エリート希望者の地球再生記

行倉宙華

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第一章 物語は落下して始まった

まだまだ子どもすぎた

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「ゾーイ!? 本物のゾーイか!?」
「は? あたしの偽物でも出たわけ?」


 コックピットの入口には一か月ぶりのゾーイの姿があった。
 すかさず、シンがゾーイに駆け寄って行って声をかける。
 それにゾーイは怪訝な顔で答える。


「お前、どこ行ってたんだよ!?」
「何怒ってんの? そんなのあたしの勝手でしょ?」
「どうして、何も言わずにいなくなるのよ!!」
「逆に何で言わなきゃいけないのよ」


 望とデルタがどんなに怒っても、ゾーイはまったく悪びれることなく答える。
 本当に人の気も知らないで……
 俺は深くため息をつき、ぐるりと周りを見渡す。
 望とデルタがゾーイに悪態をつく様子を見る全員の顔はどこかホッとしているようだった。
 当然だ、俺達がどれだけゾーイのことを捜したと思ってるんだよって話だ。


「そんなことより! あたしは働くってことと、ルールを決めるってことには結構賛成よ!」


 ゾーイのその発言に、その場の誰もが絶句した。


「お前、何を企んでいる」
「あんた、せっかく賛成したのに全然ウェルカムじゃないのね? てか、すぐに人を疑う癖、どうにかした方がいいと思うよ?」


 あのアランでさえ、これでもかと目を見開いているから相当驚いている。
 まさか、ゾーイが自分に味方するとは思わなかったのだろう。


「あと、あたしからも提案が一つ!」
「え、ああ……提案って?」
「外に出るの!」


 ここまでくるとゾーイの大抵の発言ではもう驚かないだろうなとは思っていたけど、そんなことはなかった。
 俺は自分で質問をしておいて、また思わず一歩引いてしまった。
 そして、さっきのアランの発言の後とは比にならないほど騒がしくなる。


「外? 外とは……ナサニエルの扉を開けて、外に出るということか?」
「……頭、大丈夫?」


 ハロルドが真っ青な顔で震えながらゾーイに確かめれば、ゾーイは呆れながらハロルドに吐き捨てた。


「待って、待って! 今回ばかりは、ハロルドは悪くないから!」
「本当に一か月間、どこで何してたの!? クスリでもやってたわけ!?」
「それか極度の緊張状態が続いて、気でも狂ったのか!? そうだよな!?」
「それってあんたらでしょ? あたし、クスリはやってないし、別に気だって狂ってないけど?」


 ソニア、デルタ、シンは、それぞれが信じたくないとばかりにゾーイに口々に詰め寄っていく。
 けど、ゾーイはとんでもなく失礼な返事をして、一蹴していた。
 アランはそんな様子を、ほぼゾーイを睨むような状態で見守っている。
 それもまた通常運転だよな……


「帰って来たと思ったら、これか……」
「本当にすごいこと思いつくよね、ゾーイってさ……」
「斜め上どころか、本当に突き抜けた発想だよな?」


 何気なく零した俺のその言葉に、隣のジェームズとサトルが反応する。


「ゾーイ! 今の地上は、どんな危険があるかわからないわ!」
「そうです。わざわざ、自分達から未知の領域に飛び込むことないのでは?」
「そもそもだ! 今は、ナサニエルの内部のいざこざで手一杯なんだよ!」


 そして、クレア、モーリスを中心にアーデルと望は、絶対にゾーイの提案には反対だというように言い返す。
 とにかく、全員からゾーイに困惑、批判の嵐だった。


「わかった。じゃあ、これからどうするのか具体的な解決策はあるわけ?」


 けど、意外にもゾーイは自分の意見をこれまでみたいに押し通そうとせず、全員の言い分を聞く気なようだ。


「そ、そうね……確かに、この状況で救助が来るまである程度のルールは必要だと思うから、それを決めて……」
「それに従って、規則正しい生活を心がけるようにすれば、救助が来るまで持ち堪えることはできるかと思いますね」


 クレアは強ばりながら、モーリスは機械的にゾーイに今後の対策を説明する。
 何だか、傍から見たら、その光景は面接でも受けているようだった。


「それって、救助が来ること前提の話よね? 現実見なよ」


 そして、やっぱり、ゾーイが黙って引き下がるわけもなかった。
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