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第2章
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ヴォルフの下ろした銀糸の髪。その切れ間から見える金色の瞳。
射抜くような眼差しに、胸がキュッと詰まる。
「真実?」
その言葉に、何故だかドクドクと胸が早打ち、身体に言いようのない緊張が走る。
「知りたい?」
ゆっくりと身を起こした私。ベッドの端に腰をかけ、私を見つめるヴォルフ。質問に質問で返され、どう答えて良いのか悩む。【真実】?それって一体なに?私は、魔王を倒す為にこちらの世界に神子として呼ばれたのよね?違うの?
ぐるぐるとする思考。混乱する私の顎を、ヴォルフがその長い指でくいっと持ち上げた。
「それとも、する?」
「・・・・え?」
「さっきの、つ・づ・き」
誘うような眼差しを向けられ、途端に顔に熱が籠る。
「くす。あんた・・・・まだ慣れねーのな。そんなんじゃ、この先思いやられるぜ?・・・・お嬢ちゃん。」
「えっ?ちょっと?え?え?やだっ!」
近づくヴォルフの顔。またキスされる!?そんな、いきなりなんで!?
ーこつん。
「早く慣れなよ。役目さえ果たせば・・・・あんた・・・・帰れるんだから。」
おでこから、ヴォルフの熱が伝わる。
息のかかる距離で呟かれる言葉。
「なんであんたが選ばれたんだろな。」
私の髪を撫で、頭に手を添え抱き寄せるヴォルフ。
その行為の意図が読めず、疑問ばかり浮かび上がる。
「男嫌いなあんたが・・・・なんで・・・・」
ヴォルフの声色は、苛立ちも混ざっている。
「えっと・・・・私なんかが、神子になっちゃってごめん。でも、その、男嫌いは・・・・大分改善された筈だよ?ヴォルフやセシル君のお陰で。」
うん。こうやって触れられてても暴言なんてでないし、抱き締められてても嫌じゃない。嫌じゃないどころか嬉しいかも・・・・というか、今、私・・・・抱き締められてるんだよね?・・・・ヴォルフに・・・・。
意識した途端、血が頭に昇る。顔が真っ赤になる。
ああ。きっと耳まで真っ赤。
胸が荒々しく早鐘を打つ。バクバクと音を立てる鼓動。息苦しい。
だめだ。普段の粗暴とした雰囲気と違って、髪を下ろして・・・・キラキラした格好をしたヴォルフ。
流れるような所作も、とても綺麗でまるで別人のようだけれど、その金色の瞳に宿る熱は変わらなくて・・・・
「あっあの。その。本当に私、男嫌いは克服したと思うの!ただ、まだ慣れるのはできなくてですね。この距離は、免疫のない私には、ひっじょーにハードルが高すぎるのですよ。ヴォルフさん!」
ドキマギしながら、ヴォルフに訴える。
お願いだから離れて!これ以上は、心臓が持たない!
私の心臓を止める気ですか?貴方?
「ん?なに?もしかして、俺の事・・・・意識しちゃってんの?」
手をつっぱりヴォルフの胸を押すが、ヴォルフの手に捕らわれてしまう。
「いっ・・・・意識なんてしてにゃい!はにゃして!」
ぐはっ!噛んだ!
「・・・・。」
「・・・・。」
ううっ沈黙がキツイ。
ヴォルフが悪い!大体、恋愛経験ゼロなビギナー捕まえて弄ぶだなんて、この狼は本当に質が悪い!
何考えてるかわかんない癖に、妙な所で優しいし。突き放してきたと思ったら、熱っぽい目で絡んでくるし・・・・。
「ヴォルフなんて・・・・嫌い。」
悔しくてそう言葉を投げ付ける。
意味有りな態度や言葉を告げる癖に、肝心な事はいつもはぐらかすヴォルフ。
「本当の事を教えるとか言って・・・・いつもはぐらかす癖に・・・・そうやって近づいてきて・・・・拒絶する癖に・・・・」
「それは・・・・あんたが・・・・」
「私が、何?」
見つめ返すと、目を逸らし言葉を飲み込むヴォルフ。
ーほら。やっぱり
「・・・・ヴォルフ。私に嘘付いてるよね?」
ーぴくっ
重ねられていたヴォルフの掌。そこから、彼の動揺が伝わる。
ナニに怯えてるの?
「・・・・話してくれるんだよね?」
掴まれていた手を、逆に私が握り返す。
大丈夫。
私、ちゃんと受け止めるよ?
この数ヶ月。たった数ヶ月だけど・・・・成長したもの。
だから・・・・
「話してくれる?」
「真実を。」
射抜くような眼差しに、胸がキュッと詰まる。
「真実?」
その言葉に、何故だかドクドクと胸が早打ち、身体に言いようのない緊張が走る。
「知りたい?」
ゆっくりと身を起こした私。ベッドの端に腰をかけ、私を見つめるヴォルフ。質問に質問で返され、どう答えて良いのか悩む。【真実】?それって一体なに?私は、魔王を倒す為にこちらの世界に神子として呼ばれたのよね?違うの?
ぐるぐるとする思考。混乱する私の顎を、ヴォルフがその長い指でくいっと持ち上げた。
「それとも、する?」
「・・・・え?」
「さっきの、つ・づ・き」
誘うような眼差しを向けられ、途端に顔に熱が籠る。
「くす。あんた・・・・まだ慣れねーのな。そんなんじゃ、この先思いやられるぜ?・・・・お嬢ちゃん。」
「えっ?ちょっと?え?え?やだっ!」
近づくヴォルフの顔。またキスされる!?そんな、いきなりなんで!?
ーこつん。
「早く慣れなよ。役目さえ果たせば・・・・あんた・・・・帰れるんだから。」
おでこから、ヴォルフの熱が伝わる。
息のかかる距離で呟かれる言葉。
「なんであんたが選ばれたんだろな。」
私の髪を撫で、頭に手を添え抱き寄せるヴォルフ。
その行為の意図が読めず、疑問ばかり浮かび上がる。
「男嫌いなあんたが・・・・なんで・・・・」
ヴォルフの声色は、苛立ちも混ざっている。
「えっと・・・・私なんかが、神子になっちゃってごめん。でも、その、男嫌いは・・・・大分改善された筈だよ?ヴォルフやセシル君のお陰で。」
うん。こうやって触れられてても暴言なんてでないし、抱き締められてても嫌じゃない。嫌じゃないどころか嬉しいかも・・・・というか、今、私・・・・抱き締められてるんだよね?・・・・ヴォルフに・・・・。
意識した途端、血が頭に昇る。顔が真っ赤になる。
ああ。きっと耳まで真っ赤。
胸が荒々しく早鐘を打つ。バクバクと音を立てる鼓動。息苦しい。
だめだ。普段の粗暴とした雰囲気と違って、髪を下ろして・・・・キラキラした格好をしたヴォルフ。
流れるような所作も、とても綺麗でまるで別人のようだけれど、その金色の瞳に宿る熱は変わらなくて・・・・
「あっあの。その。本当に私、男嫌いは克服したと思うの!ただ、まだ慣れるのはできなくてですね。この距離は、免疫のない私には、ひっじょーにハードルが高すぎるのですよ。ヴォルフさん!」
ドキマギしながら、ヴォルフに訴える。
お願いだから離れて!これ以上は、心臓が持たない!
私の心臓を止める気ですか?貴方?
「ん?なに?もしかして、俺の事・・・・意識しちゃってんの?」
手をつっぱりヴォルフの胸を押すが、ヴォルフの手に捕らわれてしまう。
「いっ・・・・意識なんてしてにゃい!はにゃして!」
ぐはっ!噛んだ!
「・・・・。」
「・・・・。」
ううっ沈黙がキツイ。
ヴォルフが悪い!大体、恋愛経験ゼロなビギナー捕まえて弄ぶだなんて、この狼は本当に質が悪い!
何考えてるかわかんない癖に、妙な所で優しいし。突き放してきたと思ったら、熱っぽい目で絡んでくるし・・・・。
「ヴォルフなんて・・・・嫌い。」
悔しくてそう言葉を投げ付ける。
意味有りな態度や言葉を告げる癖に、肝心な事はいつもはぐらかすヴォルフ。
「本当の事を教えるとか言って・・・・いつもはぐらかす癖に・・・・そうやって近づいてきて・・・・拒絶する癖に・・・・」
「それは・・・・あんたが・・・・」
「私が、何?」
見つめ返すと、目を逸らし言葉を飲み込むヴォルフ。
ーほら。やっぱり
「・・・・ヴォルフ。私に嘘付いてるよね?」
ーぴくっ
重ねられていたヴォルフの掌。そこから、彼の動揺が伝わる。
ナニに怯えてるの?
「・・・・話してくれるんだよね?」
掴まれていた手を、逆に私が握り返す。
大丈夫。
私、ちゃんと受け止めるよ?
この数ヶ月。たった数ヶ月だけど・・・・成長したもの。
だから・・・・
「話してくれる?」
「真実を。」
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