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私の決意
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2日後、クロはサミュエルさんの背中に乗せてもらい境目に向かった。
私達が住んでいる王都から境目までは馬車で3日程かかるけれど、ペガサスが空を駆ければ半日もかからずに着くらしい。
サミュエルさん凄い。ペガサス最強じゃん。
日を跨ぎ、まだ夜が明けきらない早朝にクロは顔色を悪くして帰って来た。
帰って来るであろうクロを待っていた私は、途中ウトウトしながらも熟睡する事なくクロが帰って来た気配に気付いて出迎える為に部屋を出る。
玄関まで下りて行くと、真っ青なクロがフラフラと中へ入って来たところだった。
おそらく瘴気にあてられたせいで体調が優れないのだろう。
魔力が多い人の方が瘴気の影響を受けやすいって前に教えてもらった。
きっとクロやサミュエルさん、キリナムさんなんかは他の人より何倍も辛いはず。
…………私もそうなるのかな。
「おかえりなさい。クロ、大丈夫?」
「ああ…………悪いが話しは後でいいか?取り敢えず少し休ませてくれ。」
「うん、勿論だよ。ゆっくり休んで。」
クロは私と一回も目を合わせずにグッタリとした様子で自分の部屋へと消えて行った。
…………これはもう、あれだね。クロのこの様子を見れば語らずとも結論は明らかだってことだよね。
予想通りだったとはいえ、この良くない状況が悲しくて…………また泣きそうになった。
眠れないまま朝食までの時間を過ごし、朝食後にクロが報告をしに来るのを部屋で待つ。
部屋に入って来たクロには悲壮感が漂っていて思わず笑ってしまった。
「おい。」
「ごめんごめん。クロ、そんな悲しそうな顔しないで?無理矢理行かせて悪かったと思ってる。でも大体予想はしていたし、私なら大丈夫だよ。そらより、ちゃんと亀裂のある場所は覚えてきた?」
まだちょっと体調が悪そうなクロは、「ああ。」と頷くと壁にもたれかかり眉間に皺を寄せる。
「…………あれは相当ヤバイな。」
「そっか。」
「今は3国の奴らが集まって代わる代わる魔力を注いでいるが……亀裂は塞がらないだろうな。ハッキリ言って現状維持がいいところだ。この状態が続けば状況は更に悪くなるのは目に見えて明らかだった。」
「そうなんだね。」
ウンウンと相槌を打って聞いていると、クロがメチャメチャ私を睨んできた。
「お前なぁ。なんでこんな話しを嬉しそうに聞いてんだよ。悪い報告しかしてないだろ。」
「え?だってさ、クロが私に隠さずに本当の事を言ってくれてるのが嬉しいんだもん。」
「下手に隠したらエリーヌは何をするか分からないだろ。だったら正直に話しておいた方が良いに決まってる。」
「おぉ、さすがクロ。私の事よく分かってるね。」
「アホか。何年お前の従魔やってると思ってるんだ。」
「えへへ。クロ大好き。」
私を睨んでいたクロの目がフッと優しくなる。
「1人で勝手なことするんじゃないぞ。するなら俺も一緒だからな。」
「勿論、そのつもりだよ。その為にクロに亀裂の場所を覚えてきてもらったんだから。」
私がニッコリ笑ってそう言うと、クロもニッと笑って私の頭をガシガシと力強く撫でた。
「まったく、手の掛かるご主人様だよ。」
「クロ…………巻き込んでゴメンね?」
そう言った途端、クロに頭をバシンと叩かれた。手加減してくれたんだろうけど、地味に痛い。
「おい、俺は巻き込まれたんじゃない。自分の意思で動いてんだ。今度またそんな事言ったらブン殴るぞ。いいな?」
「……もう今叩いてるじゃん。」
「アホか。今のは愛のムチだ。叩いたんじゃない。」
「何その屁理屈…………しかもさっきから私、アホアホ言われてるんですけど。」
「エリーヌは、アホで可愛い俺の生涯でただ1人のご主人様だよ。お前の為だったら、俺は何だってしてやる。…………だからもう泣くな。」
「クロ…………ありがとう。」
いつの間にか涙腺が決壊し、私の目からは涙がポロポロと溢れ出ていた。
ーークロ、いつも甘えてばかりでゴメンね。こんな面倒くさい主人でゴメンね。
ーー今だけ、クロしかいない今だけ、泣くのを許してね。泣くのは今日で終わりにするから。
涙が止まるまで、クロは私の頭をずっと撫でてくれていた。
私達が住んでいる王都から境目までは馬車で3日程かかるけれど、ペガサスが空を駆ければ半日もかからずに着くらしい。
サミュエルさん凄い。ペガサス最強じゃん。
日を跨ぎ、まだ夜が明けきらない早朝にクロは顔色を悪くして帰って来た。
帰って来るであろうクロを待っていた私は、途中ウトウトしながらも熟睡する事なくクロが帰って来た気配に気付いて出迎える為に部屋を出る。
玄関まで下りて行くと、真っ青なクロがフラフラと中へ入って来たところだった。
おそらく瘴気にあてられたせいで体調が優れないのだろう。
魔力が多い人の方が瘴気の影響を受けやすいって前に教えてもらった。
きっとクロやサミュエルさん、キリナムさんなんかは他の人より何倍も辛いはず。
…………私もそうなるのかな。
「おかえりなさい。クロ、大丈夫?」
「ああ…………悪いが話しは後でいいか?取り敢えず少し休ませてくれ。」
「うん、勿論だよ。ゆっくり休んで。」
クロは私と一回も目を合わせずにグッタリとした様子で自分の部屋へと消えて行った。
…………これはもう、あれだね。クロのこの様子を見れば語らずとも結論は明らかだってことだよね。
予想通りだったとはいえ、この良くない状況が悲しくて…………また泣きそうになった。
眠れないまま朝食までの時間を過ごし、朝食後にクロが報告をしに来るのを部屋で待つ。
部屋に入って来たクロには悲壮感が漂っていて思わず笑ってしまった。
「おい。」
「ごめんごめん。クロ、そんな悲しそうな顔しないで?無理矢理行かせて悪かったと思ってる。でも大体予想はしていたし、私なら大丈夫だよ。そらより、ちゃんと亀裂のある場所は覚えてきた?」
まだちょっと体調が悪そうなクロは、「ああ。」と頷くと壁にもたれかかり眉間に皺を寄せる。
「…………あれは相当ヤバイな。」
「そっか。」
「今は3国の奴らが集まって代わる代わる魔力を注いでいるが……亀裂は塞がらないだろうな。ハッキリ言って現状維持がいいところだ。この状態が続けば状況は更に悪くなるのは目に見えて明らかだった。」
「そうなんだね。」
ウンウンと相槌を打って聞いていると、クロがメチャメチャ私を睨んできた。
「お前なぁ。なんでこんな話しを嬉しそうに聞いてんだよ。悪い報告しかしてないだろ。」
「え?だってさ、クロが私に隠さずに本当の事を言ってくれてるのが嬉しいんだもん。」
「下手に隠したらエリーヌは何をするか分からないだろ。だったら正直に話しておいた方が良いに決まってる。」
「おぉ、さすがクロ。私の事よく分かってるね。」
「アホか。何年お前の従魔やってると思ってるんだ。」
「えへへ。クロ大好き。」
私を睨んでいたクロの目がフッと優しくなる。
「1人で勝手なことするんじゃないぞ。するなら俺も一緒だからな。」
「勿論、そのつもりだよ。その為にクロに亀裂の場所を覚えてきてもらったんだから。」
私がニッコリ笑ってそう言うと、クロもニッと笑って私の頭をガシガシと力強く撫でた。
「まったく、手の掛かるご主人様だよ。」
「クロ…………巻き込んでゴメンね?」
そう言った途端、クロに頭をバシンと叩かれた。手加減してくれたんだろうけど、地味に痛い。
「おい、俺は巻き込まれたんじゃない。自分の意思で動いてんだ。今度またそんな事言ったらブン殴るぞ。いいな?」
「……もう今叩いてるじゃん。」
「アホか。今のは愛のムチだ。叩いたんじゃない。」
「何その屁理屈…………しかもさっきから私、アホアホ言われてるんですけど。」
「エリーヌは、アホで可愛い俺の生涯でただ1人のご主人様だよ。お前の為だったら、俺は何だってしてやる。…………だからもう泣くな。」
「クロ…………ありがとう。」
いつの間にか涙腺が決壊し、私の目からは涙がポロポロと溢れ出ていた。
ーークロ、いつも甘えてばかりでゴメンね。こんな面倒くさい主人でゴメンね。
ーー今だけ、クロしかいない今だけ、泣くのを許してね。泣くのは今日で終わりにするから。
涙が止まるまで、クロは私の頭をずっと撫でてくれていた。
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