モブでも認知ぐらいしてほしいと思ったのがそもそもの間違いでした。

行倉宙華

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キングダム・レボリューション 開幕(シックザール学園 第四章)

自分が何様かを知ったのだ

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――「決めたわ、あなたの名前はシャーロット! これからあなたが誰よりも幸せになるようにって願いを込めたの!」


 そう言われて、改めて私がスピカ様の手によって、生まれ変わったあの日からもう十一年の時が経った。
 私は一度だって忘れなかった、まだはっきりと覚えている。
 親に捨てられて、名も与えられず、いつ死んでもおかしくないような状態で私はひとりきりで息をしてた。
 早く死なせてくれ、この世界から解放してくれと、どんなに願ったか。


「スピカ様、眠れませんか?」
「ああ、メイドね、起こしたかしら?」
「私も寒くて眠れなくて……」
「そうだったの」
「よろしければ、ホットミルクをお作りしましょうか?」
「……お願いするわ」


 そんなの嘘だ、スピカ様の部屋から物音がして私は飛び起きた。
 記憶を失くして、更に私達の手の届くはずのないような所に一人で行ってしまう気がして……
 おかげで、ちょっとのことに過剰反応をして寝不足が続いてるのだけど。


「お待たせ致しました」
「ありがとう」
「……スピカ様、少しだけお話してもよろしいですか?」
「私は話すことはないわ」
「それ、それなら! 私が話すので、それを聞いてくださいませ……」


 仕方ないなとそれは面倒そうにスピカ様は頷いた。
 全然慣れないな、泣いたらダメよ……
 けれど、最初の私はわけも分からずにスピカ様に着いて来ただけだった。
 死に場所が変わるのかくらいにしか考えていなかったと思う。
 スピカ様は知っていたのだろうか。


「それでは、まず…」
「ええ」
「スピカ様は、どうして笑わなくなってしまったのですか?」


 ある時から私は感情を忘れて、何も感じなくなっていた。
 世界はあるところでは優しく微笑んでくれるけど、私には牙をむくばかり。
 スピカ様は私とアダムに生きる意味を一生懸命教えてくれた。
 笑わず、泣かず、怒らず、喋ることすらしなかった私をスピカ様はずっと信じてくれていた。


「話を聞くだけなのでは?」
「申し訳ありません……ただ、私はスピカ様が笑わない理由を知りたいのです」
「楽しいこともないのに笑えないわ」
「それでは、どうしてお独りでいたがるのですか?」
「簡単な約束も守れないメイドのことを以前の私は、よく放っておいたわね」


 そのまま崩れて終わるはずの世界をスピカ様は立て直してくれた。
 都合のいい夢をみてるだけだ、そう思えば思うほど私は涙を流していた。
 スピカ様は私に失いかけていた感情を取り戻させてくれた。
 一人で何かを背負って、笑顔で負の連鎖を断ち切るような人、スピカ・アルドレード様。

 絶対にこの手であなたのことを守ると誓ったんだ。
 そして、どうしてもあなたにひとりきりじゃないと伝えたいの。
 あなたを信じた時に勇気を得れた。
 どれだけ困難が待っていても、どんなに恐くても、例え化物になろうとも私はあなたを守ってみせる。


「お願いです、無理をなさっているならおやめください! 誰もがあなたの帰りを待っています……」


 きっといつか、あなたは誰よりも王国に愛されるって私は確信してます。
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