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花祭りに行くんです
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「はなまつり?」
私は祭りと聞いて目を輝かせる。
「うん。毎年、王都で開催されるんだ。色んな食物がこの時期に沢山実るからね。全ての生き物に感謝し、収穫に感謝するお祭りなんだよ。」
「うんうん、すてきなおまつりだね!」
それで、いつ開催されるのかな?
私は身を乗り出しながら話しの続きを待つ。
「ふふっ。それでね、3日後にその花祭りが開催されるんだけど、良かったら僕と一緒に行ってくれないかな?アヤナとお祭りを楽しみたいんだ。」
「いくー!!リスターといっしょにいきたい!いいでしょ?かーさま!」
「アヤナ、落ち着きなさい。力の加減が出来てませんよ。天井に頭をぶつけてしまうわ。」
ピョンピョンと飛び跳ねて興奮する私の腕を掴みながら、かーさまはニッコリ笑う。
おっといけない。興奮し過ぎて思わず飛び跳ねちゃったよ。
「ダメ?」
「勿論いいですよ。ただし、護衛としてリュートも一緒にね。」
「やったー!!ありがとう、かーさま。りゅうとさん、おねがいね!」
「……邪魔だけどしょうがないですね。リュートさん、よろしくお願いします。」
私は嬉々として、リスターは少し不満げに龍斗さんにお願いする。
「……リスター。お前って俺にだけ冷たくねぇ?」
「気のせいです。」
口の端をピクピクさせながら言う龍斗さんに、リスターは微笑んで否定した。目は笑ってないけど。
花祭り、楽しみだなぁ!
そして花祭り当日、私は朝から2人のおばあさまとかーさまにお粧しされてリスターのお迎えを待ってたんだけど……。
リスターは私を見るなり動かなくなっちゃったんだよね。どうしたの!?
私がオロオロしていると、サニアおばあさまがリスターの頭をベシッと叩いてニヤニヤしている。
「大丈夫よ。この子ったら、アヤナちゃんが可愛くて見惚れちゃってるだけなんだから。」
そうなの?そうだったら嬉しいけど。
「リスター、わたしかわいくなった?」
期待を込めてリスターを覗き込むと、リスターの顔が見る見る真っ赤になってあたふたとする。
「ア、アヤナは元々可愛いよ!!でも、今日はいつもと雰囲気が違ってて……花の妖精になっちゃったのかと思った。とっても可愛いよ!」
「えへへっ。ありがとう。」
私はリスターの前でクルクルッと回って見せた。
腰近くまである髪の毛をふわふわっと緩い感じに後ろで編み込み、ピンクと白の小花を所々に挿している。仕上げにおばあさま達にプレゼントされた髪留めをすれば、挿した小花とよく合っていて私もとても気に入っている。
リスターは跪いて私の手を取り甲にキスを落とすと、蕩けるような笑顔を私に向けた。
「僕のお姫様。今日は一緒に楽しもうね。」
「うん!おばあさま、かーさま、行ってきます!」
お土産買って来るからね!
私達は手を繋いで、玄関で待っている龍斗さんの所へ急いだ。
「お、やっと来たか。ってか彩菜、スゲエ可愛くなってるな。」
「えー?そう?ありがとう!」
「リュートさんはあまりアヤナを見ないで下さい。早く行きますよ。」
龍斗さんが私をまじまじと見る横から、リスターが私達の間に割って入った。
「お前なぁ。別に見るくらいいいじゃねえか。減るもんでもねえし。」
「減ります。リュートさんが見たら確実に減るので見ないで下さい。」
「減るか!!」
龍斗さんがリスターを押し除けて私を覗き込もうとするのを、リスターが手を広げて全力で阻止している。
「ねえねえ、早く行こうよー。」
2人がワイワイと言い争っているのを黙って見ていてはいつまで経ってもお祭りに行けないからね。ちょっと口を挟ませてもらうよ。
「ごめんねアヤナ、行こうか。リュートさんは僕達の邪魔をしないように少し離れて歩いて下さいね。」
リスターが私の手を引き歩き出すと、今度は龍斗さんがリスターを阻止するように私の肩を抱いて引き寄せる。
「嫌だね。祭り中に離れて歩いてたら護れねえだろ。彩菜の横にピッタリくっついてやる。」
リスターがギロリと龍斗さんを睨んで私の肩に置かれた手を払い除ける。
「僕のアヤナに気安く触らないで下さい。」
「だからまだ彩菜は誰のものかなんて決まってないって言ってんだろ。」
2人の間にバチバチと火花が見える。
も~嫌だ。早く花祭りに行きたいよ~。
「あらあら、まだこんな所にいたの?」
後ろから声がして、2人はピタッと動きを止めた。
私が振り返ると、かーさまが微笑みながらこっちに近づいて来る。
「まさか、ケンカなんてしてないわよね?」
笑みを深めて2人を見るかーさまは……笑ってるけど怖い。
リスターと龍斗さんは背筋を伸ばしてコクコクと頷いた。
「い、今!今から行くところなんです!」
龍斗さんが慌てて私とリスターの背中を押して歩く。
かーさまは「楽しんできてね。」と、ニッコリ笑顔で送り出してくれた。
かーさまのおかげでやっと花祭りに行けるよ。かーさま。ありがとう!
「……フローラさんはマジでヤバイ気がする。絶対に怒らせたら駄目な人だな……。」
「……同感です。」
花祭りに向かう馬車の中で龍斗さんがブルッと震えて呟いた。それに珍しくリスターも賛同し、同じように呟く。
これから行くお祭りにドキドキワクワクしていた私は、そんな2人の様子に全く気付く事なく窓の外を眺めていた。
「早く着かないかな~。」
待っててねー、花祭り!!
私は祭りと聞いて目を輝かせる。
「うん。毎年、王都で開催されるんだ。色んな食物がこの時期に沢山実るからね。全ての生き物に感謝し、収穫に感謝するお祭りなんだよ。」
「うんうん、すてきなおまつりだね!」
それで、いつ開催されるのかな?
私は身を乗り出しながら話しの続きを待つ。
「ふふっ。それでね、3日後にその花祭りが開催されるんだけど、良かったら僕と一緒に行ってくれないかな?アヤナとお祭りを楽しみたいんだ。」
「いくー!!リスターといっしょにいきたい!いいでしょ?かーさま!」
「アヤナ、落ち着きなさい。力の加減が出来てませんよ。天井に頭をぶつけてしまうわ。」
ピョンピョンと飛び跳ねて興奮する私の腕を掴みながら、かーさまはニッコリ笑う。
おっといけない。興奮し過ぎて思わず飛び跳ねちゃったよ。
「ダメ?」
「勿論いいですよ。ただし、護衛としてリュートも一緒にね。」
「やったー!!ありがとう、かーさま。りゅうとさん、おねがいね!」
「……邪魔だけどしょうがないですね。リュートさん、よろしくお願いします。」
私は嬉々として、リスターは少し不満げに龍斗さんにお願いする。
「……リスター。お前って俺にだけ冷たくねぇ?」
「気のせいです。」
口の端をピクピクさせながら言う龍斗さんに、リスターは微笑んで否定した。目は笑ってないけど。
花祭り、楽しみだなぁ!
そして花祭り当日、私は朝から2人のおばあさまとかーさまにお粧しされてリスターのお迎えを待ってたんだけど……。
リスターは私を見るなり動かなくなっちゃったんだよね。どうしたの!?
私がオロオロしていると、サニアおばあさまがリスターの頭をベシッと叩いてニヤニヤしている。
「大丈夫よ。この子ったら、アヤナちゃんが可愛くて見惚れちゃってるだけなんだから。」
そうなの?そうだったら嬉しいけど。
「リスター、わたしかわいくなった?」
期待を込めてリスターを覗き込むと、リスターの顔が見る見る真っ赤になってあたふたとする。
「ア、アヤナは元々可愛いよ!!でも、今日はいつもと雰囲気が違ってて……花の妖精になっちゃったのかと思った。とっても可愛いよ!」
「えへへっ。ありがとう。」
私はリスターの前でクルクルッと回って見せた。
腰近くまである髪の毛をふわふわっと緩い感じに後ろで編み込み、ピンクと白の小花を所々に挿している。仕上げにおばあさま達にプレゼントされた髪留めをすれば、挿した小花とよく合っていて私もとても気に入っている。
リスターは跪いて私の手を取り甲にキスを落とすと、蕩けるような笑顔を私に向けた。
「僕のお姫様。今日は一緒に楽しもうね。」
「うん!おばあさま、かーさま、行ってきます!」
お土産買って来るからね!
私達は手を繋いで、玄関で待っている龍斗さんの所へ急いだ。
「お、やっと来たか。ってか彩菜、スゲエ可愛くなってるな。」
「えー?そう?ありがとう!」
「リュートさんはあまりアヤナを見ないで下さい。早く行きますよ。」
龍斗さんが私をまじまじと見る横から、リスターが私達の間に割って入った。
「お前なぁ。別に見るくらいいいじゃねえか。減るもんでもねえし。」
「減ります。リュートさんが見たら確実に減るので見ないで下さい。」
「減るか!!」
龍斗さんがリスターを押し除けて私を覗き込もうとするのを、リスターが手を広げて全力で阻止している。
「ねえねえ、早く行こうよー。」
2人がワイワイと言い争っているのを黙って見ていてはいつまで経ってもお祭りに行けないからね。ちょっと口を挟ませてもらうよ。
「ごめんねアヤナ、行こうか。リュートさんは僕達の邪魔をしないように少し離れて歩いて下さいね。」
リスターが私の手を引き歩き出すと、今度は龍斗さんがリスターを阻止するように私の肩を抱いて引き寄せる。
「嫌だね。祭り中に離れて歩いてたら護れねえだろ。彩菜の横にピッタリくっついてやる。」
リスターがギロリと龍斗さんを睨んで私の肩に置かれた手を払い除ける。
「僕のアヤナに気安く触らないで下さい。」
「だからまだ彩菜は誰のものかなんて決まってないって言ってんだろ。」
2人の間にバチバチと火花が見える。
も~嫌だ。早く花祭りに行きたいよ~。
「あらあら、まだこんな所にいたの?」
後ろから声がして、2人はピタッと動きを止めた。
私が振り返ると、かーさまが微笑みながらこっちに近づいて来る。
「まさか、ケンカなんてしてないわよね?」
笑みを深めて2人を見るかーさまは……笑ってるけど怖い。
リスターと龍斗さんは背筋を伸ばしてコクコクと頷いた。
「い、今!今から行くところなんです!」
龍斗さんが慌てて私とリスターの背中を押して歩く。
かーさまは「楽しんできてね。」と、ニッコリ笑顔で送り出してくれた。
かーさまのおかげでやっと花祭りに行けるよ。かーさま。ありがとう!
「……フローラさんはマジでヤバイ気がする。絶対に怒らせたら駄目な人だな……。」
「……同感です。」
花祭りに向かう馬車の中で龍斗さんがブルッと震えて呟いた。それに珍しくリスターも賛同し、同じように呟く。
これから行くお祭りにドキドキワクワクしていた私は、そんな2人の様子に全く気付く事なく窓の外を眺めていた。
「早く着かないかな~。」
待っててねー、花祭り!!
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