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フータ、激怒です

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優雅に降り立ったフータに、誰もが目を奪われた。

それもそのはず。

皆、フータを伝説上の生き物だと思っていたから。

まさか本当に不死鳥がいるなんて、しかも自分達の目の前に現れるなんて、誰が予測できただろうか?


皆、一様に驚愕した様子で固まっている。


それは、私を罵っていた重役のお爺ちゃん達も同じだったようで、口をポカーンと開けて驚いていた。


そんなお爺ちゃん達をフータは一瞥すると、今までに聞いたことのない低い声を出した。


『お主らには今一度、我が王家の存在意義をはっきりと示しておかねばならぬな。』


フータはツカツカと優雅に歩いてサイラスの前に立つ。

すると、サイラスを淡い光がフワリと囲み、サイラスの体が神々しく光り出した。


『王家がいなければ、この国は成り立たぬ。今までこの国に安寧がもたらされていたのは、我が力を分け与え、より良い国となるように統治することを託した王家の存在があってこその事なのだ。王家の者達は我と一心同体……言うなれば我の子のようなもの。その王家の者を愚弄する事は、我を愚弄すると同じ事だ。』

「そ、そのような事は決して……!!」


お爺ちゃん達が顔面蒼白で狼狽えながら叫ぶも、フータは冷たい目をお爺ちゃん達に向け続ける。


『そうか?お主らは、先程ユーカにも暴言を吐いておったな。耳障りな汚い怒鳴り声だったが、かなり煩かったゆえ嫌でも聞こえてきたわ。お主らは、ユーカが我の特別な者だと知っての、あの暴言ではなかったのかえ?』

「……え?コイツ……い、いえ、このお方が貴方様の特別……?」


フータの冷たい視線を浴び続けながら、お爺ちゃん達がカタカタと震える指を私に向けた。


フータは大きく頷き、私を見て目を細める。


『ユーカは我の恩人で、友で、愛し子だ。そのユーカを罵るという事は、我を罵ると同等の事ぞ。…………そうか。この国の人間は、もう我が要らぬと言うのだな。それならば、我も好きにしようかの。此処に留まるのは止め、ユーカとサイラスを連れて何処か自由に旅立つのもよいかもしれぬ。』



どうだ?と、笑って言うフータに、私は目を輝かせた。


何それ。楽しそうなんですけど!


「いいね、それ!!私はサイラスと一緒なら何処へでも行くよ!っていうか、旅行、行きたい!!サイラスとフータと一緒に旅行なんて、楽しいに決まってるもん!!」

「………俺も行きたい。……本当はユーカと2人がいいけど、しょうがないよね。」


目をキラキラさせる私とサイラスを見つめて、フータが可笑しそうにクックッと笑う。

そして、そんなフータを見て、お爺ちゃん達は慌てふためいていた。


「お、お待ちくだされ!不死鳥様を要らぬなどとは誰も申しておりません!!この国の守り神である不死鳥様がいなくなっては……」

『黙れ、戯け者めが。よいか、よく聞け。この先、王家とユーカを愚弄する者がおれば、今度こそ我は許さぬぞ。……分かったな?』

「はいっ!!も、申し訳ございませんでした!!!」


冷たく言い放つフータに、お爺ちゃん達は土下座して頭を廊下に擦り付けた。

…………皆、フータの怒気に恐れ慄いてガタガタと震え、半泣き状態だ。


そんなお爺ちゃん達をフータは一瞥した後、身を翻して翼を羽ばたかせる。


『ユーカ、サイラス。2人は我と一緒に来るのだ。』


バサリと宙に舞い、私達の頭上を一回転したフータは、優雅に裏庭のある方へ飛んで行く。


私とサイラスは顔を見合わせた。

チラリとメイソンさんとエマさんを見れば、2人共頷いて"行きなさい"と、言ってくれている。


私はとサイラスは手を繋ぐと、伝説の不死鳥が現れて騒然としている場を後にし、フータの後を追ったのだった。

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