36 / 73
花祭りは素敵なお祭りでした
しおりを挟む
「なあ、ここで何があるんだ?」
噴水前に陣取ってウキウキとその時を待つ私に、龍斗さんがキョロキョロしながら尋ねる。
周りには続々と若い男女のカップルが集まり始めていた。
「おばあさまとかーさまにね、はなまつりのいいつたえをきいたんだよね。」
「言い伝え?」
龍斗さんと、側で聞いていたジルも首を傾げる。
「うん。おばあさまとかーさまも、わかいころに、おじいさまととーさまといっしょにここにきたんだって。」
「どんな言い伝えなんだよ。」
「う~ん。もうちょっとのはずだから、あとすこしまってて。」
カーーン。カーーン。カーーン。
私が言い終わるのと同時に、近くにある教会の鐘が鳴り響いた。
それが合図だったかのように、辺りにそよそよと風が吹き始め、段々と強くなる。
そして突如、竜巻のような風が起こり、町の至る所に飾ってあった花々が噴水の水と一緒に空高く巻き上げられた。
水飛沫が夕日に照らされてキラキラと輝き、落ちてくる無数の花々の綺麗さと相まって、とても美しい光景が辺りに広がっている。
一際歓声の大きな方を向けば、降り注ぐ花々の間から、見事な虹が掛かっているのが見えた。
みんなが空を見上げ、虹とヒラヒラと舞う花に見惚れている。
「アヤナ」
私もそれに漏れる事なく見惚れていると、リスターに肩を叩かれて我に返った。
「叔母上に聞いた言い伝え、実戦しなくてもいいの?」
リスターが小声で私に耳打ちする。
うっ……。そうなんだけどね。いざその時になってみると、なかなか実戦するのが難しいというか、自分からするのは勇気がいるというか……。
私が俯いてモジモジしていると、リスターがクスリと笑って私の名前を呼んだ。
「アヤナ。こっちを向いて?」
私は勇気を振り絞って顔を上げる。
目の前にはリスターの綺麗な顔が至近距離にあって、段々と近づいてきた。
チュッ。
私の唇とリスターの唇が軽く触れる。
私が驚いて目を丸くしていると、リスターが頬を染めながら私の手を取った。
「リ、リ、リスター!?もしかして、はなまつりのいいつたえしってる!?」
私は顔がみるみる真っ赤になっていくのが自分でも分かった。
かーさま達に聞いた花祭りの言い伝えは……花々の舞う噴水前で恋人同士がキスをして愛を誓い合うと、永遠に結ばれるというもの。
リスターとこれからもずっと一緒にいたくて張り切っていたけど、私からリスターにキスする勇気がやっぱり無くて。
せめて噴水前でリスターと一緒に居られればいいかなぁってぐらいに思ってたのに。
思ってたのに!!
「勿論だよ。僕がアヤナを花祭りに誘ったんだからね?最初から僕にとってのメインイベントはこの噴水さ。」
リスターが握っている手の力を強める。
そして、頬が赤いのはそのままに、真剣な眼差しで私を見つめた。
「アヤナ、好きだよ。大好き。この思いは、ずっと変わらない。だから……だからね、大人になったら僕と結婚して下さい。」
リスターのその言葉を聞いた瞬間、私の全身にブワッと衝撃が走った。
いつも私の事を考えてくれるリスター。
優しくてカッコよくて頼りになる、私の大好きな人。
私も、ずっとずっとリスターと一緒にいたい。
顔はまだ真っ赤のままだと思うけど、私も真剣にリスターを見つめ返して頷いた。
「はい。よろしくおねがいします。わたしも、リスターがだいすき。」
私の返事を聞いたリスターは、蕩けるような笑顔を私に向けると、みんなの方を振り返る。
みんなは唖然とした表情でこっちを見ていた。
「と、いう事なので。」
リスターはそう言って私を引き寄せ、嬉しそうに微笑んだ。
「今時のガキはやる事が早えな……。」
龍斗さんが苦笑して呟く。
「アヤナ、綺麗だね。ここにアヤナといられてとっても幸せだよ。終わったら、叔母上に2人で報告しないとね?」
私はまだ心臓がドキドキとうるさ過ぎて、コクコクと頷くことしか出来なかった。
リスターは微笑むと、花々の舞う空を見上げた。
私も釣られて上を見上げる。
その光景は、さっき見ていた時よりも輝いて見えた。
「ぼ……私は認めないぞ!ま、まだ結婚した訳じゃないし。ただの約束じゃないか。まだチャンスはあるさ。」
「ジル様……。初めて恋した日が失恋した日になるとは、なんともお労しい。」
「げっ。初恋が彩菜とか可哀想過ぎだろ。リスターがいる限り、その恋は実らねえな。」
「だから、まだそんなの分からないじゃないか!」
「お前なぁ……。リスターを甘く見るんじゃねえぞ。」
ジル達の間でそんな会話がされている中……。
リスターと手を繋いで空を見上げていた私は、目の前に広がる美しい光景にただただ見惚れていて、周りの音が全く聞こえていなかった。
花祭り終了後、何故かイナムさんに引き摺られるように帰って行くジルを見送って、私達も帰路に着いた。
「楽しかったね。」
リスターが満足そうに言って微笑む。
「うん!とっても楽しかった!リスター、りゅうとさん、ありがとう!!」
私も大満足だったよ!
花祭りは、とっても楽しくて、とっても素敵なお祭りでした。
噴水前に陣取ってウキウキとその時を待つ私に、龍斗さんがキョロキョロしながら尋ねる。
周りには続々と若い男女のカップルが集まり始めていた。
「おばあさまとかーさまにね、はなまつりのいいつたえをきいたんだよね。」
「言い伝え?」
龍斗さんと、側で聞いていたジルも首を傾げる。
「うん。おばあさまとかーさまも、わかいころに、おじいさまととーさまといっしょにここにきたんだって。」
「どんな言い伝えなんだよ。」
「う~ん。もうちょっとのはずだから、あとすこしまってて。」
カーーン。カーーン。カーーン。
私が言い終わるのと同時に、近くにある教会の鐘が鳴り響いた。
それが合図だったかのように、辺りにそよそよと風が吹き始め、段々と強くなる。
そして突如、竜巻のような風が起こり、町の至る所に飾ってあった花々が噴水の水と一緒に空高く巻き上げられた。
水飛沫が夕日に照らされてキラキラと輝き、落ちてくる無数の花々の綺麗さと相まって、とても美しい光景が辺りに広がっている。
一際歓声の大きな方を向けば、降り注ぐ花々の間から、見事な虹が掛かっているのが見えた。
みんなが空を見上げ、虹とヒラヒラと舞う花に見惚れている。
「アヤナ」
私もそれに漏れる事なく見惚れていると、リスターに肩を叩かれて我に返った。
「叔母上に聞いた言い伝え、実戦しなくてもいいの?」
リスターが小声で私に耳打ちする。
うっ……。そうなんだけどね。いざその時になってみると、なかなか実戦するのが難しいというか、自分からするのは勇気がいるというか……。
私が俯いてモジモジしていると、リスターがクスリと笑って私の名前を呼んだ。
「アヤナ。こっちを向いて?」
私は勇気を振り絞って顔を上げる。
目の前にはリスターの綺麗な顔が至近距離にあって、段々と近づいてきた。
チュッ。
私の唇とリスターの唇が軽く触れる。
私が驚いて目を丸くしていると、リスターが頬を染めながら私の手を取った。
「リ、リ、リスター!?もしかして、はなまつりのいいつたえしってる!?」
私は顔がみるみる真っ赤になっていくのが自分でも分かった。
かーさま達に聞いた花祭りの言い伝えは……花々の舞う噴水前で恋人同士がキスをして愛を誓い合うと、永遠に結ばれるというもの。
リスターとこれからもずっと一緒にいたくて張り切っていたけど、私からリスターにキスする勇気がやっぱり無くて。
せめて噴水前でリスターと一緒に居られればいいかなぁってぐらいに思ってたのに。
思ってたのに!!
「勿論だよ。僕がアヤナを花祭りに誘ったんだからね?最初から僕にとってのメインイベントはこの噴水さ。」
リスターが握っている手の力を強める。
そして、頬が赤いのはそのままに、真剣な眼差しで私を見つめた。
「アヤナ、好きだよ。大好き。この思いは、ずっと変わらない。だから……だからね、大人になったら僕と結婚して下さい。」
リスターのその言葉を聞いた瞬間、私の全身にブワッと衝撃が走った。
いつも私の事を考えてくれるリスター。
優しくてカッコよくて頼りになる、私の大好きな人。
私も、ずっとずっとリスターと一緒にいたい。
顔はまだ真っ赤のままだと思うけど、私も真剣にリスターを見つめ返して頷いた。
「はい。よろしくおねがいします。わたしも、リスターがだいすき。」
私の返事を聞いたリスターは、蕩けるような笑顔を私に向けると、みんなの方を振り返る。
みんなは唖然とした表情でこっちを見ていた。
「と、いう事なので。」
リスターはそう言って私を引き寄せ、嬉しそうに微笑んだ。
「今時のガキはやる事が早えな……。」
龍斗さんが苦笑して呟く。
「アヤナ、綺麗だね。ここにアヤナといられてとっても幸せだよ。終わったら、叔母上に2人で報告しないとね?」
私はまだ心臓がドキドキとうるさ過ぎて、コクコクと頷くことしか出来なかった。
リスターは微笑むと、花々の舞う空を見上げた。
私も釣られて上を見上げる。
その光景は、さっき見ていた時よりも輝いて見えた。
「ぼ……私は認めないぞ!ま、まだ結婚した訳じゃないし。ただの約束じゃないか。まだチャンスはあるさ。」
「ジル様……。初めて恋した日が失恋した日になるとは、なんともお労しい。」
「げっ。初恋が彩菜とか可哀想過ぎだろ。リスターがいる限り、その恋は実らねえな。」
「だから、まだそんなの分からないじゃないか!」
「お前なぁ……。リスターを甘く見るんじゃねえぞ。」
ジル達の間でそんな会話がされている中……。
リスターと手を繋いで空を見上げていた私は、目の前に広がる美しい光景にただただ見惚れていて、周りの音が全く聞こえていなかった。
花祭り終了後、何故かイナムさんに引き摺られるように帰って行くジルを見送って、私達も帰路に着いた。
「楽しかったね。」
リスターが満足そうに言って微笑む。
「うん!とっても楽しかった!リスター、りゅうとさん、ありがとう!!」
私も大満足だったよ!
花祭りは、とっても楽しくて、とっても素敵なお祭りでした。
110
あなたにおすすめの小説
【完結】使えない令嬢として一家から追放されたけど、あまりにも領民からの信頼が厚かったので逆転してざまぁしちゃいます
腕押のれん
ファンタジー
アメリスはマハス公国の八大領主の一つであるロナデシア家の三姉妹の次女として生まれるが、頭脳明晰な長女と愛想の上手い三女と比較されて母親から疎まれており、ついに追放されてしまう。しかしアメリスは取り柄のない自分にもできることをしなければならないという一心で領民たちに対し援助を熱心に行っていたので、領民からは非常に好かれていた。そのため追放された後に他国に置き去りにされてしまうものの、偶然以前助けたマハス公国出身のヨーデルと出会い助けられる。ここから彼女の逆転人生が始まっていくのであった!
私が死ぬまでには完結させます。
追記:最後まで書き終わったので、ここからはペース上げて投稿します。
追記2:ひとまず完結しました!
騎士団の繕い係
あかね
ファンタジー
クレアは城のお針子だ。そこそこ腕はあると自負しているが、ある日やらかしてしまった。その結果の罰則として針子部屋を出て色々なところの繕い物をすることになった。あちこちをめぐって最終的に行きついたのは騎士団。花形を譲って久しいが消えることもないもの。クレアはそこで繕い物をしている人に出会うのだが。
城で侍女をしているマリアンネと申します。お給金の良いお仕事ありませんか?
甘寧
ファンタジー
「武闘家貴族」「脳筋貴族」と呼ばれていた元子爵令嬢のマリアンネ。
友人に騙され多額の借金を作った脳筋父のせいで、屋敷、領土を差し押さえられ事実上の没落となり、その借金を返済する為、城で侍女の仕事をしつつ得意な武力を活かし副業で「便利屋」を掛け持ちしながら借金返済の為、奮闘する毎日。
マリアンネに執着するオネエ王子やマリアンネを取り巻く人達と様々な試練を越えていく。借金返済の為に……
そんなある日、便利屋の上司ゴリさんからの指令で幽霊屋敷を調査する事になり……
武闘家令嬢と呼ばれいたマリアンネの、借金返済までを綴った物語
積みかけアラフォーOL、公爵令嬢に転生したのでやりたいことをやって好きに生きる!
ぽらいと
ファンタジー
アラフォー、バツ2派遣OLが公爵令嬢に転生したので、やりたいことを好きなようにやって過ごす、というほのぼの系の話。
悪役等は一切出てこない、優しい世界のお話です。
【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる
三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。
こんなはずじゃなかった!
異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。
珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に!
やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活!
右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり!
アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。
モブで可哀相? いえ、幸せです!
みけの
ファンタジー
私のお姉さんは“恋愛ゲームのヒロイン”で、私はゲームの中で“モブ”だそうだ。
“あんたはモブで可哀相”。
お姉さんはそう、思ってくれているけど……私、可哀相なの?
【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?
アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。
泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。
16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。
マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。
あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に…
もう…我慢しなくても良いですよね?
この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。
前作の登場人物達も多数登場する予定です。
マーテルリアのイラストを変更致しました。
【完結】遺棄令嬢いけしゃあしゃあと幸せになる☆婚約破棄されたけど私は悪くないので侯爵さまに嫁ぎます!
天田れおぽん
ファンタジー
婚約破棄されましたが私は悪くないので反省しません。いけしゃあしゃあと侯爵家に嫁いで幸せになっちゃいます。
魔法省に勤めるトレーシー・ダウジャン伯爵令嬢は、婿養子の父と義母、義妹と暮らしていたが婚約者を義妹に取られた上に家から追い出されてしまう。
でも優秀な彼女は王城に住み、個性的な人たちに囲まれて楽しく仕事に取り組む。
一方、ダウジャン伯爵家にはトレーシーの親戚が乗り込み、父たち家族は追い出されてしまう。
トレーシーは先輩であるアルバス・メイデン侯爵令息と王族から依頼された仕事をしながら仲を深める。
互いの気持ちに気付いた二人は、幸せを手に入れていく。
。oOo。.:♥:.。oOo。.:♥:.。oOo。.:♥:.。oOo。.:♥:.
他サイトにも連載中
2023/09/06 少し修正したバージョンと入れ替えながら更新を再開します。
よろしくお願いいたします。m(_ _)m
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる