲間では無いらしいんだよ。そいつが何処かに侵入する際について行っては盗みを繰り返していたらしい。」

「なにそれ。どういう事?」

かーさまが首を傾げている。
ホントそれ、どういう事なの?

「詳しくはまだ分からないが、侵入スキルが高いみたいだ。盗賊達はそれに目をつけて勝手にそいつに付き纏っていたみたいだから、報復の線は無いだろうな。」

「だったら尚更アヤナの情報を盗む意味が分からないわ。」

そうだそうだ!!
私の情報返せ!!

「盗賊の話では、そいつは昔から何かを探しているようだったと言っていた。もしかしたら、それと何か関係があるのかもしれない。……何にせよ、アヤナを狙っている可能性がある限り警護を万全にするに越したことはない。何かあってからでは遅いからね。」

「だからダナンとカールを家に?」

「あいつらなら腕は確かだし、アヤナも2人を慕っているしね。何より信頼できる。」

とーさまとかーさまは寝たふりをする私の頭を暫く撫で続けた。

「この子に手出しなんてさせないわ。」

「勿論だよ。」

この重たい空気の中、私は目を開ける勇気が無くて……とーさまとかーさまが眠りにつくまで、私は寝たふりをし続けた。

それから私は色々考えちゃって……考え過ぎちゃって朝まで寝られなかった。



「おはようアヤナ。…………どうしたの?今日はなんだか朝から疲れてるね?」

目をゴシゴシ擦りながら出迎える私を、リスターが心配そうに覗き込む。

「おはよう……ちょっとよくねむれなくて……。あ、それよりきのう、けんはどうだった?ちゃんとなおった?」

「剣?……あぁ、ちゃんと直ったよ。カールさんが教えてくれたから。……ねぇ?カールさん。」

リスターが私の後ろからついて来たカールさんを見てニッコリ微笑んだ。

「そうだね。本当にしつこかった……じゃない熱心に聞いてきたから、教えてあげたよ。」

カールさんもニッコリ微笑む。
心なしかカールさんの表情に疲れが見える気がするけど大丈夫かな?

「そ、そう?それならよかった。」

「じゃあアヤナ、そろそろ部屋に行って一緒に勉強しようか?」

リスターはチラッとカールさんを見ると、私の手を取って部屋へ向かった。



今日はとっても良い天気。
部屋の中はポカポカと暖かい。

「いつもアヤナと2人でいるから、部屋にカールさんがいると変な感じがするね。」

「……うん。」

暖かいと、眠くなるよね。

「変な感じってなんだよ。いつも2人って……ちゃんと勉強してるんだよね?」

「嫌だなぁ、これだからオジサンは。いつも部屋の扉全開にして、しっかり勉強してますよ。ねぇ?アヤナ。」

「……うん。」

昨日、寝れなかったから目がしょぼしょぼする。

「オジサンてなんだ。俺はまだ21歳だ。オジサンなんかじゃないよね、アヤナ?」

「……うん。」

あ~……目が開けていられない。

「そういう考えをすること自体がオジサンなんですよ。ねぇ、アヤナ?」

「……うん。」

…………勉強しないと…………。


「「 アヤナ?」」


コクリ。コクリ。






部屋の暖かさと睡魔に負けて勉強もそこそこに、私は眠りに落ちてしまいました。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】使えない令嬢として一家から追放されたけど、あまりにも領民からの信頼が厚かったので逆転してざまぁしちゃいます

腕押のれん
ファンタジー
アメリスはマハス公国の八大領主の一つであるロナデシア家の三姉妹の次女として生まれるが、頭脳明晰な長女と愛想の上手い三女と比較されて母親から疎まれており、ついに追放されてしまう。しかしアメリスは取り柄のない自分にもできることをしなければならないという一心で領民たちに対し援助を熱心に行っていたので、領民からは非常に好かれていた。そのため追放された後に他国に置き去りにされてしまうものの、偶然以前助けたマハス公国出身のヨーデルと出会い助けられる。ここから彼女の逆転人生が始まっていくのであった! 私が死ぬまでには完結させます。 追記:最後まで書き終わったので、ここからはペース上げて投稿します。 追記2:ひとまず完結しました!

騎士団の繕い係

あかね
ファンタジー
クレアは城のお針子だ。そこそこ腕はあると自負しているが、ある日やらかしてしまった。その結果の罰則として針子部屋を出て色々なところの繕い物をすることになった。あちこちをめぐって最終的に行きついたのは騎士団。花形を譲って久しいが消えることもないもの。クレアはそこで繕い物をしている人に出会うのだが。

城で侍女をしているマリアンネと申します。お給金の良いお仕事ありませんか?

甘寧
ファンタジー
「武闘家貴族」「脳筋貴族」と呼ばれていた元子爵令嬢のマリアンネ。 友人に騙され多額の借金を作った脳筋父のせいで、屋敷、領土を差し押さえられ事実上の没落となり、その借金を返済する為、城で侍女の仕事をしつつ得意な武力を活かし副業で「便利屋」を掛け持ちしながら借金返済の為、奮闘する毎日。 マリアンネに執着するオネエ王子やマリアンネを取り巻く人達と様々な試練を越えていく。借金返済の為に…… そんなある日、便利屋の上司ゴリさんからの指令で幽霊屋敷を調査する事になり…… 武闘家令嬢と呼ばれいたマリアンネの、借金返済までを綴った物語

積みかけアラフォーOL、公爵令嬢に転生したのでやりたいことをやって好きに生きる!

ぽらいと
ファンタジー
アラフォー、バツ2派遣OLが公爵令嬢に転生したので、やりたいことを好きなようにやって過ごす、というほのぼの系の話。 悪役等は一切出てこない、優しい世界のお話です。

【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる

三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。 こんなはずじゃなかった! 異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。 珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に! やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活! 右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり! アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。

モブで可哀相? いえ、幸せです!

みけの
ファンタジー
私のお姉さんは“恋愛ゲームのヒロイン”で、私はゲームの中で“モブ”だそうだ。 “あんたはモブで可哀相”。 お姉さんはそう、思ってくれているけど……私、可哀相なの?

【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?

アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。 泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。 16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。 マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。 あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に… もう…我慢しなくても良いですよね? この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。 前作の登場人物達も多数登場する予定です。 マーテルリアのイラストを変更致しました。

【完結】遺棄令嬢いけしゃあしゃあと幸せになる☆婚約破棄されたけど私は悪くないので侯爵さまに嫁ぎます!

天田れおぽん
ファンタジー
婚約破棄されましたが私は悪くないので反省しません。いけしゃあしゃあと侯爵家に嫁いで幸せになっちゃいます。  魔法省に勤めるトレーシー・ダウジャン伯爵令嬢は、婿養子の父と義母、義妹と暮らしていたが婚約者を義妹に取られた上に家から追い出されてしまう。  でも優秀な彼女は王城に住み、個性的な人たちに囲まれて楽しく仕事に取り組む。  一方、ダウジャン伯爵家にはトレーシーの親戚が乗り込み、父たち家族は追い出されてしまう。  トレーシーは先輩であるアルバス・メイデン侯爵令息と王族から依頼された仕事をしながら仲を深める。  互いの気持ちに気付いた二人は、幸せを手に入れていく。 。oOo。.:♥:.。oOo。.:♥:.。oOo。.:♥:.。oOo。.:♥:.  他サイトにも連載中 2023/09/06 少し修正したバージョンと入れ替えながら更新を再開します。  よろしくお願いいたします。m(_ _)m

処理中です...