エリート希望者の地球再生記

第一章 物語は落下して始まった

可愛くない幼なじみを捜せ

「おはようさん！　目を覚ませええええええええええええ!!」
「どわっ!?」
「な、何事……？」


　夢の世界から、一気に現実の世界に引き戻される感覚。
　どこかでガンッと鈍い音がしたけど、十中八九誰かが頭を打ったんだろう。
　ゾーイのそれは、世界一の最悪な起こし方だと言っても過言じゃないな……
　そういや、何がどうなったんだ？


「ゾーイ、頼むから……もう少しだけ優しさを感じる起こし方を……」
「サトル、何言ってんのよ。そんなことより、生きてる現実を喜びなよ」
「え？」
「みんなもだよ！　とりあえず、着陸は無事に成功ってやつだから」


　着陸……あ、そうだ、あれからナサニエルを地上に着陸させて……
　あれ？　待ってくれ、着陸だ!?


「生きてる！　俺達、全員生きてる！」
「昴、さっきからあたしが言ってるんだけど？」
「気を失ってたのかしら……」
「そうだよ、クレア。全員、仲良く気を失ってたよ」


　コックピットを見渡すと、あちこちに物が散乱しており、ひどい有様だ。
　ぐるりと見渡すけど、誰も怪我とかはしていないみたいだ。
　俺はホッと胸を撫で下ろす。


「あ、てかさ、全員それぞれいろんなこと確かめた方がいいと思うよ」
「え？　確かめるって？」
「何かあるでしょ？　ほら、自分の部屋とか、友達の様子とか？」


　俺はゾーイのその言葉に、背中を嫌な汗が流れるのがわかった。
　そして、俺はサトルと目が合うと次の瞬間にはコックピットを飛び出し、一目散に走り出していた。
　ナサニエルは予想はしてたけど、やっぱりひどい状態だった。
　どこも足の踏み場がないほどで、あちこち水浸しになっていたり、泣いている人間も何人もいた。
　けど、俺はその中から必死にお節介で口うるさい幼なじみの姿を捜す。


「真由、どこだ！　真由！」
「菜々美～！　どこいった～？」


　人をかき分けて、何度も何度もかき分けて、俺は真由を捜した。
　変だよな、普段はあんなに避けて鬱陶しいとか思ってたのに……
　そして、ようやく見覚えのある黒髪のショートカットを見つけた。


「真由！」
「……昴？」


　きっと、可愛い幼なじみなら感動の再会に抱き合うぐらいはするだろう。
　けど、俺の幼なじみは見た目に反してそんな可愛い一面はない。
　案の定、真由は俺の左頬を思いっきり平手打ちした。


「イッテ……マジで痛すぎだから……」
「今まで、どこ行ってたのよ!?」
「コックピットだよ……」
「はあ？　何の用があるのよ!?」
「話せば長いんだけど、本当にいろいろあったんだよ！」
「知らないわよ！　どんなに心配したと思ってるわけ!?　ナサニエルは揺れまくりで、辺り一面ぐちゃぐちゃで、昴と望はどこにもいないし……!!」
「あー、望は俺と一緒だった……」
「何ですって!?」
「偶然会ったんだよ！　そもそも、平手打ちはないだろ!?」


　俺と真由の口喧嘩は売り言葉に買い言葉で、終わりが見えなかった。
　横でサトル、橘さん、ローレンさんが苦い顔をしていることがわかっていても止められなかった。
　けど、そんな時に館内放送が聞こえてきて、それはハロルドの声だった。


『全生徒諸君！　直ちに、大ホールに集まってくれたまえ！　私達アーデルから一連の出来事の説明を行う！』


　途端に周りはさっきよりもザワザワと騒がしくなり、一斉に大ホールへと移動を開始する。
　とりあえず、俺達も一旦は口喧嘩を中断して、俺、サトル、真由、橘さん、ローレンさんの五人で大ホールへ向かうことになった。
　その名の通りに大ホールとは、ナサニエルの生徒が一堂に会することができるほどの広いホールのことだ。
　そこで始業式や月に一度の総会などを普段は行っている。
　大ホールにつくと、既にそこら中が生徒で埋め尽くされていた。
　俺達は真ん中ぐらいに移動する。


「全生徒諸君！　今回の急な招集によく集まってくれた！」


　突然聞こえたハロルドの声に、一斉に俺達は上を見上げる。
　大ホールは二階構造になっている。
　その二階の展望フロアにはさっきまで一緒にコックピットにいたメンバーが揃っていた。
　すると、ハロルドが他のメンバーより少し前に出て、拡声器で話し始める。
　ハロルドで大丈夫なのか……？