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謎の少女 〜サイラス〜
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ーー朝、いつものように井戸で水を汲み畑に向かった。
育てている野菜達に水をやり、また井戸で水を汲んで家に帰る。
帰る途中、畑へ行く時には無かった気配がして辺りを見渡した。
小道から少し離れた、周りの木よりも比較的大きな木の根本に何かいる。
立ち止まり目を凝らして見てみると、子供が木にもたれ掛かって寝ていた。…………いや、倒れているのか?
ーー人とは関わりたくないーー
面倒な事に巻き込まれたくない俺は、そのまま見て見ぬフリをして帰宅する。
夕方、家の横で飼っている鳥達に餌を足す為に外へ出て、少し天気が怪しくなってきた事に気付く。
鳥達に餌をやりながら、ふと先程見かけた子供の姿を思い出した。
このまま雨が降り出したら、濡れて風邪を引いてしまうだろうな。
でも、もう目が覚めてあの場所にいないかもしれない。
餌をやり終えた俺は家の中に入るものの、小さな子供を見捨ててきたという罪悪感にかられ、再び外へ出て子供がいた場所へ向かった。
いないのなら、それでいい。
子供が無事か確認するだけだ。
そう思って戻った場所に、まだ子供はいた。
気を失っているのか、眠っているのかは分からない。
…………でも、なんだか今にも消えてしまいそうなその姿に、思わず手を伸ばしてしまった。
子供の頬を指先が掠める。
その指先に、冷たい感触がして子供の顔を見下ろすと、頬が涙で濡れていた。
ーーこんな所で迷子か?
目を閉じてピクリとも動かない子供は、黒い髪の色をしている。
他国との交流を好まない鎖国的なこの国には、おそらく無い髪色だろう。
闇取引されている子供売買で連れて来られ、自力で逃げ出したか、この山奥に捨てられたか。
…………とにかく、この国では厄介な奴という事には変わりない。
ーー俺のようにーー
「…………」
関わってはいけないと頭ではわかっているのに、体がここから……この子の前から動かない。
この時、俺はこの子供と自分をどこか重ねて見ていたのかもしれない。
この子も、自分と同じで、この国にとっては異端な存在だと。
意識の無いまま涙を流す子供の頬を拭い、そっと抱き上げた。
抱き上げて、少し驚く。
子供を抱き上げるのは初めてだが、こんなにも軽いものなのだろうか。
…………やはり、ちゃんとご飯を食べられない環境にいたのだろう。
いつもの俺ならば…………倒れていた子供がこの国の者ならば、きっと助けなかった。
俺はこの国の人間が大嫌いだから。
黒髪の子供を抱きかかえ、俺は家へ戻る。
ーー後に、この子供が俺の人生を左右するほどの存在になろうとは、この時には考えもしなかった。
育てている野菜達に水をやり、また井戸で水を汲んで家に帰る。
帰る途中、畑へ行く時には無かった気配がして辺りを見渡した。
小道から少し離れた、周りの木よりも比較的大きな木の根本に何かいる。
立ち止まり目を凝らして見てみると、子供が木にもたれ掛かって寝ていた。…………いや、倒れているのか?
ーー人とは関わりたくないーー
面倒な事に巻き込まれたくない俺は、そのまま見て見ぬフリをして帰宅する。
夕方、家の横で飼っている鳥達に餌を足す為に外へ出て、少し天気が怪しくなってきた事に気付く。
鳥達に餌をやりながら、ふと先程見かけた子供の姿を思い出した。
このまま雨が降り出したら、濡れて風邪を引いてしまうだろうな。
でも、もう目が覚めてあの場所にいないかもしれない。
餌をやり終えた俺は家の中に入るものの、小さな子供を見捨ててきたという罪悪感にかられ、再び外へ出て子供がいた場所へ向かった。
いないのなら、それでいい。
子供が無事か確認するだけだ。
そう思って戻った場所に、まだ子供はいた。
気を失っているのか、眠っているのかは分からない。
…………でも、なんだか今にも消えてしまいそうなその姿に、思わず手を伸ばしてしまった。
子供の頬を指先が掠める。
その指先に、冷たい感触がして子供の顔を見下ろすと、頬が涙で濡れていた。
ーーこんな所で迷子か?
目を閉じてピクリとも動かない子供は、黒い髪の色をしている。
他国との交流を好まない鎖国的なこの国には、おそらく無い髪色だろう。
闇取引されている子供売買で連れて来られ、自力で逃げ出したか、この山奥に捨てられたか。
…………とにかく、この国では厄介な奴という事には変わりない。
ーー俺のようにーー
「…………」
関わってはいけないと頭ではわかっているのに、体がここから……この子の前から動かない。
この時、俺はこの子供と自分をどこか重ねて見ていたのかもしれない。
この子も、自分と同じで、この国にとっては異端な存在だと。
意識の無いまま涙を流す子供の頬を拭い、そっと抱き上げた。
抱き上げて、少し驚く。
子供を抱き上げるのは初めてだが、こんなにも軽いものなのだろうか。
…………やはり、ちゃんとご飯を食べられない環境にいたのだろう。
いつもの俺ならば…………倒れていた子供がこの国の者ならば、きっと助けなかった。
俺はこの国の人間が大嫌いだから。
黒髪の子供を抱きかかえ、俺は家へ戻る。
ーー後に、この子供が俺の人生を左右するほどの存在になろうとは、この時には考えもしなかった。
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