32 / 257
第二章 未知の世界への移住
第一印象は詐欺ってこと
しおりを挟む
俺達はナサニエルに残るアーデルのメンバーに見送られて、出発した。
俺は、再び外に出たのだ。
初めて地上に下り立った面々は、ありのままの自然や動物にテンション上がりまくりだった。
隣を歩く真由も目に映る初めてばかりのものに、目を輝かせている。
一方で、前の探索の時に俺と一緒に外に出た、サトル、ハロルド、アラン、望は落ち着かない様子だ。
あのゾーイでさえ、視線が左右に動き回っている。
落ち着かないのは俺もだけど……
きっと、俺と同じように元代表組は、森であの日に出くわしたライオンなどの猛獣を警戒しているのだろう。
とりあえず、俺達は森を抜けてこの前の探索の時に見つけた荒廃都市に行くことになった。
そこに向かうついでに、今晩の食料や水を、資源豊富な森から集めていく。
「ほらほら、珍しいからってそこら中の緑に見惚れていないで、さっさと食料集めてよ。食べなきゃ死ぬよ~?」
ゾーイの言うことは若干どころかほぼ脅しだけど、その明らかにダルいというような口調のせいで、どうも緊張感に欠けるものがある。
まあ、結果それぞれが動き出しているし、それでもいいんだろうけど……
俺も前後左右、あらゆる場所を自分の食料確保のために探す。
すると、行った先にはソニアがいた。
「ソニア!」
「あ、昴じゃん」
「何か見つけたの?」
「いやまあ、見つけたには見つけたんだけど……」
「あれ、どうかした?」
ソニアは、俺の質問に無言で足元を指差した。
そこを覗き込むと、何とも色鮮やかなキノコが軒並み揃っていた。
「……状況は理解したよ」
「そうでしょ!? ねえ、これのことどう思う!?」
「どうって……うん」
「食べられると思う!?」
「別に平気じゃないの?」
「え……うわっ!?!?」
「ぞ、ゾーイ……脅かさないでよ……」
本当にいつの間にそこにいたのか、俺とソニアの真後ろにゾーイはいた。
気配とか、足音とか、全然気付かなかったんだけど……
思わず、叫びながら飛び上がった俺は悪くないはずだ。
隣のソニアだって、心臓の辺りを手で抑えながら落ち着こうとしているしな。
「とにかく、それ根こそぎ収穫!」
「本気!?」
「大丈夫だってば! ほら、そこのキノコとか食べかけの状態でしょ? 動物か虫が食べたんだよ」
「え、だから?」
「虫が食べてるなら、食べられるだろよって話」
「そんな無茶苦茶な……」
ソニアの鋭いツッコミや俺の呆れを通り越して怯えた感想もスルーして、ゾーイはさっさと色鮮やかなキノコを次々と収穫していく。
それはまた効率よくテキパキと。
宣言通りに根こそぎキノコを収穫し終わった頃に、少し先の方からサトルが集合をかける声がして、俺達は声のした方に向かった。
その道すがらも、ゾーイは次々と本当に大丈夫なのかと問いたくなるような木の実や果物を収穫していく。
そんな止まらないゾーイを、俺とソニアで止められるわけもなかった。
集合して、そのゾーイが収穫した食料を見て、望にキレられて、アランに睨まれて、問いただすハロルドの口にその色鮮やかなキノコを突っ込む未来まで、あと五分というところだ。
***
「人間と同じで、何事も見た目だけで判断しちゃいけないのよ」
「それはゾーイでわかってたけど……」
「何か言った?」
「ううん、何でもないよ……」
ゾーイがハロルドの口に色鮮やかなキノコを突っ込んだ次の瞬間に、その場でハロルドは倒れた。
けど、すぐに起き上がり、ハロルドが「美味いぞ!」と、ほぼ悲鳴のような声を上げた。
そんな一連の流れがあった上で、隣でゾーイは得意げにそう言った。
「さあさあ、諸君! 元気よく、今日の寝床を探そうではないか!」
「何が元気だ!? さっきまで、泡吹いて倒れてただろうが!」
「あ、泡など吹いてはいないぞ!?」
そんな会話をしながら俺とゾーイの前を歩くのは、すっかり元気で上り調子のハロルドとそれを煙たそうに距離をとる望の二人だ。
俺達は、荒廃都市にやって来た。
そこら中に散らばっている瓦礫やガラスを避けながら、進んで行く。
あれから、何人かのグループに別れて今日の寝る場所を探そうということになり、俺、ハロルド、望、ゾーイの四人で探しているというわけだ。
そうこうしている間に、俺達は大きなショッピングモール? のような場所に入ることになった。
「うわああああ!?!?」
「ハロルド!?」
「何だ、何があった!?」
すると、突然ハロルドが叫び、それぞれで中の様子を伺っていた俺達は、すぐさまハロルドのいる場所に集合した。
「誰だ……誰だそこにいるのは!?」
「は? 人がいたのか!?」
「俺達以外に人がいるなんて……」
「けど、確かにそこに!」
「一応聞くけど、その人影ってこのマネキンのことじゃないわよね?」
ゾーイがその場でただ一人冷静にそう指摘して、マネキンを蹴り飛ばす。
途端にハロルドの目は尋常じゃないほどに泳ぎまくっていた。
「クソほど時間の無駄だ!! 空島にもマネキンぐらいあるだろが!!」
俺は、再び外に出たのだ。
初めて地上に下り立った面々は、ありのままの自然や動物にテンション上がりまくりだった。
隣を歩く真由も目に映る初めてばかりのものに、目を輝かせている。
一方で、前の探索の時に俺と一緒に外に出た、サトル、ハロルド、アラン、望は落ち着かない様子だ。
あのゾーイでさえ、視線が左右に動き回っている。
落ち着かないのは俺もだけど……
きっと、俺と同じように元代表組は、森であの日に出くわしたライオンなどの猛獣を警戒しているのだろう。
とりあえず、俺達は森を抜けてこの前の探索の時に見つけた荒廃都市に行くことになった。
そこに向かうついでに、今晩の食料や水を、資源豊富な森から集めていく。
「ほらほら、珍しいからってそこら中の緑に見惚れていないで、さっさと食料集めてよ。食べなきゃ死ぬよ~?」
ゾーイの言うことは若干どころかほぼ脅しだけど、その明らかにダルいというような口調のせいで、どうも緊張感に欠けるものがある。
まあ、結果それぞれが動き出しているし、それでもいいんだろうけど……
俺も前後左右、あらゆる場所を自分の食料確保のために探す。
すると、行った先にはソニアがいた。
「ソニア!」
「あ、昴じゃん」
「何か見つけたの?」
「いやまあ、見つけたには見つけたんだけど……」
「あれ、どうかした?」
ソニアは、俺の質問に無言で足元を指差した。
そこを覗き込むと、何とも色鮮やかなキノコが軒並み揃っていた。
「……状況は理解したよ」
「そうでしょ!? ねえ、これのことどう思う!?」
「どうって……うん」
「食べられると思う!?」
「別に平気じゃないの?」
「え……うわっ!?!?」
「ぞ、ゾーイ……脅かさないでよ……」
本当にいつの間にそこにいたのか、俺とソニアの真後ろにゾーイはいた。
気配とか、足音とか、全然気付かなかったんだけど……
思わず、叫びながら飛び上がった俺は悪くないはずだ。
隣のソニアだって、心臓の辺りを手で抑えながら落ち着こうとしているしな。
「とにかく、それ根こそぎ収穫!」
「本気!?」
「大丈夫だってば! ほら、そこのキノコとか食べかけの状態でしょ? 動物か虫が食べたんだよ」
「え、だから?」
「虫が食べてるなら、食べられるだろよって話」
「そんな無茶苦茶な……」
ソニアの鋭いツッコミや俺の呆れを通り越して怯えた感想もスルーして、ゾーイはさっさと色鮮やかなキノコを次々と収穫していく。
それはまた効率よくテキパキと。
宣言通りに根こそぎキノコを収穫し終わった頃に、少し先の方からサトルが集合をかける声がして、俺達は声のした方に向かった。
その道すがらも、ゾーイは次々と本当に大丈夫なのかと問いたくなるような木の実や果物を収穫していく。
そんな止まらないゾーイを、俺とソニアで止められるわけもなかった。
集合して、そのゾーイが収穫した食料を見て、望にキレられて、アランに睨まれて、問いただすハロルドの口にその色鮮やかなキノコを突っ込む未来まで、あと五分というところだ。
***
「人間と同じで、何事も見た目だけで判断しちゃいけないのよ」
「それはゾーイでわかってたけど……」
「何か言った?」
「ううん、何でもないよ……」
ゾーイがハロルドの口に色鮮やかなキノコを突っ込んだ次の瞬間に、その場でハロルドは倒れた。
けど、すぐに起き上がり、ハロルドが「美味いぞ!」と、ほぼ悲鳴のような声を上げた。
そんな一連の流れがあった上で、隣でゾーイは得意げにそう言った。
「さあさあ、諸君! 元気よく、今日の寝床を探そうではないか!」
「何が元気だ!? さっきまで、泡吹いて倒れてただろうが!」
「あ、泡など吹いてはいないぞ!?」
そんな会話をしながら俺とゾーイの前を歩くのは、すっかり元気で上り調子のハロルドとそれを煙たそうに距離をとる望の二人だ。
俺達は、荒廃都市にやって来た。
そこら中に散らばっている瓦礫やガラスを避けながら、進んで行く。
あれから、何人かのグループに別れて今日の寝る場所を探そうということになり、俺、ハロルド、望、ゾーイの四人で探しているというわけだ。
そうこうしている間に、俺達は大きなショッピングモール? のような場所に入ることになった。
「うわああああ!?!?」
「ハロルド!?」
「何だ、何があった!?」
すると、突然ハロルドが叫び、それぞれで中の様子を伺っていた俺達は、すぐさまハロルドのいる場所に集合した。
「誰だ……誰だそこにいるのは!?」
「は? 人がいたのか!?」
「俺達以外に人がいるなんて……」
「けど、確かにそこに!」
「一応聞くけど、その人影ってこのマネキンのことじゃないわよね?」
ゾーイがその場でただ一人冷静にそう指摘して、マネキンを蹴り飛ばす。
途端にハロルドの目は尋常じゃないほどに泳ぎまくっていた。
「クソほど時間の無駄だ!! 空島にもマネキンぐらいあるだろが!!」
0
あなたにおすすめの小説
【完結】使えない令嬢として一家から追放されたけど、あまりにも領民からの信頼が厚かったので逆転してざまぁしちゃいます
腕押のれん
ファンタジー
アメリスはマハス公国の八大領主の一つであるロナデシア家の三姉妹の次女として生まれるが、頭脳明晰な長女と愛想の上手い三女と比較されて母親から疎まれており、ついに追放されてしまう。しかしアメリスは取り柄のない自分にもできることをしなければならないという一心で領民たちに対し援助を熱心に行っていたので、領民からは非常に好かれていた。そのため追放された後に他国に置き去りにされてしまうものの、偶然以前助けたマハス公国出身のヨーデルと出会い助けられる。ここから彼女の逆転人生が始まっていくのであった!
私が死ぬまでには完結させます。
追記:最後まで書き終わったので、ここからはペース上げて投稿します。
追記2:ひとまず完結しました!
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
アリエッタ幼女、スラムからの華麗なる転身
にゃんすき
ファンタジー
冒頭からいきなり主人公のアリエッタが大きな男に攫われて、前世の記憶を思い出し、逃げる所から物語が始まります。
姉妹で力を合わせて幸せを掴み取るストーリーになる、予定です。
神は激怒した
まる
ファンタジー
おのれえええぇえぇぇぇ……人間どもめぇ。
めっちゃ面倒な事ばっかりして余計な仕事を増やしてくる人間に神様がキレました。
ふわっとした設定ですのでご了承下さいm(_ _)m
世界の設定やら背景はふわふわですので、ん?と思う部分が出てくるかもしれませんがいい感じに個人で補完していただけると幸いです。
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
冷遇王妃はときめかない
あんど もあ
ファンタジー
幼いころから婚約していた彼と結婚して王妃になった私。
だが、陛下は側妃だけを溺愛し、私は白い結婚のまま離宮へ追いやられる…って何てラッキー! 国の事は陛下と側妃様に任せて、私はこのまま離宮で何の責任も無い楽な生活を!…と思っていたのに…。
『異世界庭付き一戸建て』を相続した仲良し兄妹は今までの不幸にサヨナラしてスローライフを満喫できる、はず?
釈 余白(しやく)
ファンタジー
毒親の父が不慮の事故で死亡したことで最後の肉親を失い、残された高校生の小村雷人(こむら らいと)と小学生の真琴(まこと)の兄妹が聞かされたのは、父が家を担保に金を借りていたという絶望の事実だった。慣れ親しんだ自宅から早々の退去が必要となった二人は家の中で金目の物を探す。
その結果見つかったのは、僅かな現金に空の預金通帳といくつかの宝飾品、そして家の権利書と見知らぬ文字で書かれた書類くらいだった。謎の書類には祖父のサインが記されていたが内容は読めず、頼みの綱は挟まれていた弁護士の名刺だけだ。
最後の希望とも言える名刺の電話番号へ連絡した二人は、やってきた弁護士から契約書の内容を聞かされ唖然とする。それは祖父が遺産として残した『異世界トラス』にある土地と建物を孫へ渡すというものだった。もちろん現地へ行かなければ遺産は受け取れないが。兄妹には他に頼れるものがなく、思い切って異世界へと赴き新生活をスタートさせるのだった。
連載時、HOT 1位ありがとうございました!
その他、多数投稿しています。
こちらもよろしくお願いします!
https://www.alphapolis.co.jp/author/detail/398438394
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる