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人の悪口を言ってはいけません
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エマさんと手を繋ぎ、騒ぎの方へ駆けていく。
ザワザワとした騒音がだんだんと大きくなり、それにつれて人数も増えてきた。
騒ぎの中心へ向かう為に人垣を掻き分けて進むと…………その先に、サイラスがいた。
ーー狼姿の、サイラスが。
グルルルルと、周囲を威嚇しまくって怒りを露わにするサイラスの姿に、周りの人達は恐怖のあまり動けないでいる。
「何があったのですか?」
エマが、様子を見ていた侍女の一人にに話を聞いた。
話によると、侍女がこの騒動の起こっている廊下の窓を掃除していた時、サイラスがメイソンさんとここを通りかかったらしい。
そこへ、先代の国王様の頃から王家に仕えている重役数名が丁度鉢合わせてしまった。
この重役さん達は、私とサイラスのことを普段から良く思っていない。
時々会ったりする時には、国王様に気付かれないように小声で私達に嫌味とかをネチネチと言ってくるのだ。
まあ、そういうのはいつも私の後ろに控えているエマさんが、全部国王様に報告してくれてるんだけどね。
よく見てみると、サイラスの脇に腰を抜かして座り込む数人のお爺ちゃん達がいた。
…………重役さん達ではないですか。
サイラスの後ろでは、少し離れてメイソンさんがサイラスに変身を解くように説得していたけど、興奮状態のサイラスには全くメイソンさんの声が聞こえていないみたいだった。
私は急いでメイソンさんの隣まで移動してメイソンさんに声をかけた。
「何があったんですか?」
「ああ、ユーカ!……また、あの方達に嫌味を言われたのです。いつもなら、サイラス様も無視をなさるのですが……その……今日はご自身の事だけでなく……ユーカや……更にはお母様のことまでアレコレ言われてしまって、我慢が出来なかったようで……」
なんてこった!!
私の悪口ならまだしも、サイラスにお母さんの悪口なんて言っちゃ駄目でしょ!?
特にここ最近のサイラスはメチャクチャ機嫌が悪かったのに、そんなこと言われちゃったら怒るに決まってるじゃん!!
「あそこに座り込んでいる馬鹿ども……重役達は、変身したサイラス様に恐れおののいて今は腰を抜かしているだけですが、怒りで我を忘れておられるサイラス様にいつ襲われてもおかしくない状況で……」
「サイラスは襲わないよ。」
青褪めながら状況を説明してくれているメイソンさんに、私は力強く断言する。
「サイラスが、人を襲うなんて有り得ないよ。」
「ですが……」
スパッと言い切る私に、この一触即発の状況で何言ってんだ、というような訝しむ目をメイソンさんが私に向ける。
そんなメイソンさんに、私はニッコリ笑うと、サイラスに歩み寄った。
「ユーカ!危ないですっ!!」
「ユーカ様!!」
私を連れ戻そうと必死に手を伸ばすメイソンさんとエマさんに、私は大丈夫、と手を振り、また一歩サイラスに歩み寄る。
「サイラス」
私が名前を呼ぶと、グルルルと唸るサイラスは僅かに耳をピクリと動かした。
「サイラス」
名前を呼びながら、一歩一歩、ゆっくりサイラスに近づく。
私の声に反応して、サイラスが後ろを振り返った。
その瞬間。
私はサイラス目掛けて勢いよくダイブした。
「サイラス!」
「…………ユーカ……ユーカ……」
モフモフで大きなサイラスの体に埋もれながら、私はギュッとサイラスの首にしがみ付く。
怒りで正気を失っていたサイラスが、私の声に反応して、私の名前を呼んでくれた。
もう、それだけで嬉しくって。
私の目からポロポロ涙が溢れ出る。
サイラスの体をギュッと抱き締めて、モフモフの毛にグリグリと顔を擦り付けた。
「サイラス、大丈夫だよ……大丈夫だから……」
「……ユーカ……」
ボンッと、人間に戻ったサイラスが、ギュッと私を抱き締め返してくれて。
サイラスの肌の温もりにホッとしたら、また涙が溢れてきちゃって、そんな私を見つめるサイラスの目にも涙が溢れていた。
「ユーカ、ごめん……ごめん……」
「なんでサイラスが謝るの~。サイラスは悪くないじゃん」
お互いの涙を拭いながら2人で泣いているところへ、メイソンさんが自分の上着を脱いでサイラスの肩にそれを羽織らせる。
人間に戻ったサイラスは、案の定というか何というか…………まあ、予想通りの全裸だった。
サイラスが全裸ということに急激に冷静さを取り戻した私は、手早くサイラスにメイソンさんの上着を着せる。
有り難いことにメイソンさんの上着は丈が長いタイプで、サイラスの大事な部分まで隠すことが出来て一安心だ。
「サイラス様、ユーカ、行きましょう。」
メイソンさんに促されて、ひとまずこの場を離れる事にした……のだけれど。
「ま、待て!このような事態を引き起こしておいて、お前達だけ、そのまま何事も無かったように去るなんて許さぬぞ!!皆の前でこんな醜態を…………!謝れ!!先ずは私等に謝罪をしろ!!」
はぁ!?
何言ってるの、このお爺ちゃん達。
元はと言えば、アンタ達がサイラスのお母さんの悪口なんて言うからでしょうが。
怒鳴り散らしている重役のお爺ちゃん達に、私はとにかく呆れてしまって、白い目を向ける。
その、私の態度が気に食わなかったのか、お爺ちゃん達は今度は私に凄い形相で口撃をしてきた。
「おい、小娘!なんだその目は!!だいたい、お前はこの城に来てからずっと態度が悪いんだよ!国王に気に入られているからって、調子に乗ってんじゃねえぞクソガキが!!」
ーーおお。最後らへん、口調がかなり荒くなっちゃってますよ。
それ、怖いから止めてくれますか?
あぁ、でも怖いのはお爺ちゃん達じゃなくて、今の発言を聞いたメイソンさんとエマさんですからね?
だって、メチャクチャ怒ってるんだもん!!
怒りオーラ全開で、お爺ちゃん達をメッチャ睨んでるから!!
自分が睨まれてるんじゃないって分かってても怖いから!!
あ、またサイラスが怒りモードになっちゃった!!
もう、どうするの、これ~!?
再びピリピリとした、一触即発な空気となってしまったこの場面で、高らかと、透き通った声が辺りに響き渡る。
『クソガキはお主らじゃ。戯け者めが。』
ファサッと光り輝く翼を羽ばたかせ、私達の頭上を優雅に飛んできたフータは、その神々しい姿をゆっくりと地上に降り立たせたのだった。
ザワザワとした騒音がだんだんと大きくなり、それにつれて人数も増えてきた。
騒ぎの中心へ向かう為に人垣を掻き分けて進むと…………その先に、サイラスがいた。
ーー狼姿の、サイラスが。
グルルルルと、周囲を威嚇しまくって怒りを露わにするサイラスの姿に、周りの人達は恐怖のあまり動けないでいる。
「何があったのですか?」
エマが、様子を見ていた侍女の一人にに話を聞いた。
話によると、侍女がこの騒動の起こっている廊下の窓を掃除していた時、サイラスがメイソンさんとここを通りかかったらしい。
そこへ、先代の国王様の頃から王家に仕えている重役数名が丁度鉢合わせてしまった。
この重役さん達は、私とサイラスのことを普段から良く思っていない。
時々会ったりする時には、国王様に気付かれないように小声で私達に嫌味とかをネチネチと言ってくるのだ。
まあ、そういうのはいつも私の後ろに控えているエマさんが、全部国王様に報告してくれてるんだけどね。
よく見てみると、サイラスの脇に腰を抜かして座り込む数人のお爺ちゃん達がいた。
…………重役さん達ではないですか。
サイラスの後ろでは、少し離れてメイソンさんがサイラスに変身を解くように説得していたけど、興奮状態のサイラスには全くメイソンさんの声が聞こえていないみたいだった。
私は急いでメイソンさんの隣まで移動してメイソンさんに声をかけた。
「何があったんですか?」
「ああ、ユーカ!……また、あの方達に嫌味を言われたのです。いつもなら、サイラス様も無視をなさるのですが……その……今日はご自身の事だけでなく……ユーカや……更にはお母様のことまでアレコレ言われてしまって、我慢が出来なかったようで……」
なんてこった!!
私の悪口ならまだしも、サイラスにお母さんの悪口なんて言っちゃ駄目でしょ!?
特にここ最近のサイラスはメチャクチャ機嫌が悪かったのに、そんなこと言われちゃったら怒るに決まってるじゃん!!
「あそこに座り込んでいる馬鹿ども……重役達は、変身したサイラス様に恐れおののいて今は腰を抜かしているだけですが、怒りで我を忘れておられるサイラス様にいつ襲われてもおかしくない状況で……」
「サイラスは襲わないよ。」
青褪めながら状況を説明してくれているメイソンさんに、私は力強く断言する。
「サイラスが、人を襲うなんて有り得ないよ。」
「ですが……」
スパッと言い切る私に、この一触即発の状況で何言ってんだ、というような訝しむ目をメイソンさんが私に向ける。
そんなメイソンさんに、私はニッコリ笑うと、サイラスに歩み寄った。
「ユーカ!危ないですっ!!」
「ユーカ様!!」
私を連れ戻そうと必死に手を伸ばすメイソンさんとエマさんに、私は大丈夫、と手を振り、また一歩サイラスに歩み寄る。
「サイラス」
私が名前を呼ぶと、グルルルと唸るサイラスは僅かに耳をピクリと動かした。
「サイラス」
名前を呼びながら、一歩一歩、ゆっくりサイラスに近づく。
私の声に反応して、サイラスが後ろを振り返った。
その瞬間。
私はサイラス目掛けて勢いよくダイブした。
「サイラス!」
「…………ユーカ……ユーカ……」
モフモフで大きなサイラスの体に埋もれながら、私はギュッとサイラスの首にしがみ付く。
怒りで正気を失っていたサイラスが、私の声に反応して、私の名前を呼んでくれた。
もう、それだけで嬉しくって。
私の目からポロポロ涙が溢れ出る。
サイラスの体をギュッと抱き締めて、モフモフの毛にグリグリと顔を擦り付けた。
「サイラス、大丈夫だよ……大丈夫だから……」
「……ユーカ……」
ボンッと、人間に戻ったサイラスが、ギュッと私を抱き締め返してくれて。
サイラスの肌の温もりにホッとしたら、また涙が溢れてきちゃって、そんな私を見つめるサイラスの目にも涙が溢れていた。
「ユーカ、ごめん……ごめん……」
「なんでサイラスが謝るの~。サイラスは悪くないじゃん」
お互いの涙を拭いながら2人で泣いているところへ、メイソンさんが自分の上着を脱いでサイラスの肩にそれを羽織らせる。
人間に戻ったサイラスは、案の定というか何というか…………まあ、予想通りの全裸だった。
サイラスが全裸ということに急激に冷静さを取り戻した私は、手早くサイラスにメイソンさんの上着を着せる。
有り難いことにメイソンさんの上着は丈が長いタイプで、サイラスの大事な部分まで隠すことが出来て一安心だ。
「サイラス様、ユーカ、行きましょう。」
メイソンさんに促されて、ひとまずこの場を離れる事にした……のだけれど。
「ま、待て!このような事態を引き起こしておいて、お前達だけ、そのまま何事も無かったように去るなんて許さぬぞ!!皆の前でこんな醜態を…………!謝れ!!先ずは私等に謝罪をしろ!!」
はぁ!?
何言ってるの、このお爺ちゃん達。
元はと言えば、アンタ達がサイラスのお母さんの悪口なんて言うからでしょうが。
怒鳴り散らしている重役のお爺ちゃん達に、私はとにかく呆れてしまって、白い目を向ける。
その、私の態度が気に食わなかったのか、お爺ちゃん達は今度は私に凄い形相で口撃をしてきた。
「おい、小娘!なんだその目は!!だいたい、お前はこの城に来てからずっと態度が悪いんだよ!国王に気に入られているからって、調子に乗ってんじゃねえぞクソガキが!!」
ーーおお。最後らへん、口調がかなり荒くなっちゃってますよ。
それ、怖いから止めてくれますか?
あぁ、でも怖いのはお爺ちゃん達じゃなくて、今の発言を聞いたメイソンさんとエマさんですからね?
だって、メチャクチャ怒ってるんだもん!!
怒りオーラ全開で、お爺ちゃん達をメッチャ睨んでるから!!
自分が睨まれてるんじゃないって分かってても怖いから!!
あ、またサイラスが怒りモードになっちゃった!!
もう、どうするの、これ~!?
再びピリピリとした、一触即発な空気となってしまったこの場面で、高らかと、透き通った声が辺りに響き渡る。
『クソガキはお主らじゃ。戯け者めが。』
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