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シックザール学園 第三章
ありがとうとは尊い言葉
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「オリオン、何用だ」
「父上、恐れながら、この度はお願いがあって参りました」
「願い?」
「この度はオリオン・ライアネル並びにベルンハルト・フリード、セドリック・ドーソン、ニコラス・ケンドリック! そして、スピカ・アルドレード……この計五名での、ミランダ夫人救出作戦への同行の許可をいただきたいのです」
「ここに署名もあります、どうかご検討のほどよろしくお願い致します」
(はい? 待って、え?)
私は慌てて、ベルからお父様が奪った署名の束を私が奪い取る。
そこに並ぶ名前に私は言葉が出ない。
ここにいる友人達はもちろん、シリウス殿下やガブリエル様の名前まで……
あちこちで、自分達の子どもの登場にそれぞれがびっくりしてる。
お父様も並ぶ高貴な名前のオンパレードに開いた口が塞がらないようだ。
「サイモン、諦めろ? お前の娘はこうと決めたら絶対に曲げない」
「しかし、娘は……」
「心配するな、スピカを守るために俺達も共に行くのだからな?」
「え、あの……?」
「人選は勝手に組ませてもらったぞ?」
突然始まった計画発表に、私だけでなくお父様も国王陛下も、その他の人達もみんな食い入るように聞いている。
あ、本当に誰も知らなかったんだ……
そして、話される内容にただ驚かされるばかりだった。
「オリオンと僕はスピカの時に盾であり剣ともなる、けれども、救出隊には必ず騎士が必要だ」
「そこで俺が同行するんだ!」
「セドリックは見習いだけど立派な騎士団だし、戦力は問題ないし、何より僕達との信頼関係がある」
「ニックは?」
「……絶対について行くって、聞いてくれなかったんだ」
「何故、分からないんだ? 俺が守ってやるって言ってんだ!」
思わず、その場にズッコケた私って絶対に悪くないよね? ね?
オリオン様とベル、それに他のみんなの疲れた顔が全てを物語る。
私の知らないとこで何が……!?
自信満々で、私に感謝しろ安心しろと言うニック……恐ろしい子。
「あと、ベロニカも同行するよ」
「そういえば、ベロニカは?」
「ゴードンとの戦いに向けて、魔法を調合するとか言ってたな」
「そうなんだ……他のみんなは?」
「もちろん、役割がある、リオンがもう少しで完成させる薬品で枯れてしまった花や森を蘇らせるんだ」
「リオン、そんなこと出来るの!?」
「天才って言われてるなら、その役目は果たさないとね?」
「リリーとエレノア様には、その作業を手伝ってもらうんだ」
「エレノア様の歴史の知識を参考に昔の王国を蘇らせようと思っています」
「近年は緑が失われてるので……せっかくならこの機会にと」
何か、さらっと壮大なプロジェクトが生まれていなかった?
ベロニカの魔法は命を蘇らせるとか禁止らしくて、出来ないもんね……
天才ってか、魔法より魔法だよね?
「クラリーナ様とバルトは?」
「二人はパイプ役だよ」
「パイプ役?」
「救出隊を募るって聞いて、それならゴードンや得体の知れない生物と戦うことになるだろうから、武器や物資が必要だと思ってね? 呼んだんだ」
「よ、呼んだ?」
「最高峰の人達を呼んだんだよ?」
「何より、この環境では各国で不足物が多発していますわ、これを機会に国同士が歩み寄れたらとも思いまして、バルト様とは先日から隣国の外務大臣などにお手紙を出しておりましたの」
バルトが促す方向には、ここに入って来た時から気にしていた、商会の会長、薬師、鍛冶屋、学習の人達。
つまりは、あの人達は私達をサポートしてくれるすごい人ってこと?
そして、軍事大国だった我が王国の評判も上げちゃいましょうってこと?
「みんな、いつの間に!?」
「スピカが再起不能になってた時だよ」
「え? あー、あの時……」
「助けてもらってばかりだから、僕達が何かしてあげたくて……」
「導き出した結論がこれってわけさ」
(ベル、リオン……)
「どれだけ待たせるんですの? 本当に待ちくたびれましたわ!」
「こんなこと言ってるけど、スピカのことクラリーナ様は、本当にものすごく心配していたんだよ?」
「バルト様!?」
「スピカ様がお元気ですと、私達まで元気になれてしまうんです」
(クラリーナ様、バルト、エレノア様……)
「スピカ、お前の行動はお見通しだ!」
「絶対に戻って来るって、ずっと信じてましたわ! スピカ様!」
「一時はどうなるかと思ったけど期待を裏切らないとこは、さすがだな?」
(ニック、リリー、セドリック……)
「父上、私とガブリエルも同意です、スピカ嬢の同行の許可をお願い致します」
「シリウス、お前の考えか?」
「全て、オリオンの考えでございます」
(シリウス殿下、ガブリエル様……)
「サイモン伯爵、スピカ嬢は必ずお守り致します、どうかお許しください」
(オリオン様……)
オリオン様に頭を下げられると、お父様は国王陛下のもとへ行く。
辺りは静まり、みんなが二人の行く末を見つめている。
一語一句、聞き漏らさぬようにと……
「サイモン、私達の負けだな」
「……そのようです、娘は世界一の幸せ者ではないでしょうか?」
「それは、スピカ嬢の人柄が、過ごしてきた時間がこうさせたのだ」
「恐れ入ります」
「……スピカ・アルドレードの救出隊同行をここに許可する!」
一気に周りが騒がしくなる、まだお母様を救出したわけでもないのに。
みんなのことが大好きだ。
こんなにも大切で、かけがえのないもので、大好きだ。
私は言わなきゃいけないことがある。
「みんな! 本当にありがとう!」
「父上、恐れながら、この度はお願いがあって参りました」
「願い?」
「この度はオリオン・ライアネル並びにベルンハルト・フリード、セドリック・ドーソン、ニコラス・ケンドリック! そして、スピカ・アルドレード……この計五名での、ミランダ夫人救出作戦への同行の許可をいただきたいのです」
「ここに署名もあります、どうかご検討のほどよろしくお願い致します」
(はい? 待って、え?)
私は慌てて、ベルからお父様が奪った署名の束を私が奪い取る。
そこに並ぶ名前に私は言葉が出ない。
ここにいる友人達はもちろん、シリウス殿下やガブリエル様の名前まで……
あちこちで、自分達の子どもの登場にそれぞれがびっくりしてる。
お父様も並ぶ高貴な名前のオンパレードに開いた口が塞がらないようだ。
「サイモン、諦めろ? お前の娘はこうと決めたら絶対に曲げない」
「しかし、娘は……」
「心配するな、スピカを守るために俺達も共に行くのだからな?」
「え、あの……?」
「人選は勝手に組ませてもらったぞ?」
突然始まった計画発表に、私だけでなくお父様も国王陛下も、その他の人達もみんな食い入るように聞いている。
あ、本当に誰も知らなかったんだ……
そして、話される内容にただ驚かされるばかりだった。
「オリオンと僕はスピカの時に盾であり剣ともなる、けれども、救出隊には必ず騎士が必要だ」
「そこで俺が同行するんだ!」
「セドリックは見習いだけど立派な騎士団だし、戦力は問題ないし、何より僕達との信頼関係がある」
「ニックは?」
「……絶対について行くって、聞いてくれなかったんだ」
「何故、分からないんだ? 俺が守ってやるって言ってんだ!」
思わず、その場にズッコケた私って絶対に悪くないよね? ね?
オリオン様とベル、それに他のみんなの疲れた顔が全てを物語る。
私の知らないとこで何が……!?
自信満々で、私に感謝しろ安心しろと言うニック……恐ろしい子。
「あと、ベロニカも同行するよ」
「そういえば、ベロニカは?」
「ゴードンとの戦いに向けて、魔法を調合するとか言ってたな」
「そうなんだ……他のみんなは?」
「もちろん、役割がある、リオンがもう少しで完成させる薬品で枯れてしまった花や森を蘇らせるんだ」
「リオン、そんなこと出来るの!?」
「天才って言われてるなら、その役目は果たさないとね?」
「リリーとエレノア様には、その作業を手伝ってもらうんだ」
「エレノア様の歴史の知識を参考に昔の王国を蘇らせようと思っています」
「近年は緑が失われてるので……せっかくならこの機会にと」
何か、さらっと壮大なプロジェクトが生まれていなかった?
ベロニカの魔法は命を蘇らせるとか禁止らしくて、出来ないもんね……
天才ってか、魔法より魔法だよね?
「クラリーナ様とバルトは?」
「二人はパイプ役だよ」
「パイプ役?」
「救出隊を募るって聞いて、それならゴードンや得体の知れない生物と戦うことになるだろうから、武器や物資が必要だと思ってね? 呼んだんだ」
「よ、呼んだ?」
「最高峰の人達を呼んだんだよ?」
「何より、この環境では各国で不足物が多発していますわ、これを機会に国同士が歩み寄れたらとも思いまして、バルト様とは先日から隣国の外務大臣などにお手紙を出しておりましたの」
バルトが促す方向には、ここに入って来た時から気にしていた、商会の会長、薬師、鍛冶屋、学習の人達。
つまりは、あの人達は私達をサポートしてくれるすごい人ってこと?
そして、軍事大国だった我が王国の評判も上げちゃいましょうってこと?
「みんな、いつの間に!?」
「スピカが再起不能になってた時だよ」
「え? あー、あの時……」
「助けてもらってばかりだから、僕達が何かしてあげたくて……」
「導き出した結論がこれってわけさ」
(ベル、リオン……)
「どれだけ待たせるんですの? 本当に待ちくたびれましたわ!」
「こんなこと言ってるけど、スピカのことクラリーナ様は、本当にものすごく心配していたんだよ?」
「バルト様!?」
「スピカ様がお元気ですと、私達まで元気になれてしまうんです」
(クラリーナ様、バルト、エレノア様……)
「スピカ、お前の行動はお見通しだ!」
「絶対に戻って来るって、ずっと信じてましたわ! スピカ様!」
「一時はどうなるかと思ったけど期待を裏切らないとこは、さすがだな?」
(ニック、リリー、セドリック……)
「父上、私とガブリエルも同意です、スピカ嬢の同行の許可をお願い致します」
「シリウス、お前の考えか?」
「全て、オリオンの考えでございます」
(シリウス殿下、ガブリエル様……)
「サイモン伯爵、スピカ嬢は必ずお守り致します、どうかお許しください」
(オリオン様……)
オリオン様に頭を下げられると、お父様は国王陛下のもとへ行く。
辺りは静まり、みんなが二人の行く末を見つめている。
一語一句、聞き漏らさぬようにと……
「サイモン、私達の負けだな」
「……そのようです、娘は世界一の幸せ者ではないでしょうか?」
「それは、スピカ嬢の人柄が、過ごしてきた時間がこうさせたのだ」
「恐れ入ります」
「……スピカ・アルドレードの救出隊同行をここに許可する!」
一気に周りが騒がしくなる、まだお母様を救出したわけでもないのに。
みんなのことが大好きだ。
こんなにも大切で、かけがえのないもので、大好きだ。
私は言わなきゃいけないことがある。
「みんな! 本当にありがとう!」
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