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チャンスはピンチ!?
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目が覚めた時、窓の外はもうすっかり暗かった。
夕食に呼ばれ、マリアが起こしてくれたようなのだけど、全く気付かなかったみたい。
ーー爆睡だ。
「ずっと馬車移動だったのです。疲れが溜まっていらしたのでしょう。」
マリアが夕食をキアンさんにお願いしてくれて、部屋でマリアとちょっと遅めの夕食をとる。
「マリア~。ご飯遅くなってごめんね。」
「私もゆっくりさせていただきましたので、丁度良かったです。エリーヌ様の天使のような寝顔に心までも癒やされまして、至福のひとときでした。」
ーーマリアは兄様達に負けず劣らず、私への溺愛っぷりが凄いよね。有り難いことです。
夕食もお腹いっぱいに食べれば、いつもならお休みなさいの時間なのだけれど、さっきまで爆睡していた私はちっとも眠たくない。
キアンさんに許可を取って建物の外を散策することにした。
この大きなお屋敷には庭という造りが無い。
来た時は森の中に急に現れたみたいに感じたけど、それは魔法で目隠しをしているからで、敷地の周りには目隠しとバリアの魔法が厳重にかけられているらしい。
その為、他のエルフや小妖精でさえ滅多にこの屋敷に辿り着くことは出来ないんだと、キアンさんがボヤいていた。
エルフの長は自分のテリトリーに人が入ることを拒絶している。
この現状が、今の長の心をそのまま表しているようで悲しい。
マリアと手を繋いで暫く歩いていると、綺麗に咲き誇る薔薇に覆われたアーチが目に入る。
見事に咲く薔薇に目を奪われて誘われるようにそのアーチをくぐれば、そこには夜だというのに淡い光がいくつも灯り、幻想的な空間が広がっていた。
赤、白、ピンク等、彩り豊かな薔薇が至る所に咲き、アーチをくぐり入って来た私達を歓迎してくれているようにキラキラと光って見える。
「凄ーい!綺麗だねー!!」
「本当に。素晴らしいですね。」
「…………誰だ。」
ヤバッ!あまりに見事な薔薇達に感動して思わず声もデカくなっちゃってた。
「ごめんなさ~い。」
謝りながら薔薇達の間を縫うように声のした方へ進むと、エルフの長が薔薇に囲まれ立っていた。
……おぉぅ。見事に咲き誇る薔薇達より綺麗な人がいるとはね。さすがはエルフ。
薔薇と超絶美形なエルフの組み合わせ……最高です!!
ペコペコと謝りながら近づく私と困惑気味なマリアを冷たく一瞥すると、エルフの長はフイと目を逸らして、私達と距離を取る為に少し場所を移動した。
「ここはお前達が来て良い場所ではない。部屋に戻れ。」
「ごめんなさ~い。でも、ここってとっても綺麗ですね。エルフの長が薔薇達のお手入れしているんですか?」
エルフの長が離れた分だけ、私もマリアの手を引っ張ってその距離を詰める。
「……ごめんなさいと言いながら、何故近づく?」
距離を詰める私をギロリと睨み、長は再び私達と離れた場所に移動した。
「え~?だって離れてたら声がよく聞こえないんですもん。話しづらいじゃないですか~。」
「おい。」
そう言いながらまた近づこうとする私を、エルフの長は声を低くして制しようとする。
フン。負けないもんね。
せっかくエルフの長と話せるこのチャンス、逃してなるものか。
「私はエリーヌっていうんです。こっちはマリア。あー、マリアのことは知ってるか。エルフの長は名前ってなんていうんですか?」
私が更にグイグイと長に近づいて話し始めると、長は私の問い掛けには答えずに無表情のままジッと私を見下ろした。
「…………お前は馬鹿か?」
「酷い!!いいもーん。名前を教えてくれないんだったら、勝手に大おじいちゃんって呼ぶから。」
「やめろ。」
「えー?だって私、マリアのお父さんはリアムパパって呼んでるんだもん。アリアさんのお父さんなんだから大おじいちゃんでしょ?それとも、アリアさんがマリアのひいひいおばあちゃんなんだから、ひいひい……」
「やめろ。…………キリナムだ。」
「んもー、最初から教えてくれればいいのに。素直じゃないんだから。よろしくね、キリナムさん。」
ニコニコと満面の笑みで挨拶をする私を、キリナムさんは無表情のまま黙って私を見下ろしてくる。
無表情だけど、怒っているのがビシビシと伝わってくるのが凄い。
ま、負けないもんね!
ニコニコと笑顔を向け続ける私に、キリナムさんも冷たい目を向け続け呟いた。
「お前は図々しい奴だな。全く可愛くない。」
……ま、負けないもん……。
……マリア。顔が怖いから。ヤバイよ……マリアが怒ってる。
「エリーヌ様は世界一可愛いです。」
マリアとキリナムさんが睨み合い、一触即発の状態になっている。
マリア~!私が可愛いとか可愛くないとか、そんなのどうでもいいから!
そんな事で怒らないでよ~!!
せっかくのチャンスがピンチになっちゃってるじゃん!……どうしよう!?
夕食に呼ばれ、マリアが起こしてくれたようなのだけど、全く気付かなかったみたい。
ーー爆睡だ。
「ずっと馬車移動だったのです。疲れが溜まっていらしたのでしょう。」
マリアが夕食をキアンさんにお願いしてくれて、部屋でマリアとちょっと遅めの夕食をとる。
「マリア~。ご飯遅くなってごめんね。」
「私もゆっくりさせていただきましたので、丁度良かったです。エリーヌ様の天使のような寝顔に心までも癒やされまして、至福のひとときでした。」
ーーマリアは兄様達に負けず劣らず、私への溺愛っぷりが凄いよね。有り難いことです。
夕食もお腹いっぱいに食べれば、いつもならお休みなさいの時間なのだけれど、さっきまで爆睡していた私はちっとも眠たくない。
キアンさんに許可を取って建物の外を散策することにした。
この大きなお屋敷には庭という造りが無い。
来た時は森の中に急に現れたみたいに感じたけど、それは魔法で目隠しをしているからで、敷地の周りには目隠しとバリアの魔法が厳重にかけられているらしい。
その為、他のエルフや小妖精でさえ滅多にこの屋敷に辿り着くことは出来ないんだと、キアンさんがボヤいていた。
エルフの長は自分のテリトリーに人が入ることを拒絶している。
この現状が、今の長の心をそのまま表しているようで悲しい。
マリアと手を繋いで暫く歩いていると、綺麗に咲き誇る薔薇に覆われたアーチが目に入る。
見事に咲く薔薇に目を奪われて誘われるようにそのアーチをくぐれば、そこには夜だというのに淡い光がいくつも灯り、幻想的な空間が広がっていた。
赤、白、ピンク等、彩り豊かな薔薇が至る所に咲き、アーチをくぐり入って来た私達を歓迎してくれているようにキラキラと光って見える。
「凄ーい!綺麗だねー!!」
「本当に。素晴らしいですね。」
「…………誰だ。」
ヤバッ!あまりに見事な薔薇達に感動して思わず声もデカくなっちゃってた。
「ごめんなさ~い。」
謝りながら薔薇達の間を縫うように声のした方へ進むと、エルフの長が薔薇に囲まれ立っていた。
……おぉぅ。見事に咲き誇る薔薇達より綺麗な人がいるとはね。さすがはエルフ。
薔薇と超絶美形なエルフの組み合わせ……最高です!!
ペコペコと謝りながら近づく私と困惑気味なマリアを冷たく一瞥すると、エルフの長はフイと目を逸らして、私達と距離を取る為に少し場所を移動した。
「ここはお前達が来て良い場所ではない。部屋に戻れ。」
「ごめんなさ~い。でも、ここってとっても綺麗ですね。エルフの長が薔薇達のお手入れしているんですか?」
エルフの長が離れた分だけ、私もマリアの手を引っ張ってその距離を詰める。
「……ごめんなさいと言いながら、何故近づく?」
距離を詰める私をギロリと睨み、長は再び私達と離れた場所に移動した。
「え~?だって離れてたら声がよく聞こえないんですもん。話しづらいじゃないですか~。」
「おい。」
そう言いながらまた近づこうとする私を、エルフの長は声を低くして制しようとする。
フン。負けないもんね。
せっかくエルフの長と話せるこのチャンス、逃してなるものか。
「私はエリーヌっていうんです。こっちはマリア。あー、マリアのことは知ってるか。エルフの長は名前ってなんていうんですか?」
私が更にグイグイと長に近づいて話し始めると、長は私の問い掛けには答えずに無表情のままジッと私を見下ろした。
「…………お前は馬鹿か?」
「酷い!!いいもーん。名前を教えてくれないんだったら、勝手に大おじいちゃんって呼ぶから。」
「やめろ。」
「えー?だって私、マリアのお父さんはリアムパパって呼んでるんだもん。アリアさんのお父さんなんだから大おじいちゃんでしょ?それとも、アリアさんがマリアのひいひいおばあちゃんなんだから、ひいひい……」
「やめろ。…………キリナムだ。」
「んもー、最初から教えてくれればいいのに。素直じゃないんだから。よろしくね、キリナムさん。」
ニコニコと満面の笑みで挨拶をする私を、キリナムさんは無表情のまま黙って私を見下ろしてくる。
無表情だけど、怒っているのがビシビシと伝わってくるのが凄い。
ま、負けないもんね!
ニコニコと笑顔を向け続ける私に、キリナムさんも冷たい目を向け続け呟いた。
「お前は図々しい奴だな。全く可愛くない。」
……ま、負けないもん……。
……マリア。顔が怖いから。ヤバイよ……マリアが怒ってる。
「エリーヌ様は世界一可愛いです。」
マリアとキリナムさんが睨み合い、一触即発の状態になっている。
マリア~!私が可愛いとか可愛くないとか、そんなのどうでもいいから!
そんな事で怒らないでよ~!!
せっかくのチャンスがピンチになっちゃってるじゃん!……どうしよう!?
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