エリート希望者の地球再生記

行倉宙華

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第二章 未知の世界への移住

初日から先行きが不安です

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 結局、その日の寝床はサトル達が見つけてきたホテルのような建物の二階で雑魚寝することになった。
 屋根があれば、どんなに突然の天候の変化でも安心だし、猛獣が入って来る危険もない。
 それに二階なら、突然この脆くなってしまった建物が崩れても逃げられる。
 俺達は円を描くような形で座り、森で採ってきた食料を食べる。
 まあ、望、アラン、ゾーイは輪の中には入らずだったけど……


「……ここが地上なのね」
「クレア、心配無用だ! 君のことは、このハロルド・早乙女が責任をもって守り抜こう!」
「あ、ありがとう、ハロルド……」


 全員が黙って食事をしていたが、クレアの呟きにハロルドが反応したことでそれぞれが少しずつ話をし始めた。
 まるで、緊張の糸が切れたように。


「感動しちゃったよ! サトルから話は聞いてたけど、動物があんなに元気に走り回っているなんて!」
「綺麗な花もたくさん咲いてて、あの光景が人工物じゃないなんて……」
「本当に地上は美しいものなのね」


 橘さんが本当に楽しそうに嬉しそうに話すから、それにつられて真由も笑顔で話していた。
 けど、その後で地上は美しいと言ったローレンさんのことをゾーイが無表情で見つめていたのは印象に残った……


「けどさ、あっちこっち、本当にボロボロなんだね!」
「そりゃそうでしょ? 人類が地上に下りるのは九百年とか……最早ほぼ千年ぶりよね」
「それ考えるとすごくね!? 俺達って生きる伝説なんじゃね!?」


 ソニアが果物を食べながら話し、それをデルタがフォローする。
 何やらシンは、興奮気味でうひゃーと喜びまくっているけど……


「まあ、今の状況が貴重な体験だということは確かです」
「そうだね、危険もあるけど……」
「聞いてくれ! 私は帰ったら、この素晴らしい体験を本にしたいと思う!」
「出版したら言ってくれ、買うよ」


 モーリスはいつも通り何を考えているのかわからない表情でそう呟き、それにジェームズが不安そうに返す。
 その横でハロルドはなぜかここで執筆宣言をし、すぐさま気のいいサトルがそれに答えている。


「帰れたらの話だろが、バカか!」


 そんな楽しく和やかな雰囲気に、水を差した人物。
 俺は思わず、手で顔をおおった。


「望! あんた、何てこと言うの!」
「事実だろうが!」
「事実だとしても、今はそれを言うべきじゃないことぐらいわかるだろ!?」
「は? 揃って、俺に説教する気か?」


 真由がすぐに望を咎め、俺も続くけど素直に聞くわけもなく……
 その時の俺は、望の思いやりのない言葉に申し訳なさでいっぱいで、全員の顔を見ることができなかった。


「まるで、反抗期の子どもに苦労してる家庭の図だわね」


 すると、それまで少し離れた窓際で空を眺めていたゾーイが、こっちを振り向きながらそう言った。
 どうして、ゾーイ、君は望の神経を逆撫でする天才なんだろうか……
 俺は壊れたロボットのようにゆっくりと望の顔を見る。
 見たことのない片割れの笑顔に、その場の空気が凍りつくのがわかる。


「……あ? もう一度言ってみろ」
「あ、離れてるから聞こえなかった? さっき言ったのは、まるで反抗……」
「俺をおちょくってんのか!? ああ!?」
「は? もう一度言えって言ったのは望本人でしょ? 瞬間記憶喪失?」
「クッッッソほど、イラつくんだよ、お前はよおおおお!!!!」
「望、とりあえず冷静になれ。ゾーイは頼むから、本当に……」


 ゾーイは予想通り、望という火に大量の油を注いで大爆発させてくれた。
 若干、怒りで望の長くなった髪が逆立っているようにすら見える。
 怒り心頭の望を俺、サトル、シンの男三人がかりで押さえつける。
 一方で、ゾーイは望が何をそんなに怒っているんだと言いたげに、本気で疑問符を浮かべている。
 スタートからこんな状態じゃ、切実に先が思いやられるよな……
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