エリート希望者の地球再生記

行倉宙華

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第一章 物語は落下して始まった

育ってきた環境って大切だ

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 あの時コックピットにいたゾーイと関わった人間は、誰もがずっと彼女のことを気にかけていた。
 どこへ行ったのか、ゾーイがいなくなったと気付いた最初の二週間ぐらいは必死になって捜していた。
 けど、今となってはゾーイの行方ばかりを気にしてる場合ではなくなってしまったのだ。


「……食料は、どんな感じだ?」
「全生徒で半年、三分の一の人数で二年は大丈夫なはずだったんだが……」
「正直、予定の二倍以上のスピードで食料も水も減ってるの」
「え!? じゃあ、一年弱で食料も水も底を突くってこと!?」


 サトルの質問に、ハロルドとクレアが神妙な面持ちで答える。
 それを聞いたジェームズは、悲鳴のような声を上げる。
 そう、すぐに救助が来るだろうとタカをくくって、調子に乗りすぎたせいで食料、水、燃料の消費が予想よりペースが早いのだ。
 そこにだんだん実感してくる、大人が存在しない不安。
 誰もが一度は想像した最悪な未来が現実になろうとしていた。
 俺とサトルは、あれからすっかりアーデルのメンバーと意気投合し、ゾーイの捜索を続けながら、ナサニエルの今後について相談するようになっていた。
 今日も恒例となった報告会のためにコックピットを訪れたのだ。


「おい! 今の責任者ってどいつだ!」


 そこに知りすぎた人物、一か月ぶりの再会の望がコックピットに既にブチ切れ状態で現れた。


「望! お前、今までどこにいた?」
「テメーに構う暇はねえ! しゃしゃり出て来んな!」
「ま、まあまあ、二人とも冷静に」


 やっぱり、望は俺に突っかかり、それをサトルが止めに入って来てくれる。
 会話ぐらいしろよな……


「望くん、随分久しぶりではないか!」
「挨拶もどうでもいい! 今の責任者は誰だってんだ!」
「あー、責任者というか……アーデルのリーダーは私だが?」
「……まだ変わってなかったのかよ」
「え? 何か言ったか?」


 ボソッと呟いた望の言葉はサトルも聞こえていたようで、苦笑し合う。
 ハロルドは少し変わってるけど、基本的にはいい奴だ。
 けど、リーダーに向いてるかって言われたら正直首は傾げたくなる。
 元々ハロルドがアーデルの実習班長でその流れで、そのままリーダーのようなポジションになった。
 本人も名乗り始めて、何となくそのままになっていたけど……うん。


「じゃあ、リーダー。この状況しっかり把握してんのか!?」
「は、把握!? あ、食料のことなら対策を練ろうと……」
「それだけじゃねえ! 他の奴らのストレスやら不安発散で、秩序ってやつがなくなりつつあるだろが!」
「まさか、君から秩序なんて言葉が出てくるとは……」
「喧嘩売ってんのか、太眉野郎!!」
「あ、ああ、いや! すまなかった!」


 確かに、目に余る行動が目立つ生徒が増えてきたのは事実だ。
 最初はナサニエルの頃と変わらない生活を心がけて掃除とか洗濯とか、しっかりやっていたけど……
 今では、ナサニエルは荒れ果てようとしている。


「邪魔するぞ」
「アラン……と、チーム・ロジャー」


 俺達で、今にもハロルドに殴りかかりそうな望を宥めていると、そこにアランを先頭にチーム・ロジャーが現れた。
 あれからチーム・ロジャーは、その姿を見かける度に引き連れていく人数が増えていっているように思う。
 今、この場にはあの時のコックピットにいた、シン、デルタ、ソニアのメインのメンバーしかいないけど。


「どうしたんだよ? 何の騒ぎだ?」
「あ、実は……」


 シンの質問に、クレアは今の状況をチーム・ロジャーに説明していく。
 話が全て終わると、アランは……


「簡単だ。働いた分だけの配給制にすればいい話だ」


 無表情で、そう吐き捨てた。

 
「そんなこと……!! 私達が勝手に決めるわけにはいかないわ!」
「あ、ああ! 下手すれば暴動が起きてしまうぞ!」


 すかさず、クレアとハロルドは反対の言葉を投げかける。


「それなら、お前達はこのまま飢え死にしたいのか? 誰が上で誰が下か、はっきりとルールを決めるべきだ」
「そんなカースト制みたいなことは絶対にしないわ! 私達は全員平等よ!」
「理想は勝手に語ってろ、この空間は絶対にいつか崩壊するぞ? このことに関しては賭けてもいい。そうしたら、俺は遠慮なく殺すぞ? その分の食料が浮くしな?」


 アランが無表情でそう言い放つと、他のチーム・ロジャーのメンバーはニヤリと笑った。
 俺達は反射的に一歩下がる。
 アランの目が本気だとわかって、その場の誰も声が出なかった時だ……


「呆れた! どいつもこいつも、そんな閉鎖的な考えしか浮かばないわけ?」
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