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お友達ができました

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「おそーい!!」

私は辺りをウロウロしながら龍斗さんが戻って来るのを待っていた。

「もしかして、一緒に捕まってしまったのでは……。」

男の人は顔を青くして嘆いてる。
嘆いてるけど……。

「「それはない。」」

おっと、リスターと声が揃ってしまった。

「リュートさんはそんな殊勝な性格ではありません。見ず知らずの子供を助ける為に、危険を冒して自分も捕まるなんて事は絶対にないです。もし子供だけが連れ去られてしまった場合にも何かしら連絡はしてくるはず。それが今になっても音沙汰がないという事は、何か別のトラブルがあったのだと思います。」

「はい!わたしもそうおもいます!」

私とリスターはお互い見つめ合って頷いた。
殊勝な性格?って言うのはよく分からないけど、龍斗さんが捕まってる可能性は低いと思う。

「はい!そこでわたしにていあんがあります!」

「却下。」

「まだなにもいってないよ!」

勢いよく手を上げて言う私に、リスターが即答する。早いよ!!せめて最後まで言わせてよ!!

「どうせ探しに行くって言うんでしょ?そんな危ない事させられないよ。もう少しここで一緒に待とう?」

「あぶなくないよ!りゅうとさんみたいに、やねつたっていくから。それに!ずっとここでまってたってこないかもしれないでしょ?」

「うーん。それはそうだけど……。」

早くしないと花祭りが終わっちゃう!!

私は出掛ける前に、かーさまとおばあさま達から花祭りに関する古くからの言い伝えを聞いていた。

それを何としてでも実践したい。
だから早く龍斗さんを連れ戻さないと。

「みつからなかったら、すぐにもどってくるからね!いってきます!」

私はリスターの返事を待たずに屋根までジャンプし、龍斗さん達が消えて行った方向へ走り出す。

「あっ!ダメだよアヤナ!!戻って来て!!」


ごめんね、リスター。すぐに戻って来るから待っててね。

叫ぶリスターの声が段々小さくなるのを背中で感じながら、私は龍斗さんを探す為に足を早めた。



暫く走ると大通りを抜け、家が転々と建つ静かな町外れで龍斗さんをやっと発見した。

龍斗さんは大きな木の枝に腰掛けて、何かをジッと睨んでいる。

声をかけようと屋根から降りて走り寄ると、木の下に連れ去った犯人と思われる数人が倒れていた。

龍斗さんてば強いじゃん!騎士団での訓練が活かされてるんじゃない?

「おーい。りゅうとさーん。」

私は木の下から龍斗を呼んで大きく手を振った。

龍斗さんはチラリと視線を下に落とすと、指をクイクイッとして私に登ってこいと合図する。

どうしたのかな?

私はジャンプして龍斗さんの座っている枝にフワリと跳び乗った。

「よ、妖精!?」

声がした方へ顔を向けると、木の太い幹にしがみ付いて目を丸くする女の子の姿があった。

女の子は、助けた男の人と同じ淡い茶色の髪に茶色の目をしている。目鼻立ちがはっきりしていて美人さんだ。
耳の少し上で髪の毛を2つに縛り、水色の可愛らしいレースのドレスを着ている。
年は見た感じ私と同じくらいで、私のテンションが一気に上がった。

「おい、彩菜。コイツに何とか言ってやってくれよ。助けてやったのにそこから動こうとしないんだぜ。」

龍斗さんが言うには、犯人達の隙をみて女の子を奪還し、ここへ避難させたそうだ。木の下で犯人達が暴れて煩かったから仕方なく龍斗さんだけ降りて、適当に自分に誘き寄せて逃げようとしたんだって。そしたら意外にも弱くて全員倒せちゃったらしい。

「それってさぁ、りゅうとさんがまえよりつよくなったんじゃないの?きしだんのくんれんのおかげだね!すごい!!」

「まあな。俺が本気だせばこんなもんよ。カッコイイだろ?カッコイイよな?」

「うん、カッコイイ!!……じゃなくって!なんでたすけたのにもどってこないのよ?はやくしないと、はなまつりがおわっちゃうじゃん!」

「だからさっきも言っただろ。助けてやったのに、そいつがそこから動かないんだよ。」

私が恨めしそうに睨んで文句を言えば、龍斗さんは私を睨み返して反撃してくる。

ーー龍斗さん、それですよ。あなたのそういうところが怖いんですよ。
ほら、今だって私達のやり取りを見て怯えちゃってるじゃない。

私は深く溜め息をつくと、気を取り直して女の子を見る。

震えながら幹にしがみ付き、ウルウルした目で見てくる美少女……メッチャ可愛い!

「あのね、このひと、めつきがわるくてくちもわるくて、たいどもデカいけど、わりといいひとだからあんしんして?」

「……おい。随分な言われようだなぁ。そんな事を言うのはこの口か?あぁ?」

「イテテテッ!」

龍斗さんがジト目で私の頬をつねってきた。
つねられた頬が痛くて私が龍斗さんの腕をバシバシ叩いていると、女の子から小さく笑い声が聞こえた。

「わたしはあやなっていうの。5さいだよ。あなたは?」

「……ぼ……わたしはジル。6才。」

「ジル、よろしくね!わたし、としのちかいおんなのこのともだちがいないんだよね。よかったらともだちになって!」

私はニコニコ笑って手を差し出す。

「おいおい彩菜。お前マジで分かってねえの?コイツ、こんな格好してるけど本当はおと……」

「よろしくね、アヤナ。友達になろう!」

龍斗さんの言葉を遮るように、ジルは幹から手を離して私の手を勢いよく掴んだ。

「うん!えへへ。おともだちー。」

手を繋いでニコニコする私を、頬を赤く染めて見つめるジル。そしてそんなジルを龍斗さんが眉を顰めて見ていた。



やったね!

私に新しいお友達ができました。

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