異世界の神子は、逆ハーを望まない

一花八華

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第2章

3

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「話してくれる?【真実】を」

まっすぐ、ヴォルフを見つめる。
彼が息を飲むのがわかる。
そうして、不安げに揺れる瞳。心配してるの?

大丈夫。
異世界に召喚され、流されるままきてしまったけれど
この数ヶ月で、私も図太くなったもの。
旅してる間に色々ふっきれたし、こうやってヴォルフに気にかけられてるのが密かに嬉しかったりする。

元居た世界では、こんな風に男の人と接する事なんてなかっただろうな。
私が毒を吐く度にさらりと受け流し、懲りずに何度も、スキンシップをはかってきたヴォルフのお陰で。

【荒療治か】

ルドルフさんの言葉が、頭を過ぎる。
うん。きっとそう。

「ヴォルフが、私の男嫌いを治そうとしたのって、理由があるんだよね?」

その理由がヴォルフの言う真実に繋がっている。
そう思う。

「・・・・ああ。」

目を伏せそう、彼は呟く。


「神子の役割って、ナニかわかるか?」

手を繋いだまま、話す。ベッドに下ろした手。緊張からか、少し汗ばみしっとりと濡れる。

「えっと・・・・魔王を倒す事・・・・じゃないの?」

少なくとも、私はそう聞いて送り出された。
魔王城へ行って、この世界を救って欲しい。と

「違う。」

静まり返った部屋に、ヴォルフの声が響く。

「・・・・言ったろ?俺は魔王の配下だって・・・・。」 

そうだ。さっきヴォルフは、そう言った。
人でなく、人狼なヴォルフ。  
隠していたけれど、人狼のヴォルフは、魔王側の人物の方がしっくりくる。

「お城の人達を、騙してたの?」

正体を偽って、潜入してたの?魔族のスパイとか・・・

「いや、あっちの奴らも俺の正体は知ってる。」

「それに・・・・セシルとルドルフの旦那も、こちら側だ。」

ゆっくりと告げられる言葉。お城の人達もヴォルフの正体を知っていて・・・・セシル君とルドルフさんもヴォルフと一緒・・・・。


「ーもしかして・・・・騙されていたのって・・・・私・・なの?」

ぽつりと零れたその言葉に、ヴォルフは黙って頷く。


ーああ。そうか。

「神子の役目が、それに関係してるんだね。」

ー私だけに隠されていた本当の役目。
真実のままだと、都合が悪くて隠されていた役目。


私の問いかけに、ヴォルフは口を開く

「ああ。神子の役目は、魔王を産むことだ。」


魔王を・・・・産む?


「えっと・・・・ごめん。意味がわからないんだけれど」


魔王って、今居るんだよね?それを産むってどういう事?
既にいらっしゃるというのに、産む必要なんて何処にもないんじゃ・・・・


「魔力を生み出す器が【魔王】だ。」

「【魔王】によって、この世界は維持されている。」

私の顔を見つめながら、ヴォルフは話し続ける。
この世界は、魔力=命の源。人々は、酸素と同じように取込み吐き出している。元々魔力を生み出す事のできる者と、自身で魔力を練る事のできない者。その2者に別れる。魔王やセシル君達は前者で、街で出会った一般の人達はほぼ後者らしい。

「世界に己の魔力を分け与え、行き渡らせる事ができるのは、神子の子である【魔王】だけだ。」



「そして、現魔王の魔力は枯渇してきている・・・・」 

そう言って、視線を少し下に向ける。


「【魔王】には、この世界で産まれた者しかなれない。」

代替わり・・・・ヴォルフの口が、そう呟く。
魔力が高いだけの私・・・・直接的には魔力を分ける事ができても、それを世界に分配するすべは知らない。

「異世界から【神子】を呼び寄せ、魔力の高い者と子を成し【魔王】を産んでもらうんだ。・・・・異世界の人間は、魔力が高いからな。」

ヴォルフと視線が絡む。

「男が召喚されれば、護衛は魔力の高い女が。異世界人が女だったら、護衛は魔力の高い男がついて魔王城を目指す。」

ー召喚されたのが女の私だったから、魔力の高いヴォルフとセシル君とルドルフさんが選ばれた。ヴォルフはそう言った。

「旅の間に、情やら愛やらが芽生えるよう仕向けるんだよ。」



「【魔王】は、異世界人とこちらの魔力の高い者。その両者の愛ある行為で産まれた者しか・・・・なれないんだ。」













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第1章30話を微妙に変更しています。
度々手直し本当にごめんなさい。
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