16 / 257
第一章 物語は落下して始まった
育ってきた環境って大切だ
しおりを挟む
あの時コックピットにいたゾーイと関わった人間は、誰もがずっと彼女のことを気にかけていた。
どこへ行ったのか、ゾーイがいなくなったと気付いた最初の二週間ぐらいは必死になって捜していた。
けど、今となってはゾーイの行方ばかりを気にしてる場合ではなくなってしまったのだ。
「……食料は、どんな感じだ?」
「全生徒で半年、三分の一の人数で二年は大丈夫なはずだったんだが……」
「正直、予定の二倍以上のスピードで食料も水も減ってるの」
「え!? じゃあ、一年弱で食料も水も底を突くってこと!?」
サトルの質問に、ハロルドとクレアが神妙な面持ちで答える。
それを聞いたジェームズは、悲鳴のような声を上げる。
そう、すぐに救助が来るだろうとタカをくくって、調子に乗りすぎたせいで食料、水、燃料の消費が予想よりペースが早いのだ。
そこにだんだん実感してくる、大人が存在しない不安。
誰もが一度は想像した最悪な未来が現実になろうとしていた。
俺とサトルは、あれからすっかりアーデルのメンバーと意気投合し、ゾーイの捜索を続けながら、ナサニエルの今後について相談するようになっていた。
今日も恒例となった報告会のためにコックピットを訪れたのだ。
「おい! 今の責任者ってどいつだ!」
そこに知りすぎた人物、一か月ぶりの再会の望がコックピットに既にブチ切れ状態で現れた。
「望! お前、今までどこにいた?」
「テメーに構う暇はねえ! しゃしゃり出て来んな!」
「ま、まあまあ、二人とも冷静に」
やっぱり、望は俺に突っかかり、それをサトルが止めに入って来てくれる。
会話ぐらいしろよな……
「望くん、随分久しぶりではないか!」
「挨拶もどうでもいい! 今の責任者は誰だってんだ!」
「あー、責任者というか……アーデルのリーダーは私だが?」
「……まだ変わってなかったのかよ」
「え? 何か言ったか?」
ボソッと呟いた望の言葉はサトルも聞こえていたようで、苦笑し合う。
ハロルドは少し変わってるけど、基本的にはいい奴だ。
けど、リーダーに向いてるかって言われたら正直首は傾げたくなる。
元々ハロルドがアーデルの実習班長でその流れで、そのままリーダーのようなポジションになった。
本人も名乗り始めて、何となくそのままになっていたけど……うん。
「じゃあ、リーダー。この状況しっかり把握してんのか!?」
「は、把握!? あ、食料のことなら対策を練ろうと……」
「それだけじゃねえ! 他の奴らのストレスやら不安発散で、秩序ってやつがなくなりつつあるだろが!」
「まさか、君から秩序なんて言葉が出てくるとは……」
「喧嘩売ってんのか、太眉野郎!!」
「あ、ああ、いや! すまなかった!」
確かに、目に余る行動が目立つ生徒が増えてきたのは事実だ。
最初はナサニエルの頃と変わらない生活を心がけて掃除とか洗濯とか、しっかりやっていたけど……
今では、ナサニエルは荒れ果てようとしている。
「邪魔するぞ」
「アラン……と、チーム・ロジャー」
俺達で、今にもハロルドに殴りかかりそうな望を宥めていると、そこにアランを先頭にチーム・ロジャーが現れた。
あれからチーム・ロジャーは、その姿を見かける度に引き連れていく人数が増えていっているように思う。
今、この場にはあの時のコックピットにいた、シン、デルタ、ソニアのメインのメンバーしかいないけど。
「どうしたんだよ? 何の騒ぎだ?」
「あ、実は……」
シンの質問に、クレアは今の状況をチーム・ロジャーに説明していく。
話が全て終わると、アランは……
「簡単だ。働いた分だけの配給制にすればいい話だ」
無表情で、そう吐き捨てた。
「そんなこと……!! 私達が勝手に決めるわけにはいかないわ!」
「あ、ああ! 下手すれば暴動が起きてしまうぞ!」
すかさず、クレアとハロルドは反対の言葉を投げかける。
「それなら、お前達はこのまま飢え死にしたいのか? 誰が上で誰が下か、はっきりとルールを決めるべきだ」
「そんなカースト制みたいなことは絶対にしないわ! 私達は全員平等よ!」
「理想は勝手に語ってろ、この空間は絶対にいつか崩壊するぞ? このことに関しては賭けてもいい。そうしたら、俺は遠慮なく殺すぞ? その分の食料が浮くしな?」
アランが無表情でそう言い放つと、他のチーム・ロジャーのメンバーはニヤリと笑った。
俺達は反射的に一歩下がる。
アランの目が本気だとわかって、その場の誰も声が出なかった時だ……
「呆れた! どいつもこいつも、そんな閉鎖的な考えしか浮かばないわけ?」
どこへ行ったのか、ゾーイがいなくなったと気付いた最初の二週間ぐらいは必死になって捜していた。
けど、今となってはゾーイの行方ばかりを気にしてる場合ではなくなってしまったのだ。
「……食料は、どんな感じだ?」
「全生徒で半年、三分の一の人数で二年は大丈夫なはずだったんだが……」
「正直、予定の二倍以上のスピードで食料も水も減ってるの」
「え!? じゃあ、一年弱で食料も水も底を突くってこと!?」
サトルの質問に、ハロルドとクレアが神妙な面持ちで答える。
それを聞いたジェームズは、悲鳴のような声を上げる。
そう、すぐに救助が来るだろうとタカをくくって、調子に乗りすぎたせいで食料、水、燃料の消費が予想よりペースが早いのだ。
そこにだんだん実感してくる、大人が存在しない不安。
誰もが一度は想像した最悪な未来が現実になろうとしていた。
俺とサトルは、あれからすっかりアーデルのメンバーと意気投合し、ゾーイの捜索を続けながら、ナサニエルの今後について相談するようになっていた。
今日も恒例となった報告会のためにコックピットを訪れたのだ。
「おい! 今の責任者ってどいつだ!」
そこに知りすぎた人物、一か月ぶりの再会の望がコックピットに既にブチ切れ状態で現れた。
「望! お前、今までどこにいた?」
「テメーに構う暇はねえ! しゃしゃり出て来んな!」
「ま、まあまあ、二人とも冷静に」
やっぱり、望は俺に突っかかり、それをサトルが止めに入って来てくれる。
会話ぐらいしろよな……
「望くん、随分久しぶりではないか!」
「挨拶もどうでもいい! 今の責任者は誰だってんだ!」
「あー、責任者というか……アーデルのリーダーは私だが?」
「……まだ変わってなかったのかよ」
「え? 何か言ったか?」
ボソッと呟いた望の言葉はサトルも聞こえていたようで、苦笑し合う。
ハロルドは少し変わってるけど、基本的にはいい奴だ。
けど、リーダーに向いてるかって言われたら正直首は傾げたくなる。
元々ハロルドがアーデルの実習班長でその流れで、そのままリーダーのようなポジションになった。
本人も名乗り始めて、何となくそのままになっていたけど……うん。
「じゃあ、リーダー。この状況しっかり把握してんのか!?」
「は、把握!? あ、食料のことなら対策を練ろうと……」
「それだけじゃねえ! 他の奴らのストレスやら不安発散で、秩序ってやつがなくなりつつあるだろが!」
「まさか、君から秩序なんて言葉が出てくるとは……」
「喧嘩売ってんのか、太眉野郎!!」
「あ、ああ、いや! すまなかった!」
確かに、目に余る行動が目立つ生徒が増えてきたのは事実だ。
最初はナサニエルの頃と変わらない生活を心がけて掃除とか洗濯とか、しっかりやっていたけど……
今では、ナサニエルは荒れ果てようとしている。
「邪魔するぞ」
「アラン……と、チーム・ロジャー」
俺達で、今にもハロルドに殴りかかりそうな望を宥めていると、そこにアランを先頭にチーム・ロジャーが現れた。
あれからチーム・ロジャーは、その姿を見かける度に引き連れていく人数が増えていっているように思う。
今、この場にはあの時のコックピットにいた、シン、デルタ、ソニアのメインのメンバーしかいないけど。
「どうしたんだよ? 何の騒ぎだ?」
「あ、実は……」
シンの質問に、クレアは今の状況をチーム・ロジャーに説明していく。
話が全て終わると、アランは……
「簡単だ。働いた分だけの配給制にすればいい話だ」
無表情で、そう吐き捨てた。
「そんなこと……!! 私達が勝手に決めるわけにはいかないわ!」
「あ、ああ! 下手すれば暴動が起きてしまうぞ!」
すかさず、クレアとハロルドは反対の言葉を投げかける。
「それなら、お前達はこのまま飢え死にしたいのか? 誰が上で誰が下か、はっきりとルールを決めるべきだ」
「そんなカースト制みたいなことは絶対にしないわ! 私達は全員平等よ!」
「理想は勝手に語ってろ、この空間は絶対にいつか崩壊するぞ? このことに関しては賭けてもいい。そうしたら、俺は遠慮なく殺すぞ? その分の食料が浮くしな?」
アランが無表情でそう言い放つと、他のチーム・ロジャーのメンバーはニヤリと笑った。
俺達は反射的に一歩下がる。
アランの目が本気だとわかって、その場の誰も声が出なかった時だ……
「呆れた! どいつもこいつも、そんな閉鎖的な考えしか浮かばないわけ?」
0
あなたにおすすめの小説
【完結】使えない令嬢として一家から追放されたけど、あまりにも領民からの信頼が厚かったので逆転してざまぁしちゃいます
腕押のれん
ファンタジー
アメリスはマハス公国の八大領主の一つであるロナデシア家の三姉妹の次女として生まれるが、頭脳明晰な長女と愛想の上手い三女と比較されて母親から疎まれており、ついに追放されてしまう。しかしアメリスは取り柄のない自分にもできることをしなければならないという一心で領民たちに対し援助を熱心に行っていたので、領民からは非常に好かれていた。そのため追放された後に他国に置き去りにされてしまうものの、偶然以前助けたマハス公国出身のヨーデルと出会い助けられる。ここから彼女の逆転人生が始まっていくのであった!
私が死ぬまでには完結させます。
追記:最後まで書き終わったので、ここからはペース上げて投稿します。
追記2:ひとまず完結しました!
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
アリエッタ幼女、スラムからの華麗なる転身
にゃんすき
ファンタジー
冒頭からいきなり主人公のアリエッタが大きな男に攫われて、前世の記憶を思い出し、逃げる所から物語が始まります。
姉妹で力を合わせて幸せを掴み取るストーリーになる、予定です。
神は激怒した
まる
ファンタジー
おのれえええぇえぇぇぇ……人間どもめぇ。
めっちゃ面倒な事ばっかりして余計な仕事を増やしてくる人間に神様がキレました。
ふわっとした設定ですのでご了承下さいm(_ _)m
世界の設定やら背景はふわふわですので、ん?と思う部分が出てくるかもしれませんがいい感じに個人で補完していただけると幸いです。
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
冷遇王妃はときめかない
あんど もあ
ファンタジー
幼いころから婚約していた彼と結婚して王妃になった私。
だが、陛下は側妃だけを溺愛し、私は白い結婚のまま離宮へ追いやられる…って何てラッキー! 国の事は陛下と側妃様に任せて、私はこのまま離宮で何の責任も無い楽な生活を!…と思っていたのに…。
『異世界庭付き一戸建て』を相続した仲良し兄妹は今までの不幸にサヨナラしてスローライフを満喫できる、はず?
釈 余白(しやく)
ファンタジー
毒親の父が不慮の事故で死亡したことで最後の肉親を失い、残された高校生の小村雷人(こむら らいと)と小学生の真琴(まこと)の兄妹が聞かされたのは、父が家を担保に金を借りていたという絶望の事実だった。慣れ親しんだ自宅から早々の退去が必要となった二人は家の中で金目の物を探す。
その結果見つかったのは、僅かな現金に空の預金通帳といくつかの宝飾品、そして家の権利書と見知らぬ文字で書かれた書類くらいだった。謎の書類には祖父のサインが記されていたが内容は読めず、頼みの綱は挟まれていた弁護士の名刺だけだ。
最後の希望とも言える名刺の電話番号へ連絡した二人は、やってきた弁護士から契約書の内容を聞かされ唖然とする。それは祖父が遺産として残した『異世界トラス』にある土地と建物を孫へ渡すというものだった。もちろん現地へ行かなければ遺産は受け取れないが。兄妹には他に頼れるものがなく、思い切って異世界へと赴き新生活をスタートさせるのだった。
連載時、HOT 1位ありがとうございました!
その他、多数投稿しています。
こちらもよろしくお願いします!
https://www.alphapolis.co.jp/author/detail/398438394
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる